酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年06月30日(金) 『贄の夜会』 香納諒一

 木島喜久子は《犯罪被害者家族の集い》の帰り道、目取真(めどるま)南美を食事に誘う。家族を犯罪によって失ったPTSD(外傷後ストレス障害)に悩むふたりは互いの悲しい過去を語り合う。ハープ奏者の喜久子のコンサートを聞きに行く約束をし、別れたふたりが殺されて発見された。喜久子は両手首を切断され、南美は石段に頭を叩きつけられて。残虐な事件を担当することになった警視庁の大河内は、目取真(めどるま)南美の夫を不審に思う。事件を調べるうちに事件当日のパネラーゲストの弁護士が19年前の猟奇殺人犯だと判明する。当時14歳だった弁護士は少年を殺し、頭を切断し、頭を・・・・。

 内容が快楽殺人、猟奇的殺人、少年法、透明な友人、スナイパー、警察スキャンダル等など盛りだくさんでした。好みな路線であるにもかかわらず読み通すのに時間がものすごくかかってしまいました。文章と相性が合わないのかテンポ良く読み進めることができなかったのです。読了後も面白かった!のにのになにやら悶々としたものが残っています。さっさかと読めていたらただ「面白かった!」で済むのになんだか残念気分。視点があちらこちらしすぎだったからじゃないかしら。

 文は人也だよ。文章の成り立ちは、人の声や喋り方と同じくらいに、その本人を特定する材料となる。

『贄の夜会』 2006.5.30. 香納諒一 文藝春秋



2006年06月29日(木) DVD『木更津キャッツアイ』

 ぶっさん(岡田准一)は余命を告知される。木更津で父・コウスケ(小日向文世)のバーバー田淵を手伝いながら、野球とビールを愛してのほほんとしていた日々。そんな毎日に期限を切られ、あと三ヶ月でなにが出来るのか、なにをしたいのか考えてみる。仲間のバンビ(櫻井翔)・マスター(佐藤隆太)・アニ(塚本高史)・うっちー(岡田義徳)たちも戸惑いながら、苦しみながら、ぶっさんとの青春の日々を駆け抜けて行く・・・

 『池袋ウエスト・ゲート・パーク』のスタッフが再集結して作り上げたコノせつなくて可笑しい青春喜劇。クドカンに惚れ込んだのってコレで決定的になった気がするのです。男の子たちが馬鹿でやんちゃで一生懸命で痛々しいほどに切ない。ものすごく愛しい。
 メインの5人以外の登場人物もすごくユニーク。みんなの高校時代の教師の美礼先生(薬師丸ひろ子)は、閻魔帳に《殺》(画数10)を書き上げた相手に妙な嫌がらせを繰り返す。木更津の守り神オジー(古田新太)は、記憶喪失で知能が遅れたようになっていて、なぜだか街のみんなに愛されている。キャッツの面々が高校生だった時の野球部の監督・猫田(阿部サダヲ)はイキナリ切れて暴れまくるが、物真似ヤクザの山口先輩(山口智充)に頭があがらない。色気むんむんさせ子の異名を持つモー子(酒井若菜)は実は処女で憎めない。3代目木更津ローズ(森下愛子)は木更津の青少年を性犯罪から救ってきた伝説のストリッパーでコウスケと結婚する。などなど異色な脇役がずらーり。ゲストも木更津の★氣志團やぶっさんが大好きな哀川翔や今をときめく妻夫木くんに殺人鬼面の中村獅堂などなどなど・・・。
 自分にとって大切で愛しい存在が死んでしまう。そのことに父親も仲間も街の人たちも苦しんで泣いてあがいて・・・せつないなぁ。中でも父親コースケ役の小日向さんが最高にいい。前からいい役者さんだなぁと思っていたケレドモ、とことん泣かされました。ぶっさんが父親に「死ぬってこえーな」と言うシーンは涙がどれほど流れたことか。ぶっさん役の岡田准一クンは役者として花開いていたのですね。死に向って涙を流す表情たるや天下一品。岡田クン、ついていきますっ!
 あ。いけない。クドカンのことを書いていない・・・。ま、また池袋を見直したら書こう。うん。



2006年06月28日(水) 『黒い朝、白い夜』 岩井志麻子

 岩井志麻子さんが赤裸々に綴る自分の恋愛記・・・と言うことでいいのかしら。ここに描かれていることが全て本当なのか、フィクションまじりなのか。たぶん正直モノは馬鹿を見るタイプに見受けられる志麻子さんのことダカラ・・・本当のことを痛々しい自己顕示欲でもって書きまくったと言う印象ですね。ベトナムのヒモ的愛人、韓国の男のことは今までの物語やスキャンダルで知っていました。でも新しい歌舞伎町にいる中国人の若い若い男の子のことと妊娠のことは知らなかったです。ずいぶんとスキャンダルになったらしい・・・のかな? あの結婚した編集者のジミーちゃんとはもう離婚したのかしら。それとも噂どおり偽装結婚だったのかしらん。妙な動きを見せる志麻子ねぇさんデアル(笑)。
 物語の中でも繰り返し自分のことをスケベエなキワモノ作家と表現されているので、どうやらご自分のことは自分で一番良くわかっているらしい。芸能プロダクションに所属したから、ああもテレビに露出していたのだなぁ。なるほど。出たがりの志麻子さんらしい。岩井志麻子さんって人はものすごくエネルギーが強くて目立ちたくて注目されたくてしかたない少女だったのだろうと想像できます。だから今がきっと楽しくて嬉しくて少し小心に怖くしょうがないのではないか。自己顕示欲は満たされていらっしゃると思うから。
 毒々しい毒花のような人だなぁと怖いもの見たさで見ている(読んでいる)のですケレドモ、どこかで落ち着くといいのに心配がたってきました。ベトナムと韓国の男でどうして我慢できなかったのだろう。なにも20も年下の男の子に夢中にならなくても・・・と思ってしまうケレドモ、素直で正直なだけなのかもしれないなぁ。ただご自分でもわかってらっしゃるようだけど、年頃の岡山のお嬢さんは本当に潔癖にイヤだろうし、辛いと思います。自分の母親の奔放なセックスライフなんて読みたくないに違いないもの。もう少し大人になれば女として理解してくれるかも知れないケレドモ、少女の時期にはあまりにも過酷。いじめに遭わなきゃいいけれど。
 さて、嘘か誠かわからないケレドモ、物語で描かれた二度の妊娠→早期流産については・・・きちんと避妊をせんかい(怒)と腹だたしいx 若い女ではないのだから、せめてそういうことはキッチリしろよと腹が立って。だって傷つくのは自分なんだよ。どうしてそこまで女でいたいなら自分の女を大事にしてやれないのかなぁ。何人の男に股を開こうが自由だケレドモ、簡単に妊娠したり流産したりってのはどうにもこうにも許せない。読んでいて泣けた。ここまで書いて傷つくのはアナタでしょーにxって感じかなぁ。



2006年06月27日(火) DVD『KAZUMA≒AMUZAK 〜アムザック〜』&『KAZUMA≒AMUZAK 〜アムザック 最後の逆襲〜』

 警視庁のエリートキャリア一馬は連続殺人事件を追いかけていた。被害者たちには分母13の分数が血文字が連続して残されていた。奔走する一馬のもとに妻の有貴がフィリピンで連続殺人事件に巻き込まれたと連絡を受け、フィリピンへ飛ぶ。連続殺人の舞台は日本からフィリピンに移ったのだ。有貴を探す一馬は謎の襲撃に遭遇。日本から公安の森本がやってきて事件はますますと混沌としていく。この連続殺人犯アムザックには日本政府が必死に隠したい秘密が・・・!? IQ140のアムザックの正体は、一馬とアムザックが出会った時に暴かれる!?

 少々(?)ネタバレいたしますが、DVDタイトルで想像がつくようにアムザックは一馬のクローン人間。10年ほど前に医学生たちが面白がってはじめたCプロジェクトがクローン人間を生み出してしまい、そのクローンは老化スピードが異常に速い・・・その特性のため政府がそれを利用して・・・と言う壮大な陰謀がアムザックという男に秘められている。成りは青年であるケレドモ精神は10歳の少年アムザック、そしてその元である一馬との心の交流。一馬がアムザックに対して父親にも似た愛情を抱いて行く過程はホロリといたしました。しかし、どうしてこうも素材がいいと言うのに大雑把な映像なのかしら。陰謀の大元となったもと医大生チームの関係・関連性についての表現があまりにも少ないからわかりにくかったのではないか、と。一馬と結婚した有貴が隠していた使命についても詳しく描いて欲しかったし、有貴が一馬に惹かれて行く流れも有貴とアムザックとの関わりも観たかったですね。・・・そう、せっかくの素材だから詳しく丁寧に観たかったと思います。作り手は流れも真相も知り尽くしていても観客はハジメテ観るのだということを忘れないで欲しいなぁ。



2006年06月26日(月) DVD『渋谷怪談2』

 綾乃は自分を産んで亡くなった母の死に負い目を感じ、父親が自分を死していないと感じていた。孤独な綾乃にとって家庭教師のリエカは姉のように慕える存在。そのリエカが恐怖から廃人となり死にゆく瞬間、綾乃の手に鍵を握らせる。友達も少なく辞めたクラブの先輩にいじめられる綾乃は渋谷を歩き回り、コインロッカーを探し当てる。そのコインロッカーはプレゼントを入れておいて告白するとうまくいくという伝説になっていた。噂を信じてロッカーを使用する少女達に次々と襲い掛かる恐怖・・・。巻き込まれた綾乃の運命は・・・!?

 とある講演会で伝説になるには「なにかがあった」という流れに気付き、ますます都市伝説ものに興味を抱いてレンタルしてみたこの1本。伝説のサッちゃんよりもヒロインをいじめる少女達の無神経な悪意の垂れ流しが怖かったです。どうしてあんなに無神経に人を傷つけることができるのだろうなぁ。ヒロインの綾乃を演じたのは堀北真希(漢字が違うかもx)ちゃんは今の時代のアイドルらしい。ホリプロ路線の昔ながらの素朴なアイドルって感じ。今より少し前だからか本当に初々しい高校生、少女でした。この物語はシリーズ作品を全部観てみないとわからないのかもしれないなぁ。ラストの「死んだらよかったのに」だけはゾゾゾときましたケレドモね。サッちゃん、子供だから手加減も容赦もないんだよなぁ。



2006年06月25日(日) 『鬼や神と人は云う』高田崇史講演会in東海高校

 作家の高田崇史さんが名作『鬼神伝』→鬼神人云→『鬼や神と人は云う』と言うテーマでハジメテの講演会をされました。もともと塾で講師をされていただけあって堂々たる&飄々たる語りっぷり!で密かにドキドキ心配していた家来もといファンとしてはホッとしたのでありました。脱線しますよ宣言通りにアチラコチラへ話が飛び火して御交流のおありになる作家さん話は嬉しいこぼれ話でありました。『あやしい』と言われるのが実は高田先生の口癖なのですケレドモ、そのあやしいなと感じられて発展してQEDシリーズが生まれているのだとよくわかりました。そういう感性から探求がはじまるのですね。鬼という記号に隠された悲しい存在に目を向けられるところに作家・高田崇史の人としてのカタチを見ているのだと気づかされました。飄々ととぼけたふりした憎い奴!(笑) そこに実在していたから言葉によって語られたことがあるから伝説が生まれる。文章に残らなかったものに目を向けてバックボーンを想像して探ってみる…そんな姿勢から高田崇史と言う作家の伝説が生まれ続けていくのでしょう。以上、証明終わり。

 続・タカタカ講演会QED
 嘘か誠か塾の講師はクビになったとか。ご本人曰く当時流行っていたオニャンコクラブの歌詞を懇切丁寧に説明したりして父兄からクレームがきたらしい(笑)。秋元康さんの詩はあなどれない!と言われていました。オニャンコ好きでいらしたとは意外や意外。講演会場となった東海高校は森さんとか大沢在昌さんの出身校だそうですよ。さすが名だたる進学校。私も公演前にご一緒した熱田神宮は草薙の剣を祀っている・・・こういう物質を祀るって珍しいそうです。講談社のA藤さんに話が何度も及び(笑)A藤さんのように○藤という苗字の方は藤原氏の血を継ぐ者だそうです。高田先生のかなりお気に入りの伊勢神宮は不思議がいっぱいだそうで普通神社にあるものが伊勢神宮にはナイということでナニがナイか「そこの帽子の人」と指されたのは私です(汗)x 答えは注連縄。伊勢神宮は伊勢神宮なのに一宮ではないし、注連縄はないし、そのくせ周りの家に注連縄がある・・・とお好きなだけあって熱弁にございました。おかげで気になってたまらない、伊勢神宮。昔から残る風習の不思議についてもいくつか語られていました。神輿に水をかけることや豆まきのことなどなど。もののけ(妖怪と言うのは水木シゲルさんが言い出したby京極夏彦)にしても想像上のものと言うより、実際存在していた何かが言葉を変えカタチを変え伝説になったのではないかというようなことをおっしゃっていたと思います。よそものや村八分にされていた人たちが鬼や天狗や河童と呼ばれたのであろう・・・。うーむ。深い。当たり前すぎて文章に残されなかったものに目を向けてさぐる、これが高田先生の姿勢のようにお見受けいたしました。ざっとこのようなお話をされて質問を受けられました。高田先生が歴史上の人物でなってみたい人は石田三成だそうです。知力の人・高田先生らしい願望だなぁと笑えてしまいました。誠に温かくて楽しい講演会にございました。もしかしたらまたどこかで講演会があるやもしれない(笑)らしいので、その時にはいったいなにを語ってくださることでしょう。お忙しい合間を縫われての講演会だったご様子ですが、先生にもファンにも得難い体験だったのではないかと思われます。以上、またもや証明終わり。



2006年06月23日(金) DVD『ハートブルー』

 新人FBI捜査官のユタはロサンゼルスに赴任し、やる気満々。発生している連続銀行強盗の捜査に当たることとなる。この強盗団は大統領のマスクを被り、スピーディに強奪し、人を傷つけない。ユタは現場に残った手掛かりからサーファーたちに潜入する。ボーディというカリスマ性を持つリーダーとその仲間達は海に空にスポーツと恋愛を謳歌する魅力的な軍団だった。彼らに馴染み、ボーディに魅了され、友情を感じ始めたユタだったのだが・・・

 この映画はねー、もう大好きで大好きでたまらない映画のひとつなのであります。パトリック・スウェイジの男くさい魅力満載! 海でも空でもおおらかで冒険魂あふれていてカッコよくってメロメロ。何度観ても風景の美しさと男の友情のせつなさにやられてしまいます。よく書くことなのですケレドモ、好きな映画によくキアヌ・リーブスが主演しています。ほんと偶然にも脇役が大好きで観ると主演がキアヌってこと多いのですよね。キアヌ自身は全く好みではないのでありますが。こういうことも不思議だなぁって思います。映画を観ていて。
 今まで観て心の琴線を振るわせた映画のDVDを少しずつ揃えています。これもまた楽しいことで。海モノで言うとジャン・レノの『グラン・ブルー』が欲しいのですケレドモ、生産も在庫もないのよねぇ。なんとか探して手に入れたいものであります。海モノはドキドキしちゃって大好きなのよねぇ。



2006年06月22日(木) 『踊る天使』 永瀬隼介

 鹿島英次は歌舞伎町のぼったくりバーの雇われ店長。ある夜、英次の夢のために風俗で必死に働く恋人からメールが入る。《さよなら がんばて》・・・それは火事に遭遇した恋人が煙にまかれながら最期の力を振り絞って寄越したメールだった。その火災は放火だと知り、英次は復讐に立ち上がる。そして連続する放火殺人の背後にバブル時代の闇経済の真実が浮かび上がり・・・!?

 放火によりエクスタシーを感じる、そんな性癖を持ってしまったら、この世は地獄ですね。全てを焼き尽くす火の猛威に立ち向かう消防士、まさに命がけでしょう。火によって人類は進化したんだなぁと思いますケレドモ、火に魔力があるのも真実なのでしょう。浄化する=火で焼き尽くすという構図もよく目にします。この物語では悲惨な生い立ちの中で火に魅入られてしまったふたりの男の壮絶な人生が語られていて、狂乱のバブル時代の経済についても語られています。バブルの時代ってこんなだったのか、と背筋がうすら寒い思いをしつつ読みました。踊る人、踊らされる人・・・踊りを冷静に眺める人。どれになるかで人生は決まってしまうのかもしれません。冷静な目線が必要なんだろうなぁ。むずかしいことだなぁ。

『踊る天使』 2006.5.25. 永瀬隼介 中央公論社



2006年06月21日(水) 『さくら草』 永井するみ

 ローティーンの女の子をターゲットにしたジュニアブランドのプリムローズ。従来の安価さより素材&デザイン重視の高級感を徹底し、少女達に受け入れられ急成長を遂げている。ジェネラルマネージャーの日比野晶子はプリムローズのブランドイメージUP確立に必死になって奔走する毎日。社長兼デザイナーの桜子はフワフワした夢見る少女のままなので晶子の負担は増すばかり。ある日、プリムローズのお洋服を着た少女の死体がラブホテルの駐車場に遺棄されていた。過熱するプリムローズブームゆえプリロリと呼ばれるプリムローズ・ロリータの犯行か!? 少年課の刑事・白石理恵は女性ならではのファッション感性を武器に事件に立ち向かうのだが・・・。

 女の子はいつだって御洒落して自分を可愛く見せたい。その深層心理に目を向けた高級志向のジュニア・ブランド。高価で素材&デザイン重視のブランドに熱中し、翻弄される少女と母親達。なんだか現代世相の一部をうまーく切り取っている物語でした。いいものを欲しい、身につけたいという思いを商売にするアパレル業界。踊る阿呆は自分の阿呆さ加減すら見失ってしまう。過熱する先に起こる事件の真相もまた人間の心の闇を映し出し・・・うーん、なかなか面白かったですねぇ。ただ残念に思ったのは刑事の白石理恵が中途半端だったこと。彼女の心の傷もチラリと描かれますケレドモ、もう少し踏み込んで欲しかったです。晶子に負けないくらいに描いてもらえてたら言うことなかったんだけどー。

「服の趣味は、如実に人間の内面を映し出すものだと思います」

『さくら草』 2006.5.30. 永井するみ 東京創元社



2006年06月20日(火) 『オブリビオン 〜忘却』 大石直紀

 梓は六歳の時に生まれた・・・六歳以前の記憶が無いのだ。六歳から人生をはじめ、八年が経ち中学生に成長。しかし、梓が抱える違和感は家族(父・母・兄)との写真が一枚もないことに気付き確かなものとなる。そこに渋井というジャーナリストが接触してきた。梓の本当の母は父に殺され、逃亡していた。ショックで記憶を失った梓を育ててくれたのは母の姉夫婦だった。逃げ続ける父と梓を繋ぐものはバンドネオンという楽器だった。切なく心に響くアルゼンチン・タンゴ、それは逃亡する父の郷愁。梓が辿り着く事件の真相に隠されていた悲しい真実とは・・・!?

 読みやすいだけに筋も真相も早い段階で読めてしまいました。ドラマの原作っぽい感じで映像が浮かびやすい物語でした。たぶん映像化されるのではないかしら。なかなか旅愁あふるる場面も多いし、なによりアルゼンチン・タンゴを演奏するシーンを見てみたいと思いました。すごく素敵だろうなぁ。真実を知りたいと思う気持ちはよくわかりますが、知らずにいたほうがいいこともあるものだなぁと思いますが・・・知らずにいられないものだわなぁ。そこがドラマを作り出すのね。

『オブリビオン 〜忘却』 2006.5.25. 大石直紀 角川書店



2006年06月19日(月) 『墜落』 東直己

 畝原は、依頼された少女を探し出す。依頼人は少女の義理の母。少女は義母を毛嫌いし、自分が援助交際していたことが父親に知られたら死ぬと畝原にわめく。一件落着と思っていたところへ少女の近隣から依頼が舞い込む。飼い猫が首を切られて殺され、怪文書が投げ込まれていたと言うのだ。その家には北海道で有名な詩人が住んでいる。依頼を受け、動き始めた矢先に殺人事件が起こり・・・!?

 東直己さんの畝原探偵シリーズの新作です。ヘビイな体験を重ねる畝原探偵がまたまた陰惨な事件に巻き込まれてしまいます。今回の事件の発端となる少女が忌まわしくて・・・吐き気がしてしまいました。こういう感覚的にズレて摩耗してしまった少女達はどんな女性になっていくのだろうか。自分の性を切り売りして平気だなんてどうにもこうにも気が滅入って仕方なかったです。また畝原にとっての義理の娘の真由が畝原を手伝ってインターネットでの掲示板の会話を分析し、畝原にレポートするのですが、なんとまぁ垂れ流しの会話であることかと暗澹たる思いになりましたね。匿名で攻撃的で悪意だらけ。いったいなにが楽しいのだろう。剥き出しの悪意に平気で接する事ができる感性がもはや私には解読不能。畝原も時代とのギャップを感じた事でしょう。よく「魔が差す」と言いますが、ほんの一瞬の魔で人生が崩れてしまうこともあって・・・なんともxxx このシリーズは本当に大好きなのですケレドモ重くて痛くて辛かったです。ほんの少しの希望の光が救いと言えば救いでした・・・。なんだかやりきれないなぁ。

「人間は、とんでもない出来事を引き起こす力も持っているんだよ」

『墜落』 2006.6.8. 東直己 角川春樹事務所



2006年06月18日(日) 『モドキ』 ほしおさなえ

 自分のことを愛して欲しい、わかって欲しい・・・そう渇望する主婦がAIWというサイトに辿り着く。そのサイトには小さい女が色んな目に遭っていた。そしてその女は子役時代の自分の顔に瓜二つだった・・・!? サイトにはまり、写真にあわせて物語を創作し、サイトオーナーに送信。夢中になれるものがやっとやっと見つかった。このサイトオーナーなら私のことをわかってくれる。きっときっとわかってくれるはず・・・

 いやぁ、ものすごい展開に驚きました。これってSFホラーになるのかしら。なにが怖いって小さな女にぺろりと舐められた女から小さな人間もどきが次々と生まれるところ。生理的に合う人合わない人っているだろうケレドモ、私的には大ビンゴでありました。なんと言うか・・・軋むような寂しさに足掻く人間の心の叫びが聞こえてくる感じでした。ものすごく恐ろしい物語なのでありました。ぞくぞく。

 それは結局、自分にも物語があるって思い込むための道具なのかもしれない。ここにいるのは、ほかのだれでもない自分だ。そんなバカみたいに小さいことを確認するための。
 数え切れないほどいる人間のなかで自分だけが特別なものになるためには、特別な欲望を持つしかない。それがどんなにくだらなかったとしても、それを持ち続けないかぎり、世界が自分が消えてしまう。

『モドキ』 2006.4.30. ほしおさなえ 角川書店



2006年06月17日(土) 映画『ファンシーダンス』

 美意識追求男・陽平は、10代目を継ぐべく寺へ修行に赴く。陽平の未練はシティライフと美女・真朱。たった一年の辛抱と割り切ってみた陽平だったが、なにかとお寺で騒動を巻き起こす。お坊さんになるためのアレコレの修行は厳しく禁欲的、そんな削ぎ落とされた毎日の中にぴて陽平はその生活ゆえの美しさを見出す。持ち前の負けん気を発揮して、どんどんお坊さんらしく成長して行く陽平だったが・・・!?

 『シコふんじゃった!』ではお相撲さん、『Shall we ダンス?』では社交ダンス・・・と一般ピープルがあまり知識の無い世界に踏み込んで、面白おかしくそして素晴らしい魅力を教えてくれる周防正行さんの映画監督デビュー作品(らしい)のですが、これがものすごーく面白い! 周防ファミリー勢揃い。コレが原点だったのですねぇ。すごいなぁ。本木雅弘が顔がいいだけのアイドルから俳優に転身できたのってコノ映画あってこそではないかしら。丸坊主に剃り落としてもカッコいい本木雅弘と大沢健、美男子はすごい。ふたりとも演技うまいし。周防作品の要とも言うべき竹中直人さんの怪演もさすが。あの独特のユニークな存在感ってどうやったら生まれてくるのかしら。陽平の恋人・真朱を演じる鈴木保奈美さんの輝くばかりの美しさには圧倒されてしまう。ちょっと生意気なアノ目つきはあれだけの美貌を持っていないと出来ない! 綺麗だ(溜息)。原作の漫画は読んでいないのですケレドモ、ちょっと読んでみたいと思います。縮小された世界に人間が集まって、権力争いも好き嫌いも当然あって、清らかだけではやっていけない坊主の世界。それでも超越したなにかが手に入る・・・のかもしれません(笑)。厳しい修行のソノ果てに・・・。



2006年06月16日(金) 『魔夢十夜』 小森健太朗

 慈久学院は、かつてはキリスト教のカトリック系ミッションスクールで全寮制の女子校だった。丹崎恵は2年生になる機に寮へ入り、文学部へ入部する。どうやら文学部には恵の好きなライトノベルの現役作家がいるらしいのだ。新しい生活に胸を膨らませる恵だったが、春休みに自殺した少女が文学部に在籍していたことから事件に巻き込まれて行く。謎の自殺、カルト的集まり、性儀式・・・そして第二、第三の死者が・・・!?

 文書や文体との相性というものをつくづく考えさせられた一冊でした。内容(設定)はものすごく好みなのに読み進めるテンポに乗り切れない。一生懸命読み進めないとダメな作品は面白い以前に疲れてしまいます。本当に内容はトッテモとっても好みなのになぁ・・・。残念。

 どのみち起こったことは消せません。逃げるわけにはいきませんから。

『魔夢十夜』 2006.5.30. 小森健太朗 原書房



2006年06月15日(木) ドラマ『トリック』

 マジシャン・山田奈緒子と物理学者・上田次郎が霊能者と名乗る人物達のトリックを次々と見破っていく感動の・・・いや、お笑いの物語である。ブフフ。
 
 ドラマ『トリック』をリアルタイムで見逃してきたのですケレドモ、昼に再放送をやってくれたおかげでシーズン1を見ることができました。奈緒子と上田の出会いが賞金欲しさの奈緒子の偽霊能者ぶりっこだったんだなぁ。宗教と霊能者が結びつくと言うのはありがちで、嘘もだましも世の中にはやりきれないほど横行していて、でも最後の最後に本当の霊能者は・・・という展開とオチはトッテモ面白かったです。
 しかし、このキャラクターたちのユニークさったらなんなんでしょ。ヒロインの山田奈緒子は美しいけれど天然ボケで貧乳。上田次郎は自分大好きな巨根童貞男。奈緒子の母は文字に力が宿る事を知る書道家。奈緒子と上田にやたら絡んでくることになる刑事の矢部はコテコテの大阪弁とカツラで強気に弱く、弱気に強い(笑)。この4人の強烈なキャラクターのぶつかり合いが混沌とした面白さを醸し出しています。登場人物それぞれが好き勝手に小ネタ満載で何度見ても笑えてしまう。
 その中でも群を抜いているのはカツラの矢部刑事の生瀬さん。この人はこういう役をやらせたら今や右に出るものがいないんじゃないかしら。実際リアルでも少々頭髪が危ういことをドラマであそこまで笑いにしてしまえるなんてすーごーいー。現在進行形のドラマ『トップキャスター』でもいい味だしてくれてます。こういう独特の脇キャラが生きてるドラマって成功するんですよね。さて次のシリーズもなんとか見なくては!



2006年06月14日(水) 『東京ボイス』 ヒキタクニオ

 バリーモントプロダクションの社長の針谷は三十年前にフラワーチルドレンというバンドで一世風靡した男だった。イケメンの吉本は、バリーモントでCDを出すも泣かず飛ばず。数年後、フリーランスとなった吉本はかろうじて音楽にしがみついていた。なので針谷からもらう仕事は貴重。ボイス・トレーニングをする吉本の元に様々な人間がやってくる。都会の雑踏の中で自分を必死で表現しようとしている人間達の息苦しいほどの喘ぎ、命の叫び。人生模様。

 これは予想以上に面白かったです。どうにかして音楽で生きて行きたい吉本自身も軸にした歌う人間達の苦しみや悲しみがスーッと心に馴染むように入り込んできました。音楽というものは人間にとって根源的に必要な要素なんだろうなぁナンテ思いましたね。歌うにしろ奏でるにしろ聞くにしろ・・・なくてはならない音たちだよなぁ。うんうん。吉本の元にボイトレに集まる人たちの歌いたい想いも人それぞれで妙に心に響きました。一番その歌が聞こえてきた気がするのはあるヤクザさんのクリスタルボイスでした。あれは・・・泣けるなぁ。また表紙の唇が歌っているようなのだケレドモなにやらエロチックで、内容にもずいぶんとセックスが生々しく描かれています。男と男のセックスの描写は興味深かった。絶対的に体験できないものだから想像するしかないもの。そういうふうに愛し合うんだなぁって。男と男もせつないわ。

「そんなんじゃないの。みんなに共通しているのは喘ぎってこと。あれがしたい、これがしたい、こうなりたい、こうしたい、っていう欲望ばっかり、そういう喘ぎが現れた声なのよ。喘いで喘いで渇き切った喉から絞り出されるような声ね。吉ちゃんの声は、その代表だったわ。今夜はそれが濃密になったみたいね」

『東京ボイス』 2006.4.10. ヒキタクニオ 講談社



2006年06月13日(火) 『家族会議』 吉村達也

 沢木孝は妻・麻紀と相談して3歳と6歳の息子の情操教育を兼ねてはじめての家族会議を行う。しかし、結局は孝と麻紀の思っている方向に息子達を誘導するという後味の悪い会議となってしまった。反省するふたりだったが、麻紀が倒れ、あっけなく死んでしまう。途方にくれる孝の前に現れたのは麻紀の母。義母は勝手に家に入り込み、息子達のためと言う大義名分を振りかざし、孝の生活さえ干渉するようになる。義母の存在に圧迫感を感じた孝は13歳年下の絵里と再婚を決意する。予想通り義母の激怒→壮絶な嫁いびりがはじめるが、絵里は動じない。なぜならば絵里にとって『不幸だから人生は素晴らしい』ものだから・・・

 娘を亡くして孫を育てたいがゆえに婿の家に強引に入り込んでくる義母。13歳年下で不幸大好きな再婚相手。孝はこの妙な二人の女に挟まれて地獄へまっさかさまに落ちて行く。でも結局は孝という男の軸がしっかりしていないからそういう災厄の女を二人も呼び寄せてしまった訳で。優柔不断はよくないなぁ。あと寂しいから大変だから、そういうので再婚をいそぐなんてろくなもんじゃねぇx 

「愛しあいながら別れたふたりは、じつはまだ別れていないんだよ。あの世とこの世に別々に暮らしているだけで、まだまだ心はつながっている」

『家族会議』 2006.4.25. 吉村達也 集英社文庫 



2006年06月12日(月) 『獣王星』 樹なつみ

 350年前に人口増加対策として地球からバルカン星系に移民を開始、2156年にバルカン星系連邦として独立した。バルカンの惑星は総て環境改造され人工的に人の住める星である。バルカンに住む人々の寿命は50年と短命。ある日、バルカン連邦の首都ユノの次期首相と目されているクラインと妻が惨殺されていた。それを目撃した双子の息子トールとラーイは拉致され、バルカン星系に存在しない星キマイラに落とされてしまう。この星は肉食の植物ばかりで人間達にとっては生き辛い地獄のような星。獣に戻らならなければ生きられない。よってこの星は獣王星=獣の王だけが生き残れる星と一部の知識人の間で呼ばれている。まだ幼いトールとラーイの運命は・・・!?

 深夜のアニメ獣王星を録画して見るようになり、その展開の面白さにたまらず原作を読んでみました。するとまぁスゴイすごい! まさか物語がこんな進み方をしてあんなエンディングを迎えるとは・・・いやぁ想像できない凄さで泣き所満載でありました。あらすじを要約していたらどこまでもなにもかも書きたくなってしまって大変でした。ネタバレしないで要約するって本当に難しい。自分が感じた面白さの一部くらいは届けたいし。うーん。要約にはかけなかったのですケレドモ、登場人物がものすごく魅力的です。主人公のトールは、まっすぐで頑なで力をどんどん貯えていく少年。双子の弟ラーイは見た目はトールと瓜二つながら性格は真逆。キマイラで最初に二人を救ってくれるザギはなかなかにミステリアス。次に出会うサードはイケメンで自信満々で憎たらしいほど魅力の垂れ流し。トールを見初めるティズは元気で可愛くて生命力あふるる少女。ティズの上司(って言い方でいいのかしら)チェンは粋でカッコいい姐御。トールが心惹かれるカリムは絶世の美女・・・とまぁ主だったキャラそれぞれが素敵すぎて(まぁラーイは問題ありだけど)こんな奴らが暴れるのだから面白くない訳が無い! ただ漫画を読んで残念だったのはもっと長く描きこんで欲しかったということ。エピソードや登場人物を簡単に使い棄てていて惜しい、ものすごーく惜しい。もっと長くて壮大に描いてくれたらよかったのに。ああ、ほんとに残念で。
 この物語の半ばから獣王星の意味がわかってきて、その意味の凄さにビックリ暁天でありました。しかも、しかも、アノヒトやコノヒトがあんなことにぃぃぃっ!!! もう一気呵成にトンデモナイ展開を見せて涙が止まらないのでありました。アニメではさすがにかなりタイトに搾っているようだケレドモ・・・どう描いていくのかしら。アニメも本当に楽しみなのでありました。ちなみにトールの声はキンキキッズの堂本光一君でサードは小栗旬君。サードの声がセクシーですっごくいいの!

 選んだ人生の決着(ケリ)くらい自分でつけてみろ!!

『獣王星』完全版� 銑� 2006.5.10. 樹なつみ 白泉社



2006年06月11日(日) 『棄霊島』下 内田康夫

 元刑事の後口は、軍艦島で起こった連続する事故死について不審を抱いていたことに光彦は気付く。正義感の強い後口が犯罪を見逃した出来事に行き当たった時に光彦は後口の忸怩たる思いに同調する。生と死と民族と。小さな島国日本に連れてこられた異国の民の苦しみと恨み。過去の怨念が現代に事件を引き起こす。光彦のつける決着とは・・・?

 内田康夫さんの物語は本当に勉強になります。興味の無いことを知ろうとしなくて無知のままきたことを内田節で優しく柔らかく教えてくださいます。日本が強制連行してきた異国の人々、その国の人々が現代で日本人を拉致している・・・そういう本当にあったこと、本当に起こっていることを内田康夫さんの目で見て心で語られています。内田康夫さんの考え方が絶対的に正しくはないにしても、私の様にあまりにも事実を知らないで生きてきた人間には大きな指針となってくださいます。かの国との軋轢、アメリカとの付き合い方・・・何よりも意志も意見も持たない日本、日本国民ーそれが大きな問題なのではないかと思います。自国を守る術を持たない民でいては滅びを待つのみなのではなかろうか。争いも奪い合いも無い世界ならばこんなこと考えなくていいのだろうケレドモ・・・人間は争う生き物なんだなぁ。あーx じたばたxx

 眼下の殉教の島、それに日本列島の至る所から、無為に棄て去られた霊魂たちの慟哭が聞こえてくるような気がした。

『棄霊島』下 2006.4.30. 内田康夫 文藝春秋



2006年06月10日(土) 『棄霊島』上 内田康夫

 浅見光彦は「旅と歴史」の藤田からピンチヒッター取材を頼まれ、長崎県五島列島へ旅をすることに。飛行機ギライの浅見はフェリーに乗り、元刑事の後口能成という老人と知り合う。カメラが趣味だと言う後口と意気投合し、気のいい後口は浅見を島の案内を買って出てくれる。後口から軍艦島の悲しい歴史を聞き、胸を震わす浅見だったが、後口は軍艦島に関してなにやら屈託がある様子が見て取れた。そして東京へ戻った浅見は、後口が事故死をしたと知らされて・・・!?

 ミステリー会の寅さん(笑)こと浅見光彦ぼっちゃんは、またまた事件にすすんで巻き込まれてしまいました。今回の旅先は五島列島、隠れキリシタンの悲しい歴史だけでなく日本人の汚れた愚かな過去まで隠し持っていた。負の歴史を日本人はどう償って生きるべきなのか。汚れた歴史に目をそむけたままでいいのか。見ないふりをしてしまいがちな日本人気質について考えさせられています。下巻で内田センセはどうおさめてくださるのやら。起こったこと、起こしてしまったこと・・・その過去を変えられないのであれば、今をこれからをどう向き合って生きるかを考えなければならないのかもしれません。

 過去は振り返らない主義 ー というより、振り返りたくない過去ばかりだ。その罰として生かされているような気がする。確か、死ぬことのできない罰があると聞いた。四十歳を不惑といい、その倍も生きていながら、不惑どころか妄執の雲に包まれたような生きざまを変えられない、己が性格はおぞましいばかりだ。

『棄霊島』上 2006.4.30. 内田康夫 文藝春秋



2006年06月09日(金) 『グイン・サーガ108 パロへの長い道』 栗本薫

 グインとリギアはマリウスとフロリーとスーティを連れて逃亡を続けていた。利発で可愛らしいスーティを父親の元に奪われる混沌を困難を避けるため、フロリーとスーティの平穏を守るため。あまりにも有名で伝説の豹頭のグインは大きすぎる存在ゆえ身を隠すに大変だった。追っ手から逃れ、グインたち一行は不思議な城へ紛れ込む。コングラス城の主カーディシュに悪意は感じられない。しかし不気味で不思議な城の中でグインは・・・!?

 記憶リセットされたグインはリンダに会えば記憶が戻ると信じてパロを目指す。しかしタイトル通りにパロへの道はどうやらまだまだ長いらしい(笑)。なんだかこのダラダラ蛇行する感じが栗本薫さんの持ち味なんだよなぁと感動してしまいました(苦笑)。昨日、本屋さんのレジ横に積んであって迷わずプラスして購入! レジ横って言うのはホットポイントだそうで、見てしまうとついついプラス購入されるようなものを置いておくらしい。必然としてデスノートやら必ず売れ筋商品が置かれるわけで。グイン・サーガも必ず売れるシリーズなんだなぁとしみじみしました。去年末から読み始めたグイン・サーガは本当に面白い世界です。長くて壮大だから忘れてることも多いのですケレドモね。えへへ。さて、記憶を失った悩めるグインも愛らしい。記憶を失ってリンダを求めてるってのがグインのココロ模様である気がしますね。完結するまでは絶対に死なないで欲しい>栗本薫!とまたしても切に願うのでありました。だけど栗本薫ってものすごーく長寿って気がする、なんだか。妖怪?(笑)

『グイン・サーガ108 パロへの長い道』 2006.6.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年06月08日(木) 『渚にて』 久世光彦 ※内容に触れています!

 クルージング・スクールに参加した少年少女たちが海難事故に遭遇、辿り付いた孤島で生き抜くことになる。冒険モノでもファンタジーでもなく、ひたすら生きるために智恵を絞り、現実に向き合う少年少女たち。なんとまぁヘビイなサバイバルさ。生と性・・・若いから当然で。だけど一人の少年が二人の女の子にモテモテで関係もっちゃうてのはあり得ないー! それに女の子が妊娠はするのに生理について描かれていないって不自然だった。読んでいて女としてはソレが一番問題なんだぞー!と今は亡き久世さんに突っ込んでみたり。ラストにも大いに疑問を感じるぞー!と天国の久世さんに叫んでみたり。ラストだけは幻想と言うかファンタジーでありました。いやむしろ残酷物語って感じも・・・x あり得ない。しっかり者のリーダーの少年の苦悩や葛藤や壊れて行く過程は痛いほどにわかってしまって・・・そこは問題でした。私もたぶん似たように頑張って頑張ってプッツンして壊れちゃうよう。逞しく強かに孤島で生き抜いていける人間になりたい。そう思いました。あいあい。

『渚にて』 2003.9.30. 久世光彦 集英社



2006年06月07日(水) 『続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム』 山田宗樹

 笙は人生に迷ってしまっていた。就職に失敗、夢も目的もなくフリーターな毎日。恋人だった明日香は医者になる夢を追いかけ、笙と別れ、佐賀県の医大に入学しなおしていた。ある日、自分の歴史を売っている(下着など)ファニーフェイスのユリと知り合い、彼女に連れられて彼女の劇団へ行く。劇団の主催者ミックさんは一風代わった年齢不詳の男。笙は成り行きから舞台に立つこととなり、演じる魔力に取り付かれて行く。明日香は年下の彼氏に学生結婚を申し込まれ、悩み戸惑う。大きな病院の跡取息子である彼との結婚は玉の輿。しかし、明日香の医療への夢はソコとは違う方向を示していた。笙と明日香の生きる道は・・・

 『続・嫌われ松子の一生』と言うタイトルなので、アノ川尻松子さんをどうやって登場させるのか興味深々で読みました。『嫌われ松子の一生』で松子の人生を辿る松子の甥・川尻笙のその後の人生を描くと言う形でした。まぁ、確かに松子のことを笙くんは追想するケレドモ・・・うーん。物語は面白かったです。嫌われ松子でナイスキャラだった沢村めぐみ姐さんもしっかり登場してくれて笙にいろんな言葉を伝えてくれるから。沢村姐さんは松子の分身みたいなもので粋で素敵な女性。こういうふうに年を重ねたいというカッコよさがあります。笙も明日香もトテモいい子で、人生に迷いながら悩みながら自分の生きる道を見つけてまっすぐに進もうとする・・・ほんと気持ちいいほどに、羨ましいほどに。笙と明日香のその後をまた読みたい。『続々・嫌われ松子の一生』で(笑)v

「世の中の人がぜんぶ、自分と同じわけじゃない。よく考えたら、そんなの当たり前だよね。価値観、習慣、その他、みんな違うってことを、まず認める。認めた上で、その違いを尊重し、受け入れる。・・・・・・そう、共感じゃなくて、尊重するんだよ」

『続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム』 2006.5.20. 山田宗樹 幻冬舎



2006年06月06日(火) TBS昼ドラマ『我輩は主婦である』

 クドカンに寄る初昼ドラ!?なので録画してはチェック中のこのドラマ。お、おもしろい。夏目漱石が主婦に乗移っちゃって現代を観察しつつ、驚きつつ、なんとなく順応すると言う・・・実はどこかで読んだことがあるような設定(笑)。まぁ、それは森鴎外が現代にタイムスリップしてきてモリリンなんて呼ばれちゃうのでちょこっと違うケレドモ、テイストは似てるかな(笑)。でもそこはほれ奇人変人天才クドカンの脚本だから笑える、笑える。乗移られちゃう主婦のみどりちゃん役はスケ番デカ(違う)斎藤由貴さんで、彼女がうまいのよね。みどりちゃんの気障な亭主・赤パジャマことタカシ(ミッチー)の母親が竹下景子さん=泣き女で、二大女優の掛け合いが漫才みたい。竹下景子さんが姑しかもおばあちゃんナンテお嫁さんにしたいナンバー1も寄る年波には勝てないのか。がくり。みどりちゃんと漱石=我輩が出たり入ったりしちゃうのを御向かいのクリーニング屋のやすこちゃん=なまはげ(大受け!)がやたらめったらヤナ家(あ、みどりちゃんの嫁ぎ先がヤナさん)に出入りして食べるわ飲むわ寛ぐわ悪態つきまくるわのやりたい放題なんだケレドモ・・・彼女が最高にいいっ!!! 元レディースでちょっくらお馬鹿ちゃんなんだけど愛嬌があって憎めない。亭主も子供もいると言うのに変な女なの。子供が「おかあさんゴハン」と言うと「向かい(=ヤナ家)で食べて来い」と平気で本気で言うような女。彼女は池津祥子さんと言う女優さんで聞き覚えのある声だと思っていたら池袋ウエストゲートパークでキングの女=ジェシーを演った女優さんだった。あれってインパクト強かったもの。クドカンファミリーなのでしょう。これから楽しみな女優さんだわv あ、そうそう忘れちゃいけないヤナ家の家業、無論勿論古本屋さんデス。みどりちゃんに乗移った漱石が漫画を読んで(ケンシロー)面白い・・・と言わせるあたり、クドカンならではだなぁ。テーマソングもトッテモらぶりぃで(斎藤由貴&ミッチーのデュエット)どうやら「うたばん」に出演する模様。またミッチーがぶっ飛ばすんだろうなぁ。期待。期待。



2006年06月05日(月) 映画『ポセイドンアドベンチャー』

 豪華客船ポセイドン号はカウントダウンを目前にパーティで盛り上がっていた。誰しもが新年を祝い、喜び合う中で海底地震発生・・・大津波がポセイドン号を襲い、豪華客船は転覆。上下さかさまになった船はどんどん浸水が始まる。上になっている船底の厚み他の部位より薄く、そこから救助がくるはずだと信じたスコット牧師と数名の命をかけた冒険が始まった・・・!

 現在、公開中の映画『ポセイドン』は『ポセイドンアドベンチャー』のリメイクで、設定だけは同じで登場人物や人間模様は全く新しいものとなっているそうです。カート・ラッセルとリチャード・ドレイファスと言うお気に入りの俳優さんが出演されているので『ポセイドン』を見に行きたいと思っていたところ、テレビで『ポセイドンアドベンチャー』を放送してくれました。らっきーv 70年代前半の映画ですケレドモ、なかなかよかったです。ジーン・ハックマン演じる神父さまの苦悩や神への問いかけが胸に痛くて・・・。自分の人生を自分で選んで進む厳しさを教えてくれる映画でした。



2006年06月03日(土) 『獣の夢』 中井拓志

 1995年、ある小学校で猟奇的事件が発生。夏休みに学校へ忍び込んだ小学生たちが屋上で遊ぶうちに一人の少年が頭を強打して死んでしまった。彼らは熱に浮かされたように少年を解体して捨てた。屋上から撒いたのだ。事件は世の中を震撼させ、彼らの中にいたひとりの美少女に注目をした。世間は少女をこう呼んだ、『獣使い』と。そして9年後、またもや同じ学校でバラバラ死体が発見される。その直前に少女は当時の担当刑事を呼び出し、「『獣』が戻ってきます」と告げていた。獣とは・・・、獣つかいとは・・・?

 『獣』が抽象的でなんとなくわかるケレドモ核の部分を掴みきれないもどかしさが残りました。こういう異常な事件や何故だか似たような事件が連鎖していくことも本当に世の中に発生しています。結局、ハッキリと掴めなくて確かな言葉で表現できないからこそ恐怖や不安となるのでしょうね。この物語のヒロインの美しき獣つかいにもっともっと焦点をしぼって欲しかったです。面白かったケレドモ不完全燃焼で悶々としています。

『獣の夢』 2006.1.10. 中井拓志 角川ホラー文庫



2006年06月02日(金) 『無傷(むしょう)の愛』 岩井志麻子

 嫌いなのに気になる存在、それを「裏のアイドル」「マイナスのアイドル」にする女。アイドルを見つめ続け、的確に悪意を届ける。それが快感・・・

 岩井志麻子さんが描いた「ここだけの話」、それは立場が違えば顔がガラリと変わってしまう。言い分はそれぞれにあり。どちらが正しい訳でもない。しかしその顔にはくっきりと悪意が浮かんでいる・・・って感じの短編集です。一番怖いと感じたのは『偶像の部屋』でした。怖いって言うか解読不能ゆえに不気味でした。解読不能であるケレドモ、ありそうなのだもの。自分は心優しい善意の存在だと信じて疑わない女のうかつなまでの馬鹿さ愚かしさも悪意を撒き散らしていくし。人間の心の闇に潜むものはなかなか恐ろしいものだわ。

 ・・・・・・会社に、うかつな女がいる。悪気がないというのはわかっている。ただうかつなのだ。その女が、善意の顔でいったのだった。

『無傷(むしょう)の愛』 2006.5.25. 岩井志麻子 双葉社



2006年06月01日(木) 映画『嫌われ松子の一生』

 中島哲也監督と言えば、『下妻物語』の監督。それより前ではサッポロ黒ラベル(山崎努VS豊川さまの卓球編)などのCMディレクターと言った方が有名かもしれません。「X’smap 〜虎とライオンと五人の男〜」のテレビドラマも手がけられていました。こうした流れを見てみると、いかに映像に魂をこめる方かわかりそうなものですね。その中島哲也監督がタイトルに惹かれ映像化した『嫌われ松子の一生』は原作とは全く違う世界を見せてくれました。『下妻物語』は意外に原作に忠実で成功したことを思えば、ここまでガラリと雰囲気を変えて成功してるってスゴイなぁと思いました。壮絶で悲惨な松子の人生をミュージカル仕立てでコミカルテイストを加え、悲惨だけど笑えちゃう・・・みたいな出来上がりでした。そこに賛否両論はあるのかもしれないケレドモ、私は原作に負けず劣らず素晴らしいと思いました。映像全てにぎっしり濃いものが詰まっていて目を離すことができない。こういう映像って見終わって疲れちゃいますけれどね。なんか虚脱しました。中島哲也さんの作品はこれからもものすごく楽しみだなぁ。
 ヒロイン松子を演じた中谷美紀さんは綺麗でした。細いのに胸はあるし、スタイル抜群で風俗嬢の場面での色気あふれる演技の艶っぽさにはノックアウトされてしまう。あんまり好きな女優さんではなかったケレドモ、ハマリ役だったと思います。刑務所で知り合って親友となる沢村役の黒沢あすかって人はたまりません〜。見ていてゾクゾクしちゃう女っぷりですぅ〜。ドラマや映画でも気になる女優さんでしたがますます好きになりました。決して正統派美女ではないケレドモむちゃくちゃいい女v なによりアノ声がいい。ああ、思い出してもめろめろ。俳優さんたちはとにかく一癖も二癖もある役者さん揃いで贅沢な映画でありました。好き嫌いはハッキリ分かれそうな映画ですが、私からは超オススメ。ドン底から這い上がろうとした松子のこれからを観たかったなぁ・・・。



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