酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年02月28日(月) 『女たちの殺意』 松村比呂美

 日常でふと芽生える女たちの殺意が5つ。「あぁ、わかる。わかる」とその殺意に同意してしまうところが一番怖いことかもしれません。どの物語も落としどころが想像とは違うところに着地されてしまいました。うまいなぁ。やられたなぁ。こういう優れた短篇を描く女性が出てこられたんだー(感動)。
 どの物語もとてもいいのですが、「アレルギー − 溢れ出る殺意」はうならされるウマサ。辛いアレルギー症状の原因の根となるものに気づき、驚愕のラストへの一気呵成の流れは映像化して見せて欲しいくらい!(映倫上むずかしいか) 「暖かい殺意」は、そりゃ殺したくもなるよ・・・と共感させておきながら、すっごくひどい結末だし。「カルシウム」はカルシウムの成分が気にかかって仕方ない。「茶箱 − 乾いた殺意」は2重に意外な展開が好み。「どうしても − 振り向いた殺意」の哀しい女の見得の張り合いは情けないど身につまされて・・・。
 要するにたぶん女性であれば共感できる「哀しい殺意の根っこ」が秀逸なのですよね。あぁっ、うまく言葉で「よかった」感を伝えられないことがもどかしい。もう是非に読んでみていただきたい。損する事はありません。怖いくらい(そこが一番怖いのか?)うまい人です。オススメv

 やっと心と体が一緒になれた。

『女たちの殺意』 2005.1.15. 松村比呂美 新風舎



2005年02月27日(日) 『エリカ』 小池真理子

 40歳のエリカは親友の急死を彼女の愛人に知らせる。旦那にも娘達にも隠しとおした親友の愛人はエリカに急接近してくる。甘い言葉、洒落た食事、誕生日に401本の薔薇・・・親友の愛人と恋に落ちる事にブレーキをかけていたエリカだったが、陥落。そしてエリカが手にしたものは・・・

 「愛してる」の大安売りをする男。そう言えば、こういうタイプの男にかつて関わった事があると、いやぁーな過去が甦った。小池真理子さんが作中で‘恋愛過多症の男’と表現していたけど、うまいなぁ。そしてそういう男は自分を愛しているだけ。
 エリカは自分をものすごく愛して欲しくて、そんな男はいるはずないと思いながら恋に溺れてく。またエリカを奇妙な視線で思う不器用な若い男の異様な一途さ。なんだかなぁ。不健全だ。
 でも面白かったです。最後に寂しさや孤独感が残るけれど・・・

「煙草はやめられるかもしれないけれど、お酒だけは無理ね。きっと身体こわしても飲んでると思う」

『エリカ』 2005.1.22. 小池真理子 中央公論社



2005年02月26日(土) 『松浦純菜の静かな世界』 浦賀和宏

 松浦純菜は大怪我を負い、2年ぶりに街に戻ってきた。純菜は新聞記事から自分の感性に触れた切り取りをし、ある日‘八木剛士’という同世代の少年の関わった事件を知る。そして彼と出会い、発生する連続女子高生猟奇殺人事件を追いかけるのだが・・・

 大好きな若きグロ大王・浦賀和宏さんの待望の新刊です。安藤君シリーズがSTOPしていることは寂しいけれど、純菜ちゃんはなかなか良かったです。純菜ちゃんと剛士くんの風貌とかキャラクターをもう少し詳しく描いて欲しかったかな。もしかしたら剛士くんの方の物語で続きが出るのかもしれないので、二人の次の事件を期待して待ちましょうか。
 しかし、やはり浦賀和宏の世界でした。激しいまでのグロさは抑え目だったけど充分に浦賀和宏で嬉しかったですね。ページ数を増やしてもっと残虐に書き込んで欲しかった、という感想は危ないのかしらん。

 やった時は、悪気なんてまるでなかったのに。
 ただの冗談だったつもりなのに。
 でもやられた相手にすれば、その傷は消えずにずっと心に残るのだ。

『松浦純菜の静かな世界』 2005.2.5. 浦賀和宏 講談社ノベルス



2005年02月25日(金) 『東京タワー』 江國香織

 透(21歳)は母の友人の詩史(41歳)と密やかな恋に落ちていた。詩史には仕事も家庭もあったので、透はいつも詩史の連絡を待っていた。透の友人・耕二(21歳)は要領のいいプレイ・ボーイ。彼女がいながら主婦の喜美子(35歳)と逢瀬を繰り返していた。ふたりの青年とふたりの大人の女、ふたつの恋の行く末は・・・

 友人が映画を観て「うっとり」していたけど、詩史が透の母親に水をぶっかけられたところで我に帰ったと聞いていました。どうも原作にはそのシーンはなく、しかもエンディングも全く違うようですね。私は映画を観ていないけれど、聞いた限りでは原作の方が好きだなぁ。友人曰く映画のハッピーエンド(?)は<おばちゃんのおとぎ話>だそうで言いえて妙かも(苦笑)。
 基本的に恋愛モノは読まない。観ない。なぜなら恋愛は自分でやるものだからvなんちゃって。あまりラブストーリーに感動する性質ではないのでしょう。でも、江國香織さんの描く恋愛モノはキライじゃない。すっと心に沁みこんで来るから不思議。
 透より耕二の方が好きで、タイプで言うと私は喜美子だろうな。喜美子のぎらぎらした感じが暑苦しくてとっても同族嫌悪だったわ(苦笑)v

「でも時間はつくるよ。必要なものには時間をつくる」

『東京タワー』 2001.12.7. 江國香織 マガジンハウス



2005年02月24日(木) 『ユージニア』 恩田陸

 三世代が同じ誕生日で有名な丸窓の屋敷の青澤家。当主の還暦祝いとおばあさまの米寿の祝いの場で無差別大量殺人が発生。その時にその場に居合わせた少女が大人になり、当時の関係者に取材をして「忘れられた祝祭」と言うタイトルの本を出す。数十年を経て真実は明かされるのか? 誰が真実を語り、誰が真実を隠しているのか・・・

 恩田版「ツイン・ピークス」!!って惹句はいかがなものなのか? かつてツイン・ピークスにはまった私には意義アリ。
 うーんと正直「今はよくわかりませ〜ん」。時間を置いてもう一度読み直したほうがいいかと思っています。勿論、力はあるし、ぐいぐい読ませていただきました。でも・・・陸ちゃんならではの魅力的な人物がいなかったのよ(ごく個人的に)。漠然と感じたのは、桐野夏生女史のように真実を示さない放置プレイを狙っているのかなってことでしょうか。新しい形を模索中なのかしら。似たような手法の『Q&A』は気にいったのだけど・・・。

 つまるところ、俺は人間というものの正体が知りたいのかもしれない。恐らくは、自分がどういう人間なのかを。

『ユージニア』 2005.2.5. 恩田陸 角川書店



2005年02月23日(水) 『サウスポー・キラー』 水原秀策

 セ・リーグの人気球団オリオールズのサウスポー・ピッチャー沢村は入団から1年半。全試合テレビ放送をされ、他の球団とは別格のオリオールズ。実力のある沢村だが、オリオールズの風潮には馴染めずアウトロー。そんな沢村が八百長疑惑に巻き込まれ・・・

 プロ野球ファン(しかしアンチ巨人)の私としては、巨人をモデルにしたとしか思えないこの野球ミステリー(と言うよりハードボイルドだ)は非常に面白かったです。アンチ巨人はファンの裏返しと言われますが、それは違うと声を大にして叫びたい! 巨人にも好きな選手は数名いますが、どうにもあの球団の金・金・金のやり方に反発をしてしまうのですよねぇ。まぁ贔屓チームに金が無いだけとも言えるのですが(苦笑)。結局やっかみか?(笑)
 オリオールズに在籍する選手達のオリオールズと言うブランドへの異常なまでの執着が手に取るようにわかります。全てはそこから始まっていると言えましょう。はい。現実もそのようなことがよく見て取れます・・・

 しかしね、おれはもういやになったんですよ。ひざ小僧を抱えて、ずっと壁を見つめるだけの生活は。自分に降りかかった疑惑は自分の手で晴らす、そう決心したんです。

『サウスポー・キラー』 2005.2.10. 水原秀策 宝島社



2005年02月22日(火) 『果てしなき渇き』 深町秋生

 藤島は妻の不倫相手をボコボコにし、警察を依願退職。家庭を顧みず、仕事仕事だった藤島は、職場も家庭も失ってしまう。警備会社で働くようになり、パトロール中にコンビに強盗殺人事件に遭遇。しかも元妻から娘が失踪したと連絡が入る。娘を捜すうちに皮肉にも自分の過去を知っていく事になるのだが・・・

 ノワールばんざーい! 読者を選ぶ作品と選考会で問題になったそうですが、私は諸手をあげてソノ読者に選ばれたい。ぐろいわ、えぐいわ、残酷だわ。フィクションだからこそ(現実に起こったら引きます)の気持ち悪さに弄ばれたという感じでした。主人公の藤島が壊れに壊れていくさまも小気味よいほどv そして輪郭を掴む事が難しい影のヒロイン藤島の娘・加奈子が非常に魅惑的でした。人を破滅させるほどの女って魔性だ〜(涎)。

 女は思った。もしこの世に悪魔がいるとすれば、それはきっと彼女のような姿をしているのかもしれない。欲望にとりつき、蟲惑的な魅力を振りまき、人を破滅に追いやる。

『果てしなき渇き』 2005.2.10. 深町秋生 宝島社



2005年02月21日(月) 『いま、会いにゆきます』 市川拓司

 たっくんは愛する妻・澪と死別して6歳の息子・祐司と暮らしていた。たっくんは頭の中の化学物質のせいで様々な不具合の中で頑張ってシングルファーザーとして生きている。夜眠る前にたっくんは「アーカイブ星」のお話を祐司に話して聞かせる。この星へ澪は行ってしまったのだ。そしてある雨の日、澪がアーカイブ星から帰って来て・・・?

 話題になった物語を横目で見ながら通り過ぎそうになることがあります。この物語もそうなりそうだったところ、知り合いが絶賛していたので覚悟を決めて(泣くと思っていたので)読みました。読んでよかった。素直に心からそう思う。
 とにかく文章がものすごく好みです。間の取り方とか、会話のキャッチボールの軽妙さとか。そして・・・なにより登場人物(&犬)のキャラクターが素晴らしい! 魅力的な人たちばかりなのであります。物語自体も展開がうまかった〜。このタイトルはいったいどこで呼応するのかと考えながら読んでいたので、判明した時には涙がダダダダダーッと零れ落ちてしまって。
 もう読んだ人が多いと思いますが、もしまだ読んでいない人がいたらオススメですよ。映画も必ず観ようと思っています。号泣覚悟でv ポコポコ

「我々は生きていくよ。どれだけ別れを繰り返しても、どれだけ遠い場所に流されても、それでもね」

『いま、会いにゆきます』 2003.3.20. 市川拓司 小学館
 



2005年02月20日(日) 『さまよう刃』 東野圭吾

 長峰重樹は、亡くなった妻が残した一人娘・絵摩を溺愛していた。高校生になった絵摩は父にねだって買ってもらった浴衣を着て、友達と行った花火大会の帰りに行方不明となる。そして発見された娘は、彼女を拉致した少年たちによって心も身体も壊され死んでいた。たった一人となってしまった父は・・・

 はぁ、とてつもなく「すごい」物語です。登場する加害者の少年の悪魔(モンスター)ぶりに怒りを覚える人は多いことでしょう。私は読んでいくうちに「殺せ、殺せ(加害者の少年を)」と本気で思いましたもん。確かに法律で犯罪を犯した少年は守られているし、それをリンチで裁くことは許されないこと。でも「そんな馬鹿ども殺してしまえ」・・・そう思わずにはいられないわよ。もしも彼らにふさわしい罰が法律で与えられることとなろうとも、残された遺族の心はどうにもなりはしない。そしてたとえ己が復讐を遂げたとしても壊された心は元に戻りはしないですね・・・。いったいどうすればいいのでしょうか。哀しくて辛くて心が揺さぶられる物語でした。

 不意に人間が生きていることの意味がわかったような気がした。それは単に食べて呼吸しているだけのことではない。周りの様々な人間と繋がり、いろいろな思いをやりとりしているということなのだ。いわば蜘蛛の巣のような網の目の一つ一つになることだ。人が死ぬということは、そんな網から結び目が一つ消えることなのだ。

『さまよう刃』 2004.12.30. 東野圭吾 朝日新聞社



2005年02月19日(土) 『明日の記憶』 荻原浩

 佐伯は広告代理店の営業部長50歳。最近物忘れが激しく「誰だっけ。ほら、あの人」と言うような言葉が増えた。まだまだ若者に負けないつもりの現役バリバリ気分だった佐伯を若年性アルツハイマーという病魔が襲い掛かり・・・

 ものすごく哀しい物語でした。働き盛りの男を襲った若年性アルツハイマー。佐伯の孤独な闘いに胸が痛い思いをしました・・・。
 アルツハイマーと痴呆は違い、通常の痴呆は脳の血管異常が考えられ、アルツハイマーは脳内神経細胞をそのまま冒されてしまうそうです。現在の医療では修復不可能のため治癒は望めない・・・。生きることすら忘れてしまう死に至る病。自分の愛する人がそんな病に蝕まれたら、いったいどうすればいいのでしょう。
 生まれて生きて死に至る。ごく普通に全う出来る人もいれば、理不尽な苦しみにあがいて無念の死を迎える人もいる。生まれつきと言えばそれまでかもしれないけれど、あまりにも理不尽です。自分の愛した人が若くして病に連れて行かれたことを思いおこし、泣きに泣けました。

『明日の記憶』 2004.10.25. 荻原浩 光文社



2005年02月18日(金) 『霧笛荘夜話』 浅田次郎

 港町の古いアパート霧笛荘。管理人のおばあさんが六つの部屋をかつての部屋の主の思い出とともに語る。自殺しようとしている女・幸せな生活を捨ててきた女・中途半端な心優しいやくざ・ロッカーとなった少年・女を捨てた女・キャプテンとなったマドロス・・・

 浅田次郎さんらしい心優しき人たちの物語でした。さまざまな人生があり、苦しい哀しい過去を持つ人たち。でも健気に生きて人生を後悔していない清々しい幸せを感じました。まぁ、この人はうまいから。個人的に一番好きな話は女を捨てておなべとして生きた女性の物語でした。すごく素敵な人・・・うっとり。

『霧笛荘夜話』 2004.11.30. 浅田次郎 角川書店



2005年02月17日(木) 『春を嫌いになった理由』 誉田哲也

 瑞希は語学堪能同時通訳者志望の26歳。英語のほかに日常会話程度のポルトガル語とイタリア語をたしなむプータロー。訳あって親に借金あり。テレビ局敏腕プロデューサーの叔母・織江に超能力者(霊能力者)エステラの通訳を頼まれる。瑞希は超能力も霊能力も大嫌い。しかし、親への借金返済のため渋々引き受ける。エステラの霊視や織江の傲慢さに振り回されながら、生番組で事件が・・・?

 これは面白かったです。個人的な欲を言えば、ラストが違った方向に落ちて欲しかったけれど、これもありだろうと。エステラと瑞希と織江の織り成す人間模様が良かったです。しかし導入部分には「ゲ」と驚かされました。つかみはOKであります。

 人が見ている世界には、個人が望むと望まざるとに拘らず、必ず意味があるものよ。

『春を嫌いになった理由』 2005.1.25. 誉田哲也 幻冬舎



2005年02月16日(水) 『おんみつ蜜姫』 米村圭伍

 九州豊後温水(ぬくみず)藩の蜜姫は、本来なら江戸で育てられるところ、あまりのやんちゃっぷりに国許で育てられる。父の密かな企みで讃岐風見藩に嫁入りが決まりそうになった時、父が暗殺されそうになる。温水藩と父のために蜜姫は自ら隠密となり、将軍吉宗のもとまで旅をするのだが・・・

 うははははは(大笑)v キュートで暴れん坊な姫君が破天荒に活躍する痛快時代劇でありました。米村圭伍さんの本は装丁のイラストにいつも惹かれていて、今回念願叶って初読みとなりました。これって評判いいはずだわー。
 蜜姫と蜜姫に付き合う(渋々と)忍び猫タマ、そして蜜姫の母上様。最高のキャラたちでしたよー。他にも面白い人がいっぱい出てくるーv まぁ、是非に読んでみていただきたい物語なのであります。とってもお茶目さんですよー。ラブリィv

「そなたも、ただ隠密家業とやらにうつつを抜かしていえはなりませぬ。旅を通じて、いかにすれば凛として生きる娘になれるのか、会得してお戻りなさい。当節は男衆のみならず娘の風儀も乱れています。おなごだからとて、美しい花として咲くばかりではいけません。蜜には、凛として咲く娘になってほしいの」

『おんみつ蜜姫』 2004.8.20. 米村圭伍 新潮社 



2005年02月15日(火) 『しゃぼん玉』 乃南アサ

 人生を投げ出し、通り魔を繰り返し、逃げ続けていたイズミは、宮崎に迷いつく。怪我をした老婆を助け、彼女の家に転がり込んだイズミは、生まれて初めて正面から人と接するようになり・・・

 人生って思うようにならないものですよね。迷ったり、頭打ちだったり、苦しんだり、恨んだり、泣いたり・・・。でもそれを自分以外のなにかの責任にしてしまうかどうかで人生は決まるのだと私は信じています。自分が生きている全ては自分の選んだ末のこと。自分以外の誰も責任なんて取ってくれない。そこを間違えないでいられたら、きっと人生は何度でもやり直せるはず。腐らないで自分のできることを捜して前向きに生きていけたらいいな、と素直に思わせていただけました。

「自分の力じゃあ、しょうがねえことも、そりゃあ、あるばい。じゃけんど、自分の生き方についちゃあ、しょうがねえって諦めたら、そこで終わりばい。諦めたら、人生なんかやり直せねえ。どげに若くても」

『しゃぼん玉』 2004.11.30. 乃南アサ 朝日新聞社



2005年02月13日(日) 『ニッポン泥棒』 大沢在昌

 尾津は優秀な商社マンだったが、今は妻に離婚され、ハローワークに通う64歳。心の隙間から目をそらし、日々を大切に生きようとしている毎日。そこへアダム一号と名乗る男が、尾津はアダム4号だと接触してきた。引きこもりだったという男の持ってきた話は、尾津には破天荒で信じようにも想像もつかない世界だった・・・

 大沢親分だからこそ、こういうテーマを面白く最後まで読ませてくれたのだろうなぁ、と。インターネットやパソコンに知識のない尾津が、若き頭脳集団が発明したとあるシュミレーション・ソフトの解凍の「鍵」の片割れに勝手にされていたなんて尾津のとまどいはどれほどだっただろう。かわいそうに。それでも大沢親分の描く男らしく正面から闘うのでありますが。果たしてその結末やいかにー!?って感じですね。今の時代をしっかり捉えた面白い物語でした。ちょっとむずかしかったけど(本音)。

『ニッポン泥棒』 2005.1.15. 大沢在昌 文藝春秋



2005年02月12日(土) 『なんにもうまくいかないわ』 平安寿子

 並河志津子42歳独身バリバリキャリアウーマン。なんでもかんでもあっけらかーんと喋ってしまうため、人からは無神経と思われている。仕事が出来て人情家でいいかげんで、そしてとってもいい女。

 面白かったですねー、この志津子って女性。なんて言うか何でもかんでも喋ってしまう性質の悪い女のように見られがちだけど、すっごく一生懸命生きていることが伝わってくるのです。どんな形であれ、完璧な幸福なんて存在しない。隣の芝生は青いけど、自分の道を自分らしく進めばよいのだと実感しました。志津子すきv

「そうじゃないけど・・・・・・しゃべっちゃうのよ。忘れられないいろんなことがあって、酔っぱらったりすると、口からどんどん出てきちゃう。どんな出来事も、あったことはみんなわたしの中で生きてて、ピョンピョンはね回ってるのよ。躾の悪い、わがまま犬みたいに」

『なんにもうまくいかないわ』 2004.11.30. 平安寿子 徳間書店



2005年02月11日(金) 『背の眼』 道尾秀介

 ホラー作家の道尾は、白峠村へ旅に出た。そこでは‘神隠し’が発生し、数人の子供たちが消え、天狗の仕業と噂されていた。道尾は散歩に出た河原で不気味な声を聞き、怖くなり東京へ逃げ帰る。そして友人の真備に相談に行くと・・・

 『九月が永遠に続けば』を読んだので、そのまま『背の眼』を読みました。怖いのかミステリーなのかどっちかに固めて欲しかった。ホラー要素を求めて読むと肩透かしと言ったところかしら。出てきた問題も片付かないまま終っているし・・・。続くってことなのかな? 

『背の眼』 2005.1.20. 道尾秀介 幻冬舎 

 



2005年02月10日(木) 『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる

 水沢佐知子は、別れた亭主の再婚相手・亜沙美の連れ子のボーイフレンドと付き合っていた。自分から愛する夫を奪った亜沙美への自虐的な面当てだったかもしれない。その男が事故死(殺人?)し、愛する息子が忽然と消えてしまった。これは罰なのか? 罠なのか?

 噂ではアノ桐野女史が絶賛したとか。そう言われてみれば内容の厳しさは桐野テイストに近いかも。これは第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品で、作者さんは大人の女性らしい。こういうきわどい内容を描ききるには、ある程度の年齢や人生経験がないと難しいだろう、と思った。でも、どうしたってこのテの作品は書く人も映像を意識しているだろうし、読む方も映像を想像しながら読んでしまう。桐野女史の『OUT』すら映像化した放送業界は、この内容ですら映像化するんだろうなぁ・・・。なかなか問題作。より過激なものを人は求めるのか。
 
 なぜそのことを考えてやらなかったのか。自分自身がその年齢だったときには、平静を装ったうわべの下で、ほんの些細な出来事のひとつひとつに心が引き攣り、<性>に対する病的な憧れや恐れやおさえきれない衝動がいつも渦巻いていたではないか。

『九月が永遠に続けば』 2005.1.25. 沼田まほかる 新潮社



2005年02月09日(水) 『野ブタ。をプロデュース』 白岩玄

 修二は人当たりのよさで軽妙な人気者。ある日、転校してきた小谷信太のいじめられ要素てんこ盛りに驚いた。見て見ぬふりをしていた修二が、ひょんなことから信太=野ブタ。をプロデュースし、人気者に押し上げようとする・・・

 うまいです。この人(白岩玄さん)! 会話のテンポよさや今時の少年少女たちが非常にわかりやすい。そしてラストはキチンと落としてアッと驚かせてくれる。この落とし方のうまさ残酷さ切なさに「うーむ」と唸りました。こんな才能が出てくるのだなぁ。感動。

 言葉は人を笑わせたり、楽しませたり、時には幸せにすることもできるけれど、同時に人を騙すことも、傷つけることも、つき落とすこともできてしまう。そしてどんな言葉も、一度口から出してしまえば引っ込めることはできない。

『野ブタ。をプロデュース』 2004.11.30. 白岩玄 河出書房新社



2005年02月08日(火) 『推理小説』 秦建日子

 発生した殺人事件を忠実にトレースした『推理小説』の続きを落札せよ・・・

 うーん(悩)。秦建日子さん初の小説と言う事で興味深く読ませていただきましたが、やはり映像化を意識した(もしくはその世界の方だからどうしてもそうなってしまうのか)物語と言う感じでした。要するに映像化もしくは舞台化間違いなし。それならばこれを読むことなく映像で「どうなるのぉ〜」とハラハラしたかったですね。『共犯者』の時のように突っ込みながら(笑)v
 登場人物のキャラクターがそれぞれキチンと思い浮かぶところも脚本家ならではって感じでした。中でも無駄に美人な刑事・雪平夏見を誰が演じるかが私の中では既に大問題。そのキャスティングによっては見ないかもしれないくらい重要だ!

『推理小説』 2004.12.20. 秦建日子 河出書房新社



2005年02月07日(月) 『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』 北森鴻

 宇佐見陶子は、ある事情から同業者たちに貶められそうになっていた。そしてその気の強さゆえに親友カメラマンの横尾硝子に会いたくなかった・・・

 陶子は「冬狐堂のプライドにかけて」とちょっと笑える台詞を真剣に言います。今回何度か言っていたようだけど、きっと自分に言い聞かせているのね。陶子の身に降りかかっている現実問題に陶子や硝子の過去が絡んでくる。生きているってことは過去の上に成り立っているものなのね。那智も含め、この3人のイカシタ突っ張った美女たちが私はとても好きですv
 今回の物語の中では「瑠璃の契り」が最高に気に入りました。偶然が必然に思える出会いってあるから。しかし、いい女同志の絆って妙に艶めいた色っぽいもので素敵だわ。くふふ。

「酒なくて、なんで浮世がすごされようか」

『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』 2005.1.15. 北森鴻 文藝春秋



2005年02月06日(日) 『雨恋』 松尾由美

 沼野渉、30歳。公私共に停滞期と感じていた頃、引っ越しすることになる。ばりばりキャリアの叔母が海外赴任中、品川のマンションの家守(笑)である(※最近に読んだ本と勝手にリンク)。マンションの管理費だけ払ってくれればよいと言う叔母の太っ腹な提案には裏があった。そして雨の多かった、その秋に渉は切ない想いをする・・・

 『スパイク』に並びました。いやー、やられた。一筋縄ではイナカイ松尾由美さんの描く恋模様は、ダイレクトにストレートに私のハートをぶち抜いてくださりましたぁ〜。きゃー。まずは装丁の文字がとても素敵。雨という漢字の中の4つの雨だれマークのひとつが涙なの。これはうまい。
 松尾由美さんの不思議なトーンには出逢った頃から魅せられたまま、と言う感じです。うまいと言うか、なんと言うか、いやはや・・・読んでみてとしか言葉にならないわ。これはマイ2005酔わされてブッギリ不動でしょう。はぁ。ハート射抜かれ腑抜け中。

 あんなこと言われないほうがよかった、そう思った。残酷な言葉ー言った人はそんなつもりはなくても、聞いたほうにはそうとしか受けとれない言葉ってあるでしょう。

『雨恋』 2005.1.25. 松尾由美 新潮社 



2005年02月05日(土) 『よろづ春夏冬中(あきないちゅう)』 長野まゆみ

 装丁のキュートさにめろりvで読んでみたら面白かったです! しかも、装丁の絵も作者の長野まゆみさんによるものと知り吃驚。長野まゆみさんで彼方此方調べて彷徨っていたら、昔イラストに惚れて通っていたサイトさんが長野まゆみさんの物語の主人公達をイメージして描かれていたことに気づき、またまた吃驚!! こういう出逢いはとってもワクワクうきうき。
 不思議な短篇集は全て男が男を求める物語。すごーく自然でさらりとしていて、ごく普通の素敵な恋愛ものと言う感じ。おそらくリアルでもゲイのカップルってこんなふうに自然で当たり前なのだろうなぁと思います。あまりにもボーイズラブとかってデフォルメしすぎてるんじゃないかしらん。愛する者が異性であろうと、同性であろうと、人を想う気持ち、恋する気持ちは同じだわー。よいの。とても。言葉の使い方が(やりとりが)無茶苦茶いいのデス。
 どの物語も非常に好みでしたが、「タビノソラ」と「雨過天青」は秀逸。不思議な綺麗な音楽を聞くような心持で読んでみて欲しいですぅーv

 さあねえ、タマシイの容器(イレモノ)はいろいろだからね。

『よろづ春夏冬中(あきないちゅう)』 2004.10.10. 長野まゆみ 文藝春秋



2005年02月04日(金) 『やさしい死神』 大倉嵩裕

 「季刊落語」の編集部編集長・牧大路と部下の間宮緑。変わり者の凄腕編集長・牧には名探偵の横顔があり、緑も好むと好まざると事件に巻き込まれていく。

 このシリーズも3作目になるのですね。落語に詳しくない私でも高座のシーンでは本当に落語を聞いているような錯覚に囚われてしまいます。たまたま先日落語家さんとお話させていただく機会がありましたが、普段も魅力的だ!と思わせる軽妙な話っぷりでいらっしゃいました。芸を磨くって生きてる全てが勉強なのかもしれませんねぇ。
 牧編集と緑が巻き込まれる騒動は、オチが素敵。一番「おお」と唸らされたのは「無口な噺家」でした。懐の大きな人物の計り知れない魅力と実力を堪能できました。すごいv

『やさしい死神』 2005.1.20. 大倉嵩裕 東京創元社



2005年02月03日(木) 韓国ドラマ『真実』 ※感想にネタバレあります!

 議員の娘シニと議員のお抱え運転手の娘ジャヨンの男ヒョヌを巡る壮絶な闘いの物語である。

 ・・・16時間のドラマを私が要約するとこうなりました(笑)。職場の先輩に無理矢理見なさいと渡された韓国ドラマ。「短いから」と聞いて安心していたら16時間! それでも短い方らしいです(苦笑)。しかし、おそるべし、韓国ドラマ。見始めたら、ちゃんと最後まで見てしまいましたヨ。
 大金持ちの頭の悪い娘が、使用人の美しく賢い娘に当り散らす。カンニングを強要する。挙句に替え玉で有名大学を受験させる。自分の思い人が彼女に惹かれると徹底して阻止する。いやぁ〜笑えるほどに面白すぎる決まったまんまの展開。お約束どおり、美しい娘は男を射止め、金持ち娘はますます極悪非道になっていく・・・
 交通事故に記憶喪失と韓国ドラマ定番の流れもきっちり踏まえていて驚きました。ただあんな終わり方はないよなーとひとりブーイングの嵐だったのです。韓国ではものすごい視聴率のトレンディドラマということらしく、日本のサスペンス劇場の延長版って感じばかり受けた私にはカルチャーショックなのでありました。いやそれなりにとっても面白かったんですけどネ。でも、もうこんな長いドラマはごめんだわ。本が読めないもの〜。



2005年02月02日(水) 『いじわるペニス』 内藤みか

 29歳の咲希は二股をかけられた挙句、捨てられた過去に傷つき、本気で恋愛をする勇気を失っていた。それでも身体は男が欲しい。咲希は、ウリセンの22歳の由紀哉に入れ揚げるようになった。しかし、この男、勃たないのだった・・・

 新潮ケータイ文庫で脅威の70万アクセスを果たしたと言われる話題の官能小説を読んでみました。女子の描くエロ話としては面白くさらっと読めました。
 でも、あのラストはどうなんだろう? 私は結局のところ全ては自分に跳ね返ってくるものだと思って生きているのですね。だから、そんなウリセンの男に本気になった自分をキッチリと見つめて欲しかった気がする。あんなことをしても傷は深まるばかりだわ。・・・なんてことを書きながら、もしも自分がウリセンやホストの男に本気になって、咲希のような目に遭った時に似たようなことをしでかすのかもしれないなぁとは思っちゃう。ほんと身につまされた。せつないなぁ。哀しいなぁ。

 本当なら、たった一晩だけの後腐れない関係のはずなのに、私が「恋愛」を彼に望んでしまっていたのだ。

『いじわるペニス』 2004.10.20. 内藤みか 新潮社



2005年02月01日(火) 『不思議な少年� 戞〇害赦柁�

「万作と猶治郎」
 木武万作(きぶばんさく)は、両親と弟・猶治郎と東京から父の実家へ疎開していた。ふと気づくと弟の姿が金髪の美しい少年と入れ替わっていた。しかし両親には前の猶治郎に見えるらしい。おののく万作がたどり着いたのは、鬼舞(きぶ)家という豪農だったのだが・・・

「エミリーとシャーロット」
 エミリーとシャーロットは孤児。美しいエミリーは自分を貴族の末裔と信じ込んでいる。春風の中でふたりは美しい少年と出会い、シャーロットは賭けをすることになり・・・

「狐目の寅吉」
 昔、昔、水害に見舞われた地で人身御供として埋められた美しい少年がいた。その少年を模した菩薩像を奪い胸におさめ、寅吉は生きるため人を殺し物を盗む。その菩薩像に似た少年が地上に降りてきて、寅吉に出会う・・・

 うーん、すっごく不思議な物語だった。時空を越える美しい金髪の少年(不思議な少年?)が、さまざまな時代のさまざまな場所に現れて、人間界に茶々を入れてる感じ。その少年が「人間て不思議だ」と言うほど、人間は複雑怪奇に違いなく・・・。とても面白いのだけど、読んだ後、妙に考え込んでしまいました。
 個人的には「エミリーとシャーロット」が一番好き。女の子同士の複雑な胸のうちがよーくわかるから。この物語を読む限り、美しい少年はいたずら天使と言う感じなのだけど。

『不思議な少年� 戞�2001.10.23. 山下和美 講談社KCモーニング



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