酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
冬至の夜に漂泊の語り部達が集まって物語を語るー煌夜祭。冬至の日に魔物となった者が人間を喰らいたいと言う欲望から気を逸らすことが出来る唯一の方法が夜が明けるまで物語を聞かせると言うことだったのだ。ふたりの語り部がふたりだけで語り合いはじめる。哀しい恐ろしい闇の物語を・・・
仮面をつけた語り部ふたりが、魔物の物語を語り合う。そのひとつひとつの物語が最後に織り成す真実とは・・・と言う洒落た手法で面白かったです。うん。これって確かにもの悲しいファンタジーですね。語り部の正体までも物語に織り込まれていて最後のほうは読んでいて気分がかなり緊迫しました。
『煌夜祭』 2006.7.25. 多崎礼 中央公論新社
| 2006年08月30日(水) |
『見えない貌』 夏樹静子 |
朔子は、嫁いだ愛娘ハコからの携帯へのメールを楽しみに生きていた。夫は病死し、ハコを育て上げた朔子にとってハコの存在は生きがいだった。そのハコからのメールが途絶え、ハコが消息不明となってしまったことから、朔子の人生の歯車が狂いはじめる。ハコは携帯電話で出会い系にはまり、メル友に会いに行って消えてしまったことが判明する。そして見つかったハコの変わり果てた姿に朔子は・・・
久しぶりに読んだ夏樹静子さんの物語でありましたが、うーん、なんと申しましょうか、お上品で知性あふるる夏樹さんってのが災いとなり、物語がアッサリ流れてしまった感があります。こうもっとドロドロとギトギトとしてたら面白いだろうになぁとトッテモ残念。物語の前半は愛娘が出会い系にはまったことから命を落とした母の怒りと慟哭と復讐の物語で、後半はいきなり法廷ものに変化してしまうという、ちょっと唐突な感じがしました。主人公が物語の半ばで消えてしまうと言うのはどうなのかしら。むー。前半分の物語は非常に興味深いものでありました。正直言って出会い系などというものにはまる感覚が全く理解できなかったのですケレドモ、読んでいるうちに嵌った気持ちがわかった気がしました。寂しさの行方なのですよね・・・。人は寂しいと人恋しいから・・・誰かと何かで繋がりたいんだよね。なんだかしんみりしてしまいました。その娘を失った母親の慟哭と凶気もわからないではなかったです。物語の落ちいく先もナントなしに見えました。親が子を思えばこその物語で悲劇で・・・なんだか哀しかったなぁ。そして現実でも多くの悲劇が毎日毎日起こってて、物語も現実も悲劇でいっぱい。いつからこんなことになってしまったのかなぁ、ナンテなんとも虚しい想いに包まれたことでありました。
『見えない貌』 2006.7.25. 夏樹静子 光文社
| 2006年08月28日(月) |
『グイン・サーガ109 豹頭王の挑戦』 栗本薫 |
失われた記憶を取り戻すためにグインはリンダに会うべくパロに向っている。その豹頭と抜きん出た体躯ゆえにどうしても人目についてしまうグイン。グインと共に旅をするマリウスは木は森に隠せばいい!と発想の転換でグインを豹頭王の偽者ソックリさんとして一座の花形に据えて興行をうつことにしたのだ。マリウスの狙いはまんまと当たり、グイン一座は人気を博すのだった・・・。
え、えーっと、困ったな。栗本親分、これはないぜーっ!(叫)・・・と言う反応はどうやら覚悟の上らしいのですケレドモ(大笑)。なんでまた天下の豹頭王グインさまを旅の一座のの役者にしちゃうんだよう。本当に親分らしい展開で、なんと言うか「おいおい勘弁してくれよ」と(苦笑)。親分が舞台ダイスキでご自分でも主催されているから、こういう流れは想像つきますし、「やっちゃったなぁ」って苦笑交じりに読むこともできますよ。そりゃあね。相手が栗本親分だから。それに長い長い物語で主人公であるグインが何巻にも渡って登場しなかったことだってあったし。こうなるともう親分のお気の向くまま好きなように書いていただいて、読者はひたすら待つしかないのでしょうねぇ。こんな座興やってないで物語を進めておくれよー。こういうのは番外編でやりましょうよー。親分さんってばよー。お願いだからー。それでもしばらくは旅の一座編らしいです。あーあっと。
ただまあ、何を幸せと思い、何を不幸せと思うかはひとそれぞれというものだからな。
『グイン・サーガ109 豹頭王の挑戦』 2006.8.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫
| 2006年08月27日(日) |
DVD『BEETLE JUICE』 |
新婚ほやほやでスィートホームの手入れに余念のないアダムとバーバラは、事故でいきなり死んでしまう。新人死人となった二人は、我が家が人の手に渡りそうになり、阻止するべく奮闘。やってきた家族の娘リディア以外は二人の存在を全く感じない。なんとか人間を追い出したい二人は、霊界のなんでも屋ビートル・ジュースの手を借りようとしてみたが・・・!?
うふふ。鬼才ティム・バートンが、ジョニーの前にお気に入りだったのがマイケル・キートンなのですね。ビートル・ジュース役のマイケル・キートンの変っぷりったら、ジョニーの敵う相手じゃありません。ジョニーはあんなにお品が悪くナンテなれないもの。でも、ジョニーでビートル・ジュースも見てみたいかも。ハロウィンとか、異世界のお祭りものにことのほか心惹かれるので、このビートル・ジュースがUSJでショウをやってるのを見た時には本当に嬉しかったです。昔馴染みに会えた気分でv USJでは、あまり映画とは関係ありませんが、ビートル・ジュースの性格だけはキッチリ反映されています。そして、同じティム・バートンのジャックはディズニーにいると言う。ハロウィンと言えばティム・バートンって感じですネ。あ、そろそろハロウィンの季節がやってくる! 行きたいなぁ、USJ。
| 2006年08月26日(土) |
DVD『Stand by Me』 |
あの12歳の夏、ゴーディはオレゴンの小さな町で仲間たちと冒険をした。行方不明になった少年の死体を捜しに。4人の少年は期待と不安で興奮しながら、時に仲違いをしながら、忘れえぬ夏を過ごしたのだった・・・。
ああっ、もうメロメロです。何度観ても泣ける。Stand by Me の音楽が効果的で懐かしくて哀愁あふれて胸がいっぱいになってしまいます。少年たちが冒険をして少し大人になる・・・ただそれだけの物語がどうしてこんなに胸に迫り来るのでしょうか。忘れたくないものをソコに見るからでしょうか。こういう想い出を心の奥深くにしまい、人は生きて行くのでしょうね。時折、取り出して懐かしみながら。
| 2006年08月24日(木) |
『愛されてもひとり』 新津きよみ |
定年を機に夢を叶えて安曇野に移り住んだ夫と絹子。なんでも出来る優しい夫にベッタリ依存して生きていた絹子だったが、ある朝、夫が脳梗塞で急死。途方にくれる絹子に息子夫婦が同居を申し込んでくる。息子の嫁と全く合わない絹子は、自立する道を選ぶ。ひとりで生きる楽しさと不安を噛み締めながら、絹子は自分の心で足で生きはじめるのだった・・・。
60過ぎで初めてひとりで生きていこうとする、なかなか健気な物語でありました。どちらかと言うと苦労知らずのおっとりした奥様だった絹子が割合に根性を見せるあたり小気味良かったですv なぜならば、息子の嫁がものすごく感じ悪いから!(怒) この嫁、なにもかも自分を軸にしか考えられない超自己中x キャリアウーマンだケレドモ子どもは欲しいし、産んでも仕事は続けたい。ならば義母に家事やらベビーシッターやらせてしまえばいい・・・と、そういう考え方丸出しで絹子に接するのですね。そんなのいくらおっとり絹ちゃんにしたってイヤだべさー。まぁそれでも少しずつ考え方が変わって最後の方ではちょっとマトモになりましたけど。でもヤダな、こんなバカ女。心がない。一刀両断だ、コノヤロー。絹ちゃんもアマあまだし、抜けてる。だけど自分でなんとか頑張ろうとする心意気がカッコいい。がんばれ、絹ちゃん!だったのでありました。だいたい人のことナンダカンダ知りもしないで言うんじゃないよー。ほっとけ。ばかー。
『愛されてもひとり』 2006.7.30. 新津きよみ 詳伝社文庫
| 2006年08月23日(水) |
『天国の対価 おもひでや』 宝珠なつめ |
生き人形のような美少女サナギは<思い出作家>、“おもひでや”ではサナギのお眼鏡に適った依頼人の望む夢を作りあげる。思い詰めてサナギの元に思い出を買いにやってくる人々。それぞれの思いと苦しみを抱えて・・・
タイトルとイラストから想像していたファンタジーからは、ほんの少し位置がずれたものでありました。ただ望むものを与えるわけではないし、その夢が必ずしも幸せを残さないと言うこと。なかなかシビアなものでありました。思い出作家のサナギの他の店長のテンと美少年のクレオの二人のスタッフも風変わり。なにやら過去にあったっぽいふたり。勿論サナギ自体がトッテモミステリアスです。たぶんこのシリーズは続いて、三人三様の物語が語られていくことでしょう。私的にはクレオが気になるかな。
失ったものの大きさに耐えきれず、ただひたすらに、その名を繰り返して。
『天国の対価 おもひでや』 2006.6.25. 宝珠なつめ 中央公論社
清乃は父親から性的虐待を受け、その場を目撃した母親は娘に嫉妬した。その後、父は蒸発し、母は癌で死んでしまい、清乃は3才年下の弟・貞文と残されてしまう。貞文は、父親が姉を犯しているところを見て逆上した母親が包丁を持って暴れまわった修羅場を見てから心のバランスを欠き、引きこもりとなってしまっている。27才になった清乃は、自分の過去を題材にした小説で賞を受賞。アルバイト先の上司と不倫関係にあった清乃だったが、イケメンの担当編集に恋心を抱く。そんな清乃に嫌がらせの無言電話がかかりはじめ、貞文には悪意が滴る葉書が届き始めた。ふたりきりの姉弟に忍び寄る悪意と恐怖・・・その正体は!?
こういう陰湿でドロドロした物語を描かせたら栗本親分はうまいですね。惚れ惚れするほどのグロサにございました。清乃は、幼い頃から父親に性的虐待に遭い、それを知った母は助けるではなく娘を憎む。身勝手な親が消えて壊れた姉と弟の元にまた違う闇が迫ってくる・・・と言う、なんともやるせない無限ループ。ふたりを閉じ込めた家の持つ闇と人間が持つ心の闇、そのふたつの闇が融合して清乃をがっぷり掴んで離さない・・・。清乃自身も無意識のうちに自ら囚われてしまったのかもしれないなぁ。清乃も貞文も逃げ出せていたら、過去から逃れられたかもしれないのに。なんだかトッテモかわいそうでした。ラストの落とし方も想像はつくものの、現代らしい括り方でなかなか面白かったです。これでもかと落ちて行く清乃。運命から逃れられなかったんだねぇ。ううううう。
『闇』 2006.7.18. 栗本薫 ハルキ・ホラー文庫
| 2006年08月21日(月) |
映画『釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ!』 |
今や日本映画の定番となった釣りバカ日誌を観て参りました。寅さんシリーズはほとんど観たことがないのですケレドモ、釣りバカはテレビ放映されると欠かさず観ています。今回でシリーズ17作品にもなっていました。個人的見どころとしては、西田敏行さん演じるハマちゃんの宴会シーン(裸踊り)がお気に入り。でも残念ながら今回はチラリと宴会してただけでオシマイでがっかりしちゃいました。撮影中は毎晩大宴会だったそうなのでソレをそのまま流してくれればよかったのに〜。あとスーさんこと三國連太郎さんがあまりにも老けられていて、ちょっくらこの先が心配・・・。いつかはハマちゃんがスーさん役で主役のハマちゃん役に誰かを迎えることになるのかしらん・・・ナンテ想像しながら観てました。ハマちゃんとスーさんのパワー不足は否めなくて、西やんの病み上がりと三國さんの老齢が撮影に影響しているたのかもしれませんね。しかし!今回はビックリゲストの登場だからv 北海道の星★(大泉)洋ちゃんがマドンナの石田ゆり子さんの恋の相手役に大抜擢されていますっ! 美術の先生と言うなんだか洋ちゃんにぴったんこの役でした。よかった。よかった。ま、相も変わらずちーと芝居がデカイのはしゃあないですにゃぁ。西やんや片岡鶴太郎さん相手にトッテモ頑張っていました。洋ちゃんって決してイケメンではないケレドモ、温かい存在感を放つ役者さんになれるかもしれない。そしてパワー不足と言いながらも西やんの細かいコディアンっぷりは健在。あの間の取り方や表情を洋ちゃん吸収できてるといいなぁ。そして石田ゆり子さんは綺麗だった。繊細な美しさ。凛としていながら儚げで。うっとりだった。ふたりが並ぶと美女と珍獣だった(笑)。日本の夏の暑さは1000円の釣りバカで笑い飛ばしちゃえっ!
| 2006年08月19日(土) |
『オレンジの季節』 鯨統一郎 |
薫は、密かに付き合っている会社の上司・怜華に朝礼でプロポーズした。どよめきが起こる中、怜華はクールににっこり承諾をしてくれた! ・・・しかし、条件がひとつ。それは、薫が会社を辞めて怜華の家の専業主夫になって欲しいと言うものだった。悩んだ末、薫は専業主夫になることを決意。それぞれバリバリ働いている怜華の両親、女優の姉、生意気な弟、可愛らしい妹、そしてボケのはじまった祖母と言う大家族の世話を一手に引き受けた薫は、家事の大変さと楽しさに次第に目覚めて行くのだが・・・!?
<驚天動地の問題作>・・・まさに惹句通りの問題作で、ラストのラストで、ええっ!?なんなのコレぇぇぇ〜っ!!??と呆然としてしまいました。これって同じ話なの? まさか鯨さん、なにか精神に異常をきたしてごちゃごちゃになってしまわれたとか!? まぁ、読まれた方だけが味わうことのできる超意外さでありました。ああ、ビックリした(大笑)。ラストの前までは素直に鯨さんの新境地だなぁって素直に思っていたのですケレドモね。や、やっぱり鯨さんは鯨さんだったわー。一筋縄ではいきませぬ。そこが魅力v でもオススメしていいのかどうか私にはワカラナイ(苦笑)。
『オレンジの季節』 2006.7.31. 鯨統一郎 角川書店
| 2006年08月18日(金) |
『キサトア』 小路幸也 |
やっかいな風嵐の<夏向嵐>(かこらし)を風のエキスパートであるフウガさんが風を読んで対策を立てて止めてくれた。だから、その町の人たちは尊敬を持ってフウガさんを町に迎え入れ、息子のアーチと双子の娘のキサとトアはみんなに愛されている。キサとトアは、太陽の運行と一緒に寝たり起きたりする。キサは朝日が昇り始めると同時に目を覚まして、トアは同時に眠り始める。トアは、夕陽が沈み始めると同時に目を覚まして、キサは同時に眠り始める。ほんのわずかな時間しか共有できない双子の姉妹をフウガさんもアーチも町のみんなも心から愛し、見守っている。ある日、風のエキスパートのミズヤさんが調査のためにやってきた。アーチたち子供が気づかないところで、深刻な事態が町を襲っていたのだった・・・。
いやぁ、思い入れが強いほどに紹介文に苦労しますね。この物語にはたくさんの人たちが登場して、出てくる人たちがみんな魅力的。なのでシンプルに書こうとしたら、あの子もこの子もあの人もこの人も書けなくって(涙)。でも、それは読んでもらった方がいいだろうなぁ。きっと好きな人が読む人によって違うでしょうし。私はユーミさんと言う気風のいい美人さんがダイスキv アーチとアーチを取り巻く子供達が主人公で、少年少女たちが頑張るものには目が無い私にはたまらなかったです。みんないい子で素直で一生懸命で。大人たちも立場はあれど素敵な人ばかりで。小路幸也さんの優しい目線が溢れています。本当にこの物語のような世界であれば、子供達がこんなふうに生き生きと生きていければ、それこそが〈What a wonderful world〉この素晴らしき世界ですね。一度読んで、翌日に読み返して、物語を丁寧にしみじみ噛みしめました。こんな心に優しい物語を読ませてもらえると、人生って素敵と笑顔になります。たぶん何度も何度も繰り返し読むことになる人生の宝物の一冊です。小路幸也さんはサイコーだわー! ちゃくちゃく♪
「あの件ね。しょうがねぇなぁくそ親父ども。大人の事情に子供を巻きこみやがって」
『キサトア』 小路幸也 理論社
| 2006年08月17日(木) |
『運命の鎖』 北川歩実 |
戸叶君保は、自分と同じ遺伝上の父・志方清吾の子供達を捜していた。天才的理論物理学者だった志方は、精子バンクに自分の精子を登録したまま失踪していた。志方の父が、中年期に発病して死に至るアキヤ・ヨーク病という遺伝病に襲われたことを苦にしたものと思われる。遺伝する確率は50%! 志方が発病したか否かで君保たち志方の遺伝子を受け継ぐ子供達の未来も大きく変わってしまうのだ・・・。
天才の精子を買って人工授精して子供を産む。そこまでして生まれた子供達がトンデモナイ遺伝を受け継いでいたとしたら・・・という、なかなか複雑に考えさせられる物語でした。発病して精神が危うくなって死んでしまう、ケレドモ、それまでは天才的な頭脳を持てるかもしれない・・・そんな状況に直面する子供達やその母親達の葛藤や嘘や打算が人間的にどろどろと絡み合って・・・うわー、ここへこう落ちるのか!?と言う惑わされっぱなしの展開でありました。君保は探偵役と言うより、ワトソン的存在(狂言回しかしら)。ホームズ役の探偵も訳ありな人物で、この人は遺伝を気にする必要はないのに、かなりヘビィな思いをされていて気の毒でした。ここまでして誕生した子供達が遺伝子に翻弄されるって本末転倒な気がしないでもなかったのですケレドモ、この状況に陥ったとしたら・・・こうなるよなぁ、と思うのでありました。
『運命の鎖』 2006.7.28. 北川歩実 東京創元社
| 2006年08月15日(火) |
『本朝金瓶梅』 林真理子 |
江戸時代、西門屋慶左衛門は無類の女好き。金もあれば見た目も惚れ惚れする男っぷり。あちらの美女へこちらの美女へ愛欲の日々。おきんと言う色気滴るいい女に狙いを定め、簡単に落としてしまう。慶左衛門に夢中になったおきんは亭主を殺し、妾におさまる。しかし、慶左衛門の色への探求は衰えることもなく・・・!
暑い中でこんなにエロエロな物語を読んでしまって、暑さヒートアップ。エンディングのあっけなさにおさまりが悪い(物足りない)気持ちが残ってしまいましたが、エロエロでコメディ&ノワールな物語の流れがトッテモ面白かったです。慶左衛門が馬鹿としか言いようがないくらいの女好きで、徹底してるから清々しいくらい(大笑)。なんだか林真理子さんのエロさが手に取るように伝わってきて笑えて困りました。アハハ。慶左衛門の妾のおきんとおりんは対照的ながら女ップリがいいです。ドキマギしちゃう色気の戦いでありました。いやぁ、林真理子大先生には是非この官能路線(ポルノ)を是非に極めていただきたいものにございますv ・・・『金瓶梅』について調べてみたところ、中国の官能小説だったことが判明。ううむ、知らないことが多すぎますね(反省)x この作者が笑笑生と言うらしく名前に笑ってしまいました。マンガ化もされてるし、映画化もされている様子。う、トッテモ気になります(いやぁーん)v ちょっと追いかけてしまうかも。こんなに暑いと言うのに・・・好きものですから。ウフ。
ほんに人の世はままならぬ、吹き寄せられたり舞わされたり。みんな男という風のせい。
『本朝金瓶梅』 2006.7.30. 林真理子 文藝春秋
| 2006年08月14日(月) |
『タトゥーあり』 栗本薫 |
エリートまっしぐらなT大教授・島優一郎には秘密があった。我慢できなくなると変装して新宿2丁目に行き、出会った男と仮初の愛を交わすのだ。そんな優一郎の姿を目撃したヤクザ・志賀丈二は、自分にはない貴族的な品位を持つ優一郎に近寄り、犯し、付き纏う。軽い男との情事にドキドキしていた優一郎は、ハードな志賀の本物の男同士の愛の結合に心もカラダも破壊されて行く・・・!
うひゃひゃひゃひゃ。やっちまいましたねー、栗本の親分サン! もう栗本薫らしいエロゲイまっしぐらで卑猥でポルノでおおいに笑ってしまいました(読み方が違う?)。あとがきでボーイズラブなどという路線は断固許せず、ヤオイを書くのだ、栗本薫変態ワールドだと自分で熱く書かれていて、またそれが可笑しくて可笑しくて。栗本の親分サンはいくつになられても暑苦しいなぁ(苦笑)。また突っ込みどころワザと満載なあとがきで一部の人を煽ってるなぁと言う感じです。悪趣味なところも栗本薫健在って感じですね。ふふふ。 さてさて、この物語は栗本の親分サンの好むところの男と男のハードな愛の物語。必ずサドマゾっぽいのは親分サンの性的嗜好を反映させているのでしょうか、などと下世話な想像をしてしまう。ヤクザな志賀くんは単純でわかりやすい男好きなサド助平。ヤクザでゲイって本当にハードそうだなぁ。ドキドキ(笑)。優一郎は、やわなエリート坊ちゃんなのだケレドモ、志賀との出会いで自分の中に巣食う鬱屈がファザーコンプレックスだった、と。へぇ、こうくるのかーとちょっと意外。しかも、その親父様のサイドストーリーがあってそれがまたかなり意外。血なのか? それって血のなせる技なのかっ!? まぁ、なんにしても想像するしかない男と男の愛の物語を垣間見て面白かったです。あんまりオススメはしないですケレドモ・・・。
『タトゥーあり』 2005.9.11. 栗本薫 クリスタル文庫
| 2006年08月13日(日) |
『東京ゲンジ物語』 天樹征丸 |
美少女ゲンジの周りには死があふれていた。小学生の時に友達が死んでから、ゲンジのいるところに死がやってくる。両親も事故死した。そんなゲンジの側にカリスマシンガー冬夜が現れた。彼は死神・・・全ては幼い頃の友達の死の真相に帰結していて・・・!?
うううううーん(悩)。なんと言うか、正直な感想は「乙一的?」でありました。でも残念ながら乙一よりスカスカな感じが否めない。素材は最高にいいのに。マンガの原作やテレビドラマの脚本を手がけてらっしゃるだけあってトテモ映像的。表紙のイラストも素晴らしいv なので表紙のイラストのままマンガ化もしくはアニメ化すると面白いと思います。ゲンジと冬夜は文字通り絵になるから。
『東京ゲンジ物語』 2006.5.22. 天樹征丸 講談社
| 2006年08月12日(土) |
『ハゴロモ』 よしもとばなな |
ほたるは8年間付き合った恋人から別れを告げられる。恋人をベースに生活の全てを動かしていたほたるは、妻の元に戻った恋人の不在に大きく傷ついてしまう。故郷に舞い戻り、変わり者の祖母の喫茶店を手伝いながら、優しい人たちと関わり、少しずつ再生をはじめるほたる。どんなに傷ついても回復する力を人は持っている。そして新しい愛がはじまる・・・
今、この時期にこの優しい物語を読めたことが癒しとなり救いとなるのだろうなぁとしみじみと心の底に温かい火が灯った。本当によしもとばななという作家さんは不思議で偉大で・・・巫女のような人だなぁと感動する。よしもとばななと村上春樹は別格と言うか・・・神の言葉を表現しているような気がするの。なんて言うか・・・迷った時の心の闇を払ってくれる。この『ハゴロモ』は大きな存在に去られ、傷つき揺らいだココロが再生して行く物語。よしもとばなならしく不思議な人たちがたくさん当たり前の様にそこにいて、自然にあるがままに生きている。このさりげなく心優しくと言うのが大切なのだろうと思いますね。ありがとう、よしもとばなな。 そして本当の別れというのは、縁がぶちっと切れるということは、死よりもよっぽど死に近いことなのだ、とさとった。
『ハゴロモ』 2006.7.1. よしもとばなな 新潮文庫
| 2006年08月11日(金) |
『灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク�此戞\佚聴疥� |
『灰色のピーターパン』 小学生のIT小僧のビジネストラブルに巻き込まれ、トラブルシューター・マコトがどう事件をおさめるか、な巻。 「誰かと歩くために金なんか払うやつはいないぞ。おれはまだ仕事中だから、毎日でもいっしょに歩くさ。でも、全部終ったら、金じゃなくて、おまえ自身の魅力で勝負しなけりゃだめだ。そんなことじゃいくつになっても、女にもてないぞ」
『野獣とリユニオン』 数千円を奪うためにレストランを開く夢を持った男を襲い、足を使いものにならなくしてしまったケダモノを渋谷のキングが裁く、な巻。 「直接あって、目と目を見て話したら、すこしは気分が変わるかもしれない」
『駅前無認可ガーデン』 渋谷のアンダーグラウンドの王様の依頼で、ロリコン変質者退治にマコト奔走する、な物語。 「みんなもそうやって生きられるといいな。明日からおれもテツオみたいにがんばるよ」
『池袋フェニックス計画』 在留外国人一掃計画が池袋で起こり、その裏の癒着に気づいたマコトが本気で怒る、な物語。 だが、おれたちの人生は白と黒とだけじゃないはずだ。わずかな濁りもない完璧な純白やまるで光りのささない究極の暗黒なんて、あんただって見たことはないだろう。おれたちはみんな灰色で、生まれたときから光りも闇も同じ量だけ分かちもっている。別にカッコをつけるわけじゃないが、生きるってそういうことじゃないか。ときによって、やばいことやただしいことを、自分でも気づかないうちにしでかし、なんとかさして立派でもない毎日をやりすごしていくのだ。
池袋のトラブル・シューターマコトと池袋の王様が様々な事件を解決して行くシリーズ。あ、たまにヤクザなサルも(笑)。今回の物語の統一カラーである灰色で人間ってものをうまく表現されていました。白か黒かなんて無くって、清濁併せ持つが人間なんだなぁと改めて感じました。きりきりに清潔に生きることもないし、でろでろに闇に紛れて生きることもない。適度にいい加減に生きるがいいのだよねぇ。石田衣良さんは今や半芸能人になられたご様子でありますが(苦笑)、やはり池袋シリーズは原点と言うべきもので読まずにいられないです。作家さんも売れると色んな露出をされだすものですからねー。
『灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク�此戞�2006.6.30. 石田衣良 文藝春秋
| 2006年08月10日(木) |
『隠れ菊』上 連城三紀彦 |
浜名湖畔にある料亭『花ずみ』、名物女将のキクは道楽者の亭主に苦労しながら料亭を切り盛りしていた。キクに気に入られてキクの息子・旬平に嫁いだ通子は、キクの要望で店を手伝うことなく家庭を守っていた。キクが亡くなり、板前の旬平が店を継ぎ、平凡なはずの毎日に奇妙な出来事が起こった。旬平から通子に世話になっている金沢の酒屋の社長を出迎えに行って欲しいと頼まれたのだ。言われるままに駅で出迎えに待ちわびる通子の背後からひとりの美女が声をかけてくる。彼女こそが待ち人であり、通子に対して「私、ご主人をいただきにきました」といきなり宣戦布告を放ったのだった・・・!?
あまり読む機会がなく通り過ぎてきていた連城三紀彦さんの絶版本をトアル事情で読んでみることになりました。何年か前にドラマ化されたそうで、夫の愛人とのバトル!?なのかと思いきや・・・ちょっとそれだけのドロドロ泥沼ものでもないようなのですよね。連城三紀彦さんってこういうテイストの物語を描かれる方だったのですねぇ。男を挟んだ女と女の火花の散らしあいは恐ろしい(笑)。しかも年頃の娘が揺れ動いちゃって話をややこしくしてしまう始末。でも、それぞれのキャラクターが意外に好ましいので読んでいて嫌ぁ〜な物語ではないです。逆にやってることはちょいと問題ありにしても、いい人が多すぎるきらいがあるくらいです。はてさて、通子の運命やいかに!? 「お父さんとのこと、気もちでは許せないくせに体はまだしがみついてて・・・・・・だから、まだ本気では別れられないんじゃないの。そういう半端なのが正しい関係なのかなあ。私、毎朝、アンタの体がいら立ってるの、気づいてるのよ」
『隠れ菊』上 連城三紀彦 新潮文庫
| 2006年08月09日(水) |
『罠釣師』(トラッパーズ) 三浦明博 |
仙台で小料理屋をやっている木之下は、趣味の渓流釣りへ繰り出した。運悪く事故を起こすが体に不具合はなく、宿を確保し、車は後でなんとかしようと山奥へ釣りへ走る。釣りが好きで好きで仕方ない木之下だったが、たまたま出会った老人と美少女に釣り上げられてしまい、魚ではなく人間を釣り上げるペテンに加担することとなってしまい・・・!?
好きな映画に『スティング』があります。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが仲間の敵討ちに大物をおおがかりなペテンにひっかける、ポイントは騙した後で騙されたと気付かれないこと・・・って小洒落た映画でラストのどんでんがえし鮮やかな素晴らしいものなのでありますが、なんだかソノ映画を彷彿とさせる物語だなぁと思いつつ読みました。巻き込まれる料理人が出向く山奥の渓流での釣りのシーンが最高に涼しげで清々しい想いを運んでくれます。釣りはやりたいですねぇ。特に山奥での渓流釣り。自然の中で美しい時間が流れることだろうなぁ。・・・あ、物語は読みやすくて楽しかったです。つるりんっと読めちゃいますv
人間の心理とは案外単純なもので、雨が降っていれば陰々滅々として疑り深い気持ちになるし、すかっと晴れれば気分も良くなって些細なことなど気にならなくなる。そういうものだ。
『罠釣師』(トラッパーズ) 2006.6.10. 三浦明博 文藝春秋
| 2006年08月08日(火) |
『結晶物語』1・2 前田栄 |
大妖怪と人間のハーフ凍雨(とうう)は、生きるため金儲けとして質屋を営んでいる。父で大妖怪の白夜は年を重ねた物を舐めて時を食べてしまう。そうすると、品物が新しくなる。そのあたりを利用して商売をしているのだが、金になるアンティークものを凍雨が油断した隙に白夜がぺろりんと舐めてしまい、台無しにしてしまうこともしばしば。凍雨は凍雨で相手の強い感情を結晶にする技を持つ。その味わいは感情によって違うらしい。時や感情を盗む妖怪親子に取られた質草ゆえに僕となっている黄龍は、いつもふたりに振り回されて・・・
妖怪が質屋を営んでいて、客に幽霊や妖怪がやってきて、巻き込まれる事件は御伽噺の主人公たち・・・そして御伽噺の新解釈が語られると言う、なかなか優れものな不思議物語なのであります。妖怪の感性は人間とは違うために、生真面目な黄龍は四苦八苦。人ならぬ異形のモノたちのココロなんて所詮人には理解できないのでありましょうなぁ。舐めて時を食べてしまう大妖怪・白夜がことのほかお気に入り。とってもキュートなのでありまする。にっこり。
「妖怪がいるって知ってるのに、神や仏は信じないの?」 「神や仏は、妖怪の一派なのか?」 「え? 確かに、妖怪と神との境界ってけっこう曖昧だけど・・・・・・力の強い妖怪が神として祀られていることもあるし、反対に、神だったのに信仰する人がいなくなったせいで妖怪と呼ばれるものになってしまったものもいるし。仏は、人間が悟りを開いてなるものだから関係ないと思うけどね」
『結晶物語』1・2 前田栄 ウィングス文庫
| 2006年08月07日(月) |
『樹上のゆりかご』 荻原規子 |
ヒロミが入学した都立辰川高校は、イベントに力を入れる男子校色が色濃く残る高校だった。男子生徒率が高く、女子生徒は良くも悪くも特別視されてしまい、ヒロミは居心地の悪い思いを抱えていた。しかし、歌が好きなヒロミが楽しみにしていた合唱コンクールあたりから、巻き込まれるようにして生徒会執行部の活動を手伝うこととなる。合唱コンクールで目立った美少女がヒロミに近づき、この学校には「名前のない顔のないもの」が巣食うと言う。そして起こった事件とは・・・!?
あああっ! この物語は胸に痛くってほろ苦くって懐かしくってトッテモ良かったです〜。めろめろ。高校時代と言う3年間と言うのは、閉鎖的でエネルギッシュでぎとぎとぎらぎらしていて、それでいて初心なココロも残っていて・・・高校生の存在自体が妖怪変化みたいなものだったのだよなぁと思うのであります。清潔さが残るか失われるかの際だった気がしますネェ・・・。高校時代にあまりにも思い入れの深いため、その時代にタイムスリップするかのような眩暈とともに読みました。ありそうで少し怖くて残酷で、ココロに痛くも懐かしい青春小説なのでありました。荻原さんはウマイなぁ。
「男子と同じ土俵で勝ち負けを言うのは、やっぱりまちがっているよね。私は私だってことを、見失うのはみっともない・・・・・・私なりのやり方で、今はここにいるんだし。だから、私が負けたくないのは、女子ってことかもしれないな。私の中の女の子・・・・・・」
『樹上のゆりかご』 2006.6.25. 荻原規子 中央公論社
| 2006年08月06日(日) |
『ミカエルの騎士8 征服されざる石の伝説』 前田栄 |
ヴァチカンに盟主=アーサー(ミカエルの騎士)を奪われたマーティンとメアリ。マーティンはメアリに覚悟の程を問い掛ける。アーサーに関わり執着し続けると自分のように変質を迎える、と。そしてメアリは姿を消してしまう。ひとりになったマーティンは天使ガブリエルに助けを請う。ガブリエルは悪魔であろうと友人であるマーティンを救おうと奔走する。マーティンはアーサーを救う事ができるのか。マーティンは闇に同化して変質してしまうのか。メアリはアーサーを見捨てることができるのか。そして・・・アーサーは悪魔と天使の存在を自分の心の中でどう昇華させるのか・・・!?
ついに『ミカエルの騎士』が完結いたしました。アーサーの持つ能力は自分の信じたことを具現化すると言うもの。ですから、必然的にアーサーの望んだ結末が物語の結末となる訳ですね。ららら科学の子アーサーが悪魔やら天使やらの存在をどう認めるか、そこにトテモ興味がありました。おおまかなエンディングは想像通りでしたね。にっこりv アーサーがアーサーである所以でありました。アーサーの美しい魂を愛した悪魔のマーティンと天使のメアリの選んだ道も素敵でした。愛が色んなものを凌駕する素晴らしきファンタジーでありました。惚れ惚れ。 悪魔も天使も人間も・・・完璧なものはどこにもなくて。愛ゆえに愚かで愛ゆえに醜くて、愛ゆえに強い。このエンディングでアーサーが「俺が主役だ!」と主張できて良かったなぁと思いました(笑)。あまりにも天使と悪魔の存在が強烈でしたものねぇ(苦笑)。
「日常こそが、本当に愛しいものだと。 私たちの周りには大気があり、なければ死んでしまうと解っていても、それを気にすることは滅多にありません。でも、今回のことがあってから、本当に大切なものというのはそういうものなのではないかと、思うようになりました。 普段は気付かないようなもの。あって当然だと思っていること。そんなもの総てが、幸福を作っているのだと」
『ミカエルの騎士8 征服されざる石の伝説』 2000.10.15. 前田栄 新書館
| 2006年08月05日(土) |
『ミカエルの騎士7 青金石の天使』 前田栄 |
同じ魂を持つロザリアと出会ったことでアーサーはマーティンという存在に疑問を持ってしまった。この世に科学で証明できないものなどないと言うアーサーの信念がゆらいでしまったためにアーサーのいる小さな村は摩訶不思議な存在たちが大挙していた。メアリは妖怪退治に幽霊退治とひとりで孤軍奮闘をしていた。そこへヴァチカンからの使者トマスが現れ、ミカエルの騎士であるアーサーを誘拐。トマスの正体は実は・・・!?
罪作りな悪魔マーティンが昔むかしソノ昔にミカエルの騎士ファミリーを篭絡していて、マーティンは忘れてしまっていて・・・・翻弄されたファミリーのひとりの魂は怨みに消滅することなく転生を繰り返していたのであります。まぁ、憎めないマーティンではありますが、やっぱり悪魔だけあって鬼畜だったのだなぁ・・・と言う展開になって参りました。悪魔も美しい魂に恋すれば変わることもトッテモ皮肉。そしてアーサーの美しい魂はマーティンへの疑心暗鬼でどんどん傷ついていき、美しい魂コレクターの天使メアリがますますマーティンへの怒りをつのらせるという構図を煽る煽る。自分の信じていた世界が揺らいでしまったアーサーはいったいどうなる・・・!? 待て、次号っ!(笑) 人でアレ、悪魔でアレ、天使でアレ、愛するがゆえに憎しみが深まってしまうことを軽いタッチでありながら、けっこうドドーンと直球勝負で描かれています。鬼畜で極悪非道な悪魔マーティンに振り回されるアーサーとメアリは気の毒であるケレドモ・・・ふたりともマーティンを愛してしまったのだから仕方ないことなのでしょうね。愛することって怖いことだとしみじみ思うのでありました。
『ミカエルの騎士7 青金石の天使』 2000.9.15. 前田栄 新書館
| 2006年08月04日(金) |
『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 前田栄 |
異形の者であるマーティンは自分が変質していくことが加速して行くのを止められずにいた。彼らが生者に執着しすぎると起こる現象らしい。マーティンはアーサーに近づいた元々の理由である水晶の君ロザリアにアーサーを会わせることにした。マーティンからロザリアは心を病んでいてマーティンを天使だと思っていると吹き込まれる。ロザリアと会ったアーサーはなんとも不思議な心持となってしまった。慕わしくも、恐ろしい・・・ロザリアとアーサーは互いが互いをそう思うのだった。なぜならば二人の魂は・・・!?
さてさて、ついにマーティンの心の想い人ロザリアの登場です。ロザリアの美しい魂とアーサーの美しい魂の類似性にマーティンもメアリも執着します。「歪んだ真珠」では、ロザリアを巡って過去にマーティンとメアリが既に争っていたことがわかります。それがまたまた巡り巡ってアーサーの魂を巡って反発しあう・・・由緒ある因縁だったのですね。「髑髏なす翡翠」では、マーティンの変質の速度の速さをメアリが確認してしまいます。反発しあいながらも同じ美しいものに惹かれては巡り合うマーティンとメアリは悪魔と天使ながら奇妙な絆を感じていて、トムとジェリーのように仲良く喧嘩してるんだなと言う感じです。果てしなく永い時間をかけて(笑)。6巻まで翻弄されるだけの主人公アーサーでありましたが、ロザリアとの出会いによって初めてマーティンに疑問を感じます。それが終末へのプロローグ・・・・。無垢で疑うことを知らないアーサーの心に芽生えた友への疑心暗鬼。マーティンは畏れながらもその瞬間を待ち続けていたように思えるんですよね・・・。
「おまえ・・・・・・いったい何だ?」 それは、頭の中で考えていた時よりも凶悪な響きを伴っていた。そして、その残酷な響きで狭い空間を充たした。
『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 2000.2.10. 前田栄 新書館
| 2006年08月03日(木) |
『赤々煉恋』 朱川湊人 |
「死体写真師」は、ネクロフィリアを軸としたホラー。「レイニー・エレーン」は、昼はキャリア・夜は娼婦な女性が幽霊となって現れる物語。「アタシの、いちばん、ほしいもの」は、自殺した霊の彷徨う物語。「私はフランセス」は、アクロトモフィリアと言う性癖の物語。「いつか、静かの海に」は、地球外生命体を育てる物語。赤々とした炎のように何かに身を焦がし、切望する者たちの行く末を描いた5つの不気味な物語たちでした。 これはねー、「朱川さんやりましたねー(にやり)」って感じの短編集でありました。心にほのぼのと郷愁を感じさせる物語とは全く異質な欲望ホラー短篇集ですから。これはこれで私的にはかなり好みであります。人間の奥深い欲望をしっかりじっとりネットリ表現されていましたからね。ゾクゾクしちゃいました。『花まんま』などの路線を望む方にはもしかすると生理的に厳しいかもしれません。 どれもこれも気に入りましたが、「私はフランセス」には度肝を抜かれました。ホラーもエログロも読んできているつもりでしたケレドモ、アクロトモフィリアと言う性的嗜好は知りませんでした。その手前の緊縛なら想像つくのですが。人間の奥深いところにある欲望は本当に人それぞれだと思いますが、痛い系はどうにもおぞましいです・・・。読むだけなら「うへぇーっ」と言いつつ読んでしまいますケレドモ、自分の肉体がそうなるのって考えられないなぁ。文章的に面白くて気に入ったのは「アタシの、いちばん、ほしいもの」です。自殺した少女の想いが何故だかよくわかってしまう。語り口から心情がトッテモよくわかるのですよねv
小ちゃいコがいると大変なんだろうな・・・・・・と同情はするけど、やっぱり、こういうのはいただけないですなぁ。いくつになっても女は女、どれだけ忙しかろうが大変だろうが、女は女を忘れちゃイカン。
『赤々煉恋』 2006.7.20. 朱川湊人 東京創元社
| 2006年08月02日(水) |
『ミカエルの騎士5 土耳古石は忘れない』 前田栄 |
アーサーが属する教会は英国国教会。エクソシストなど異端と目されている。なのでマーティンの冗談からエクソシストもどき活動をさせられて有名になってしまったアーサーは大迷惑! なのにあろうことか父の代から御世話になっているフィスト牧師からエクソシストの芝居を頼まれてしまった。聞けば娘の結婚相手が亡き妻の亡霊に悩まされていると言う。愛する娘を思う老牧師にほだされたアーサーは渋々エクソシストの真似事をして、その男の亡き妻の形見の指輪を預かる事になり・・・!?
マーティンが知らない間にアーサーとメアリがやらかしていたエクソシスト芝居。その芝居で巡ってきた指輪を村に持ち帰ったら、村中の人々が亡くした人に「私を忘れないで」と訴えられまくる・・・と言う物語。自分を忘れないで欲しいと言う願いを人は死ぬ前に抱くものなのかしら。そんなこと願わなくても私はあなたを忘れられないけどなぁ・・・なんて亡くした愛しい人のこと思って思わずほろり。生者も死者もいとものがなし。「金緑石の誘惑」では、その昔、マーティンがジュリアーノ・アガタンジェロと言うミカエルの騎士を誘惑したことが描かれています。鬼畜にもマーティンは、ジュリアーノの婚約者エレオノーラもジュリアーノの妹のルチアも誘惑。ジュリアーノは禁断の愛に溺れ狂ってしまい、アガタンジェロ家はぼろぼろになってしまう。・・・マーティンさりげなく鬼畜まっしぐらです。さすが悪魔と言った感じ。この騒動の時に大天使ガブエルが召喚されるのでありますが、妙にマーティンと友達っぽいニュアンスが伝わってきます。こういう物語を読んでいると人間は悪魔や天使に翻弄されているのだなぁと思います。でもそれを影が薄いが実は主人公のアーサーが・・・!?ってことを、待て次号っ!(笑)
『ミカエルの騎士5 土耳古石は忘れない』 1999.7.10. 前田栄 新書館
| 2006年08月01日(火) |
『少年陰陽師 天狐編』 結城光流 |
安倍晴明の妻・若菜は、大好きな物の怪を救うために自分の命を投げ打ち三途の川へやってきた孫・昌浩を現世へ戻した。しかし、若菜の必死の願いも叶わず、冥府の官吏は命の代わりに昌浩にとって無くてはならぬものを奪ってしまう。昌浩は陰陽師にとって必要不可欠な見鬼の才を無くしたのだ・・・。その上、助かったとは言え物の怪もっくんは一部の記憶を失っていて昌浩のことすらわからなくなってしまった。出雲の地で療養しながら、妖しの出現に対応しながら、昌浩の心は立ち直ることができるのだろうか・・・!?(「真紅の空を翔けあがれ」) 昌浩たちは都に帰ってきた。見鬼の力を失った昌浩と失われた時間の己に怯える物の怪もっくんこと紅蓮(騰蛇)。昌浩は自分の命を投げ出し、紅蓮を助ける手助けさせたことを祖父・晴明に詫びる。自分の決断を手助けすることが祖父・晴明にとってもどんなに過酷なことだったかに昌浩は気付いたのだった。ほんのすこしぎくしゃくする昌浩と物の怪もっくんの目の前に新しい事件が待ち受けていた。彰子の代わりに入内した彰子の異母姉妹・章子を狙う禍々しい存在が・・・!?(「光の導を指し示せ」)
風音編で昌浩は物の怪もっくんをこの世にとどめるために自分の命を投げ打とうとしました。昌浩にとってはそれしか決断の術が無く、しかし、死んだはずの祖母・若菜に助けられ、自分が決断したことが祖父・晴明を、そして周りのみんなをどんなに苦しめることであるのかに気付きました。この世に戻った昌浩はまたひとつ大人の階段を昇ったのでありました〜。 安倍晴明の十二神の中で紅蓮こと騰蛇(物の怪ももっくん)以外では、紅蓮を敵視する青龍と冷静沈着な六合がキィ神様(パーソン人間じゃない)。それに加えてトッテモすてきな神将が今回大活躍でした。その神の名は勾陣(こうちん)。美しくクールな女神で闘将で紅蓮に次ぐ力の持ち主。紅蓮が昌浩によって変化して行った様を見ていたため、紅蓮の記憶喪失により傷ついている昌浩の側にいてくださった素敵な姐さんです〜。メロメロよー。やはり強くて美しい女性に目が無いのでありまする。
そして、昌浩が願うのだ。 つらいことは、覚えてなくていいよ、と。 「つらくても、心が壊れそうになっても。決して忘れてはいけないものが、ここに確かにあるだろう・・・・・・?」
『少年陰陽師 真紅の空を翔けあがれ』 結城光流 角川ビーンズ文庫 『少年陰陽師 光の導を指し示せ』 結城光流 角川ビーンズ文庫
|