酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年08月31日(火) 『西の善き魔女5 闇の左手』 荻原規子

 フィリエルは、ルーンとともに選んだ生活に満足していた。しかし、世界の果ての壁の調査に向かい、思わぬ敵と遭遇してしまう。ルーンはフィリエルを残し、ユーシスを助けに走り、フィリエルはフィリエルで・・・

 この物語で一番良かったのは何度も書いてきたアヤシイ女子校編でしたね。あぁいうファンタジーってありだと思うなぁ。しかしながら、よくもまぁ大風呂敷をきっちり落としたもんです。さすが勾玉シリーズの作者!と言ったところ。
 ただ女王対決に関しては私の想像通りのオチでしたけどねv ふふふ。そして私の一番愛したキャラは・・・レアンドラだっ! 当然よね。

「前のは、人物描写がいくぶん甘かったと思うぞ。次に書くなら、その点に気をつけたほうがいい」

『西の善き魔女5 闇の左手』 1999.5.15. 荻原規子 C★NOVELS



2004年08月30日(月) 『西の善き魔女4 世界のかなたの森』 荻原規子

 伝統の騎士として竜退治に向うユーシス。レイディ・マルゴットに懇願し、ユーシスを守るため南に向うフィリエル。フィリエルには予感があった。その先にはルーンがいるはずだと。しかしアデイルの差し金でロウランドの若君ユーシスとあかがね色の髪の乙女フィリエルのロマンスが広まり、行く先々で好奇の的となる。フィリエルを待ち受けていたものは・・・

 フィリエルはユニコーンの子供や不思議な吟遊詩人に出会う。いきなりこういう展開になるとはなぁ。しかしだなぁ、これって果たしてファンタジーなのか? うーん(悩) いったい後一巻でどうまとめるんやー!と心配してしまいました(笑)。

「それならいいよ − 夜が明けたらね」

『西の善き魔女4 世界のかなたの森』 1998.11.15. 荻原規子 C★NOVELS



2004年08月29日(日) 『西の善き魔女3 薔薇の名前』 荻原規子 

 フィリエルは、伯爵たちと王宮ハイグリオンへ向った。ルーンは王立研究所へ。輝くばかりの宴の毎夜。華やかな仮面の下でのかけひき。フィリエルは違和感を覚えているとユーシスに助けられ、ダンスを踊る。そして駆け巡るユーシスとフィリエルのスキャンダル。フィリエルはやっと自分の気持ちに気づくのだが・・・

 秘密の花園の女子校を追い出された(笑)フィリエルは、打って変わって華やかな王宮デビュー。個人的にはずっとアヤシイ女子校もので攻めていただきたかった。残念。
 フィリエルは、王宮の光に目を眩まされることなく自分にとっての真実に気づきます。たったひとつの自分にとっての真実を大事にしようとするのに、哀しい別れが。

 ・・・・・・どんなに悔やんだって、起きたことはもとに戻らない。

『西の善き魔女3 薔薇の名前』 1998.4.15. 荻原規子 C★NOVELS



2004年08月28日(土) 『西の善き魔女2 秘密の花園』 荻原規子

 ルアルゴー伯爵ロウランドの客人となったフィリエル。伯爵令嬢アデイルの教育係セルマを怒らせたフィリエルはアデイルの学んでいたトーラス女子修道院付属学校に放り込まれる。完全なる女だけの園。男子禁制の場所。『秘密の花園』とも『魔の巣窟』とも呼ばれている。そしてそこでフィリエルが巻き起こす騒動は・・・

 面白かった〜v 女子校のアヤシイムード満点でした。アデイルの宿敵レアンドラも登場したし、お約束の女の子同士のラブもあったし、ルーンの●●も拝めたし(笑)。まさかこういう物語で女の園潜入となるとは思わなかったです。意表をつく展開がとってもよいですv

「どこでおぼえたの、こんなこと」

『西の善き魔女2 秘密の花園』 1997.11.15. 荻原規子 C★NOVELS



2004年08月27日(金) 『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』 荻原規子

 グラールの最北端にあるセラフィールド。少女フィリエルは初めての舞踏会に胸をときめかせていた。変わり者の天文学者ディー博士が弟子ルーンにことづけた母の形見の首飾りがフィリエルの運命を変える。舞踏会で王子さまに出会い、ダンスを踊るシンデレラのようなフィリエル。首飾りによって自分の出生の秘密を知り、大きな世界の謀略の渦に否応なく巻き込まれていくのだが・・・。

 田舎で育った少女が実は・・・なんて、典型的な展開なのに心が躍ってしまうのはなぜかしら。それはきっとフィリエルがやんちゃだから。天文学者ディー博士の弟子のルーンが頑固で純粋な少年だから。フィリエルとルーンがどうなっていくのか、わくわくの導入です。異世界にぐいっと引き寄せる荻原規子さんはうまい作家さんだと思います〜。

 あたしがだれのものかは、あたしが決めるわ。

『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』 1997.9.15. 荻原規子 C★NOVELS



2004年08月26日(木) 映画『フレイルティー 妄執』

 ‘神の手’という謎の文字が残されるバラバラ殺人事件。事件の担当FBI捜査官ドイルのもとへ一人の男が現れる。この男、自分の父親のことを話し出した。
 1979年、フェントンとアダムの父が神から啓示を受けたと言い出し、悪魔を滅ぼすと言い始めたと言う。実際に滅ぼすための道具(斧)を手に入れ、名簿も手に入れ、滅ぼし(殺人)始めた。アダムは父を盲信するが、フェイトンは父の精神状態を疑う。父親はフェイトンを地下牢に軟禁し、マインドコントロールを試みる。食べ物も与えられず、朦朧としたフェントンは父に神の声が聞こえたと嘘をつく。そして思い余って父を殺すのだが・・・。

 ドイル捜査官のもとへ訪れたのは、フェイトンかアダムか。ここが大きなポイントでした。二転三転する物語に翻弄されました。私が怖いと感じたのは、回想シーンの狂っていく父の姿を見ている兄弟でした。兄は絶対に父の精神状態がおかしいと感じ、弟のアダムは愛する父を疑うこともなく盲信する。この分かれ道が恐怖のポイントだったと思います。特に兄のフェイトンは辛かったろうに。母を幼くして失い、父と弟とささやかな幸福を感じ生きていたのに全てが崩れてしまうのだから。ただ正直に言えば、ラストで曖昧になってしまった感じでした。オカルトなのかホラーなのかサイキックものなのか。全てのミックス? 途中までの心理ホラーがよくわからなくなってしまってとても残念でした。



2004年08月25日(水) 『方舟は冬の国へ』 西澤保彦

 十(つなし)和人は、失業し職安で相談員にネチネチネチネチ説教をされていた。まるで「キミは仕事ないけどボクはこうしてあるんだよん、いいだろ」とか言いたいみたいだ。ふと高校時代のある変態陰湿粘着質英語教師を思い出す。周りから蛇蠍のごとく嫌われていたハマグチ。そんな和人に言語同断文章(てくらだふみあき)と言うとんでもない珍名さんから突発的名仕事を依頼される。報酬は破格。しかし、質問はしないで「ある場所に一ヶ月ほど滞在して欲しい」と言うもの。報酬と謎に惹かれ、和人はその話に乗るのだが・・・・

 面白かったです。依頼された仕事はある人物になりきって、擬似家族ごっこをするというもの。魅力的な女性がパートナーの妻役。彼女に悶々とする和人の描写が西澤先生ならではって感じ。そして何より誰より‘やな奴’を描かせたら本当に右に出る者はいないんじゃないかってくらい‘やな奴’が本当にやな奴で(大笑)。いつもいつも思う。あのほのぼのやさしさうらうら光線だしまくりの西澤先生がどうしてあんな的確に‘やな奴’を描けるのかしらん、って。
 この物語は、意外と言えばとても意外な路線かもしれないけれど、西澤先生らしさてんこ盛りだと思いましたわ。西澤先生が書きたかったあんなこと。むふふ。私が感じたことが正解ならば、それらしきことは結構書かれてきている気がしますけど。大人のためのファンタジー・ロマンスでした。ラストが非常によいですv

「バベルの塔。そうですね。わたしたちはいずれ崩れ落ちることが判りきっている煉瓦を積み上げているいるにすぎない」

『方舟は冬の国へ』 2004.8.25. 西澤保彦 光文社




2004年08月24日(火) 『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』 上大岡トメ

 5分間で自分を変えられる・・・なんて絶対に無理(笑)。でも、この本を読んでいると少しずつ変えることは可能な気分になってきます。ささいなことで、キッパリ! 自分は変われる可能性があるのですよねー。

「約束の5分前に行く」
 60個のカンタンに自分を変える方法のラスト60個目に出てくるフレーズがこれです。仕事でも約束でも約束を守る大切さを忘れてはいけないと思うのです。この本の締め括りにこの言葉が出てきてとっても嬉しかった。
 結局は、自分の意識を変えていく。それが自分を変えていくのですね。

『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』 2004.7.30. 上大岡トメ 間幻冬舎




2004年08月23日(月) 『ぶたぶた日記』 矢崎存美

 義母の代理でエッセイ教室へ通うことになった山崎ぶたぶた氏。鼻をもくもくさせながら、周りの人たちの心をひょいっと軽くしてあげる。これぞぶたぶたマジックv

 愛すべき物語は出版社が変わろうとも必ずや存続するのですよねー。本当に本当に嬉しいことですねっ。ぶたぶたさんは今回は義理のおかぁさんの代わりに急遽エッセイ教室に通うことになります。もうこの路線で行くならば、いろーんな場所(職業)にぶたぶたさんを出没させてください!>矢崎先生(はぁと)
 久しぶりに矢崎先生の掲示板にお邪魔して、映画『誰も知らない』の話題になりました。私はあの捨てられた子供たちにぶたぶたさんと会わせてあげたい、と思いました。すると矢崎先生は会うなら母親の方でしょう、と。あ、目から鱗。そうですよね。あの母親に会わせてあげて欲しいですよ・・・。
 ふっとぶたぶたさんの暗黒ヴァージョン(もしくはホラー)を読んでみたいなと思いました。今回も勿論人の悪意は登場しますが、もっと強烈な悪や恐怖に遭遇するぶたぶたさんはどんなマジックを見せてくれるのでしょうか?

 いくつもの苦労やいやなことが重なって、彼は生きている。どれもこれも、一番怖く、そしてつらいことばかりだ。

『ぶたぶた日記』 2004.8.20. 矢崎存美 光文社文庫




2004年08月22日(日) 『愛することを恐れるべきでない私、愛されていることに気づくべき私』 豊川悦司

 帯の惹句は、「これは僕が2年間にわたって書いたラブレターである。相手はどこかに実在する女性。Eメールで送り、また送らなかった手紙もある。日付も、時間も、そして手紙も、これは現実のものだ」と・・・。スキャンダルとしては、女性誌で豊川悦司が中山美穂に宛てた81通のラブレターなんて報道も目にしたことがありました。それこそ映画『ラブレター』で共演し、リアルタイムで書かれたEメールは、ふたりが共演したドラマ『ラブストーリー』の頃ですよね。豊川さんってば確信犯?
 フィクションなのか、ポエムなのか、帯の惹句の通り本当のラブレターなのか。それを突き止めようとするのは野暮なのかもしれませんね(いや、実際、突き止めようとしたのですが)。なんであるにしてもロマンチストで情熱的な豊川さんの心の叫びが伝わってきます。痛いほどに。せつないほどに。

 声が聞きたいし、
 顔も見たいし、
 匂いも嗅ぎたいし、
 抱きしめたい、
 強く、ギュッ、って、
 抱きしめて、
 キスをして、
 もっと強く、抱きしめたい。

『愛することを恐れるべきでない私、愛されていることに気づくべき私』 2003年9月18日 豊川悦司 マガジンハウス



2004年08月21日(土) 映画『誰も知らない』

 あるアパートに母と息子が引っ越しをしてきた。父親は仕事で外国に行っていると大家夫妻に軽妙に話す母。部屋でふたりきりになり片付けを始めたふたりが開けたトランクから子供がひとり、ふたり、あとから三人目がこっそりと合流。この4人は異父兄弟だった。しかも母親は出生届を提出しておらず、社会に属さない子供たちは隠れて生活をすることを強いられる。そしてある日、新しい恋をした母親は長男にわずかな金を残し家出するのだった・・・。

 この映画は、「西巣鴨子供4人置き去り事件」と呼ばれる昭和63年に起こった事件をモチーフに作られたそうです。現実の事件は、そのまま映画にはできない悲惨な現実がありました。
 映画では母親役のYOUがとてもキュートで憎めなくて、子供たちが捨てられても母を慕った気持ちがよくわまります。映画でも現実でも母は母であることより女であることを選ぶのですが・・・それなら子供を産まなければいいのに。考えなしに次から次へと出きれば産んでしまった母の愚かさが子供を不幸に巻き込んでしまったのだと思います。
 なんとも重苦しい映画でした。世界残酷物語にエントリーできます・・・。
 




2004年08月20日(金) 『木曜組曲』 恩田陸

 うぐいす館、瀟洒な洋館に今年も女たちが集まってきた。木曜日を挟んだ3日間を、4年前に亡くなった(自殺?)作家・重松時子を崇拝する女たちが5人で過ごす。酒を呑み、美味しい料理を食べ、時子を偲びながら。今年は予期せぬ豪華なカサブランカの花束が届けられた。差出人はフジシロチヒロ。意味深なカードとともに・・・。時子の身の回りの世話をしていたえい子(時子のデビュー当時からの担当編集者)。時子の異母姉妹の静子(出版プロダクション経営)。静子の母方のいとこの絵里子(フリーライター)。時子の姪の尚美(流行作家)。尚美の異母姉妹のつかさ(純文学)。奇しくも物を書くことを生業とする女たちばかり。そして、爆弾発言。
 「あたしが時子姉さんを殺したんだわ」

 強い女たちに逢いたくて、読み返した木曜組曲。5年前に読んだ時よりも面白かった。女たちがタフだから。そして陸ちゃんの物を書くことに対する姿勢も感じることができるし、呑むこと食べることへの愛情もよくわかって興味深いです。
 6人の女たちは、それぞれ強烈な個性を放ちますが(時子も入れて)、私が一番好きな女性は静子。静子の言動にはものすごく勇気付けられる。憧れです。
 物語は時子の死が自殺か他殺かと推理されます。当時、隠されていた秘密が暴かれ、推理は二転三転。そして5人がたどり着いた衝撃の真実とは・・・。それは読んでからのお楽しみ。

 静子は大人だから、自分の敵や気に食わない人物に意地悪したり、露骨な態度を取ることはない。彼女は、そんな無駄なエネルギーは使わない。そういう相手を自分の世界からスパッと遮断することができるのだ。自分とは合わない、この人とは関わりたくない、そう思った瞬間に全てを切り捨ててしまう。

『木曜組曲』 2002.9.15. 恩田陸 徳間文庫



2004年08月19日(木) 『慟哭』 貫井徳郎

 佐伯警視は、連続幼女誘拐事件の捜査に難航していた。生い立ちや立場から嫉妬の的になっている佐伯の孤独な闘い。かたや、新興宗教にのめりこんでいく犯人の狂おしいほどの心の叫び。
 ふたつの物語が錯綜し、事件の真相が語られるとき・・・

 すごいなぁ、貫井さん。10年以上前の貫井さんのデビュー作を再読しました。展開を知りつつ読んでいても興奮させられてしまいました。新興宗教の描写がとてもリアルで、心に闇や空洞を抱える人が、つい新興宗教にのめりこんでいく気持ちがわかる気がします。
 タイトルの慟哭は、もうまさに登場人物の慟哭なのだなぁと思います。悲劇の連鎖と言うか、悲劇に遭遇した人の心をどうやって救ってあげたらいいのだろうと考え込んでしまいます。

 だが彼は信じた。信じたいがために信じたのだ。

『慟哭』 1999.3.19. 貫井徳郎 東京創元社文庫




2004年08月17日(火) 『伯爵探偵と僕』 森博嗣

 夏休み。僕は奇妙な人物と知り合いになった。真っ黒な服装をした大きな男の人。名は「アール伯爵」しかも「探偵」・・・。そして事件発生。僕の友だちが行方不明に。伯爵と伯爵を追いかける(?)秘書のチャフラスカさん(女性・日本人)とともに事件の解明に乗り出すのだが・・・。

 おお、ブラボー! すごぉ〜くいいですv 森博嗣さんには妙なトラウマがあって(一番最初に読んだ単発作品があまりにも合わなかったのです)、周りの仲間達が大好きなシリーズすらちょこっと齧っているくらい。そんな訳で『伯爵探偵と僕』を少々こわごわと読みました。
 これはかなり質の高い物語じゃなかろうか。配本されたミステリーランドを全て読めていませんが、読んでいる中では上位に食い込みます。小学生の僕と風変わりな大人の伯爵の交流が非常によいです。こういう大人と出会えた子どもは、きっといい人生を送るだろうな。どきどきわくわくハラハラして、最後の最後に・・・それは読んでからのお楽しみ。オススメです。

 僕が子供だから教えてくれないのだろうか。そうかもしれない。だけどどんな事情だって、話してくれたら、絶対に僕は理解できると思う。どうして、大人って子供にものを隠そうとするのだろうか。絶対に変だ。僕が大人になったら、子供には正直に何でも話そうと思う。わかっても、わからなくても、話さないよりはずっと気持ちが伝わるし、少しでもわかることが、子供には大切だと思うのだ。

『伯爵探偵と僕』 2004.4.27. 森博嗣 講談社


 



2004年08月15日(日) 映画『コンフェッション』

 1960年代のアメリカ。女好きなチャックはテレビ業界に目をつける。企画を持ち込むがうまくいかない。奔放な女性ペニーと出逢い、気ままな恋愛関係に陥る。ペニーの言動からアイデアが閃く。それはひとりの美女が見えない3人の男を相手に質問を繰り返し、相手を選ぶ「デート・ゲーム」という視聴者参加の企画だった。
 しかし、プレゼンテーションに持ち込むものの、おえらがたには不評。荒れるチャックの前に現れたのは、CIAのまわしものジム。ジムはチャックを観察し、自分の求めている人材にぴったりだと思い、スカウト。それはCIAの秘密工作員になり、合衆国に邪魔な人間を抹殺するという仕事だった・・・。

 実在する伝説のテレビ・プロデューサーの自伝を映画化したものだそうです。視聴率を稼いだ男が、裏の顔を持ち、暗殺を繰り返していた。嘘のような本当の話? もしくは逆? どちらなんだろう。刺激的な世界に生きる男が、より刺激を求めてしまうってわからないでもないですが。
 面白かったのは、「デート・ゲーム」という番組。これのパクリみたいな番組が日本でもありましたねー。顔をみないで質問していき人柄から相手を選ぶ。なかなか危険な賭けかも・・・。
 そしてペニー役のドリュー・バリモアが最高にキュートでしたv ジュリア・ロバーツより魅力的だと思う〜。



2004年08月14日(土) 『影踏み』 横山秀夫

 ノビ師(寝静まった民家に忍び込む泥棒)の真壁修一は、2年前の事件で捕まっていた。出所して真壁は2年前に忍び込んだ家の女を調べる。あの女は亭主を焼き殺そうとしていた。生きたまま人間を焼き殺す。修一にとって許せない行為だった。15年前に母が双子の弟を焼き殺し、心中したからだ。弟も真壁もできのいい双子だった。しかし、たったひとりの女・久子を争い敗れたことから弟はやさぐれていた。そして死んだはずの弟は・・・

 横山秀夫さんが、こういう路線も書くのだなぁと最初は新鮮に思いながら読んでいました。しかしながら途中から「ちょっと待てよ」と。これってまるで浅田のおっさんの世界のパロディじゃーん。いや、横山秀夫さんが意識してパロったかどうかは定かではありませんが、浅田のおっさんありきな私としてはそう思えてなりませんでした。人にはそれぞれ持ち味ってあると思うので、横山さんはブレークした硬い作風の方がよいのではないかしら。さらりと読める面白い作品ではありますが、私的には疑問が残ってしまったのでした。

 顔形はおろか、自分の心のあり様まで似通った複製のごとき人間がこの世に存在することを呪った。いっそのこと消えてなくなれ。そう思った。

『影踏み』 2004.11.20. 横山秀夫 詳伝社



2004年08月12日(木) 映画『悪魔が来たりて笛を吹く』 ※感想にネタバレあります。

 昭和22年、銀座の宝石店で凶悪な強盗殺人事件が発生した。椿英輔子爵は、容疑者として取り調べを受ける。無実を立証されるが、自殺。後日、娘に託していた本から遺書が見つかる。父はもう屈辱に耐えられぬという内容だった。そして死んだはずの子爵が目撃されるようになり、連続殺人事件がはじまった・・・!

 横溝正史さんの小説はだいたい読んでいると思います。おどろおどろしい時代と血のおざましさがミックスされ、美しくて残酷v この映画の金田一さんはナント西田敏行さんが演じてらっしゃいました。観ているとやっぱり西やんは西やんなんですよねー。独特の西やん金田一でした。妙にユーモラスでかわいらしい。
 今回の物語で起こる自殺や殺人事件の背景にはふたつの近親相姦が原因となります。すごーくエロチックなベッドシーン(熟年近親相姦カップルの方)に思わず生唾が(笑)。若い方の近親相姦カップルは悲壮感満載ですごくかわいそうだった。近親相姦は生まれてくる子どもに血が濃すぎて影響がでるためタブーとされているのでしょうが、子をなさないならありじゃないかなぁ・・・って駄目?
 久々に横溝な夏にしようかしら、と思ったのでした。 



2004年08月11日(水) 『ねこのばば』 畠中恵

「たまやたまや」
 若だんなの幼馴染お春に縁談が舞い込む。若だんなは単独で縁談相手の偵察に出かけるのだが、その男なにやら訳ありが多いらしい・・・?

 今回も体の弱い若だんなと若だんなを溺愛するあやかしたちが大騒動。どのエピソードも「うー」と考え込んだり、ほろりvとさせられたり。中でも上にピックアップした「たまやたまや」がよかったですねぇ。若だんなとお春ちゃんの幼馴染ゆえの淡い心の交流も良いし、ふたりの選んだ決断もほろ苦くていい。このシリーズはずっとずっと続いて欲しいものです。

 こういう、どうしようみなくなったときに、人は本性を現す。

『ねこのばば』 2004.7.20. 畠中恵 新潮社






2004年08月10日(火) 『少女大陸 太陽の刃、海の夢』 柴田よしき

 女性だけの地下都市。彼女達は200年前に戦争による破壊された地上から逃げ延びてきた。流砂(ルイザ)は、自分の世界を平和だと信じて疑わなかったのだが、ある夜、反政府反乱軍の戦いに巻き込まれてしまう。それは偶然ではなく必然だった。眠っていた流砂の能力が目覚め、世界は・・・

 柴田よしきさんは、やはり強い芯のある女性を描かせたらわくわくするくらいうまいなぁと関心します。この物語で私が惹かれた女性は、陽那。孤高の反乱軍リーダーです。自分の背負ってしまったものの大きさにつぶされないよう歯を食いしばっていることがよくわかる。性格は少々ひねくれているかもしれないけれど、それも自分の本音を隠すためではないかしら。世紀末の物語はハードで残酷だけど、命あるものの明日を信じる気持ちは素晴らしいな。なかなかスッキリおもしろく読めました。

「助かるか助からないかは、運。それ以外のなにものでもない。そしてその人の持つ運は、誰にも触れない。流砂、自分が神ではないことを思い出しなさい」

『少女大陸 太陽の刃、海の夢』 2004.7.30. 柴田よしき 詳伝社




2004年08月09日(月) 映画『呪怨2』

 ホラー・クィーンの異名を持つ女優・京子は、あの惨殺の家(伽耶子の家)での収録後交通事故に遭遇。同乗していた婚約者は重態。京子は流産してしまう。京子とともに番組を制作していた人たちも次々と・・・。そして流産していたはずの京子のお腹には子どもが順調に育っていた!?

 今回の呪怨はチラリズムを徹底排除。伽耶子と俊雄が出まくります。いや、怖いと言うより笑えてしまいました。コメディ・ホラーだったのかな?
 ネタバレですが、京子から伽耶子が世の中に生まれなおします。京子役ののりピーがよくぞあの出産シーンを演じたものだわ。だってのりピーから大人の伽耶子が出てくるんですよ〜。しかも、そのあとは何故か子どもの伽耶子になって母親ののりピーを殺しちゃうし。
 よくよく考えると、まるっきり貞子と同じ歩みでした。貞子も生まれなおしますものねぇ。幽霊でなく実体になり、恐怖を撒き散らすと言うことなのか。うーん、二番煎じ。



2004年08月08日(日) 『QED 〜ventus〜 鎌倉の闇』 高田崇史

 妹・沙織の策略(?)で、タタルと鎌倉散策を楽しむことになった奈々。沙織は、タタルの薀蓄から仕事に活かせるネタを盗もうと思っていたのだが、タタルが説いた‘本当の鎌倉’とは・・・。

 いいくにつくろう鎌倉幕府。私のなんとなく知っている鎌倉幕府時代のイメージが、タタルくんの薀蓄によりことごとく撃破されてしまいました(笑)。歴史って見る角度からこんなにも違った表情を見せるのだと感服します。参っちゃったなぁ。しかし、鎌倉麦酒を呑みたいなぁ。それが一番の感想かも・・・。
 春に高田崇史さんが岡山に取材にいらしたのですが、次のQEDは舞台が岡山になります。そのネタふりも物語の最後でキッチリされていました。あの楽しかった珍道中がどんなふうにタタルくんに撃破されるのか(笑)今からものすごーく楽しみなのでありますv わくわく。

 歴史たちは、いつも私たちの目の前にいる。物も言わずに、ただじっと腰を下ろして。こちらが問いかけるまで、彼らは口を開いてはくれない。だから自分たちから行動を起こさなくてはいけないのだ。そうすれば彼らは、思ってもみなかったような豊饒な時を目の前に広げてくれるー。

『QED 〜ventus〜 鎌倉の闇』 2004.8.5. 高田崇史 講談社ノベルス




2004年08月07日(土) 『ネバーランド』 恩田陸

 松籟館(しょうらいかん)は男子校の寮。古くて歴史的な建物。冬休みに事情があって帰省しない(できない)菱川美国・篠原寛司・依田光浩。そして寮生ではないが何かと寮に入り浸っている瀬戸統。4人は閉鎖された空間を共有するうちに反発しあいながらも、4人のリズムを作り上げていく。4人4様の悩みやトラウマをゲームを借りて吐露し、乗り越えていく・・・

 『夜のピクニック』を読んだためか、どうしても読み返したくなってしまった『ネバーランド』。やっぱり陸ちゃんってばすごいですわ。久しぶりに読み返してもぐいぐい引きずり込まれてしまう。魔力だ(笑)。
 冬休みの数日を4人とひとりの幽霊が過ごす。彼ら5人が抱えた悩みやトラウマが浮き彫りにされていく過程は、陸ちゃんマジック! 嘘をひとつ混ぜて語る告白ゲームは圧巻だったなぁ。
 この物語の主人公は私的には光浩です。ドラマ化された光浩の訳ありの年上の相手は美しい女優さんだったけれど、物語では50過ぎのぶよぶよの厚化粧のおばさん・・・げーですよー。だからドラマより小説の方が絶対的に面白い。またドラマでは、美国の元カノや妹がやたら登場していたけれど、小説ではほぼボーイズONLY。そちらの方がすっきりまとまっている感じ。男だけの妖しい感じが生きてくるから。あぁっ、語りだしたらとまらないわー。
 心に抱えた重いものを吐き出す行為は、救いにつながるんだなとつくづく思います。陸ちゃんの作品でもかなり好きな作品です。

「いつも、そうだ。大人はみんなそうだ。全てが終ってから、俺の知らないところでやりたいことを全部やってから、許してくれって言うんだ。俺の目の前から姿を消してから、分かってくれって言うんだ。いつもいなくなってから俺を苦しめる。こっそり何年も溜めておいて、後からひとまとめにして打ちのめす。俺がどんなに傷つくか、どんなに苦しむかも知らないで。誰も説明なんかしてくれない。どういうことなんだってきこうと思っても、いつもその時にはもう誰もいない。みんな自分のことしか考えていない。誰も俺のことなんかこれっぽっちも気にかけちゃいないのに、俺には自分のことを分かってくれって言う」

『ネバーランド』 2000.7.10. 恩田陸 集英社




2004年08月05日(木) 『鉄道員(ぽっぽや)』 浅田次郎

 映画になった物語を含む8つの短篇集。全てに幽霊や生霊が登場します。でもそれはホラーではなく、‘泣かせ’の浅田ならではの心にせつないものばかり。こういう幽霊ものもよいものです。
 気に入った物語は、「伽羅」と「うらぼんえ」でした。「伽羅」ではゾワゾワさせる女っぷりのよいマダムが登場します。ハッキリと幽霊だとか生霊だとかわからないまま、物語は進みます。「うらぼんえ」では、夫に浮気されたちえ子の亡くなった祖父が登場します。背中に刺青のあるいきのいい(笑)幽霊。孫のために必死な幽霊に涙を誘われて、なんだか浅田のおっさんならではって感じ。
 この暑い夏にかなりオススメですv

『鉄道員』 1997.4.30. 浅田次郎 集英社



2004年08月04日(水) 映画『ボイス』

 ジウォンは援助交際について取材し記事にしたことでストーキングされていた。思い余って携帯電話の番号を変える。すると今度は次々と不気味な出来事に遭遇しはじめた。調べてみるとその番号を使用していた人たちは不審死をとげていたのだが・・・。

 2年前に大ヒットした韓国ホラー『ボイス』を観ました。これってタイトルはボイスよりも携帯電話の方がいいんじゃないのかしらん。物語の内容はありがちだと思います。この映画の不気味さは主人公の友人の娘につきます。あんな少女が異様な表情をしたり、父親にマジキスをぶちゅぶちゅしたら、それは生理的に嫌悪感を煽りまくりますわ。あれっていやだったなぁ。子どもを使うのは卑怯だ。
 私的なツボは、韓国の貞子と呼ばれたジニでしたv あのジニ役の女の子ってかわいかったなぁ〜。



2004年08月03日(火) 『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦

 関口は榎津のお供で鳥の城へ。そこの主の5人目の花嫁を守るために!?

 アハハ。気がつくと買ってから一年も置いたままにしていました(苦笑)。周りから「読んでも読んでも事件が起こらない」と聞いていたためです。そして本当にどんなに読んでも事件が起こらず、起こったと思ったら京極堂が登場してあっさり解決していました。可笑しかった〜。
 この物語の魅力は榎木津のはちゃめちゃっぷりに尽きると私は思っているのです。だから今回はエノさんがおとなしいし、暴れないし、破壊しないし、ツマラナイ。でもそれでも読んでしまうのは何故だろう。自虐的な関口が心配だからかしら。どうあっても読まずにいられない物語であるに違いないようです。

「傷の手当ては他人にも出来るさ。でも手当てをしたってそれで傷が治る訳じゃない。本当に傷を治すのは傷を受けた当人だ。当人の肉体だ。傷は塞がるものなんだ。手当てと云うのは傷を治す手助けに過ぎないし、時に傷を受けるより痛いものだ。治るか治らないか、それは当人次第だ。そこは他人には手出しが出来ない処なのだよ。それは君が」

『陰摩羅鬼の瑕』 2003.8.8. 京極夏彦 講談社




2004年08月02日(月) 『ブラフマンの埋葬』 小川洋子

 芸術家だけが利用できる別荘の管理人の僕は、ある夏の日‘ブラフマン’と出逢う。傷ついたブラフマンを手当てし、躾け、共に暮らす静かで美しい日々だったが・・・。
 
 不思議な物語でした。静謐なイメージ生と死を感じます。タイトルからわかってしまうように謎の動物ブラフマンと出逢い、ブラフマンを埋葬するまでの物語。
 大きく盛り上がるわけでなく、淡々と進んでいく毎日を静かに眺めていたという感じでしょうか。『博士の愛した数式』ほどブラボー!とは思えなかったけれど、妙に心にせつなかったです。
 ブラフマンは犬かと思っていたけれど、もう少し野性味のある動物なんだろうなぁ。

 それが僕が耳にした、最初で最後の、たった一回きりの、ブラフマンの声だった。

『ブラフマンの埋葬』 2004.4.15. 小川洋子 講談社



2004年08月01日(日) 『夜のピクニック』 恩田陸

 風変わりなイベント。夜を徹して八十キロを歩きとおすと言う「歩行祭」。その高校の卒業生は誰もが歩行祭について懐かしく語るのだった。高三の貴子は、パーソナルな事情から近づきたくても近づけなかった融と話したいと思い、ひそかにある賭けをする。そして賭けに勝ってしまう。貴子と融、ふたりの距離は縮まるのだろうか・・・。

 本当に陸ちゃんって引き出しの多い、不思議な人だなぁと思います。この物語は青春どまんなか路線ではなく、ホラーやミステリィに流れるはずだったみたいです(笑)。ホラーだったら、ひとりひとり消えていくんだろうなぁ(大笑)。ミステリィなら謎を語り合うのかしら(ってどこかで聞いた筋)。それまた別の物語で読んでみたいものです。とくにホラー・ヴァージョン!
 さてさてこの物語を読みながら鮮やかに高校時代が甦りました。なつかしくてせつなくて愛しい日々。貴子が親友の美和子と高校時代の恋愛について語り合うシーンはたまらなかった。私は高校時代にこの人だ!って人とめぐり合い、愛し合えたし、結ばれたから。その彼が若くして亡くなったことは人生の瑕というかあまりにも残酷な現実だったけど、私は何度でも彼と巡り合いたいと改めて感じたし、あの記憶はまさしく私だけのものだと確信したのですよ。しみじみ。
 青春と友情と恋心とほんのちいさなミステリー。メインの貴子と融もいいけれど脇を彩る登場人物も極めて魅力的。陸ちゃんだからこそ描くことのできる世界ですね。最高v

 あたしも、人に、できるかどうか分からないようなお願いはしないし、人の記憶に頼ったりしないよ。でも、あたしは覚えている。あたしの記憶はあたしだけのもの。それでいいんだ。

『夜のピクニック』 2004.7.30. 恩田陸 新潮社




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