酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2005年01月31日(月) |
『家守綺譚』 梨木香歩 |
売れもしない文章を書いている<私>は、学生時代に亡くなった親友・高堂の家を守することになる。この家守をしていると高堂がひょいっと帰ってきた。無論、もうこの世の住人ではないらしい。そして四季折々と不思議な心温まる自然との交流を楽しんで慈しんで生きている・・・
梨木香歩さんの描く生活って、どうしてこんなに憧憬を呼び覚ますのだろう。静かに心優しく生きる毎日。憧れ以外のなにものでもない。そこに現れる不思議なモノたちも会ってみたいわー。何より亡くなった人がひょこっと帰ってくれるなんて羨ましいことこの上なし。 自然や生活を愛する人に超オススメであります。
人間死んだからとて修行したからとてそうおいそれと性根が変わるものではない。そう思うと安心するようながっかりするような変な心もちである。
『家守綺譚』 2004.1.30. 梨木香歩 新潮社
| 2005年01月30日(日) |
『バッテリー�此戞,△気里△弔海気鵐汽ぅ鷁� |
孤高の天才ピッチャー原田巧。クールでストイックな巧が、仲間や先輩達と関わり、すこしだけ変化を見せる。そして宿命のライバル・門脇秀吾に投げる日がやってくる・・・
この『バッテリー』という物語は児童文学の枠を軽く飛び越え、おとなたちも巻き込んでしまいました。魅力は巧を含め登場する少年達のそれぞれのキャラクターが素晴らしかったことに尽きると思います。野球に興味のない人にでも十分に楽しめる素敵な物語です。 さて、本日、岡山丸善さんでのあさのあつこさんのサイン会へ行って参りました! 小さな子供達から、中・高校生、おかぁさん族、そして私のような大人な(?)ファンで溢れ返っていました。子供達のキャワキャワ言う様が微笑ましかったです。大好きな作品の作家さんとお目にかかれるって最高ですよねv プレゼントをお渡しするとき、ふらりと消えた愛猫ミゾちゃんの話をお聞きしました。ミゾちゃん、おかぁさん(あさのあつこさん)は涙ぐまれていましたよ。早く帰っておいで。人柄の滲み出た優しい素敵な女性で本当にお目にかかれて幸せでありました。
ああこの言い方はおかしいな。とっさに感じ少しあわてる。心の内にあることを他人に伝えることの、この困難さ。むずかしい。言葉は口にしただけで、容易に変質して、想いをそのままに伝えてくれない。
『バッテリー�此戞�2005.1.15. あさのあつこ 教育画劇
| 2005年01月29日(土) |
『うたう警官』 佐々木譲 |
札幌市内のアパートで美貌で有名な女性警官の他殺死体が発見された。容疑者で浮かんだ津久井巡査部長は、ある警察内部事情を<うたう=密告・証言する>ことになっていた。上からの指示は津久井の射殺? 津久井の無実を信じた佐伯は、仲間を集め、独自で捜査するのだが・・・
警察という機構は外部からでは計り知れない世界だと思います。警察関係者が警察に不利な証言をする=うたう。それってかなりの覚悟と信念があってのことでないと出来ないこと。腐っていない佐伯たちの奮闘とたどり着いた真実にちょっと驚かされました。まるで映像を観ているような展開でなかなかに楽しめました。
『うたう警官』 2004.12.18. 佐々木譲 角川春樹事務所
| 2005年01月28日(金) |
『ボーナス・トラック』 越谷オサム |
草野は、名前を聞けば誰でもわかる業界大手のハンバーガーチェーン企業に就職。忙しい土曜日には十二時間を軽く越えて働く日々。ある雨の夜、帰宅中にひき逃げに遭遇。倒れている男を必死に助けようとするが、彼は死亡。しかし、その彼の魂は成仏していなかった・・・!?
これは第16回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作品です。不思議なもので私は大賞より優秀賞の方がいつも相性がいいみたいv この物語は人のいい男と人のいい幽霊の心優しき交流の物語。こんな心温まる展開があるんだなー。素敵でした、ものすごく。 登場人物が“いい人”が多くて、また読む人によっては綺麗事すぎるとか言われてしまうのかもしれません。そういう感想を目にすると心が痛いわ・・・。私にとっては心がぽかぽか温かくハッピーな気分にさせていただける優れもんなんだけど。
まあたしかに、人を見かけだけで判断したり、優劣をつけたりすることは正しい行いではない。
『ボーナス・トラック』 2004.12.20. 越谷オサム 新潮社
| 2005年01月27日(木) |
『すべての美人は名探偵である』 鯨統一郎 |
“世界史”という独自の分野を立ち上げた美貌の歴史学者・早乙女静香。テレビ番組『歴史は囁く』の生本番中に同じくゲスト出演中の阿南教授の言葉に怒り、「てめえ、ぶっ殺す!」と言い放ち、近親処分を喰らってしまう(大笑)。しかしコッソリ出かけた沖縄で、その阿南教授の死体を発見してしまい、容疑者となってしまう・・・
傍若無人な美女・早乙女静香。肩書きは「“美人”」と言い放つ、本物の美女。そして性格に難あり。彼女の行くところどころで騒動と殺人事件が発生する! 歴史的解釈の面白さというのは、着眼点が全てなのでしょうね。鯨さんの場合、あまりにも笑いが強いので解釈は流しがちですが、こういう見方があるのか〜と感心します。考えてみれば、ずいずいずっころばし♪って妙な歌ですよねぇ。
「君の肩書きは?」 早乙女静香が振り向いた。 「“美人”よ」
『すべての美人は名探偵である』 2004.12.20. 鯨統一郎 光文社
| 2005年01月26日(水) |
『M8(エムエイト)』 高嶋哲夫 |
瀬戸口誠治、28歳、東都大学理学部地球物理学教室ポストドクター。彼は1995年の神戸の震災の被災者だった。今は地震研究に没頭し、あの悲劇を二度と起こしたくないと思っている。そして彼がはじき出した数値は、東京に直下型地震が起こると言うものだった・・・
キツイ物語だと緊張感を持って読みました。自分にとって読書とは娯楽であるべき、そういう信念があります。しかしながら、こと地震や戦争については考える事が必要が切実にあることに気づいています。だから決して楽しい物語ではないけれど、心をガードしながら、読み進めました。 近い将来、地震が起こる可能性がある。そのことは心しておかないと。あらためて避難グッズを再点検、再準備しようと思っています。起こらないにこしたことはないけれど・・・。
「すぎたことより、今後のことを考えましょう。政府としては復興に全力を尽くし、リーダーシップを取り戻す。とりあえず震災救援特別措置法でも作って、被災者救済を第一に考えなければならないでしょう。阪神淡路大震災が参考になると思います」
『M8(エムエイト)』 2004.8.30. 高嶋哲夫 集英社
| 2005年01月25日(火) |
『無法地帯 幻の?を捜せ!』 大倉嵩裕 |
ヤクザの大場久太郎、探偵の宇田川一、コレクター仲間にあくどさで名を馳せる多々見正一。一筋縄ではいかない3人がオタクの名にかけて(笑)、幻のプラモデル『ザリガニラー』の争奪戦を繰り広げるのだが・・・。
やーん、聞きしに勝る面白さ〜。パチパチパチv あまりにも可笑しくてガハハと声を出して笑えてしまうほど。なにかを所有したい、コレクター魂ってのは大なり小なり人間の持つ本能なのかもしれませんね。いい年をした大人が食玩や昔の怪獣プラモデルに目の色を変える。ある意味ロマンなのかもしれないなぁ。お馬鹿な話だけでなく、根底に流れる物語の方向性が最後に「おおう」と唸らせます。オススメv
「判らねえ。俺も含めて、オタクってのは、基本的に身勝手な生き物だ。悪魔とまで言われるコレクターが、何の見返りもなく情報を教えるとは思えないな」
『無法地帯 幻の?を捜せ!』 2003.12.5. 大倉嵩裕 双葉社
| 2005年01月24日(月) |
『ゆらゆら橋から』 池永陽 |
飛騨の山あいに住む小学校五年生の健司は、今にも落ちそうな<ゆらゆら橋>で東京から来る先生を待っていた。真っ赤な彼岸花を手に現れた由美子先生。彼女が健司の淡い初恋の人となり・・・
昭和のはじめを舞台に五年生の健司が飛騨の山あいで真剣な恋をし、東京へ出て行き、また様々な恋をする。まっすぐで融通のきかない不器用な健司の一生の恋の物語。
池永陽さんは、私が読んだ限りでは男性の熱く揺れる心より、情念の女性を描いた方が心に迫ってくる感じがします。この健司の恋の物語は・・・不器用すぎて素敵と言えば素敵だけど・・・うーん、どうかしら。
「思い出ってね、人の自由を奪ってしまうの。悪い思い出はもちろん、たとえいい思い出でも手枷足枷になって身動きが取れなくなっちゃう。嫌になるほどやっかいなものよ」
『ゆらゆら橋より』 2004.12.20. 池永陽 集英社
| 2005年01月23日(日) |
『いとしのヒナゴン』 重松清 |
その昔、比奈町に<ヒナゴン>という謎の生命体が目撃されて大騒ぎになった。悪たれ代表イナゴのイッちゃんは子分(カツ・ナバスケ)を引き連れて探索に出かけ大騒動を巻き起こす。 そして30年後、そのヤンチャなイッちゃんは比奈町のヤクザな町長さんとなり、類人猿課を無理矢理役場に設置(笑)。そこへ東京からコピーライターになることを挫折しかけたノブが戻り、イッちゃんに巻き込まれ、ヒナゴン探しをすることに・・・
切っても切っても金太郎飴な重松清。郷土・岡山の誇りをそんなふうに捉えていた(いや好きは好き、大好きなのよ)私が驚きました! 今までの重松節とはちょっと違う・・・。これがまた微妙な違和感(主人公の設定・視点かな)で良いのです! 中国地方の田舎町では、合併問題は深刻と聞きます。そのことと昔、広島で目撃されたと言うヒバゴンを持って来て、町を考えるあたり、重松清はあなどれないです。しかも、これって映画化だそうで驚きが更に倍! 私のイメージではイッちゃんは西田敏行なんだけど年齢が少し上なのか、ギャラが高すぎたのか(苦笑)。この映画は公開されたら観たいと思います。 この本を読んでどうぞアナタのふるさとを思ってください。都会生まれの方でしたら、こんなふるさとが自分にあったらと想像していただきたい。涙あり、笑いあり、覚悟あり。素晴らしい人情の物語です。超オススメv
甘いかな。ワガママかな。やっぱり身のほど知らずの無謀な夢、なのかな。自分でもそれはわかっていて、家族にもめちゃくちゃ文句言われちゃうだろうなと覚悟していて、でも、もう一度だけ、性根を据えてやってみたかった。そうしないと、夢をきちんとあきらめることすら、できない。
『いとしのヒナゴン』 2004.10.30. 重松清 文藝春秋
| 2005年01月22日(土) |
『裸者と裸者(下) 邪悪な許しがたい異端の』 打海文三 |
月田桜子と椿子は双子の美少女。海人と出会い、海人の庇護から抜け出し、ふたりで世界に立ち向かって生きていく。悪い事も必要と割り切り、女の子だけのマフィアクループ・<パンプキン・ガールズ>を創り上げる。ふたりの未来に待ち受けるものは・・・
この物語は、いわゆるキャラ立ちしていて成功したのだと思えます。上巻の主人公・海人は悲劇をバネにしたヒーロー。頑張り屋で賢い男の子。今回のヒロインは麗しい双子の美少女。淫乱で奔放で憎めない豪胆さを持っていました。ラストは哀しいけど・・・。上下巻を重荷なく読ませる力はたいしたもんだと感じました。
「不道徳であることと、人権感覚があるってことは、対立した概念じゃないぜ」
『裸者と裸者(下) 邪悪な許しがたい異端の』 2004.9.30. 打海文三 角川書店
| 2005年01月21日(金) |
『裸者と裸者(上) 孤児部隊の世界永久戦争』 打海文三 |
近未来のアジア各地で内乱が勃発。父を戦争で亡くし、母の行方がわからなくなった佐々木海人(かいと)7歳は、妹・恵(めぐ)と弟・隆(リュウ)を守りながら生きる。しかし、反乱軍に囚われてしまい孤児部隊に入る事に。海人は愛する妹と弟のため、孤児部隊で必死に生き抜き、次第に頭角を現して行く・・・
ものすごい力で引き込まれる文章。戦争ものは苦手な私がとりこまれたんだから素晴らしい力を持っているはず。上巻は海人という少年が成長しながら、素敵な人間関係を築いていく様が生き生きと(と表現するのもおかしいが)描かれている。海人は学校へ行かなかったため、台詞に漢字が少ない。でもちゃんと生きて周りを見て体験してきっちりと学習し成長できる賢い男の子。海人以外もキャラクターたちがいい味だしてて、素敵。素敵。
「かんがえるのがつらくても、かんがえなくちゃならない」海人は厳しい声を出した。
『裸者と裸者(上) 孤児部隊の世界永久戦争』 2004.9.30. 打海文三 角川書店
| 2005年01月20日(木) |
『人のセックスを笑うな』 山崎ナオコーラ |
オレは19の時に39のユリと出会った。美術の専門学校の講師のユリ。先生としてはどうかと思うが、生徒には人気があった。ユリからモデルを頼まれ、付き合うようになった。だが、ユリは結婚していたのだ・・・
ふーん、こういう恋愛小説が今時は売れるのか(意外)。文字数も多くないし、オレがいい奴なのであっさり読める。でも泣きもしないし、感動するほどでもない。なぜならば私には年齢差の大きいカップルって生理的に考えられないから。だから19のオレをメロメロにした39のユリってすごいなぁとは思う。美人でもスタイルがいいわけでもないのに。は、やはり人間は中味だってことが言いたいのかっ!? でもユリってヘンなおばはんやけどなぁ。よーわからんが、それなりに楽しめました。はい。
しかし恋してみると、形に好みなどないことがわかる。好きになると、その形に心が食い込む。そういうことだ。オレのファンタジーにぴったりな形がある訳ではない。そこにある形に、オレの心が食い込むのだ。
『人のセックスを笑うな』 2004.11.20. 山崎ナオコーラ 河井書房新書
| 2005年01月19日(水) |
『クレイジーヘブン』 垣根涼介 |
坂脇恭一は旅行代理店に勤める27歳。いたってクールな反面、車上荒らしに遭い、相手を突き止めぶちのめすような執念深い男。その恭一が惹かれた女に関わった時、悲劇が起こり・・・
垣根涼介さんを『ワイルド・ソウル』で絶賛した私ですが、この物語は許せない部分が多々ありました。物語的にはテンポがいいし、面白かったのです。ただ、セックスに関する女性への蔑視みたいな言葉があまりにも出てくるので辟易。そこまで書かなくてもいいのに、とマイナスポイントだったのでした。そんな身体を綺麗にしないでセックスするような女を相手にするほうが悪い、と断言しちゃう。
ヒトの顔立ちは、その本来持っている知的な能力に比例する、と恭一は密かに思っている。潜在能力、と言い換えてもいい。だから磨けば磨くほど光っていく。考え方の方法論さえ身につければ、今見えている世界が、もっと明らかになる。もっと自由になる。
『クレイジーヘブン』 2004.12.15. 垣根涼介 実業之日本社
| 2005年01月18日(火) |
『PLAY』 山口雅也 |
4つの<遊び>=PALYの物語。これってかなり面白かった。落とし方がブラックと言うか、ホラーと言うか、かなりひどくて素敵(笑)。4つとも良かったけれど、「蛇と梯子」と「黄昏時に鬼たちは」はハイレベル。これを基に掘り下げて一冊の長編にしていただきたいくらい。読んでとくしたわ〜v オススメです。
「蛇と梯子」 インドへ赴任した家族が、「蛇と梯子」というゲームでカウンセリングを受ける事になるのだが・・・ このゲームが、人生ゲームみたいな感じで、ヒートアップする様がよくわかるのですネ。単純なゲームだけどつい盛り上がっちゃうものだから。それを思うので余計に怖い。
「黄昏時に鬼たちは」 引きこもりの人たちが、都会で大掛かりな鬼ごっこをして社会と接点を持とうとあがく。そこで発生した殺人事件・・・ これはうまい。「え」と声が出て完璧にだまされた。現代の闇をうまく描ききったホラーミステリーであります。かなりお気に入りv
『PLAY』 2004.9.30. 山口雅也 朝日新聞社
| 2005年01月17日(月) |
『聖者の行進 伊集院大介のクリスマス』 栗本薫 |
伊集院大介の愛する『クラブ樹』のオーナー藤島樹。女を愛す美貌の女。樹の店に過去からの訪問者が次々と現れ、樹は事件に巻き込まれてしまう・・・
読まなくてもいいようなものの、読まないでいられない伊集院大介シリーズ。もう『天狼星』を超える事件はないのだろうなぁ。哀しい事です。 伊集院大介は性を感じさせないニュートラルな存在。そしてその彼が惹かれるのは両性を兼ね備えたような者たちばかり。神に愛された特別な者達でもあります。 樹は、自然体で生きているだけで己のカリスマ性を意識しない。一国一城の主として己のスタイルを貫いて生きている。そこがやはり素敵だと感じる。栗本さんが描くゲイは、男性より女性の方がとても魅力的。
『聖者の行進 伊集院大介のクリスマス』 2004.12.16. 栗本薫 講談社
| 2005年01月16日(日) |
『NO.6』#1〜#3 あさのあつこ |
2013年9月7日、紫苑は12歳になった。その日、紫苑の住む都市NO.6を台風が直撃。超エリートの紫苑は、ずぶ濡れで負傷した少年ネズミを助けたため、さまざまな特権を剥奪されてしまう。聖都市と呼ばれるNO.6から逃亡し、紫苑は本当の自分を模索し、まやかしの都市の実態を知ろうとする・・・。
近未来サバイバルもの、でいいのかな。あさのあつこさんが『バッテリー』とは違う角度から頑張る少年を描かれています。温室育ちのエリート紫苑とサバイバルで野生的な美貌の少年ネズミ(イブ?)。対照的なふたりの少年の心の交流がいいんです。ほろほろしちゃう。ぬくぬくとエリート街道まっしぐらだった紫苑が、ネズミを助けたばかりに脱落してしまう。けれど紫苑はそのことを全く後悔をしない。そこが非常に美しく、すがすがしい。ここまで凛々しいと惚れちゃう〜v 紫苑が辿り着くNO.6の真実っていったい何なんだろう。どきどき。
「絶望しちゃいけない。何があっても、諦めちゃだめだ。絶望して何もできないと諦めてしまったら、本当に負けてしまう。諦めたほうが楽かもしれないけど・・・・・・」
『NO.6』#1〜#3 あさのあつこ 講談社
| 2005年01月15日(土) |
『火のみち』 乃南アサ |
昭和のはじめ、南部次郎は14歳にして一家の運命を抱えてしまう。病気の母、幼い弟妹。頼りは姉がどこかから仕送りをしてくるわずかな金のみ。母が死に、金に困った南部次郎は谷やんという男に妹・君子を売りとばせと言われ、谷やんを殺してしまう。岡山刑務所で服役し、伊部からきた備前焼作家から陶芸を教えられ、南部次郎と彼を支える妹・君子の人生は大きく動いていく・・・
上下巻に恐れをなし、しばらく放置してあった物語に一気に引きずり込まれ読了しました。昭和から平成へかけた南部次郎と妹・君子の波乱の人生。豊かな時代に育った人間には理解しきれない辛さ・悲しさが詰まっていると感じました。当たり前のように<読み・書き>できる幸せがある。字が読めない、書けないだけで人生は厳しく、楽しむことすらできない。そこで自棄になって努力をやめるか、勉強をするか。そんなことが人生の分かれ道となってしまう時代があった・・・。ものすごくズッシリとしたものを読んでしまったと言う感覚で麻痺しています。
結局、この手で人の生命を奪った事実は、どれほどの時が流れたとしても消えることはなく、法の上での償いを終えた後も、次郎はずっと、その事実を背負い続け、さらにこれまでの人生を、ずっと怯え続けてこなければならなかった。人の言葉に。人の目に。血の色に。雨の晩にー。
『火のみち』 2004.8.3. 乃南アサ 講談社
| 2005年01月14日(金) |
『グラスホッパー』 伊坂幸太郎 |
妻を殺され(一応、事故死扱い)復讐をしようと頑張っている鈴木と妙な殺し屋たちが風変わりに交差する物語・・・
これを面白いと言っていいのか、どうか悩むところです。いつも残虐極まりない物語も大喜びをしているくせに変ですね・・・。殺し屋達の闘いに巻き込まれてしまう鈴木さんが愛する妻の思い出をあまりにも語るので(それだけが武器なのだろうけど)心に痛すぎたのかしら。
亡き妻はいつだって、自分が忘れられることを恐れていた。
『グラスホッパー』 2004.7.30. 伊坂幸太郎 角川書店
| 2005年01月13日(木) |
『霧の迷宮から君を救い出すために』 黒田研二 |
杉村亮治は、会社の先輩・米里由希に頼まれ会社の売り物<安心シェルター>へ訪れる。そこで何者かに襲われ、脳に損傷を受け、動くものを認識できなくなってしまう。動くものは霧が発生したように見えなくなってしまったのだ。そして<安全シェルター>で殺人が・・・
なんだか悲しいなぁ・・・読後感はそれでした。黒田研二さんの描かれる世界に触れたとき、せつなく悲しく孤独になってしまうことがよくあります。それだけ人の心の深いところを軽いタッチなのにうまく表現されているからだろうな、と。 当たり前のように見えていたものが、霧の中にいるようにしか認知できなくなったとしたら、ものすごく孤独でしょう。そこで必要なのは愛する人、愛してくれる人なのに。うまいけど悲しすぎるエンディングでした。
「いまどき三流のミステリ小説でも、そんな陳腐なトリックは登場しないと思いますよ」
『霧の迷宮から君を救い出すために』 2004.10.25. 黒田研二 ジョイ・ノベルス
| 2005年01月12日(水) |
『Fake』 五十嵐貴久 |
宮本調査事務所の宮野剛史は、西村一穂という男から息子を大学に入れて欲しいと依頼される。かつて世話になった叔父の息子を入学させたことが漏れたらしい。その息子を入学させるために、宮本は会わずに遠ざけていた加奈と言う美しい才媛に協力を仰ぐ。このミッションの結果、宮本は大きな賭けをすることになるのだが・・・
五十嵐貴久さんは『リカ』のイメージが強くて、それ以降を読まずに来てしまいました。が、先日『暗闇を追いかけろ』の中の「ぽきぽき」を読んで、これはうまい人だなぁと思わされたところでした。このミスの17位は伊達じゃありません。とっても面白いエンターテイメントでした。 これって私の大好きな映画『STING』の日本版です。映画化されても当たると思います。それくらい最後の最後までハラハラどきどきさせてくれました。未読の方にはオススメですv
一気に飲み干した阿部が伝統的な様式に基づいて、利きますなあ、と破願させた。おっさん、それじゃビールと同じだ。ドン・ペリニヨンが泣くぞ。
『Fake』 2004.9.25. 五十嵐貴久 冬幻舎
| 2005年01月11日(火) |
『窓際の死神(アンクー)』 柴田よしき |
日常に悩み足掻きながら生きるふたりの女性の前に死神(アンクー)が、現れる。死に近い位置にいる人間でたまに死神が見えてしまう者がいると言う。死神の甘い言葉(取引)に対して、ふたりの女性が選んだ答えとは・・・
柴田よしきさんを名前から男性と認識していた方って意外と多いのではないでしょうか? 柴田よしきさんとメールを交換させていただいた事があり、その時に若くして亡くなった弟さんのことをお聞きしました。その弟さんのお名前が「よしき」さんだったそうです。近しい人をいきなり失った人間の喪失感は、思うだけで痛々しいものがあります。死を受け入れるということは身を切るようなものですから・・・。今回、柴田よしきさんが登場させた死神=アンクーは、日本の死神のイメージよりは、いたずらな妖精のようなものに思えます。生きること、身近な愛する人が死ぬこと、そういうことを考えてみるにいい物語かもしれません。 そして、自分から命を断とうと迷っている人がいるとしたら、いそがないで逝ってしまわないで(柴田さんがおっしゃるとおり)。やはり命は、その命尽きるまで生きてみるがいいと思います。
生きる、ということは、ひとりで成り立つことではない。生きるということは、誰かに生かされ、誰かを生かし、誰かと繋がっているということだった。
『窓際の死神(アンクー)』 2004.12.30. 柴田よしき 双葉社
| 2005年01月10日(月) |
『偽りの館 叔母殺人事件』 折原一 |
広大な公園に接して昭和初期のにおいを濃厚に漂わせる煉瓦造り三階建ての洋館が立っている。そこへ名倉智樹という32歳の男が招かれる。家の持ち主は清瀬富子。莫大な遺産を智樹に譲ってよいかどうか一緒に暮らして観察したいと言う。智樹は、叔母を殺し、遺産を奪おうと考え殺人事件が起こる。 その洋館に智樹の事件をノンフィクションで書こうとする男が住み、智樹の残した手記を探し当て、事件の真相がすこしずつ・・・
折原一さんの物語を読む時には、「だまされるものか」と決意を持って挑みます。今回はある程度のからくりは読めたのですが、やはり最後にだまされていたよなぁと思います。ふたつの世界が入り乱れ、不思議な妖しいムードを醸し出しています。うまいなぁ。
『偽りの館 叔母殺人事件』 2004.9.27. 折原一 講談社
| 2005年01月09日(日) |
『雨にも負けず粗茶一服』 松村栄子 |
遊馬(あすま)は、友衛(ともえ)家=(<坂東巴流>と称して武家のたしなみである弓道、剣道、茶道を伝える家柄)の長男。家を継ぐべく京都の大学受験を強制されていたが、受験をしないで教習所に通い免許を取得していた。それが親にバレてしまい、比叡山のお寺へ修行に行かされる事に・・・。言われるままに家を継ぎたくない遊馬は家出決行。小学生にしておくには惜しい弟の行馬から餞別を渡され、なぜだか一番行きたくなかった街、京都へ流れ着いてしまい・・・
これは読んでよかった。知り合いが絶賛していなかったら読まずに通り過ぎたに違いない物語。主人公の遊馬は自分の将来に悩み、あがく。敷かれたレールを走る事から逃げ出したはずなのに、遊馬の行く先々には<お茶>がついてまわってしまう。生まれながらに身体に仕込まれた礼儀作法やたしなみが遊馬の人生を少しずつ教えてくれる、遊馬という少年の気持ちのいい成長物語です。小学生にしておくには惜しいと思える弟の行馬をはじめ、遊馬をとりまく人間達が個性的で心優しくほろりとくる。キャラクターたちの勝利かもしれないなぁ。これはものすごーくオススメです。間違いない。
「そうかもね。でも、ボクはお兄ちゃんが何を言っても、それにのっちゃいけないんだ。カンナにぼこぼこにされちゃうから。気にしないでいいよ。これはボクの運命なんだ。ご先祖さまを見習って自分で切り開かなくちゃいけないんだ。ボク、家出したのはたったの八時間だったけど、<人生の意味>はそのときわかったから」
『雨にも負けず粗茶一服』 2004.7.15. 松村栄子 マガジンハウス
| 2005年01月08日(土) |
『QED 鬼の城伝説』 高田崇史 |
奈々は妹の沙織と共に「熊つ崎」の岡山行きに同行する。行き先は横溝正史な岡山である。ホワイト薬局の薬局長・外嶋に事件に巻き込まれないよう言われたというのに、奈々の行く先で待ち受けていたものは・・・
去年の春に高田崇史さんが岡山に取材に来られました。宴会係りになぜだか(笑)任命を受けた私も、高田先生が行かれるあちらこちらへ同行。ふやふやと知ったような知らないようないい加減な知識を披露(?)しつつ、にぎやかしをしたことも懐かしい。ふ・・・。しかし、すごいです。あの取材旅行の小さなポイントまでキッチリ盛り込まれていました。あの二日間の行程がまざまざと甦ってきました。高田崇史、やはりあなどれず。 岡山の桃太郎伝説と温羅伝説、このふたつのタタルくんの解釈には度肝を抜かれました。地名や伝説に残っているものから、ここまで推理できるものなのか。岡山に住むものとして感服つかまりました。 ちなみに私らしきものが登場いたしますが、かなり若く可愛らしくなっていて周りから非難が集まりそうでーす。ワハハ。
「岡山のどこが地味だ。充分に派手だぞ。白桃、ピオーネ、マスカットオブアレキサンドリア。岡山城に吉備団子に桃太郎だ」
『QED 鬼の城伝説』 2005.1.10. 高田崇史 講談社ノベルス
| 2005年01月07日(金) |
『そして夜は甦る』 原りょう |
かつての相棒に裏切られた探偵・沢崎のもとへ左手を見せない男が訪れた。佐伯と言う男が沢崎になにか依頼に来なかったかを聞き出したがる男。その男が帰った後に今度は電話で依頼が入る。「佐伯という男を捜して欲しい」と。沢崎は、見知らぬ佐伯と言うルポライターの行方を追うことになるのだが・・・
久しぶりにハードボイルドを読みました。しかもかなり良質の。“男はタフでなければ生きていられない、やさしくなければ生きる資格が無い”・・・チャンドラーの生み出した探偵フィリップ・マーロウの有名な気障台詞です。これこそがハードボイルドですね。 沢崎は、信じていた相棒に裏切られたトラウマを持つ探偵。でも自分の信義を守り、優しくてタフ。まさにハードボイルド。言葉の使い方が厭味に小洒落ていて笑えるところもあるけれど、全体的に好き。こんな探偵が日本に(日本の物語に)いたんだなぁ。知らなかった。
首までアルコール漬けだと? 頭のてっぺんまでアル中のくせに。
『そして夜は甦る』 1995.4.15. 原りょう ハヤカワ文庫
| 2005年01月06日(木) |
『二十四時間』 乃南アサ |
<時>は0時から24時まで刻まれる。その1時間刻みの時間に合った物語が時系列ではなくランダムに語られる。主人公の女性が乃南アサさんを彷彿とさせるため、自分の過去をテーマに書かれているのかもしれません。100%エッセイではないような趣が楽しかったです。中でも「十三時」の女の子が学校をズル休みするエピソードがとても良かったです。こういう感覚あった、あったと郷愁を覚えました。
たった一日のことだったが、私は自分一人が普通の時間の流れから、勝手にすとん、と抜け落ちたように感じた。
『二十四時間』 2004.9.25. 乃南アサ 新潮社
朝倉は偏頭痛に悩まされていた。医師によるとA型気質ゆえの真面目さからくるストレスではないか、と診断される。確かに朝倉は潔癖なまでに真面目だ。それは運転に現れている。制限速度をきっかり守り、違反などしない。毎日必ず定時刻に通りがかる美しいOLを赤信号で止まって眺める事が唯一の幸福。そしてその日も彼女に見惚れていると黒マスクの男が3人無理矢理乗り込んできて、前の車を追いかけろと脅される。しかし融通のきかない朝倉は制限速度を守り・・・
大好きな松雪泰子が出ているらしいと聞いていたので観ました。が、最初はどこに出てきたのかわからず、巻き戻してやっと気づいたくらいの化けッぷり。さすが松雪。でもいつもの美しい松雪を見たかったなー。 これはSABUさんの作品で、縁あって出会った仲間達の物語。ドミノのように縁が繋がっていくところは面白かったけれど、筧さんのシーンはもう少し違うパターンで落として欲しかった。自分を知り、自分を認めて生きていけばそれなりにハッピーかもしれないって感じでした。でも私はあんな融通のきかない男は駄目だけど。
| 2005年01月02日(日) |
『神変まだら蜘蛛』 栗本薫 |
長唄の御師匠お波は、美貌の粋な年増。色気をふりまき、男どもを煙に巻く。実はトラウマからあまり男が好きではなかった。夜は牛若丸なる盗賊に化け、あくどい金持ちから金を奪っている。ある時、自分が背負っている女郎蜘蛛の刺青と同じ彫師に手による刺青を持った美男美女が殺され始めた。そして、お波は事件に巻き込まれ、自分の出生の秘密を知り、運命の出会いをするのだが・・・
栗本薫さんの時代物です。時代を変えても栗本薫節は変わらずと言ったところ。相変わらずの倒錯的で淫靡なムードたっぷりに異性・同性の愛がもつれ合います。このキャラは、天狼シリーズのアノヒトだなとか、読んできたキャラにだぶり、髣髴とさせるところが面白いです。 栗本薫さんクラスになると、叩かれまくったりされてお気の毒ですが、私は好き。栗本薫さんにしか醸し出せない頽廃した感じがいい。開きなおって捨て鉢なようでしぶとい。人間ってそうあるべきって思えるからかしら。
『神変まだら蜘蛛』 栗本薫 角川文庫
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