酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年10月30日(日) 『記憶の食卓』 牧野修

 名簿屋に勤める折原は、持ち込まれた名簿に薄っぺらい冊子を見つける。ぱらぱらとページをめくった折原は、そこに自分の情報が載せられていることに気づき愕然とする。いったいいつ自分の情報は盗まれたのか。自分を含めたたった14人の名簿を調べてみると、トンデモない事実にぶち当たり・・・!?

 牧野修さんで、ホラー+食卓=・・・答えはアレしかないですよね(にたり)v 大石圭さんの『死人を恋う』でネクロフィリアものを読み、すぐあとに牧野修さんのこのほにゃららを読み、さすがの私もうぐぐ〜となりました。ちょっとだけ(笑)。個人情報漏洩から、こんな展開が待っているとは全く想像できなかったです。贅沢な進めかたじゃないのかしら。ふたつの物語の融合だし。
 もう既にバレバレかと思う(笑)この物語のテーマについては、アンデスの正餐に見られるように、人間の根源に関わることなのだと思うのです。だからトテモ興味深いのです。さすがにこの物語のような積極的に食してみたい(orされてみたい)とは思いませんケレドモ、自分が生きるか死ぬかの状況に追い込まれたとしたら、いったい私はどうするのでしょう(謎)・・・

『記憶の食卓』 2005.9.30. 牧野修 角川書店 



2005年10月29日(土) 『南方署強行犯 黄泉路の犬』 近藤史恵

 圭司刑事は、先輩刑事の黒岩とともに盗まれたチワワを探そうと奔走する。その捜査の過程でふたりはトンデモナイ動物好きの実態を目の当たりにしてしまうのだが・・・

 前回の『南方署強行犯 狼の寓話』に続き、圭司刑事(読みが笑える)は人間の抱える空洞(闇と言うべきなのかもしれませんね・・・)を見てしまいます。近藤史恵さんの描く物語は、ライト感覚であっても切れ味鋭いナイフのようです。だから惹かれてやまないのですケレドモ。人間は弱くて寂しい生き物だから、自分以外の生あるものに愛情を求めたり、ぶつけたり。でもその対象が人間であれ、動物であれ、歪んでしまった愛情であるならば・・・それはもはやエゴでしかありません。近藤史恵さんが愛してやまないテツくん(ワンちゃん)を大切にされている気持ちがわかるだけになんとも心に痛く重く響いてくる現実がそこにありました。さすがだ。近藤史恵さんv

 中途半端に手を出して、結局手に負えなくなるのなら、はじめから手を出さない方がいい。

『南方署強行犯 黄泉路の犬』 2005.9.30. 近藤史恵 徳間ノベルス



2005年10月28日(金) 『そして今はだれも』 青井夏海

 名門明友学園で連続して女生徒たちが不可思議な退学を繰り返した。それは学園の教師‘X’が、彼女達の弱みを握り、恐喝し、追い詰められたからだと言う噂があった。新任で学園にやってきた教師・笑子は数名の生徒達とともに‘X’を探すはめになるのだが・・・

 久しぶりに青井夏海さんの物語を読みました。この方の物語がNHKで映像化されるなど、お茶の間受けのよい作家さんですよね。文章から伝わる温かさのせいかしらん。今回は卑劣な教師‘X’を笑子と数名の生徒達が探すわけですケレドモ、こういう若い子たちがいてくれるなら、私の友人の教師も嬉しいだろうなーと微笑ましく読んでいました。ええ、もちろん笑子さんは私の友人が浮かんでしまって(苦笑)。これもそのうち映像化されるてもいいような感じでした。個人的にはトテモおすすめv

「その事故が恭二君にとって、いっそ思い出さないほうが幸せなことだったとしても?」
 笑子の問いに、
「はい」
 迷わずそう答えたのは、意外にも恭二だった。

『そして今はだれも』 2005.9.20. 青井夏海 双葉社 



2005年10月27日(木) 『犬死一番の謎』 松村美香

 新聞記者の美由紀は、幼い頃に父と見た「犬死一番」という文字を追いかける。それは、鹿児島の特攻平和祈念館に保管されているはずだった。しかし、その遺書は無くなり、美由紀はやはり新聞記者だった父と「犬死一番」の遺書がリンクしていくことに気づき・・・

 わずか半世紀前に多くの若者が「お国のため」にその若い命を散らして行った。カミカゼと呼ばれる特攻作戦。その死はその当時では「大死一番」であったはず。でも現代人の感覚では「犬死」に近い。たった一点が加わるか加わらないかで意味が全て覆されてしまう・・・。この物語は文字通り「犬死一番の謎」と言うタイトルに惹かれ、読んでみました。馴染みのない文章にテンポを合わせる事に少しだけ苦心しましたが、テンポが合った途端にラストまで一気に読ませてもらえました。なんだかものすごく深いものをもらった気分です。平和ボケしている私にはいい刺激だったと思いますね。キチンとしたミステリーとなっていたと思います。トテモ面白く読ませていただけました。出会いに感謝v

「大死でも、犬死でも、天に召されていけばいい」

『犬死一番の謎』 2005.9.7. 松村美香 郁朋社



2005年10月26日(水) DVD『24』シーズン��

 ジャックは、大物の麻薬売人サラザールを捕まえていた。彼を捕まえるために、一年間潜入捜査をしたジャックは捨て身の行為に出ていた。ジャックの本当の狙いは他にあったのだ。尋問のためにサラザールが収監された刑務所へ行き、部下のチェイスをだまし、サラザールを脱獄させるジャック。ジャックはCTUをアメリカを裏切ったのか・・・? そんな時、ドクター・メイサーの元へウィルスに感染した死体が届けられる。今回の恐怖(テロ)は感染するのか・・・!?

 ただいまシーズン�犬鮓�ていますが、今のところラストのインパクトはシーズン�気里發痢F睛討肇�ャラクターの充実はこのシーズン�靴里發里世抜兇犬討い泙后�このDVDの感想を書く時に必ず書くことは、このドラマの内容はいつも《今そこにある危機》であると言うことです。アメリカはアメリカの抱えている問題を結構きちんと認識しているのかもしれません。強いアメリカであるために手段を選ばないアメリカ。そこにやはり手段を選ばず挑んでくるテロリストの存在。今回のテーマのように生物テロもありえることなんですよね(怖)・・・。
 今回は、キムとジャックの部下チェイスの恋愛、トニーとミッシェルの夫婦の揺らぎ、ジャックが潜入捜査中に愛したクラウディアとの関係、そしてどうしても出てくる(大笑)トンデモナイおばさんシェリーとパーマー大統領の関係などなど様々な男と女の恋愛模様が織り込まれています。それぞれがそれぞれの形に終結していき、決してハッパーエンドばかりじゃない。そんなところも現実に近いのかもしれませんねぇ。
 しかし、毎回大受けの“暴走するおばさんシェリー”のしぶとさ、したたかさには笑わせていただきました。もう最高の悪役でしたねぇ。ニーナとシェリーがシーズン�靴泙任魃討濃戮┐仁�役者と言えましょう。アハハ。そしてシェリーは別として(苦笑)、美女がたくさん出てきて見ていて楽しかったです。まずはミッシェル。凛々しい美しさはたまりません。次にキム。ジャックの娘として巻き込まれてばかりだった彼女も大人の美しさを持ちました。悪の権化(笑)ニーナ。彼女の妖艶な美しさにジャックもトニーもやられてしまって当然デス。しかーし!今回私が誰より美しいと惚れ惚れしたのは、クラウディアでした。最高に美女ですね。スタイルも顔も申し分なし。シーズン�靴泙任糧�人コンテストをするとしたら(バカ)ダントツでクラウディアに一票。ああ、もったいないことを・・・以下自粛。
 こうやってくだらないことを書いていると、今そこにある危機だけではなく、人間味あふるるところがこのドラマの魅力なのかもしれません。それにしてもジャックは人を殺しすぎ。これではただの殺人鬼〜。



2005年10月25日(火) 『依存』 西澤保彦

 ボアン先輩・タック・タカチ・ウサコ(その他)たちは、白井教授の家へ招かれる。齢六十目前に妖艶な美女と再婚したばかり。いつも通りの楽しい宴会の場へ噂の白井夫人が登場した途端、タックが顔の色を失った。そしてタカチはタックのために白井夫人=美也子さんと対決するのだった・・・

 久しぶりに旅のお供本として読み返しました。この本は2000年の7月に単行本として刊行され、私が西澤保彦という作家さんの作品と衝撃の出会いをした記念すべき名作です。この5年の間に何度読み返したことか。人生の中で大きな出会いとして心に残る本が数冊あると思いますが、これは間違いなく私の人生の一冊となりました。
 この物語は、4人の大学生をメインにしたシリーズものなのですが、私はいきなり『依存』から入った次第です。でもおそらくや『依存』だったからこそここまで西澤保彦さんを偏愛したのだと思うのです。私が西澤先生に惹かれてどうしようもないのは、あの方の描く自虐性に尽きるかもしれません。でもどこかにかすかな希望の光が見えていて。なんにしても人間というものの暗黒面や醜さを描かせたら天下一品だと思っています。じくじくと自分の古傷をほじくるような自虐性に恍惚となりつつ読み進める私は、西澤先生と同じく(いや、勝手に)かなりのマゾヒストなのでしょう(笑)。
 西澤保彦さんの作品をこれから読むという幸せな方々へ。『依存』は是非読んでいただきたい。あなたの心の中にもあんな暗黒が隠されているかもしれませんよ。

「わたしはね、引き下がっちゃいけない時は、引き下がらないの。絶対に」

『依存』 2003.10.10. 西澤保彦 幻冬舎文庫 ※酩酊本処には2回目



2005年10月19日(水) 『憑神』 浅田次郎

 別所彦四郎は入り婿先から離縁され、兄夫婦と老いた母のもとへ転がり込んでいた。文武に秀でながら次男坊であるがゆえに耐えねばならぬ境遇。ある夜、酔っぱらった彦四郎は転がり落ち、どうしてこんなところに・・・というような祠を発見。酔いも手伝ってその稲荷の祠に手を合わせてしまう。そして現れた神様は貧乏神だった・・・!?

 浅田のオッサンならではの人情あふるる時代物コメディでありました。時代ゆえのしきたりや制度に翻弄される優秀な人材の彦四郎。彼が茶目っ気を起こして拝んだ神様は三巡り・・・三度巡り来るので、貧乏神だけでは終らない(笑)。日本人なら誰でも知ってる御馴染みの、そして嫌われ者の神様たちがなんともユニークないでたちで出現する。こういったあたり、浅田のオッサンの本領発揮だとしみじみ笑えました。
 ただただ面白おかしく笑えるだけでなく、己が信じて甘んじてきた価値観が壊れていき、彦四郎が苦悩する様には一緒になって考え込まされてしまいます。こういうとこもウマイんですよね。ツボをしっかり押されてしまう。時代や周りに翻弄されながらも、己を見つけるラストの彦四郎の神々しさは、神様をも越えてしまう「己を信じて生きる姿」を見せ付けてくれます。喝采v

 人間が全能の神に唯一まさるところがあるとすれば、それは限りある命をおいて他にはあるまい。限りあるゆえに虚しい命を、限りあるからこそ輝かしい命となせば、人間は神を超越する。

『憑神』 2005.9.20. 浅田次郎 新潮社



2005年10月18日(火) 『病む月』 唯川恵

「いやな女」
 金沢で香をメインに土産物屋を経営している協子は、レストランで高校時代の友人・比佐子を見かけた。由緒正しい家柄に生まれ育った美しく傲慢な彼女が同席している若く魅力的な青年が気にかかる。協子の連れは店のスポンサーで脂ぎった中年男だった・・・

 先日、『世にも奇妙な物語』で「過去が届く夜」というドラマがとても良く(※主演女優には異議あり)、その原作が唯川さんだったので、さっそく読んで見ました。いやぁ、本のタイトルの『病む月』の秀逸さにビックリ。そういう物語はなく、全ての物語を総じて表したら『病む月』。愚かで切ない女たちにピッタリv どの物語りも本当に面白かったのですが、共感をこめて「いやな女」をピックアップ。本当に「こいつやな女やな」と毛嫌いする存在はいつの時代にも存在し、やはり相手も同じように感じているもんだと思うのです。私は、生理的に受け付けない人とはまず関わらない。同席しなければならない場合は、必要最低限以外目を合わさない、ですね。絶対に不愉快に決まっているならば、視界に入れないに限りますから。

「あなたは、本当に昔からいやな女だったわ」

『病む月』 2003.6.25. 唯川恵 集英社文庫



2005年10月16日(日) DVD『24』シーズン��

 あれから、三年。ジャックは、CTUから離れていた。そこへ大統領となったパーマーから電話が入る。核爆弾によるテロ計画を阻止して欲しいと。ジャックがジャックがあるゆえにジャックは再びCTUに戻り、核爆弾テロ計画を阻止に奔走することとなる。CTUが爆破され、パーマー大統領の周囲に裏切りと陰謀が渦巻く。核爆弾テロ計画の裏には第三次世界大戦を引き起こし、利益を得ようとする者たちの動きが・・・!?

 今回の『24』では、ふたりの‘やな奴’がなかなかいい味を出します。ジャックの宿敵のひとりで自分の事しか考えない上司トニー・メイソン。このオジサンは、核から逃げようとして被爆してしまい、最期の最期に人として男として父親として素晴らしいところを見せてくれます。不思議なもんで顔までよく見えてくるのですよね。もうひとりはファーストに引き続き、傍迷惑な暴走するオバサン・シェリー(大笑)x シェリーがアレックスという男に或る事をされるのですが、思わず「よくやったアレックス」って言っちゃったもの。世に多くいるでしゃばりで目立ちたがりなオバサンたち、シェリーを見て己を反省するがよいわ。本当にワキマエラレナイ人間って醜いものなのよね。でもシェリーも最後に頑張るから自分で自分を救えたのじゃないのかしら。ただ残念ながらシェリーは最後まで美女には見えませんけど。
 アメリカらしいのは政府内での勢力争い。力で世界を制圧しようとするアメリカらしい問題が浮き彫りになっていました。パーマー大統領がやたらめったら戦争をしかけようとしないところが好感持てますv 良くも悪くもアメリカ次第で第三次世界大戦が勃発する危機は隣り合わせなんだよね。怖いなぁ。
 最後に・・・ジャックはジャックでお約束かもしれないケレドモだ、娘のキムまで毎度毎度無茶苦茶な展開は可哀想過ぎる〜。きっとジャックが死んだら、キムの24が始まるんだね。←予想



2005年10月15日(土) DVD『24』シーズン��

 ジャック・バウワーは、娘・キムと妻・テリーとぎくしゃくと夜を過ごしていた。ジャックとテリーは別居を解消したばかり。家庭を修復する健気な努力をするジャックに緊急招集がかかる。ジャックの仕事場はCTU=アメリカ連邦テロ対策ユニット。すぐ帰るよと言い残し、職場についたジャックはパーマー議員暗殺計画を知る。パーマーは初の黒人大統領候補。暗殺計画を阻止するために動き始めたジャックを襲うのは内部の裏切りと妻子の誘拐だった。裏切り者はいったい誰なのか。テリーとキムは無事保護されるのか。パーマー議員の暗殺の真相はどこにあったのか。ジャック・バウワーの長い24時間が始まった・・・

 何げなく『24 シーズン�掘戮魎僂呂犬瓩討靴泙辰燭燭瓩法△箸Δ箸ζ�の天辺まで浸かってしまいました。そんなわけで物語の大筋を知りつつも、ファースト・シーズンを観終わりました。いやぁ、疲れました(笑)。こんな24時間を過ごせる気力・体力のある人間は実在しないんじゃなかろうか(苦笑)。
 ファースト・シーズンの見どころ(私的な)として、まずは二組の夫婦の行方があります。大統領になろうかという黒人のパーマー夫妻と別居を解消したばかりのバウワー夫妻。パーマーとシェリーは普通の家庭ではなく、政治色が強い。そのために過去に起きた娘のレイプ事件がトンデモナイ事態を引き起こす事となる。シェリーって女性は、ファースト・シーズンではきっと一番の嫌われ者だったでしょうねぇ。オバチャンにありがちの身の程をわきまえない暴走っぷり。それが旦那さまにどう決断されるのかと言うところ。ジャックとテリーは、うーん、なんともありがちで気の毒な関係。テリーは美人だし、トッテモ素敵なのだケレドモ、ジャックの不倫相手にかなり醜い態度を取ってしまい、それが仇となると言うのか、なんと言うのか。これが一番の衝撃のラスト・シーンへの伏線かもしれないですね。ジャックはオバカで愚かです。はい。
 次に、人間関係の変化をあげたいです。上記の夫婦関係の行方とは別に育っていく人と人との信頼関係、壊れていく信頼関係。わかりやすいのはジャックとパーマー議員との信頼関係。だんだんと互いを認め、信頼を深めていく過程は単純に素敵だと思います。その逆にジャックやジャックの同僚の信頼関係の変化が様々で興味深いです。仕事場での敵対(ライバル)関係や嫉妬などが人間の関係を壊してしまう。結局はどんなことも人間の感情がある限り、絶対と言う事はありえないのだなぁと思いましたね。人と人の関係も絶対ではないし、それがトンデモナイことを引き起こしてしまう。こればっかりは機械のようにコントロールできることではない。全ては人間あありき。
 と言うことで、ジャックを巻き込んだパーマー議員の暗殺計画とテリーとキムの誘拐事件も一筋縄ではいかない真実が隠されていたわけです。アメリカらしい家庭を全面に出しつつ、大雑把で無茶苦茶な展開(笑)、そして勝手な人間たちの結末。あのあまりにも唐突で衝撃的なエンディングを観るために最後まで是非どうぞv



2005年10月14日(金) 『東京奇譚集』 村上春樹

「ハナレイ・ベイ」 
 サチの息子は、19歳の時にハナレイ湾で鮫に襲われて死んでしまった。サチはそれ以降、一年のその時期にハナレイ湾で過ごすようになる。そしていつしか不思議なサーファーの噂を耳にするようになる・・・

 村上春樹さんらしい言葉の操り方が心に優しい不思議な物語たち。ピックアップした「ハナレイ・ベイ」はヒロインのサチがトテモ魅力的。しなやかで、シンプルで。本当に独特のトーンだよなぁ。世界が村上春樹で成り立っている。

「なんの世代でもない。私は私として生きているだけ。簡単にひとくくりにしないでほしいな」

『東京奇譚集』 2005.9.18. 村上春樹 新潮社
 



2005年10月13日(木) 『少女には向かない職業』 桜庭一樹

 葵は13歳。夏休みに葵は静香と仲良くなる。学校では地味で目立たない静香だが、とても奇妙な女の子だった。ふたりは共に家庭に問題を抱えていて、ひょんなことから葵にとっての邪魔者が死に、次は静香にとっての・・・

 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだ時に、イマドキの少女はこんなに行き詰まっているのかしら、と感じたのでした。今回もその傾向は残っているみたい。作品的にはもう少し重くすればよかったような中途半端感が残ったケレドモ。内容的に面白いとか言うよりも、少女の焦燥感みたいなものを描きたかったのかな・・・。うーん。

『少女には向かない職業』 2005.9.30. 桜庭一樹 東京創元社



2005年10月12日(水) 『甲賀忍法帖』 山田風太郎

 忍者、甲賀と伊賀は昔から敵対していたが、愛し合う二人の若者によってやっと歩み寄ろうと動き始める。しかし、徳川三代将軍の座をかけて戦うことになってしまう。愛し合いながらも引き裂かれてしまうふたり。

 これは、ただいま公開中の映画を観に行きたいなぁと思いつつ読みました。山田風太郎さんモノって久しぶりv でもやっぱり面白いなぁ。適度にエロチックで。切っても切っても風太郎ではあるケレドモ(笑)v

『甲賀忍法帖』 2005.8.4. 山田風太郎 講談社ノベルス



2005年10月11日(火) 『震度0』 横山秀夫

 阪神大震災が発生した大混乱の時期、N県警本部では不破という警務課長が消えた。人望の厚い不破の失踪は、N県警本部内で妙な闘争を巻き起こす・・・

 うーん。なんと怖い物語なのだろう。人間関係がとても醜い・・・。男たちも、妻たちも大騒ぎの情報合戦x これってブラックコメディなのかもしれないなぁ。そんなに熱心に横山さんを追いかけていないケレドモ、今ひとつという感じ。これはこれでありだろうとは思うけど。

『震度0』 2005.7.30. 横山秀夫 朝日新聞社



2005年10月09日(日) 『悪党たちは千里を走る』 貫井徳郎

 埋蔵金詐欺で一発当ててやろうとしていた高杉と園部は、先客の美人詐欺師にあっさり撃退されてしまう。次に人間はできないが、と犬の誘拐を企てるのだが、美人詐欺師と犬誘拐(するはずの)先の子どもが乱入してきて・・・

 貫井さんがこんなふうなコメディタッチで物語を書かれるんだ〜v とても面白かったです。悪党達がぬけていて憎めなくて。悪党達を翻弄する少年・巧くんも小憎らしいほどにずる賢くてかわいくて。日常に密接したせこい犯罪なんかも笑えました。そんなことするより汗水たらして働きなさいよってくらいせこい(大笑)x この物語の良さは三人の悪党(小悪党)と少年の交流だろうな。本当の悪人じゃない。うん、とてもいい感じに楽しめました。オススメv

「そうなの? 詐欺師稼業も辛いねぇ」

『悪党たちは千里を走る』 2005.9.25. 貫井徳郎 光文社



2005年10月08日(土) 『アッコちゃんの時代』 林真理子

 バブルの時代、地上げの帝王と呼ばれた男の愛人となり、その後キャンティの五十嵐さんの妻となった女。二十歳そこそこの女の子が狂乱と濃厚な時代の象徴だった・・・。

 これはどうやら本当に実在した女性を描いているようです。主人公の美女アッコちゃんのマブダチの美女が故・尾崎豊夫人らしいことも興味深いです。あの時代のスキャンダルも散りばめられていて「へ〜」と思ってしまった。
 いいとか悪いとかよりも、したたかに逞しく美しいアッコちゃんが伝説となったのはうなづけるなぁ。こういう女性となら会ってみたいもの。

 けれども違う、違う、違うのだ。文字に書かれていることは正しくても、事実はまるで違う。文字はただの記号で、起こったことは生きている。死んでいる活字が、どうして生きて動いていることを描写できるのだろう。

『アッコちゃんの時代』 2005.8.30. 林真理子 新潮社



2005年10月06日(木) 『楽園の眠り』 馳星周

 友定伸は息子・雄介を虐待していた。妻が雄介を置いて家を出て以来、愛情があるのに快楽のように暴力を振るい、ストレスを発散する日々。大原妙子は父親に虐待されていた。尻を叩かれ、その行為に興奮する父親を嫌悪していた。ダイスキな男の子どもを身ごもり、嬉々として彼に報告するが、彼に腹を蹴られ流産してしまう。そんな妙子が雄介と出会い、雄介の身体に虐待の後を見つけ、雄介を連れて逃亡をはじめる。雄介への虐待が明るみに出ると困る友定伸は執拗にふたりを追いかける。伸は警察官だった・・・

 ノワールとして読むならば、面白い。でもこういうの駄目な人も多いだろうな。父親からの虐待(性的なものも含めて)は、どんなに子どもの心に影を落とすことか・・・。愛情いっぱいで子どもに接する事ができない人間は子を持つ資格などないのではないかしら。精神的に子どもなままの大人は子どもを作っちゃいけないわ。雄介少年が天使の様に可愛いだけに痛々しかった。ううう。ラストがねぇ、そうきちゃうわよねぇ。ほんとにねぇ・・・。

 どうしてだろう。泣くほど悲しいのに、辛いのに、どうしてやめることができないのだろう。

『楽園の眠り』 2005.9.30. 馳星周 徳間書店



2005年10月05日(水) 『箪笥のなか』 長野まゆみ

 親戚から譲り受けた古い紅い箪笥。留め金具は蝶の形を施されているが、小抽斗の一方の留め金具だけは蝙蝠だった。この抽斗から様々な不思議が現れる・・・

 仲の良い姉弟が自然と不思議に巻き込まれる。静かな雨の日に不思議で優しい心持になるような物語たち。これはなかなかステキだなぁ。彼女の家に似合う箪笥。こういうココロ優しき人々ならではの不思議なんだろうなぁ。

 コハクはこうやってタマシイを吸い寄せるんだって。・・・・・タマシイだけでも連れて帰れたら、いいよねえ。

『箪笥のなか』 2005.9.5. 長野まゆみ 講談社



2005年10月04日(火) 『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩

 時子叔母が亡くなり、久美は家宝の「ぬか床」を引き継ぐ事になった。このぬか床は呻く・・・しかも卵ができてしまった!? 受け継いできたぬか床にこめられた呪縛。囚われて生きるのか、解放されるべく動くのか。

 なんだかショックでした。こういう物語を紡ぎだせる才と言うのは、いったいどこにあるのだろう。生きるということをしっかり見据えなければと思わされると言うか。飄々と描かれた怪異がひたひたと怖いんですよね。妙に迫力があり心にずっしり残りました。魂抜け気分だった。これはオススメv

 母はそんなこと、どうでもよかったんだろう。僕が、新しい命にたぶん、望むように。解き放たれてあれ、と。母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない、先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と。

『沼地のある森を抜けて』 2005.8.30. 梨木香歩 新潮社



2005年10月02日(日) 『弓削是雄全集 鬼』 高橋克彦

 陰陽寮(おんみょうりょう)は、占い・天文・漏刻・暦の編纂を担当する内裏の機関のひとつ。市中警備はもとより、盗賊の捕縛、殺人の詮議はいずれも検非違使庁の務めであるのだが、鬼の存在が信じられていた時代、まともとは思えぬ死骸や出来事が生ずると、その解明は専ら陰陽寮に委ねられた。陰陽師として人々から信頼を得ていた弓削是雄は、仲間たちとともに様々な鬼と対決する・・・

 陰陽師と言えば、安倍晴明が代名詞のようになっていますが、高橋克彦さんは弓削是雄という陰陽師に目をつけられました。弓削是雄が鬼と関わるうちに次々とユニークな仲間たちが増えていくところも読みどころv この『弓削是雄全集 鬼』は、異なった出版社から出ていたものをひとつに纏めるという力技で生まれた豪華版。そしてこれに止まらず、まだまだ是雄の活躍は続いていきそうです。
 しかし・・・鬼や妖しの恐ろしさよりも人間の欲や業の深さの方がおぞましく感じられるのですよね。

「いつの世でも人は鬼より怖い。儂らは鬼を相手にしている方が気楽に生きていかれる」 

『弓削是雄全集 鬼』 2005.8.10. 高橋克彦 講談社



2005年10月01日(土) 『天使のナイフ』 薬丸岳

 桧山貴志は、愛する妻・祥子を少年(13歳)たち三人に殺された。残されたひとり娘・愛美を祥子の友人で保育士のみゆき先生に預け、オーナー店長としてカフェを切り盛りしている。祥子の事件から4年、犯人の少年の一人が殺される。桧山にはアリバイがなく、復讐目的の殺人かと疑われてしまう。たったひとりで事件の真相を追いかけるうちに、桧山は祥子の隠された過去を知ることとなり・・・

 二転三転する物語は、トテモ面白かったです。この物語の根底にある少年法に対する疑問は、今の世の中の人たちも多かれ少なかれ感じている思いなのではないかしら。現実でも少年法に守られた少年が社会に復帰し、また事件を起こすという悪循環をたびたび耳にします。そんな時、更生するとは、罪を償うとはいったいどういうことなのかなと頭を抱えてしまいます。やり直すチャンスをいただいておきながら、同じ事を繰り返すナンテ愚かとしか言いようが無いですね。愛する者の命を奪われた人間が、復讐として犯人の命を奪うならば自らも加害者となってしまう。命の尊さを幼い頃からキッチリ教える、それしか術はないのかもしれません。重いテーマであるにも関わらず、さくさくと読ませてもらえました。これも映像化するでしょうね。

「だけど、あなたは更生はしなかったんだ」

『天使のナイフ』 2005.8.8. 薬丸岳 講談社



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