酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2006年09月30日(土) |
『新宿鮫』 大沢在昌 |
欲望の街、新宿。刑事・鮫島36歳はエリートキャリア組から公安時代に腐った同僚を摘発し、オチコボレた。しかも友人から公安の暗部を告発した手紙を託され、警察の恥部を握ったことにより鮫島は警察内外から目の仇にされてしまう。新宿署防犯課にまわされ、新宿署唯一の単独遊軍捜査官になった鮫島の救いは恋人のロックシンガー晶(しょう)だけ。新宿で連続警官射殺事件が発生する中、鮫島は銃密造の天才・木津を追いかけていた。木津の工房に潜入し、危機に陥る鮫島。鮫島の動向を知っているのは防犯課課長の桃井だけ。桃井はノンキャリアながらも将来有望の警官だったが、息子の事故死以来マンジュウ(死人)になってしまったと噂される覇気の無い男だった。鮫島に怨みとサディスティックな欲望を持つ木津によって落とされた絶体絶命の窮地から生還する事は出来るのか!?
確か5年くらい前にハジメテ大沢親分の『新宿鮫』シリーズにはまった記憶があります。ひょっとしたらもう少し前だったかしら。ちょうど携帯電話を持つか持たないかくらいの時期だったはずで、その時期には携帯電話が登場しない物語に違和感なかったように思います。でもさすがに今では古くさい感じがしますね。あと晶ちゃんの巨乳のことを<ロケットおっぱい>と鮫島が言うのにも笑えます。そんな言い回しないだろー(大笑)。このハジメテの新宿鮫では、鮫島はスーパーマンじゃない。そこが今さら新鮮でした。殺されそうな恐怖に本気で怖がる鮫島の人間らしさが魅力のひとつなのかもしれないー。まっすぐで正義感にあふれるがゆえに警察からはみだしてしまう孤高の刑事。うーん、絵になりますね。これぞハードボイルドってカタチ。この物語のキィパーソンはマンジュウの桃井課長。このひとが美味しいとこ全部さらえて持っていってしまうシーンがことのほかお気に入り。それは数年前に読んだ時も今回の再読でもやっぱり変わらなかったわ。この古くさくて泥臭い男の物語をテレビドラマ化してくれないかなー。映像で観たいです。秋風に吹かれてハードボイルドを。
「うちの課に『マンジュウ』はひとりだけでたくさんだ」
『新宿鮫』 大沢在昌 光文社カッパノベルス
| 2006年09月29日(金) |
『八月の熱い雨 便利屋<ダブルフォロー>奮闘記』 山之内正文 |
皆瀬泉水は一人で〈便利屋ダブルフォロー〉を営んでいる。泉水に舞い込む依頼には何故だか妙な人が関わってくる。依頼の線上に浮かび上がるいくつもの不思議や謎。優しさと人の良さで泉水は依頼をこなしていく。 「吉次のR69」 泉水の元に麻倉亜季という女子大生がやって来た。彼女の祖父の様子がおかしいと言う。67歳の亜季の祖父は粋な男でR69と言うバイクをこよなく愛し、楽しそうに乗りこなしていた。なのにある日バイクを手放した。事故を起こしたわけでもないらしいのにパッタリとバイクを切り離し、鬱欝と引きこもるようになってしまったのだ。いったい祖父に何が起こったのだろう・・・? この物語は便利屋の皆瀬泉水が関わる依頼と謎の連作集なのでありますが、とても気に入ったのが「吉次のR69」でした。これはねぇ、すごい素敵なんですぅー! つくづく物語りに登場する人物の魅力の重要性を感じるものなのでありますよ。めろめろ。あと「約束されたハガキの秘密」もたまらなく好きですね。このスピードの現代で郵便将棋なるもので将棋を楽しむ贅沢感に目から鱗がぼろぼろ落ちましたもの。郵便葉書で将棋を指すの、一手ずつ! これはビックリですよーっ!!! そういう楽しみ方が出来るってなんて素敵なのだろう。結局お気に入りの2編はどちらとも人生を深く楽しむ事が出来る人が登場してるんです。尊敬しちゃいます。なんと言うかのんびりゆったり楽しむって素敵じゃないですか。そういう姿勢に憧れるからこそ心にフィットしたんだろうなぁ。人生を好きなものを深く静かに愛して楽しみたいものなのです。そして知らないことを知ることができる喜びや快感はいいものだなぁとしみじみ感じたのでありました。オススメv あ、ちなみにダブルフォローは泉水と泉水の友人が立ち上げたからダブルなのだそうです。なのにその友人は《いざ便利屋開業というときになって、ある理由から日本一周の旅に出てしまった》そうで(大笑)、泉水とその友人の物語も読んでみたいものだなぁと思っております。なんだかその友人も魅力的だ!
オートバイ乗りは、いくらうじうじ考えてたって、いざオートバイに跨ってしまえば、そんなものは消し飛んでしまうのさ。
『八月の熱い雨 便利屋<ダブルフォロー>奮闘記』 2006.8.31. 山之内正文 東京創元社
| 2006年09月28日(木) |
DVD『イズ・エー 【is A.】』 |
賑わう渋谷の飲食店で爆破事件が起き、死傷者が多数出てしまった。犯人は14歳の少年であったために、少年法に守られ、4年で少年院を出て社会に戻ることになる。被害者の父である刑事は犯人を許すことができず、少年を付回す。少年の父親は息子の更生を信じ、少年のそばで少年を励ましながら必死になって生きようとしていた。しかし、ふたりの父親の苦しむ心も知らず少年はまたしても犯罪を犯してしまう。その時、ふたりの父親は・・・!?
うーん、かなりの問題作であります。視点は犯罪を犯した父親と被害者の父親で、それぞれの葛藤や言い分はどちらもわかってしまうのですね。でもそんな心をわかろともしないで再犯・・・それはもう心が無いとしか言いようがありません。罪を犯して更生しようと努力しても世間の色眼鏡は厳しいものなのに、更生なんて全くしない人間を世の中に出しちゃイケナイ。その判断ができるなにかがあればいいのに、と思います。やり直したい、罪を償いたい、そう心から願う人間にはなんとか手を差し伸べる努力を・・・それも難しいことなのですケレドモ。更生の余地のない人間は少年も大人も社会に戻るべきじゃない。犯罪が憎しみを呼び、犯罪の連鎖を起こすなんて・・・そんな繰り返しは絶つことができるならば。犯罪のない世の中であるならば言うことはないのでしょうにね。うー(困惑)。
| 2006年09月27日(水) |
DVD『いちばん暗いのは夜明け前』 |
海辺のメゾン204号室は邪気の集まる場所。この部屋を借りる若い女性達はみんななんらかの事件を起こし、変死者が続出していた。そんな因縁のある部屋を笑顔で借りる女、不破凡という若い女。彼女は60年前に壊滅させられた不破教団の教祖だった。そしてその姿は60年前と全く変わっていない・・・。不破教団は超能力を持った一族で人間ではなく悪魔族。人間界を滅ぼそうとする凡の姉・天が204号室を使って悪魔族を呼び寄せていたのだった・・・。
ホラーの名作『富江』の監督さんによるテレビドラマ・ホラーと言うことでかなり期待して観たのですが、怖さ的には今ひとつ・・・でした。残念。ソニン演じる不破凡の敵役のアイコ=熊田曜子の台詞の言い回しがどうも緊迫感に欠けていて。ソニンは良かったのだけどなぁ。基本的にまずは美人が好みなのですケレドモ、ソニンのようなタイプには何故だか惹かれます。肉体が美しいし、ちょいとコミカルで一生懸命さも滲んでるからかしら。内容をもっとホラー色濃くしてソニンを全面に出して欲しかった気がします。素材がいいだけにもったいない。
| 2006年09月26日(火) |
『空白の叫び』下 貫井徳郎 |
地獄のような少年院の毎日から卒院した3人の少年。葛城拓馬は親から与えられたマンションで静かに生きたいと望んでいた。久藤美也は家を出て自活するために金を貯える時期だと黙々とアルバイトに精を出していた。神原尚彦は叔母の住むマンションとは別のアパートを用意されていた。それぞれのカタチで生きていこうとする3人を周囲の色眼鏡は情け容赦なく、しかも粘着質な嫌がらせがはじまった。生き辛い3人は、再会し、破滅の道へと足を踏み出すのだった・・・。
14歳や15歳の子供が人を殺すと言う重い罪を背負い、家族をはじめ周囲から疎まれたら・・・どう生き直せると言うのでしょうか。更生するっていったいどういうことを言うのだろうと考え続けてしまいました。この物語の主人公の3人の少年を待ち受ける罰のカタチもそれぞれで、なんとも暗澹たる思いでいっぱい。こういう問題は考えても考えても答えが出てこない気がします。でも目を逸らしてはいけないのでしょうね。見て見ぬふりをしないで貫井さんのように真正面から考えて受け留めないと。
「それともうひとつ。私たちに詫びる気持ちがあるなら、その気持ちを大勢の人に伝えてください。特に、罪を犯しても反省することもできずにいる子どもたちに、今の気持ちを伝えてください。罪を犯すということがどういうことなのか、あなたは生きて、それをひとりでも多くの人に伝えなければならない。あなたがここにいるのも、英之が死んだのも、すべてそのためだったように今は思えます。あなたは自分の思いを語り続けなければならないー」
『空白の叫び』下 2006.9.20. 貫井徳郎 小学館
| 2006年09月25日(月) |
『空白の叫び』上 貫井徳郎 |
久藤美也(よしや)は名前が女の子のようだと小学時代に苛められていたが、中学になり力で周囲をねじ伏せるようになった。己の中に渦巻く瘴気に悶々とした日々を送る久藤の前に邪魔な女が現れた。葛城拓馬は頭脳明晰容姿端麗しかも裕福な家庭に生まれついたが、美意識と自制心で奢ることなくクールにそつなく毎日をやり過ごしていた。ただひとつの問題は自分の心を乱す不愉快で愚鈍な幼馴染の存在だった。神原尚彦は母に見捨てられ、祖母と叔母に育てられた。神原に優しい叔母だったが、神原の母である姉には激しい嫉妬と怨みを持っていた。3人の14歳の少年はそれぞれの毎日の中でトンデモナイ事件を起こし、少年院という地獄で出会ったのだった・・・
うーん、恐ろしい。こういう内容を情け容赦なく差し出す貫井徳郎さんの精神力がとてつもなく恐ろしいと感じました。すごい作家さんだなぁ。素晴らしい。14歳という年齢は儚くて揺れ動いていて、間違えば3人が陥ったような地獄へ落ちていく・・・。まだ幼い彼らは人生をやり直す事ができるのだろうか。一度大きな間違いを起こした人間に世間は情け容赦ないから。どうしても色眼鏡をはずせない。また何かしでかすのではないかと言う恐怖を持って接してしまう。間違いを起こした少年達の心が丁寧に克明に綴られた上巻。下巻で彼らに救いはあるのかしら。
なぜなら、言葉のやり取りとは心と心の接触だからだ。言葉が通じない相手と接すると、心が傷つく。痛みに悲鳴を上げる。それは皮膚を直接鑢で擦る痛みと、なんら変わりがない。
『空白の叫び』上 2006.9.20. 貫井徳郎 小学館
| 2006年09月22日(金) |
鳥取県境港市 水木しげるロード |
山陰へドライブに行き、念願の水木しげるロードを散策して参りました。運のいいことに天気に恵まれ、晴れ渡る美しい青空と港町ならではの海風に吹かれ、トテモ気持ちのよい散策が出来ました。鬼太郎駅(JR境港駅)近くのパーキングは、最初の30分無料と言う考えられないサービスっぷりにビックリ。驚いたまま境港交番を通り過ぎると鬼太郎交番と言うネーミングになっていて笑えました。まさに境港市は町をあげての鬼太郎フィーバー!(古いな) さて、境港駅前では執筆中の水木しげる先生を目玉おやじと鬼太郎とねずみ男が見守るブロンズ像がお出迎え。このブロンズ像の出来の良さは想像以上でした。水木しげる先生が御自身の『日本妖怪大全』から選びだし、妖怪デッサンも手がけられ、それをもとに作成された119体(2006年現在)とのことで、生き生きとした妖怪たちの姿に納得なのであります。全長800メートルのロードには妖怪たちがいっぱいで見ごたえ有りでした。 ただ、個人的に残念だと感じたのは喫茶店や食べ物屋さんに魅力がなさすぎたことでした。入りたいと思えたのは鬼太郎たちをパンにしている神戸パンさん一軒だけ。これでは休日に観光客がたくさん来た時に目では満腹できても実際のお腹はぺこぺこだろうなぁと思うのです。妖怪喫茶とかアイデアしだいで名物飲食店がいくらでも流行るでしょうに。その点を改善してもらえたら、何度でも妖怪たちに会いに行きたい町になること間違いなし!と思ったのでありました。
勝又真吾は深夜放送の人気パーソナリティ。局移転に伴い、ある深夜開局当時に使用していた地下にあるブースから放送することになり、ゴネる真吾。軽妙な語り口で人気の真吾だったが、実際は傲慢でいやな男だった。番組放送中にリスナーからの相談電話を受けるコーナーのテーマは【許せない一言】、最初にかかってきた電話は12歳の少女“ばけみ”ちゃん。彼女の悩みを聞いている時、キーキーという耳障りなノイズが入り、「ウソツキ・・・」という女の声が混じる。そこからどんどんと始まる奇妙な世界。真吾は自分の過去に自ら復讐されるかのようだった・・・!?
主演の佐藤隆太くんは脇でいい味を出す若手俳優さんとして気に入っていました。この映画で今までの飄々とした温かいキャラではなく、傲慢でいい加減な男をそれはウマク演じてらっしゃいます。ホントやな奴なの、勝又真吾って。映画のプロローグは白黒の昔の映像。開局当時のブースでDJが電話相談の女性に意見をしていたら彼女は昔に自分が心中騒動を起こし彼女だけ死んだ・・・はずの女からで・・・と言うなかなか不気味に観客の心をぎゅうっと鷲づかみ。そんないわくありのブースで深夜放送をする羽目になった真吾は、捨てた女や言葉で苛めた同僚や過去の数々の所業から復讐される・・・それをリアル・タイムと真吾の回想と真吾の疑心暗鬼が絡み合って奇妙な世界を生み出しています。ほぼブースの中での一人芝居に近いもので佐藤隆太くん頑張ったなぁって感じでした。勝又真吾が放送中に何げなくもらした「いやぁ言葉って本当に怖い」という本当の意味を真吾は自分の身を持って知るのでありました。
| 2006年09月20日(水) |
『ジウ�掘/契こγ畚�【NWO】』 誉田哲也 |
門倉美咲は東主任に胸キュンしつつ、必死でジウを追跡していた。伊崎基子はミヤジによって自分の中に眠る殺戮の本能を見せ付けられへろへろになっているところを美咲に保護される。そしてまたもやSATへ復帰命令がくだる。そんな折、街頭演説中の総理大臣が拉致され、クーデター勃発。歌舞伎町を封鎖したミヤジとジウの望んだものはいったい何だったのか・・・!?
うーん、なんとも後味の悪い展開となってしまいました。�気鉢兇�好みだっただけに、この�靴陵遒箸形阿良佞永�にはちょっとがっくり。ジウをクローズアップしてくれなかったので欲求不満が残っちゃいましたぁ。ぶぅぶぅぶぅ。ジウとミヤジの「己は何者か?」と言う痛いほどの疑問や欲求に関しては言葉が無く、・・・だからってこんなことしていい訳じゃないですけどね、モチロン。家族がいて愛があれば・・・ってことなのかしら。基子もこの度は少々気の毒な展開が待ち受けていました。ただ基子が毛嫌いしていた可愛いコちゃんの美咲が根性あるところを見せてくれて基子を救おうと頑張ってくれて良かったです。おかげで基子にはまだ人間に戻れる道が残りました。美咲のように芯にキチンとした核を持っていたら人間は強くあれるものですね。ぶりぶりした可愛いコちゃんタイプではなかった美咲の存在が物語を救ってました。最初は美咲のことを基子同様あんまり好きじゃなかったのですケレドモ、最後には「よく頑張ったね」って褒めてあげたい気持ちになりました。でもやはりジウのことをもっともっと書き込んで欲しかったです。ちぇー。
『ジウ�掘/契こγ畚�【NWO】』 2006.8.25. 誉田哲也 中央公論新社
| 2006年09月18日(月) |
『京都祇園迷宮事件』 海月ルイ |
夏目潤子はフリーライター。《祇園えとせとら》と言うコラムを書くために京都祇園の老舗お茶屋“北尾”に住み込みをさせてもらっている。世界中から観光客が訪れる古都京都。その中でも祇園のしきたりは独特でとまどうばかり。女将の喬子が力を入れて育てている舞妓・美代鶴のお店だしが近づく気ぜわしいある日、“北尾”に来ていたお客のひとりが惨殺された。そして連鎖していく殺人事件。“北尾”に遊びに来て品のない騒ぎ方をしていたお客が次々と殺されていく訳とはいったい・・・!?
京都を舞台にした殺人事件のいかに多いことか(笑)。そしてついつい惹かれてまんまと読んでしまうミーハーな読者な私(大笑)。観光地で起こる殺人事件ってその場所になんらかの思い入れがあると手に取ってしまいがち。そうしてみると観光場所ナンバー1の京都が舞台になるって当然の帰結ですね。海月ルイさんは京都のお生まれだそうで上っ面でない舞台となっていました。軽くなかったですね。祇園という摩訶不思議な世界を舞台にうまく殺人事件を起こされていた(苦笑)と思います。つるりと読むにはいいですねv
『京都祇園迷宮事件』 2006.8.31. 海月ルイ 徳間書店
| 2006年09月17日(日) |
『ボトルネック』 米澤穂信 |
嵯峨野リョウは2年前に死んだ諏訪ノゾミを弔うために事故現場の東尋坊に来ていた。2年経ってやっと現場に訪れる事が出来たリョウだったが、間が悪いことに母から兄の死を知らされる。容赦のない母の言葉によって家に急いで戻らなければならくなったリョウを海風がびょうびょうと吹きつけ、「おいで、嵯峨野くん」と言う声が聞こえた気がした。強い眩暈の後、気がついたリョウが家に戻ると鍵が合わない・・・。そして家の中からいるべきはずのない姉サキが出てきた!? リョウは東尋坊で強風に吹かれ眩暈がした後、違う世界に迷い込んでしまったらしい。その世界では死んだはずの人が生きていて・・・!?
酷い。酷すぎる・・・ブルブル、と読みきって震えがきてしまいました。でもその酷すぎるブルブルな感想というのは私の感性から言うと最高級にブラボーってことであります。残酷で容赦のない展開とエンディングにやられまくって快感でありました。でも心に痛いのが苦手な方にはオススメできませんね。私のように痛い系ダイスキ人間をしても「痛い〜っ!」と叫びだしてしまいましたもの。リョウの人間性や考え方に問題がおおいにあるにしても・・・母親が酷い。たぶん父親も。リョウの閉塞的な思考回路の痛ましさとサキの解放された脳天気な明るさの対比になにかと思うことが多かったです。そして伏兵と言うべき悪の存在が光りました。こういう悪の塊って存在しそうですものねぇ。
「そりゃ、あいつの性根がぐにゃんぐにゃんに歪んでいるから」
『ボトルネック』 2006.8.30. 米澤穂信 新潮社
| 2006年09月16日(土) |
『銀の砂』 柴田よしき |
珠美は豪徳寺ふじ子が入院している病院へ駆けつける。一世を風靡した女流作家ふじ子は51歳。珠美が秘書をしていた頃と変わらず妊娠しては流産を繰り返しているのだ。ふじ子に焦がれ、妬み、苦しみ、やっと離れた珠美だったのに、またしてもふじ子の妖しい魅力に取り込まれてしまうのか・・・?
最近、柴田よしきさんの物語を読めていないなぁと渇望していたところへ『銀の砂』が発売され狂喜乱舞しました。どうしたってかなり好きな作家さんの物語と言うものは麻薬みたいな(や、麻薬を体験したわけではないのですケレドモ)もので切れるとダメー。そしてガがガガッと貪るように読んで、内容のあまりのエグさにやられてしまう、と言うジャンキーの正しい姿ですね(苦笑)。ここまで女の汚さを描ききられてはシャッポを脱ぎまくりますよぅ。汚らしくも魅力的な女王ふじ子。その哀しい過去にはなんとも言えず・・・。嫁と姑の確執なんてものは、体験した者には(もしくは現在進行形で体験している者には)殺意すら覚えるんじゃないかしらん。くだらないことなのに無くならない関係ですよね。やだやだ。ふじ子の魔性に絡め囚われ、使い捨てられる人たちの中で珠美だけはスペシャルだったのだなぁ・・・と思いました。珠美がふじ子に惹かれる気持ちは痛いほどわかるし。心にズキズキ痛くてたまらないのに読まずにはいられない、そんな柴田よしきさんならではの圧巻の物語でありました。感服つかまつった。
「とても傲慢な考え方でしょうね。・・・・・・読み手は、書き手が何をどう書こうと、発表された作品を自由に読み、どんなふうにも想像をめぐらせる権利はあるわ。でもね、書き手が、本当は何を思っていたのか、それだけは、読み手には永遠にわからない。想像し、分析し、ああだこうだと結論づけることはできても、それが真実なのかどうかは、決してわからない。わかってはいけない。そういうものじゃないのかな・・・・・・だって、もしそれを知ってしまったら、小説の解釈はただひとつに収束してしまう。他の読み方はゆるされなくなってしまう。あなたのしようとしていることは、強盗みたいなものなのよ。小説を離れたところで、生身の書き手をこうして脅して、その真実を知ろうとするなんて、ね」
『銀の砂』 2006.8.25. 柴田よしき 光文社
新宿のストリートギャング・亞宮柾人は、政治・思想犯専用特別収容所K7号施設に収監される。そこは囚人を生徒と呼び、生徒たちの自主性に重きを置いていて、刑務所と言うより寄宿制の学校みたいだった。さまざまな思想犯たちと関わりあい、成り行きから妙な事件を解決するうちに亞宮柾人は日比谷暴動のカリスマ宇賀神と言う男の存在を知り、興味を覚える。その日比谷暴動で宇賀神に敗北した北と言う男がK7号の所長であり、北は日比谷暴動の真相を知りたがっている・・・? 思想犯でもないストリートギャングの亞宮柾人がK7号に収監された訳とはいったい・・・?
こういうテイストの物語は苦手な部類なのですケレドモ、『エデン』はトテモ面白かったです。やはり小難しい自分の正義・思想・信念で凝り固まった人間たちの中に毛色の変わったやんちゃボーイが旋風を巻き起こす。妙な事件も要領よく片付けていき、まさにカリスマ宇賀神の再来?と言ったところ。魅力のアル人間と言うものは存在自体がカリスマなのですねぇ。
「思い込むことで、不安に打ち勝っていけるんだ。ところが、お前にはそういうものがぜんぜんない。不安にならないのか?」 「なるか。アホくさ」 亞宮は吐き捨てた。「生きるための目標だとか意味だとか、そんな温いこと言ってるから、頭がおかしくなるんだよ」
『エデン』 2006.8.10. 五條瑛 文藝春秋
| 2006年09月14日(木) |
映画『X−MENファイナルディシジョン』 |
テレビで2週続けて観た『X−MEN』がことのほか面白かったので最終章を映画館まで観にいって参りました。突然変異で人間が持ち得ない力を持ったミュータントたちの苦悩が心に痛々しくて。恋するミュータントは自分の力ゆえに愛する人と接触するだけで生気全てを吸い取ってしまう。愛すれば愛するほど求めるのに触れることすらカナワナイ・・・まさに蛇の生殺し状態。そんな少女の前にミュータント・パワーを消し去る特効薬“キュア”が差し出された・・・さて彼女はどうするのでしょう。また強く美しいミュータントは自分はどこも悪い訳ではないから薬など不要と言い切る。これはこれで感嘆すると言うか、なかなかそこまでにはなれない気がしました。そして死んだはずの人間が・・・だったりしたら、その人を愛して不在に嘆き狂いかねなかった人たちがまたまた大変で。うーん。もともとコミックでもそういうカタチだったらしいから。でもあのラストはあれしかないよねぇ。ここで終わりと言うのは酷なのであります。あ、映画をこれから観に行かれる方はエンドロールの最後の最後まで席を立たないようになさってください。
| 2006年09月12日(火) |
新装版『氷の森』 大沢在昌 |
緒方は行方不明の少女を探す調査において、次々と関係者が死んでいくと言う妙な事件に巻き込まれる。その事件の真相を探りつつ、ある男から事故死した恋人の過去を調べて欲しいと言う依頼を受ける。ふたつの事件を調べていくうちにトンデモナイ怪物を炙り出してしまう。しかも無関係だったはずの事件がクロスしたのだった・・・!?
10年間も売れない時代が続いた大沢親分が『新宿鮫』でブレイクする直前の物語です。親分ご自身は売れなかった10年間の集大成とおっしゃっていて、確かに大沢親分の原点を読む気がしました。しかしながら、『新宿鮫』シリーズや『佐久間公』シリーズのようなスタイリッシュさはありませんねぇ。どろ臭くて爆発寸前のマグマがぐつぐつ煮詰まっているような暑苦しさ(笑)。でもそこが大沢親分の持ち味の根っ子なのかもしれないなぁと思いました。残念なことは物語でモンスターがナマで登場しないこと。これはもったいなかったですね。どこかで登場させてその異常性を見せて欲しかった。その方が臨場感高まった気がするのですケレドモどうでしょう。とは言っても、どんなに暑苦しく泥臭くても面白い事に変わりはアリマセン。あ、ただ、主人公が女にフラフラしすぎ! あれは駄目。よろめいても一人にしときまひょ。
『氷の森』 2006.8.11. 大沢在昌 講談社文庫
| 2006年09月11日(月) |
『ぼくだけの☆アイドル』 新堂冬樹 |
生白い肌でぽっこりお腹のあきおくんは27歳。昆虫ショップで働きながら、ダイスキなみーちゅんに純愛を注いでいる。みーちゅんはアイドルだ。だけど僕が会いに行くと僕にだけわかるサインを送ってくれるんだ・・・
・・・なんと申し上げてよいのやら(苦笑)。あきおくんはアイドルに真剣ラブ。まぁ幾つであろうとそれは自由なのかもしれない。でもご都合主義な脳内妄想は危なすぎると思うのですケレドモ・・・。リアルでない存在にそこまで思い入れを持てないので読んでいてあきおくんの必死さがすごく異質でありました。こういうのは引いてしまいます・・・。
『ぼくだけの☆アイドル』 2006.8.25. 新堂冬樹 光文社
| 2006年09月10日(日) |
『光降る精霊の森』 藤原瑞記 |
故郷から逃げて森番をしているエリは、行き倒れの少女を助ける。その少女、普通の人間には透けて見える・・・どうやら半妖精らしい。少女・ファティの側にいる喋る黒猫ゼッテは毒舌でエリを翻弄する。ゼッテに翻弄されまくり、何故だか鷹の女王を訪ねる旅に同行する羽目になるエリ。そしてエリは逃げてきた過去と対峙することとなる・・・
ああ、いいですーv ファンタジーはこうでなきゃぁ! 不思議なキャラクター(登場人物とは言えない)たちがいっぱい。放浪癖のある鷹の女王がお気に入りです。いい味だしてるー。その女王の僕で苦労させられてるワートワーズも素敵。少女ファティの旅とエリの旅が連れてくる真実と結末。美しいことばかりじゃない真実を受け入れられた時に中途半端だったエリが最高にイイ男になっちゃいます。うふ。第1回C★NOVELS大賞受賞作と言うことで読んでみました。秋の入り口にファンタジーって合うみたいです。
「ファティ、心細いのはわかるがお前がしっかり目を開けていないと、見つかるものも見逃してしまうぞ。ゼッテの方はあたしが手を貸せるが、エリを見つけるのはお前の役目だ。まだ、何か悪いことが起きたと決まったわけじゃない。落ち込むのは、結果を見てからでも遅くはないだろう」
『光降る精霊の森』 2005.7.25. 藤原瑞記 中央公論社
| 2006年09月09日(土) |
『なぜ紫の夜明けに』 吉村達也 |
17歳の時に僕は自殺しようとして生き長らえた。その時に記憶の一部が消えてしまい、必死に新しい人生を生きてきた。あれから10年、いい会社で働き、美しい恋人と結婚間近な僕は至福の中にいたはずだ。なのに僕は謎の美女マリアの後を付回し、事件に巻き込まれ・・・そして10年前に失った記憶が蠢き始める・・・!?
吉村達也さんの物語は読みやすいのでつるりと読めてしまいます。でも今回の物語はホラーなのか恋愛ものなのかサスペンスなのか・・・最後の最後まで落とし所の見当がつきませんでした。こう落としましたか。うーん(不満)。僕が選んだケジメの付けかたは私は認められない。それはないだろう、と思いました。結局どこまでいっても自分に甘いんじゃないかしらん。昔の彼女、婚約者、謎の美女と3人の女に愛されるほどの魅力を感じなかったのも残念なのでありました。こういう男にそこまで入れ込める3人の美女の感性がわからなーい。
もしもそうだとしたら、自分が過去にやったことの報いが、いまになって痛烈な形で返ってきているとしか言いようがなかった。
『なぜ紫の夜明けに』 2006.8.25. 吉村達也 双葉社
| 2006年09月08日(金) |
『ビア・ボーイ』 吉村喜彦 |
スターライト(ビールやウイスキー会社)に入社して5年、上杉は宣伝部にいた。スターライトは宣伝に莫大な金を注ぎこむ戦略を取っていたため、上杉は好き勝手に仕事をし、そこそこに評価され、若くして天狗になっていた。酒に呑まれて手を出してはいけない女に手をだして、いきなり田舎へ左遷され、営業をやらされることとなってしまう。田舎町で灰汁の強い人間たちに揉まれながら、またまた酒で失敗をしながら、少しずつ営業力を身に付けて行く。腐敗した会社の内部にもメスを入れ、ビール戦争にも勝とうと奮闘する上杉は、いっぱしの営業マンに成長したのだった・・・。
これはもう本当に大穴大当たりで無茶苦茶面白かったです。作者がサントリーの宣伝部にいた方なのでトッテモリ・ア・ルv ライバル会社のライオン(笑)との攻防戦は実際にそうだったのだろうなぁと思わされました。松田聖子さんの歌声でペンギンちゃんが登場したCMらしきことも描かれていて、ああこんなふうにアノCMは生まれたのかって新鮮に驚きました。あと田舎町イコール広島なのですケレドモ、ここの人々がまぁくどくて最高のキャラ揃い。主人公は人に育てられていっぱしの営業マンに成長できたって感じでした。会社の腐敗をも炙りだす爽快さ。一冊にいろんなものが詰まっていて、だからって重くなくって、喉越しさらりと後で苦い物語。秀逸。オススメ。大絶賛!
酒はドラッグや。一種の麻薬なんや。 最初は陽気にやってきて、ちょっとした心の隙にするっと入り込む。それから身も心もどんどん絡め取っていく。 でも酒は悪ない。飲んでる本人が悪いんや。そこに酒があると、つい飲んでしまうのは人間や。 身体の疲れには甘いもの、心の疲れにはアルコールが効く。大人になると、誰しも心が疲れる。たましいが疲れる。アルコールは大切な薬になってくれる。それも確かなことや。 要は加減の問題や。プラスとマイナス。その加減をとるのが、人間は下手くそなんや。
『ビア・ボーイ』 2006.7.20. 吉村喜彦 新潮社
| 2006年09月07日(木) |
『行方不明者』 折原一 |
埼玉県蓮田市で摩訶不思議な神隠しが起こった。一家四人がある朝忽然と姿を消したのだ。五十嵐みどりは取材を通して一家の姿を浮き彫りにさせようとする。また都内では売れない小説家の「僕」が痴漢に間違えられ、その相手が連続通り魔犯と知り、小説のネタに犯人を追いかける。ふたつの事件が交互に語られて・・・
うーん、さすがの折原マジック! またもやしっかりやられてしまいました。相変わらず幻惑されてしまうなぁ。折原さんの手口(笑)は語りと時差だとわかっているのに・・・それでも読んでいるうちに折原迷宮に迷い込み、そうなるともうお手上げです。あれよ、あれよと騙されてしまうのでありました。まぁ、そこが魅了vなのですケレドモ。ちょっとしたホラー落ちもグーv
君は二つの顔を持っているんだね。
『行方不明者』 2006.8.5. 折原一 文藝春秋
| 2006年09月06日(水) |
『赤い指』 東野圭吾 |
松宮脩平は、恩がある伯父を見舞っていた。容態の良くない伯父を見舞う事をしない息子の加賀恭に不信感を抱く。しかし、伯父は脩平の仕事を気遣い、自分は看護士相手に将棋をしているからだいじょうぶと強がる。父とも慕う伯父の後を追い、刑事になった脩平は新しい事件で恭さんと組むことになる。恭さんもまた刑事で有能だった。ふたりが関わった事件は幼い少女殺人事件だった。事件の背後にある哀しい真実、そして死に行く伯父と恭さんの真実とは・・・!?
やられました。完敗です。いやはや東野圭吾に敵無しっ! 今回の物語ですごいと思ったのは主要人物のそれぞれの家族模様でした。これが巧妙に織り込まれていて、最後の最後まで柄が見えなかったです。タイトルの意味の奥深さには唸りました。幼い少女を殺した犯人を庇おうとする愚かな親心。でもそれって結局は子供のためと言うよりは自分のためなのではないかなぁと感じました。そして子供の人格を形成する要素に家庭が両親が家族が大きく大きく影響する事は間違いないですね。なんとも痛ましい物語でありましたが、ラストの厳しさ美しさには救われた心持がしました。なんにしても東野圭吾はスゴイ。やはり賞を取るべくして取った作家さんですよね。惚れ惚れ。
「どういうふうに死を迎えるかは、どう生きてきたかによって決まる。あの人がそういう死に方をするとしたら、それはすべてあの人の生き様がそうだったから、としかいえない」
『赤い指』 2006.7.25. 東野圭吾 講談社
| 2006年09月05日(火) |
『ありふれた風景画』 あさのあつこ |
高遠琉璃は高校2年生。3歳年上の姉・綺羅はモデル並みの美女で自分磨きに余念が無い。でも琉璃は爪の手入れをするだけ。琉璃は過去に付き合った男たちからウリをやっていると噂される。真実ではない噂を信じる周囲から孤立する琉璃。ある日、琉璃に彼氏を取られたと勘違いした上級生に呼び出された屋上で、綾目周子と言う神秘的な美少女に救われる。烏と意思疎通ができる不思議な周子に琉璃は惹かれ、そして・・・
『バッテリー』では少年と少年の心の触れ合いを描いたあさのあつこさんが、今回は少女と少女の心の触れ合いを描かれました。・・・心の触れ合いと言っていいのかどうか疑問ではあるケレドモ。登場人物のほとんどが女性で、一番興味深かったのは、琉璃と綺羅と言う美少女姉妹の母親です。父親が他の女の元へ走っているため、壊れかけていて過食症になり、娘に執着しているのですね。なんだか痛い母親で、美しい姉の綺羅の苦悩がわかる気がしました。琉璃は、まだ子供だったから姉や母の苦悩には無頓着で目の前の自分の悩みにしか目がいかなかったことに気づく。そのことに関する姉と妹の会話がトテモ良かったです。琉璃と周子の関係よりも綺羅と琉璃の関係の方が好きかもしれないなぁ。
「太りすぎに決まってんじゃん。そんなに、ぶくぶくになったら、心臓も腰もどうにかなっちゃうの当たり前でしょ。一日中ぶつぶつ言ってるヒマがあるんだったら、もうちょっとしっかり考えて、ダイエットでもしなさいよ」
『ありふれた風景画』 2006.8.10. あさのあつこ 文藝春秋
| 2006年09月04日(月) |
『駐在刑事』 笹本稜平 |
この女は犯人ではないのではないか・・・そう思いながら取り調べていた女が目の前で服毒自殺した。上層部の意向に従っただけだったのに、警視庁捜査一課から青梅警察署水根駐在所所長へ左遷されてしまった江波淳史。自然と人々との触れ合いの中で江波は再生していく・・・
素晴らしいv アクションだけの冒険小説ではなく、自然と融合した警察小説でありました。生き馬の目を射抜くような警視庁捜査一課から、自然に恵まれた駐在所に左遷された男が、後悔や出世欲と葛藤しながら、人として警察官として美しく逞しく生き直す姿が本当に素敵でした。爽やかだったなぁ。主人公が山歩きをする姿が羨ましくって。こういう生活に憧れますねぇ。人が人として美しく生きていけそうなきがするもの。シリーズ化希望。
『駐在刑事』 2006.7.27. 笹本稜平 講談社
| 2006年09月03日(日) |
『クライム』 樋口明雄 |
南アルプスを舞台にはみだし刑事の尾方、元台湾マフィアの功刀、台湾マフィアの殺し屋の揚烈輝と言う灰汁の強い三人の男が繰り広げる20億円争奪戦!
・・・くらいにしか粗筋を書けません。とほほ。分厚いし、激しい展開なのでありますが、ぶっちゃけ20億を雪山で探し歩き、殺しあって奪い合う、みたいな(苦笑)もんなんだもの。ふふふ。メインの三人の男たちがそれぞれに重い人生を背負っていて、そこは考えさせられました。台湾とか中国とか、日本との関係性をかなり書かれていてトテモ重苦しいです。でもそういうのを知っておかないといけない気がしますね・・・。日本って混沌とした人種の坩堝となっていってるんだろうなぁ。過去に起こったことで現代でも国と国がいがみ合うってキツイことだなぁ。どうすればいいんだろう。差別はどこまでいってもなくならないものなのかなぁ。ものすごい展開の最後にくるラスト・シーンは・・・泣かせるぜ。ちぇ、男と男ってやつは卑怯だよなぁ。いいなぁ。美しいなぁ。
「わけありか」 「莫迦野郎。わけのねえ人生なんぞあるのかよ」
『クライム』 2006.8.8. 樋口明雄 角川春樹事務所
| 2006年09月02日(土) |
『クラック・ハウンド 聖人の条件』 榊一郎 |
人里離れた山中で私立氷羅坂病院が炎上。燃え盛る炎の中でひとりの女の股からでろでろと生れ落ちる異形・・・。数年後、セイントと言う薬物が密やかに流通し、常用者による異常犯罪が多発する。犯人達はなにがあっても聖人のごとくアルカイックスマイルを浮かべて残虐な行為を繰り返す。異常な犯罪者を狩るべく公安委員会直属非公開特務機関から解き放たれたコードネーム【クラックハウンド】! 猟犬と呼ばれる橘北斗と柘植克美のふたりには特殊な力が秘められていた・・・
いろんなところで「面白い」と目にする作家さんの榊一郎さんモノをハジメテ読んでみました。若い世代に受ける要素と言うのは劇画(マンガ)的であると言うことなのかもしれませんね。そのハード&エロ&ホラーなどがてんこ盛り盛りっ。読んでいる内容が映像として浮かぶあたり、うまいのだろうなぁと思います。しかしながら如何せん内容がどうにもこうにも・・・なんと言っていいのやら。面白いには違いないのだケレドモ・・・内容の割には軽いと言うか・・・うーん。こういうのを読むと読めるしツルっといけちゃうケレドモ、なんだか年取っちゃったなぁって思ってしまいます。西尾維新だって嵌りはしなかったしなぁ。老兵去るのみなのだろうか。ぐぬぅ。
『クラック・ハウンド 聖人の条件』 2005.4.30. 榊一郎 徳間書店
| 2006年09月01日(金) |
『ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録』 九条菜月 |
1900年、ドイツ帝国。急速に発展する人間社会に置いて人ならざるものたちは居場所を失いつつあった。ジョン・スミスは、人ならざるものたちの保護と生活の手助けのためにオルデンベルク探偵事務所を創立した。ジークベルト・スミスはジョンに命を救われ、探偵事務所で働いていた。長い調査を終えて事務所に戻ったジークは警備員のモーリッツに怪しまれるわ、現在の事務所所長アルの新しい秘書マーリエの厳しさに慄くわ、しまいには人狼の子どもエルの世話を押し付けられてしまう。エルを守りながら、アルの指令をこなすジークは事件の背後の組織がエルを狙っている事を知る。ジークはエルを守ることができるのか・・・!?
第2回C★NOVELS大賞特別賞受賞作です。この物語はものすごく魅力的な人ならざるものたちが続々と登場してきて、裏切りやどんでん返しが嬉しい御機嫌な展開でわくわくさせていただきました。なんだか外国のドラマを見ているようでしたよ。おそらくシリーズとして続くと思うのですケレドモ(おおいなる願望)、今回ちらりとしか登場できていないキャラクターにスポットを当ててくれるのじゃないかしらん。それを楽しみに待ちたいですv 個人的にはかなり好みでトッテモおすすめ。
失ったものは大きい。 けれど、この腕の中の温もりのように、失わずに済んだものもある。 だから、感謝したい。 神でも、誰にでもなく。 ただ、生きている、この瞬間こそを。
『ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録』 2006.7.25. 九条菜月 中央公論新社
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