酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2004年07月31日(土) |
『天切り松 闇がたり』 浅田次郎 |
就寝時刻をとうに過ぎた夜更けに、雑居房へ老人がやってきた。なにやら看守が親しげである。この老人、伝説の義賊‘目細の安吉’の子分だった。興味津々の若い同居人たちに夜盗の声音‘闇がたり’(六尺四方から先は届かない)で昔話をはじめた。看守も同居人たちも老人の語りに引き込まれていくのだった・・・
ろくでもない父親に放り出された松蔵の数奇な人生のこぼれ話。浅田のおっさんならではの軽快さとほろにがさがたまりません。昨日はドラマ化されたものを見てみましたが、やはり(と言うか、当然と言うか)原作には敵いませんでしたね。中でも吉原に売られた姉との再会・救出劇は涙なくしては読めませんでした。うるうるうる。浅田のおっさん、うまいなぁ。
人間同様、世の中どんどん軽くって味気ねえものになって行きやすねえ。
『天切り松 闇がたり』 1996.7.31. 浅田次郎 徳間書店
| 2004年07月29日(木) |
『ちびギャラ』 絵・文 ボンボヤージュ |
岡山県倉敷市出身のイラストレーター・ボンボヤージュさんの絵本4冊。かわいくてにくめいないキャラたちとボンさんのほんのひとことが最高です。笑わされたり、癒されたり、ほろりとされたり・・・。立ち読みでいいから(ボンさん、ごめんなさい!)是非一度手にとってご覧ください。きっと心にするりと入り込んでくる絵と文に出合えるはずです。
ちびギャラ 笑 ・おあずけって言うなら目の前に置かないでいただきたいと思う。 癒 ・ナデナデしてあげようか? たくさん泣いたご褒美に。 ほろり・苦しいことやつらいこと忘れられたら楽だけど忘れられないから頑張れて覚えてい るから強くなる。
ちびギャラにっ 笑 ・切ったら泣かすよ。 癒 ・そんなわけない。みんな最初はヒヨッコでできることから頑張った。 ほろり・届かない想いに今もつながれたまんま。
ちびギャラさんっ 笑 ・うらやむのはもうやめた。奇跡も運も偶然もマグレもマグロも自分でつかむ。 癒 ・上にいくほどエライだなんてチーズバーガーだって信じてない。 ほろり・どんまいオムライス。ケチャップはみ出てもココロははみ出ておりません。
ちびギャラよんっ 笑 ・カレーが言うのも何ですが人生は甘くない。でもきっと頑張れる。 癒 ・オニのように愛しています。 ほろり・待つことはしんどい。何もできない自分に気づくから。
| 2004年07月27日(火) |
『陽だまりの迷宮』 青井夏海 |
11人きょうだいの末っ子・生夫(いくお)は小学三年生。病気がちな生夫が遭遇する日常の謎と不思議。生夫にとっては世界は未知のことばかり。消えた模型・無言電話・伝説の絵本・・・子どもだからときちんと話をしてもらえない、聞いてもらえない。生夫は自分なりに頭を回転し、推理する。そしてたったひとりの相談相手、下宿人のヨモギさんがいる!
おお。これはよいですよ。小学三年生の男の子が生意気にもちゃんと推理をします。まぁ。的は大きくはずしていますが(笑)。拙いなりに自分で見極めようとする姿勢が可愛らしかったなぁ。そして下宿人のヨモギさん。彼がね、よいのですよ。これはちょっとした驚きをいただけました。
世の中、べつにやましいことではなくても、軽率に口外しないほうがよいこともあるのかもしれなかった。
『陽だまりの迷宮』 2004.5.18. 青井夏海 ハルキ文庫
ほんの一瞬だった。ボクが油断した瞬間に荷物をかっぱらわれてしまった。白昼堂々と人通りもあると言うのに。行くあてもなく彷徨っていたボクはどんどんとホームレスとなっていく。そんなボクに興味を示した少女がいた・・・。
うーん(困惑)。まずはなにもかもが簡単に展開しすぎてる感じを受けました。この物語の事情ならばもっと重く暗く残酷になり得るだろうに残念だなぁ。ページ数も中途半端だし。人の悪意について描かれているのですが、深く掘り下げればもっともっと面白く空恐ろしかっただろうに、と思いました。
「悪意のこもった沈黙くらい、暴力的なものはないからね」
『転落』 2004.7.8. 永嶋恵美 講談社
| 2004年07月24日(土) |
『空中ブランコ』 奥田英朗 |
「空中ブランコ」 いらっしゃーいと場違いに明るい声で神経科へ迎え入れられた飛べなくなった空中ブランコのり(って言うのかな)コウちゃん。コウちゃんはキャッチャーの内田がわざとタイミングをずらして自分の手を掴まないのだと睨んでいる。それなのに周りがやいやい言うので仕方なくやってきた。そこの伊良部先生は往診だと言いながら連日サーカースにやってきて空中ブランコの嬉々として練習するのだった・・・
心がいっきに軽くなった。言葉の力を思い知った。どうしてもっと早く、対話をしなかったのだろう。
「女流作家」 星山愛子は流行作家。ワンパターンと言われようと都会派恋愛小説なんてお手のもの・・・なのに、書こうとすると以前に書いた設定と同じかと思い、前の作品を片っ端からチェックしないではいられなくなってしまった。ついに精神科を訪れると「いらっしゃーい」と素っ頓狂な声が! 今度は伊良部先生作家になりたいと言い出した・・・
人間の宝物は言葉だ。一瞬にして立ち直らせてくれるのが、言葉だ。その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。神様に感謝しよう。
奥田英朗さんの直木賞受賞作。なんと映画化だそうです。すごい勢いだなぁ。ただ映画の主演の松尾スズキさんは細すぎると思うなぁ。私の(?)伊良部はまっちろでぷよんぷよんしたオデブさんなんだものー。小説も映画も伊良部先生シリーズになりそうです。 最近のヒーローって絶対的にヘン。おもしろい時代になったもんだわ。この伊良部のヘンさっぷりったら群を抜いている。そこが受けたんだろうなぁ。ほんとに気持ち悪いほど面白いv
『空中ブランコ』 2004.4.25. 奥田英朗 文藝春秋
| 2004年07月23日(金) |
『シェエラザード 下』 浅田次郎 |
金塊を積んだまま撃沈された弥勒丸の引き上げ。そのための融資を依頼された軽部と日比野と律子の周りで不審な自殺が相次ぐ。宋英明の仕業なのか? 追い込まれながら、弥勒丸の真実に近づいていく。そして宋英明が語り始めた・・・。シェエラザードの調べとともに甦る悲劇。
どうして弥勒丸が2300人の命とともに撃沈されなければならなかったのか? この真相に身震いしてしまいます(涙)。浅田のおっさんの語る物語には心をがしっと鷲づかみにされて、ぶんぶん振り回されてしまう。シェイクシェイク。宋英明の語りには「あっ」・・・と。ラストは涙で文章がかすんでしまいました。 タイトルのシェエラザードは千夜一夜の語り部の女性の名前。そのシェエラザードをモチーフにしたクラッシックが物語を通して流れ続けます。公開される映像でもきっとこの音楽が効果的に使われることでしょう。見逃せない、聞き逃せないです。よォーそろォー
過ぎたことだから忘れてしまってもいいのですか? それはちがう。過去があったればこそ現在がある。そして未来から見れば、この現在も過去であるということを、忘れてはならない。だから私はこだわり続けたのです。一人の人間としてね。
『シェエラザード 下』 1999.12.6. 浅田次郎 講談社
| 2004年07月22日(木) |
『シェエラザード 上』 浅田次郎 |
昭和20年、弥勒丸は撃沈された。病院船として航海の安全を保障されていたはずなのに。2300人の命と膨大な金塊を積んだまま・・・ 金融業を営む軽部順一と日比谷義政の前に百億の融資を依頼する中国人・宋英明が現れる。融資された金の使用目的は、弥勒丸の引き上げだと言う。この壮大な謎に軽部と日比谷と軽部のかつての恋人律子は巻き込まれていくのだが・・・
NHKが反町くんを起用して映像化。それに先立って積んでいる本の山から上下巻を引っ張り出しました。これは実際にあった‘阿波丸事件’を基に書かれたそうです。この‘阿波丸事件’について知らなかったため、すこし調べてみて吃驚してしまいました。こんな大きな事件があったのですねぇ・・・。 上巻は、撃沈された弥勒丸を引き上げる野望を持つ宋英明に出会った3人の男女が、この壮大な謎にぐいぐい惹き付けられていくさまが描かれています。浅田のおっさんの筆の魅力は読んでも読んでもつきません。ベタだったり、浪花節だったり、わかりやすい人情物だったりしますが、最高に面白い世界を見せてくださいます。読めば読むほど好きになってしまうなぁ。
「毎日毎日、命が減ってしまうのです。やらなければならないことは、いくらでもあるというのに」
『シェエラザード 上』 1999.12.6. 浅田次郎 講談社
ある宿場町に三組の旅人が辿り着く。盲目のあんまさん・座頭市。浪人夫婦。旅芸者姉妹。三組の旅人は宿場町を仕切るヤクザにかかわり、因縁により助け合い、闘うこととなる・・・
北野たけし。今や世界の北野なんて呼ばれるようになってしまったタケちゃん。私の中ではタケちゃんマンを嬉々としてやっていたタケシのイメージばかりが強くって(笑)。タケシの映画は、たまに観ますが、そう好きな部類の映画ではありませんでした。今回の『座頭市』も期待しないで観たのですが、かなり楽しめました。賛否両論だった金髪頭の座頭市のタケシはかっこよかったぁ。吃驚。居合シーンもスッキリ斬りつけて爽快なくらい。エンディングの出演者によるタップシーンもまた意外なことにとってもよかった。楽しい! さすがに座頭市タケシは登場しなかったけど(大笑)。でもきっとタップやりたかったんだろうなぁ、タケちゃん。
いくら目ん玉ひんむいても見えねぇものは見えねぇんだけどな。
| 2004年07月20日(火) |
映画『ドラゴンヘッド』 |
テルは修学旅行帰りの新幹線で事故に遭遇。目覚めたテルの周りには死体ばかりだった。うずくまっていたノブオは狂気に飲み込まれていた。ノブオの狂気の様子から隠れていたアコ。生存者はわずかにこの三名だけ。閉じ込められたトンネルの中でノブオはふたりを支配しようとする。いじめられていた今までの鬱屈を晴らすかのように。そしてノブオから逃れ、トンネルから脱出したテルとアコを待ち受けていたものは・・・?
山田孝之くんの異様なメイクを見たいがために観てみたら、とんでもないホラーで驚いてしまいました。世紀末と言うか、サバイバルと言うか、映画の出来はともかく(苦笑)ものすごーく怖い物語でした・・・。 映画としては飯田譲治監督に期待をしていたのですが、これはいかがなものか。起伏に欠けると言うかどこまでも灰色の世界の中をテルとアコがきーきーきゃーきゃー逃げ惑うばかりと言った感じで、まぁ要するに簡単に言うとつまらない。 しかし、おそらくや原作コミックは面白いはず。なんとかして読みたいと思うのでした。
| 2004年07月19日(月) |
『太陽の塔』 森見登美彦 |
京大五回生、しかも休学中の森本は自分を袖にした元カノ水野さん研究に余念がない。それはストーカー行為ではない(と森野は言い張る)。自分を袖にした水野さんという女性を観察し研究しているのだ。仲間の男どももパっとしない。妄想ばかりで生きている。なのに世間では「京都の女子大生は京大生が奪って行く」と言っているらしく愕然とする。そんなものは都市伝説だ・・・
京大生が書いた妄想青春グラフティ。ファンタジーノベル大賞受賞作なのですが、なんでも選考会では、「美点満載、文句なしの快作!」「一番強烈で一番笑いこけた作品」という評価だったそうな・・・。え、えーっと・・・言葉を見失う私。 とりあえず最後まで読みきりましたし、なんとも珍妙な持ち味があるとは感じました。でもこういうグズグズしたタイプに嫌悪感を持ってしまうので、周りの反響ほど素直に受け入れなかったですー。しかし、どこらがファンタジーやねん(怒)。
「せっかくの酒を、飲めない人間に飲ませるなど愚の骨頂」
『太陽の塔』 2003.12.20. 森見登美彦 新潮社
| 2004年07月18日(日) |
『禅定の弓 鬼籍通覧』 椹野道流 |
O医科大学法医学教室で解剖した老人の焼死遺体は火災の前に死んでいた。そして火災付近で頻発していた動物虐待。ミチルと伊月が解明した真実とは・・・
やっと出ました。鬼籍通覧。やっと出たけれど・・・椹野道流さん、このシリーズに苦心されてるのかしら。伊月が登場したときにもなんとなくそう感じていたのだけれど、今回も話の流れに(短い割には)息苦しい感じがしました。しかもこの事件の真相はおおまかなことは早い時点で読めます。たまたま関西でこの手の虐待が頻発していると聞いていましたから、なんとなくわかってしまった。うーん(悩)、どんなに待ってもいいからズッシリした鬼籍通覧を読みたいと思ったのが本音ですね。ライトなテイストは奇談シリーズにお任せって感じなのですよ。 より重厚なものを求めすぎなのかもしれませんね。面白いことは間違いないですよん。
「そうそう。適度に煩悩まみれで、適度にバカで。百パーセント清らかなんてつまんねえのは、神様にお任せっすよ」
『禅定の弓 鬼籍通覧』 2004.7.5. 椹野道流 講談社ノベルス
| 2004年07月17日(土) |
『ICO 霧の城』 宮部みゆき |
イコは“生贄(ニエ)の刻”を村の北側にある岩屋で待っていた。そこへこっそりと一番の友達トトが忍び込んできた。トトはイコが村のためにニエにされることを阻みたいと願っていた。そして少年らしい暴挙に走ってしまい・・・。
宮部みゆきさんが大好きなゲームをノベライズしたものだそうです。ゲームをしていないので、あくまでも宮部さんの冒険ファンタジーとして読みました。うーん、宮部はんらしいキャラクターづくりが出来ていないと言うか、キャラクターに深みがなかった気がします。ゲームをやっている人ならそうは思わないのかしら? 個人的には『ドリーム・バスター』の方が好みです。
「君が誰だって、そんなのいいんだ。こんなところにいちゃいけないよ。ここを出ようよ。僕と一緒に行こう」
『ICO 霧の城』 2004.6.15. 宮部みゆき 講談社
| 2004年07月16日(金) |
『銀弾の森 禿鷹�掘戞^�坂剛 |
渋谷をめぐるヤクザと南米マフィア(マスダ)の抗争が続く中、ハゲタカこと禿冨鷹秋が動いた。ハゲタカの狙いは<サルトリウス>のママ・真利子なのか? またしてもハゲタカに翻弄される渋六組の水間と野田なのだが・・・
やりたい放題です、ハゲタカ(笑)。でも今回はハゲタカが負傷するので、代償としては大きすぎたような・・・。 このシリーズ、驚くほど人気が悪いのですねぇ。このミスにランクインしたとは思えないくらい叩かれています。まぁ、徹底していないということは魅力に欠けて当然かもしれません。悪や非情さを極めればまた変わってくるのでしょうけど。気楽に読めるピカレスクかな。
禿冨を見ていると、そうした出世に対する野心があるのかどうか以前に、いわゆる世渡りとは無縁の超然とした雰囲気、得体の知れぬ狂気のようなものを感じる。それが、ある意味ではうらやましく、ある意味では恐ろしかった。
『銀弾の森 禿鷹�掘戞�2003.11.30. 逢坂剛 文藝春秋
| 2004年07月14日(水) |
『宙都 第四之書 邪なるものの勝利』 柴田よしき |
鞍馬の天狗・天成と三善はカリスマ・アイドルとなった少女のコンサートに潜入する。闇の神官の存在を確認しようとするが、とんでもない事態に陥ってしまう。 ゲッコー族のはねっかえり珠星は空間をつなぐ能力を使い、ハワイにいる藤島美枝に会いに行こうとする。しかし珠星がたどり着いた場所は・・・
えーっと、拝啓、柴田よしきさま。登場人物が多すぎます(泣)。こういう壮大な物語は完結した後に一気にがーっと読む方が賢いかもしれません。登場人物は多いわ、場所が散らばってるわ、前のこと忘れてるからまた読み返さないと。 でも、こういう物語は読んでいて楽しいですね。ロマンを感じます。ただまた次が出るまでの放置プレイをなんとかして。あう・・・
義務は義務、されど、運命は義務より強いに決まっている。
『宙都 第四之書 邪なるものの勝利』 2004.6.30. 柴田よしき 徳間書店
| 2004年07月13日(火) |
『ぼくとアナン』 梓河人 |
イエナシビトの‘ながれ’は、死にそうな猫を拾う。バケツの中で見つけたから名前は‘バケツ’。‘ながれ’と‘バケツ’は仲良くいっしょにイエナシライフ。ある日、‘ながれ’はとんでもないものを拾ってしまう。それは赤ちゃんだった。イエナシビトたちは大騒ぎで‘アナン’と名づけられた子どもを育てる。そして‘アナン’のためにイエナシライフから足を洗う‘ながれ’。アナンは成長し、奇跡のような才能を開花する・・・
私の人生の宝物『アナン』を、梓河人さんが子どもたちのためにリメイク。大人の童話の『アナン』。子どもの童話の『ぼくとアナン』。どちらも読んで欲しい物語です。『ぼくとアナン』は本家の『アナン』とは少し違ったストーリー展開になっています。子どものためだから、これでいいんだよねvとしみじみしました。『ぼくとアナン』を読んだ子ども達が、いつか『アナン』を読んで欲しい。そうなれば本当に素敵だなー。
なんだって、思いどおりになるわけじゃない。とくに、人間の世界ってややこしい。だけど、ぼくはこのごろだんだん信じるようになってきた。 ほんとにねがったことは、かなうはずだって。今までもはらはら、どきどき、すれすれもことがいっぱいあった。それでも、ぼくたちは助かってきたじゃない? 本気のおねがいは、空気をぐぐっと動かして、世界に道をつくるんだ。 でも、本気じゃなきゃ、だめなんだよ。
『ぼくとアナン』 2001.12.25. 梓河人 角川書店
私立探偵・畝原は、あるバンドのおっかけをしている<おばはんトリオ>を撮影しているカメラマンとつなぎを取っていた。そこで突如血まみれの子どもが畝原の太股にしがみついてきた。Tシャツは血で汚れ、下着をつけていない幼い性器はズタズタにされていた。明らかに虐待を受けている子どもを助けた畝原はおぞましい犯罪と警察が隠微しようとする事件に巻き込まれていく・・・ ううう、どうして本物のハードボイルドって奴には悲しみが付きまとうのでしょう。大好きな畝原探偵シリーズがこんなにも心に重く哀しい展開を見せるなんて。心には重すぎる・・・ってのはまた他のハードボイルドのタイトルですけど。 東直己さんって大丈夫なのかしら。あまりにも警察に対して批判的なのでついつい心配してしまう。警察がこの物語に描かれているくらい腐敗しているとしたならば、日本の安全神話はもう過去のものですね。また子どもを人間ではなく物として売買する組織もアンダーグラウンドには存在していそうで怖すぎるなぁ。 しかし・・・畝原探偵の恋人・姉川さんには過酷な事件でした。ラストシーンのふたりは哀しいけれど美しくて泣けてしまいました。個人的にはかなり好きです。
「だったら、知っている者の言うことを聞け! 無知を恥じたらどうだ! そんな想像力もないのか!」
『熾火』 2004.6.28. 東直己 角川春樹事務所
| 2004年07月11日(日) |
『箪笥』 原作/キム・ジウン 漫画/古結あかね |
妹スヨンの療養に人里はなれた家にやってきたスミ。そこは愛する母が亡くなった家だった。迎える義母ウンジュにはむかうスミ。微妙なスタンスで見守る父。危うい均衡を綱渡りする三人の女が同じ日に生理になり・・・
職場の並びにある映画館に貼ってあるポスター(下の写真参照)に惹きつけられ、映画の前にコミックで読んでみました。韓国発の哀しいホラーです。コミックのページ数内では表現しきれていないのだろうなぁ。タイトルの『箪笥』から、日本のものと想像していたのですが、やはりアジアって感性が近いのかもしれません。映画でどれほどホラーなのか楽しみですv
どうしてこんな事ばかりくり返すの? いつまでも醒めない悪い夢の中にいるみたい
『箪笥』 2004.7.8. 原作/キム・ジウン 漫画/古結あかね 角川書店
| 2004年07月10日(土) |
『イン・ザ・プール』 奥田英朗 |
「イン・ザ・プール」 伊良部総合病院の地下一階にある神経科。身体の不調を訴え連日通いつめる大森和雄は、若い医師に体よく追い払われてきた。恐る恐るドアをノックすると中から「いらっしゃーい」と甲高い声が。そこにいたのは世にも風変わりな神経科医・伊良部だった・・・
噂にたがわぬ珍妙さでした。悩める患者さんを鮮やかに(?)治してしまう伊良部。風体も性格も珍妙な男。こんな人そばにいると怖いなぁ(笑)。でもまぁ悩める人たちがどんな形でアレ、治るのはいいことだ(と言うことにしておこう)v
「つまりストレスなんてのは、人生についてまわるものであって、元来あるものをなくそうなんてのはむだな努力なの。それより別のことに目を向けた方がいいわけ」
『イン・ザ・プール』 2002.5.15. 奥田英朗 文藝春秋
| 2004年07月09日(金) |
『バッテリー�后戞,△気里△弔� |
巧が新田市に引っ越してきて一年が経とうとしていた。去年の冬、天才ピッチャー巧は豪という運命のキャッチャーと出逢えた。しかし、ふたりの周りでは事件続出。そしてついに豪が巧に対して悩みまくるのだった。今まで人に関心を持つことの無かった巧がはじめて豪のことを知りたいと考える! 巧を軸に動く人間模様。そしてまたあの天才スラッガー門脇が率いる横手ニ中との試合が近づくのだった・・・
さて『バッテリー�后戮泙覇匹澆泙靴拭�今は早く『バッテリー�此戮�出ないかとわくわく待ち望んでいるところv このバッテリー・シリーズは、つい最近あさのあつこさんが10年の時を費やして完結させたとか。巧という13歳の天才少年のほんの1年間を10年かけて・・・。その熱意と愛情だけでもこの物語を読む価値があります。巧と豪がどんな物語を見せてくれるのか。どきどき。 この『バッテリー�后戮任蓮�巧を取り巻く登場人物も生き生きしています。最初のうちはそう意識していなかったのですが、なんだかボブな香りもぷんぷん(笑)。巧は「食っちゃいたい姫さん」なんですもの〜。アニメ化希望。
突出した才能を持って生まれたということは、幸福なことでも恵まれたことでもない。才能自体にふりまわされ、追いこまれ、人間として成熟しないまま、潰れていく。そんな危うさを抱え持って、生きていかねばならないということなのだ。
『バッテリー�后戞�2003.1.10. あさのあつこ 教育画劇
| 2004年07月08日(木) |
『バッテリー�検戞,△気里△弔� |
天才スラッガー門脇の率いる横手第二中野球部を相手に、巧は平常心で挑んでいた。手加減なしの最高のストレート。それを豪は捕りこぼしてしまう。そして豪に芽生えてしまった不安。天才ピッチャー巧の成長していく球をどこまで捕れるのか? 自分がここまでかもしれないと感じた時、豪は人生ではじめて壊れてしまうのだった。そして完敗。バッテリーがぎくしゃくする中、周りはさまざまに動きを見せる。豪の代わりをつとめようとする吉貞。もう一度試合を望む門脇たち。豪は立ち直ることができるのだろうか?
天才・巧の成長を誰よりも感じる豪が自分の限界について考えてしまいます。巧がまだまだ磨かれていき、自分がどこまでその相手をつとめることができるのか?と。類稀な才能は人を魅了すれば、人を悩ませもするもの。巧は巧で決して悩んでいないわけではないけれど、もともとのレベルが凡人とは違うので悩んでいることをわかってもらえない。天才の孤独ですね。豪ちゃんはとってもわかりやすいからv しかし、そういう運命に出逢えたことは豪にとって幸運。そのチャンスを逃さないで頑張るんだ、豪!
なんの前触れもなく、胸が騒いだ。自分の限界の先を見てみたい。ここまでだと自分の力を見切った、その先に行ってみたい。越えてみたい。
『バッテリー�検戞�2001.9.15. あさのあつこ 教育画劇
| 2004年07月07日(水) |
『バッテリー�掘戞,△気里△弔� |
巧を巻き込んだ暴力事件のために、野球部は活動停止していた。これでは引退していく三年生に申し訳が立たないと、監督は横手ニ中との練習試合を考える。横手ニ中は全国大会ベスト4に入り、天才スラッガーともてはやされる門脇がいた。打てない相手はいなかった門脇は、巧の球に出会った瞬間に魅せられてしまう。門脇との真剣勝負の時に、キャッチャーの豪が・・・
巧は超ジコチューな少年。なのにいつも周りを巻き込んでしまう不思議な魅力を併せ持っています。校長先生やおとなたちは巧たちを型に押し込めようとばかりします。でもやっぱり巧はその中に入ってしまわない・・・。その強靭な精神力は天性のもの? 今回は、巧と運命の出会いをしてしまった豪にとんでもないことが起こります。天才を相手にするとこういうことが起こっても不思議はないのかもしれません。豪が陥ってしまった迷宮から、豪がどうやって這い出てくるのか、そこがまた楽しみであります。
なんでも、どんなことでも、真っ向からむかってくるものなら受けとめる。
『バッテリー�掘戞�2000.4.15. あさのあつこ 教育画劇
| 2004年07月06日(火) |
『バッテリー�供戞,△気里△弔� |
巧と豪は中学に入学した。巧の判断ですぐに野球部へ入部せず、豪とふたりで自主練習を重ねる。そして満を持して入部。自信満々で態度のでかい巧を監督をはじめ、先輩達はねじ伏せようとする。しかし、巧は己を信じ、己の力で監督に認めさせる。そこでますます嫉妬する先輩部員たちに巧は・・・
巧と豪が中学に入学しました。入部した途端、巧が巻き起こしてしまう嵐。その嵐は今までの野球部の体制すら根底から覆す。たったひとりの天才少年がそこまで・・・。そして当然のように反発され傷つけられる。でも巧は負けない。13歳の少年の神々しいまでのプライドにおののきました。 今回は、弟・青波のほかに巧と豪のチームメイトの沢口と東谷の存在が際立ってきました。決して友情とかチームプレイを謳っているわけではないけれど、仲間の素晴らしさは巧と豪の宝にちがいない。
「自分が信じきれなかったら、なんかすごく、みじめな気がして・・・・・・うん、壊れちゃうってのは、おれがおれを信じられなくなっちゃうってことなのかな・・・・・・やっぱみじめだろ、そんなの。よくわかんないけどな」
『バッテリー�供戞�2004.6.25. あさのあつこ 角川文庫
| 2004年07月05日(月) |
『バッテリー』 あさのあつこ |
原田巧(たくみ)は、中学入学を目前にして、父親の仕事の都合で岡山県の地方都市新田市へ引っ越してきた。引っ越し先は母の実家。今では祖父がひとりで住んでいる。祖父はかつて名の知れた高校野球名物監督だった。そして孫の巧は、野球に関しては孤高の天才少年だった。天才であるがゆえに自分自身という個に徹底的に拘る身体と精神を持った巧は、周囲から浮いていた。しかし、新田市で運命の出会いをする。永倉豪。医者の息子の豪は中学入学を境に野球を諦めようとしていたが、巧に出会い運命が変わっていくのだった・・・
友人から薦められて手に取った文庫2冊。それが岡山出身のあさのあつこさんの『バッテリー』でした。この友人とは読書のアンテナが、かなり近いため、まったく心配せず読み始めました。そしてノックアウト。あっと言う間に巧と豪と周囲の少年の世界に引きずり込まれてしまいました。あぁ、また素晴らしい出会いができました。友人に心から感謝v 巧という13歳の天才少年の心の動きがものすごくよくわかります。「おとなはわかってくれない」と叫ぶ少年少女たちの想いを垣間見ることができます。かつて少年少女だった人たちに、今が少年少女である人たちに、全ての人に読んで欲しい物語です。きらきらしてる・・・。決して綺麗事だけじゃないリアル・ワールドがそこに展開しています。 巧と豪、そして巧の弟・青波(せいは)。この3人の少年が軸となって物語がすすんでいくようです。巧と対照的な青波がすっごくかわいい。天使のような少年です。
十三歳だから。どうだというんだ。十三歳だって、自分の人生を夢見れる。おれと出会って永倉が将来を決めたのなら、それでいいじゃないか。十三歳のおれに、その力があるんだ。まきこんだとかまきこまれたとか、そんなちっぽけなものじゃない。
『バッテリー』 2003.12.25. あさのあつこ 角川文庫
| 2004年07月04日(日) |
『禿鷹の夜�供〔桔蛭�都市』 逢坂剛 |
史上最悪の刑事ハゲタカ。警察組織内の腐った男たちを向こうに回し、ばったばったと切り倒す・・・。
うーん、スケールアップしてるノワールさ。ハゲタカって極悪非道なのだけど、どこか筋が通っている。とにかく自分なのだけど、そこがいっそ小気味よく読めてくるから不思議なもの。中途半端な悪党より潔いかも。リベンジのため殺しも厭わない刑事なんてフィクションにしか登場できないわ。今回はごくごく小出しながらハゲタカの心情が浮かび上がってきます。脇のヤクザがかっこいいのも妙なんだわ。
「いくら数を掻き集めても、くずはくずでしかない。おまえは、そのくずの山の上に寝そべっている、ただの大くずだ」
『禿鷹の夜�供〔桔蛭�都市』 2002.1.15. 逢坂剛 文藝春秋
| 2004年07月03日(土) |
『禿鷹の夜』 逢坂剛 |
神宮署の異色刑事ハゲタカこと禿富鷹秋(とくとみたかあき)。極悪非道なハゲタカはヤクザも刑事も容赦なくぶちのめす。自分の利益のためなら手も汚す。しかし、南米マフィアの進出抗争で恋人が巻き込まれ・・・
表紙を見かけるたびに気にかかっていた逢坂剛さんの『禿鷹の夜』をやっと読めました。表紙のイラストが渋くってかっこいいのv 内容はとんでもなく暗黒ハードボイルド。物語の真相は簡単に読めてしまったことが難点。でもスキッとさわやか(?)にハードボイルドぅぅぅでした。主人公のハゲタカの心情が一切語られないことが面白かったわー。まずまず気に入りました。
ここでひるんだら、二度とやくざの道は歩けなくなる。
『禿鷹の夜』 2000.5.10. 逢坂剛 文藝春秋
| 2004年07月02日(金) |
『ツール&ストール』 大倉崇裕 |
中野駅が鬼門。それは白戸修が、人のよさゆえに事件に巻き込まれる場所だから・・・。
巻き込まれ体質の白戸君が関わると、さまざまな事件もなんとなくそれなりの形に収まってしまう。名探偵ではないけれど、人の心をすっと掬い上げる心優しきお助け人って感じ(笑)v 通勤のお供にひとつずつ読んでいましたが、心がほのぼのしました。噂たがわぬ‘癒し系’でした。
「二十四万、倉田に渡して下さい。もともとは、倉田のやるべき仕事だったんですから」
『ツール&ストール』 2002.8.10. 大倉崇裕 双葉社
| 2004年07月01日(木) |
『パズラー』 西澤保彦 |
「蓮華の花」 作家になった日能(ひなせ)克久は、同窓会出席のため帰郷する。そこで亡くなったと信じ込んでいた同級生と再会する。そして甦る記憶・・・
「チープ・トリック」 悪評の高いスパイクが首を切られて死亡。トレイシィのもとへスパイクの仲間ゲリーがやってくる。ゲリーは、トレイシィの友人ナタリーが殺人犯だと言うのだが・・・
西澤保彦さん念願のパズラー短篇集。私が西澤保彦さんファンになる前の作品も読むことが出来て、ものすごくお得。そして6つの短篇は、それぞれ西澤保彦さんの持ち味を楽しむことができるので、ますますお得。 甲乙つけがたい中で私がお気に入りに選んだものは「蓮華の花」と「チープ・トリック」です。どちらも異様な残酷さと、もしかするととってもホラー風味なところがいいv 「チープ・トリック」は西澤保彦さんならではのセクシャルさも際立っています。面白かった〜。
「人間てね、それがどんなにボウトク的で恐ろしいことか判っていても、気持ちがいいと一旦知ってしまえば、絶対に、それをまたやりたくなるものなのよ − でしょ?」
『パズラー』 2004.6.30. 西澤保彦 集英社
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