酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2004年04月29日(木) |
『鬼神伝 神の巻』 高田崇史 |
あれから半年。天童純はタイムスリップさせられた平安時代のことに思いを寄せていた。「人」と「鬼」の確執。それは純が知っていると思っていた史実とはまったくかけ離れていた。鬼の娘、水葉はどうしているだろう。そんなことをつらつら考えていた純はまたしても平安時代に呼び寄せられてしまう。そこでの純の役目は? そして純が知る真実は?
これは本当に子供たちに読ませてあげたい。とてもいい物語で私は目頭が熱くなりました。純も水葉もいい子だなぁ。 どうして鬼は桃太郎に退治されなければならなかったか? この解明がこう落とされるとは脱帽でした。天童純の正体もうまいこと考えられていて吃驚。まさかアナグラムになっているとは思わなかった。純が自分の命よりたいせつなものに気付いた時、純は少年からおとなになったのですね・・・。いい男になるだろうなぁ。 鬼の巻と神の巻をあわせて再読しようと思います。ミステリー・リーグにふさわしい物語でした。超オススメv
「おい、おまえ。もう遊んでやれなくなっちゃうかもしれないけれど、ひとりでもしっかりやれよな!」
『鬼神伝 神の巻』 2004.4.27. 高田崇史 講談社
ヨナタンは船長を義父に持つ少年。やんちゃでいたずらなヨナタンはいつも学校を追い出されてしまう。今回はライプチヒにある聖トーマス校の寄宿舎へ。空港で忘れ去られた犬を連れて行く。通学生と寄宿舎生の対立があるものの、ヨナタンはルームメイトと打ち解けていく。理解ある教師ベクに見守られ、ヨナタンと仲間達は友情の大切さを身をもって知るのだった・・・。
素晴らしい! どうしても観たかった映画でしたが、見逃さないで本当に本当に良かった。私の大事な人たちにもチャンスがあれば是非観てほしい映画です。 原作はドイツのエーリヒ・ケストナー。この原作を読んだことのある人も多いことでしょう。70年くらい前に生まれた作品の映画化、しかも現代風アレンジと言うことで内容も多少は変わっています。でも決して原作の持つ良さを損なっていなかったと思います。 テーマはずばり友情です。少年同士の友情。少年と少女の友情。少年達と先輩の友情。少年たちと大人の友情。そして大人と大人の失われかけた友情・・・。どこを切っても人と人の絆の素晴らしさが描かれています。異端児ヨナタンが出会った心優しき少年達との交流は見ていて微笑ましい。ヨナタンたちのよき理解者ベクのかつての親友との再会シーンには滂沱。 子供にも悲しみがある。それは大人の悲しみ以上に大きい。
| 2004年04月27日(火) |
『黒と茶の幻想』より「第四部 節子」 恩田陸 ※ネタバレあります! |
「第四部 節子」 節子は、いつも大勢の仲間達と旅をしていた。人好きあいのいいバランス感覚に優れた女だと思われているらしい。しかし、節子はその昔‘友達’という言葉に恐怖してきていた。その恐怖の根元には・・・。
この最終章は2年ちょっと前にもノックアウトされたんだったよなー。陸ちゃんって怖い人だよなー・・・。節子と言う女性は美人でグラマーなのに色気を感じさせない。そこにも彼女なりの理(ことわり)がある。自分をよく把握した上での処世術と言えましょう。節子は傍観者であり、観察者であり、ムードメーカー。インパクトの強い3人の中にあってカメレオンのように己の我や気配を消す。一番すごい女性なのではなかろうか。 ここからある部分ネタバレ。ネタバレしないことには私の感想が書けないから。冒頭の利枝子の章で節子は我侭勝手な義父への怒りを爆発させます。その本当の意味が節子の心の中だけで語られる・・・。ここがね、節子のすごさと言うか恐ろしさと言うかしたたかさと言うか。うーん(悩)。 節子の旦那さまが末期癌。節子は世界中に向って戦っている。愛する人のために。自分のために。この一人語りの自問自答のシーンに私は泣けて。泣けて。旦那が死んでいくあの季節をそのまんま描かれている気分になってしまう。 でも、確実に時間が経っているなぁと実感。この本が出てばかりに読んだ時の心を抉るような痛みは無かったから。この節子の章を読むと自分に喝が入ります。ぴしっと。私もそれでも生きていくぜって。
あたしは彼に八つ当たりしていた。生きたくても生きられない人もいるのに、こんなところであっさり自分で命を絶ってしまえる蒔生に立腹したのだ。
『黒と茶の幻想』 2001.12.10. 恩田陸 講談社
| 2004年04月26日(月) |
『黒と茶の幻想』より「第三部 蒔生」 恩田陸 |
「第三部 蒔生」 蒔生は知っていた。自分が性格破綻者であると言うことを。かつての恋人・利枝子はそんな蒔生にこう言ってくれたことがあった。「自分のことを優しいと思っている人間よりは、自分が優しくないと知っている人間の方がずっと優しいと思う。」と。蒔生は利枝子が好きだった。自分以外の人間にクールに対する利枝子が。自分なんかを好きではない利枝子であって欲しかった。 森を歩く4人の後をひそやかにつけてくる気配。蒔生はそれを憂理だと思っていた。勘のいい利枝子は毅然と蒔生に問い掛ける。憂理とのことを。そして蒔生は・・・。
蒔生は、彰彦の姉・紫織と不安定な美女・憂理と関わりがあった。完璧な恋人・利枝子がいるにもかかわらず。しかも蒔生は罪悪感すら感じない。そんな自分を人でなしだと思い、性格破綻者だと思う。それでも平気で生きてきた。そしてやはり蒔生はそのまま生きつづけていく。 どんなに好きあっていても人と人には相性がある。お互いがお互いをどんなに好きでもうまくいかないことがある。それって本当によくわかる。好きなのに一緒にいて違和感を感じたり、居心地が悪かったりする。人と人ってむずかしい。だからこそ相性のいい人と出会えたら、大切にしていきたい、と思う。 この「蒔生」の章では、あの三月シリーズの憂理の人生が明かされます。でも陸ちゃんの他の物語では多次元の憂理の人生が語られるかもかもしれません。あの憂理らしい人生でしたけどね・・・。
中味の卑しさは、如実に顔に出る。
『黒と茶の幻想』より「第三部 蒔生」 恩田陸
| 2004年04月25日(日) |
『黒と茶の幻想』より「第二部 彰彦」 恩田陸 |
「第二部 彰彦」 この旅の企画者の彰彦。幼少のみぎりから主役を張ることばかりを期待されてきた男。しかし、彰彦が求めたポジションは「小さな恋のメロディ」で小さな恋人たちを助けるワルっぽい男の子の役だった。あえて世界の中心にいることは避けて脇役に回る。彰彦が屈折した原因は美しく毒のある姉・紫織だった。奔放で淫乱で弟の動向に目を光らせ続けた姉。そして彰彦が思い出した哀しい過去の謎とは・・・。
陸ちゃんの物語に登場する毒のある悪魔のような魅惑的な女。ここにまたひとり登場しました。彰彦の美しい姉・紫織。不思議なものでこういう女性は欲しがるものは手に入らないから闘志を燃やしてどこまでも執着する。そこに恐怖が生まれる。彰彦の哀しい謎の解明。うーん(涙)
『何が起きても、私のことを理解しようとしないでくれますか』
『黒と茶の幻想』より「第二部 彰彦」 恩田陸
| 2004年04月24日(土) |
『黒と茶の幻想』より「第一部 利枝子」 恩田陸 |
学生街の焼き鳥屋で十数年ぶりに訪れた利枝子・彰彦・蒔生・節子の4人は旅に出ることになる。彰彦の具体的かつ詳細なプランメールにのせられ、本当に沖縄のY島へ。彰彦が3人に要求した宿題は「美しい謎」持参という風変わりなもの。J杉と三顧の桜を見るための道中に4人で謎について語り合おうと言うのだ。
「利枝子」 森は生きている、というのは嘘だ。・・・利枝子はそう思う。この旅で別れた男・蒔生と再会することに緊張する利枝子。そこでもたらされた情報。蒔生が離婚すると言うのだ。そして図らずも蒔生と利枝子が別れた原因の女性・憂理の失踪について話題が流れ・・・
『三月は深き紅の淵を』の「出雲夜想曲」にこの『黒と茶の幻想』について書かれています。《森の中を旅する四人の男女が淡々と自分が人生で遭遇してきた小さな事件を披露し、それを推理するという物語なのだが、謎の破片が惜し気もなくちりばめられ、奇妙なエピソードが羅列され、・・・》この文章から生まれた物語です。しかも、鍵を握る人物があの憂理とくる。まるでメビウスの輪の様につながり広がり永遠に終らない物語・・・。読んでいると不思議でたまらなくせつなくなってしまう。何度も何度も読み返してしまう。 利枝子は、美しく賢い女性。でも昔の理不尽な蒔生との別れが心の傷となっている。蒔生との別れの原因が今回の旅で解明されるのだろうか?
さて、お立ち会い。三崎彰彦が考えるミステリーとはいかなるものか? それはズバリ『過去』である。『過去』の中にこそ本物のミステリーがあるのだ。
『黒と茶の幻想』 2001.12.10. 恩田陸 講談社
CIA諜報員ケヴィンは、任務のためロシアン・マフィアと接触していた。ターナーという偽名で古美術商を演じていた。ケヴィンの任務は小型核爆弾を回収することだった。取引まで段取り、あとわずかというところで核爆弾を狙うテロ組織に狙撃され死んでしまう。ケヴィンの先輩ゲイロードは苦肉の策をひねりだす。ケヴィンと生き別れていた双子のジェイクを替え玉にすると言うもの。育った環境の違いからか、ケヴィンはダンディでインテリ。片やジェイクは賭けチェスやチケットの横流しで気ままに生きている風来坊。9日後の取引のためにジェイクを金で釣り、ケヴィンに仕立て上げるのだが・・・。
面白かったー。一人二役を演じたクリス・ロックの早口弾丸マシンガントークは黒人ならではとひたすら感心。きちんとダンディとやんちゃを演じ分けていたのもグー。でも見どころはFBIに追われている世界のアイドル(笑)レクター博士=アンソニー・ホプキンスがCIAのベテランになっているところかな。こういうのってフィクションを演じる役者さんたちたまらないんだろうなぁ〜。 映画としては娯楽アクションヒーローものです。最後に世界の違うふたりに友情が芽生えているのもお約束v
| 2004年04月22日(木) |
WOWO『妄想代理人』#9、#10 今敏(こんさとし) |
#9「ETC」 団地の前で井戸端会議をしている無責任で噂好きな主婦達。 メンバーは常連らしき3人と新米らしい鴨原美栄子。 少年バットに関する捏造されたかのような噂を撒き散らしている。 鴨原は話題についていこうとネタを提供するが相手にされない。 がっかりして帰宅すると、少年バットに倒された(らしい)血まみれの夫が。 それを見た美栄子は夫に駆け寄り、嬉々として・・・
#10「マロミまどろみ」 鷺月子のキャラクターマロミのアニメが作られることになった。 放送に向けて完成させるため一生懸命なスタッフ。 しかし、制作進行の猿田のミスの連続に制作は遅遅として進まない。 追い詰められたスタッフ達は次々と少年バットに襲われ始める。 足をひっぱりまくる猿田は自分に責任はないと思い込んでいるのだが・・・
ここまで少年バットに襲われた人物は、鷺月子・鯛良優一・蝶野晴美・狐塚誠・蛭川妙子・鴨原美栄子の夫。フリーライター川津はたぶん金策から逃れるための自作自演の狂言。蛭川警官と牛山尚吾はおそらく妄想狂の狐塚の犯行だったと思う。事件のを握るのはふたりの老人。ホームレスの老婆と妙な計算をする痴呆老人(?)。サイドストーリー(?)では、自殺した少女かもめ、ゼブラ、老人冬蜂(チャット仲間にFOX君=狐塚がいる)などもいました。事件を振り返ってみると不思議と苗字や愛称に生物の名前が入っていることに気付きます。これは偶然か。必然化。その流れから考えるとフリーライター川津は例外。もしくは蛙にかけている? さて妄想が妄想を呼び、加速する事件。事件を追いかける猪狩と馬庭はどんな役割を果たすのか? 最終回に向ってますます妄想が加速するのだろうか?
| 2004年04月21日(水) |
『殺人鬼の放課後』 恩田陸ほか |
「水晶の夜、翡翠の朝」 湿原に初夏がめぐりくる学園でヨハンは退屈していた。ヨハンのパートナーとなるべき少女は春に学園を去っていた。学園のアイドルとしてそつなく過ごす毎日。ファミリィにはジェイという美少年が加わった。喘息持ちのジェイは繊細。なんとなくヨハンはジェイに保護欲をかきたてられていた。そして平凡な日々に奇妙なゲームが流行り始めた。ストローで作った紙人形を見つけた瞬間、周りのみんなが叫ぶ。『笑いカワセミが来るぞ!』と。さてこの悪質なゲームの着地点は・・・?
『三月は深き紅の淵』をから派生した理瀬の学園ものシリーズ。その理瀬に今後深く関わるであろうヨハンの事件。ヨハンがどういう境遇で、どういう性格なのかとてもよくわかる短篇です。きっとこういう理瀬に関わる人々の物語もひとつの物語となっていくのでしょう。
言ったろ、この次はないって。チャンスがある時に全てを済ませておくのが肝心さ。
『殺人鬼の放課後』 2002.2.1. 恩田陸ほか 角川スニーカー文庫
| 2004年04月20日(火) |
映画『愛してる、愛してない・・・』 |
恋の街フランス。美術学校に通う美人学生アンジェリクは熱烈な恋をしている。相手は心臓外科医のロイック。彼には弁護士の妻がいるが、離婚は時間の問題。アンジェリクは可愛らしく一途にロイックを慕い続ける。友人の医学生ダヴィッドのアプローチにもまったく関心を示さない。ある日、親友のエロイーズと歩いている前にロイックが。後ろから追いかけるアンジェリクが見た光景はロイックと妻の抱擁シーンだった。その瞬間からアンジェリクの行動が狂い始める・・・。
以下、感想にネタバレを含みますので観ようと思っている方は読まないようになさってください! この映画、『アメリ』でキュートな魅力を撒き散らしたオドレイ・トトゥが主演しています。なんでもそうですが、物事は一面からだけ見ていると全体がつかめない。この映画もアンジェリクの側だけ見ていると愛らしさに惑わされ、足元を掬われます。中でも医学生をそそのかして手に入れたモノで作ったプレゼントと想像しなかったラストシーンは衝撃的。うまい!っとうなってしまったくらい。 主人公のアンジェリクはもともと思い込みの激しい女性。自分がこうだと思い込んだら、それが全て真実になってしまう。今の世の中ってこういう人間が多い気がします。フランス・ボルドーの街並みも美しいので観る価値はありますv
| 2004年04月19日(月) |
『さよならの代わりに』 貫井徳郎 |
和希は劇団<ウサギの眼>に所属している。主催者の新條はカリスマ的存在。次の出し物のダメだしで和希は新條から声が出ないのは性格に問題ありと指摘される。うじうじと片想いを続けていることを知っているからだ。和希の片想いの相手はステーキハウスで見初めた智美さん。クールで美人で諦められるものではない! ダメだしの夜、和希は劇団の前で可愛い女性と出会う。彼女は祐里。新條さんの熱烈なファンらしい。可愛らしい容貌と言動で祐里は和希に接近し、だんだんと妙なお願いをしはじめるのだが・・・。
最初、貫井さんはステーキハウスでよっぽど美しい店員さんと出会ったのだなぁと考えていました。先日読んだ『エロチカ』の中の「思慕」の設定がまるまる同じだから。でもよーく考えよう♪・・・と考えてみると、漢字が違うだけで同じ二人でした。なんじゃ、これは?と悩んでいるとe-NOVELSサイトで謎が解けました。この『さよならの代わりに』は「思慕」とはパラレルな関係らしい。おお、なんだか心憎い演出だわい。 この物語は、和希が出逢った祐里に振り回されるさまが描かれています。祐里は謎の多い女性で、でも決して薄っぺらな娘じゃない。そこにだんだんと惹かれていく和希。この物語のスタイルは個人的には好きです。せつない終り方も非常に好み。面白かったなぁ。
目立ちたくなきゃ覆面でも被っているしかないようなとんでもない美女のくせして、智美さんは地味な生活を送るのが好きだ。人付き合いが苦手で男っ気がなく、趣味はなんと読書。たぶん平日は会社に行って黙々と仕事をして、真っ直ぐ家に帰り、休日は家でおとなしく本を読んで過ごしているのだろう。そういう生活を送るなら何もこんな美人じゃなくたっていいわけで、資源の無駄遣いも甚だしい。
『さよならの代わりに』 2004.3.25. 貫井徳郎 幻冬舎
| 2004年04月18日(日) |
『高く遠く空へ歌ううた』 小路幸也 |
これで10人目・・・。ギーガンはまた死体を発見してしまう。春合宿(ビギンニングウィーク)で同室となった中等部三年生の柊さんに迷惑をかけると告白しつつ、合宿を抜け出すことにする。サボリは同室も同罪で罰則。3歳も年上の柊さんはさらりと「じゃあ、僕も一緒にサボるよ」と。ギーガンは能面のように無表情な少年だが、人を惹きつける不思議ななにかがあるらしい。柊さんをはじめたくさんのユニークな仲間達に囲まれ、ギーガンは自分の数奇な宿命と向き合うことになる・・・。
クスン。前作『空を見上げる古い歌を口ずさむ』でもぽろぽろ泣けたのですが、今回もさらにさらに泣けました〜。思えば、『空を見上げる古い歌を口ずさむ』を本屋さんで見かけるたびに不思議な誘惑に囚われ手にしたのでした。それはひとえに装丁を手がけておられる荒井良二さんのイラストがタイトルに合っていたからに他なりません。ですから読むまでは内容にはそんなに期待していなかったのです。でも装丁を裏切らない内容のよさで私はすっかり小路幸也さんファンに! 今回の『高く遠く空に歌ううた』を首を長ぁ〜くして待ちわびていたと言っても過言ではありません。 今回の物語は、まったく違う物語になるのかなと思っていましたが、きっちりパルプタウンの流れを受け継いでいました。心の奥深く仕舞いこまれた風景が甦ってくる。なつかしい遠い昔をやさしくほろ苦く思い出してしまう。小路さんの物語に登場する人物たちはニックネームで呼ばれます。それはちょっとだけ哀しいことだったりする。でもその哀しさを自覚している人は優しくなれる、小路さんはそれを繰り返し語ってくれます。 今、ちょっと心の揺れ幅が大きい私には、バイブルのような物語。優しくて暖かくて懐かしくて。大好きな人たちに「読んで」と言いたい。絶対に心に灯がともる。また生きていくことに希望が生まれる。こういう種類の本は少ないと思います。陽子、大絶賛。読んで。読んで。
「だからな、今までの悲しいことや辛いことは全部机の引きだしの奥にしまっておけ。そういうものが引きだしに一杯になって、いつかこぼれるかもしれないけど、それまで忘れていろ。そして未来にどんな自分がいるのかを、楽しみに生きろ。どんな将来を選ぶかを、楽しんで探せ。どんな道でも選べるのはお前たちガキの特権だ。余計なことは考えなくていい」
『高く遠く空へ歌ううた』 2004.4.8. 小路幸也 講談社
| 2004年04月17日(土) |
『黄昏の百合の骨』 恩田陸 |
水野理瀬がイギリスから日本に帰ってきた。祖母の遺言に従ってのこと。祖母の遺言とは、「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り家は処分してはならない」というもの。この半年間の理瀬の拘留の意味はいったいなにか? この祖母の家は百合の花が咲き乱れ、魔女が住んでいると噂される洋館。この家には祖母の娘の梨南子と梨耶子が住んでいた。夫を亡くし、物静かで優しい梨南子。旦那と別居し金遣いの荒い派手な梨耶子。ふたりは母親が理瀬に残した遺言の意味が気になってしょうがない。なにか隠された財宝が・・・? そして理瀬の周りで起こるべくして起こる事件。失踪事件に殺人事件? 理瀬はどう対処するのか・・・。
『三月』から『麦』へと久々に再読。満を持して『黄昏の百合の骨』を読みました。うーん(悩)、期待しすぎは火傷のもと(わけわからんか)。とんでもない人がオンパレードであちらにこちらに毒が毒々しく撒き散らされる。おもしろいんだけどなぁ。なにかが足りない。なぜだろう・・・。そう考えてたどり着いた結論は、理瀬が手を汚さないからだと気付きました。理瀬はダークエンジェルだから、少々のワルはやらなくちゃーと期待していたみたいです。今回の理瀬は美しいヒロイン。まぁ、したたかさや割り切りのよさは見せ付けてくれましたけどねv まだまだ続いていきそうな理瀬の『三月』シリーズ。もっと残酷に。もっともっと。ギブギブ。
存在の重さよりも、不在の重さの方が日毎にずしりとこたえてくるものなのだ。
『黄昏の百合の骨』 2004.3.10. 恩田陸 講談社
| 2004年04月16日(金) |
『麦の海に沈む果実』 恩田陸 |
水野理瀬は二月最後の日に湿原の中にある全寮制の学園に転入する。不思議なオーラを撒き散らす校長先生。一癖も二癖もありそうな人ばかりのファミリー。理瀬のファミリーは半端な人数で、失踪者もいるようだ。校長は理由があって学園を出て行ったのだと説明するのだが、学園では失踪もしくは死亡と思っている節がある。理瀬の学園生活はどうなってしまうのか。なにより理瀬とはいったい・・・。
『三月は深き紅の淵を』の第四章「回転木馬」の中に登場する理瀬の物語。『三月』で生まれた理瀬の世界が見事に花開いた作品です。作中に当然のようにアノ本が出てきます。しかも妙な隠され方をして・・・。そしてこの『麦』の世界では『三月』の内容が一味違ってる。どこまでお洒落な仕掛けを仕込んでくれることか。恩田陸、素敵v
自分が経営者になったあかつきには、この本棚をぎっしり埋めてやるんだと決心を固めていたわー
| 2004年04月15日(木) |
『三月は深き紅の淵を』 恩田陸 |
「待っている人々」 嫌な季節だ。早春の、落ち着かない、浮ついた不安定な季節。鮫島功一は、せっかくの連休を海老沢という上司命令で会長の“春のお茶会”参加(しかもお泊まりつき)に向っている。功一がお茶会に呼ばれた理由はたったひとつ。趣味が読書だったから。本だらけの大邸宅に迷い込んだ功一は、たった一冊の幻の本『三月は深き紅の淵を』を推理して探し出せというものだったが・・・。
生まれて初めて開いた絵本から順番に、自分が今まで読んできた本を全部見られたならなあ、って思うことありませんか?
「出雲夜想曲」 編集者の隆子は、同じく編集者の朱音を誘って旅に出た。有能で美しくパワフルな朱音は、夜汽車での酒盛り準備にもぬかりがない。ふたりが向ったのは出雲。隆子も朱音も『三月は深き紅の淵を』に囚われ(それぞれ事情も感性も違うが)、その作者を推理し、出雲にその人がいると・・・?
「すごいわね。化け物のような小説だわ。ただその存在だけで、どんどんベールをまとっていく。既に実体もなく、知る人もほとんどいないというのに、指一本動かさずに手の届かないところへ行ってしまう。でも、本当の物語って、そういうものかも。存在そのものに、たくさんの物語が加速して加わって、知らぬ間に成長していく。それが物語のあるべき姿なのかも」
「虹と雲と鳥と」 奈央子がかつて家庭教師をしていた少女・美紗緒が死んだ。祥子というやはり美少女とともに。ふたりは異母姉妹だった。公園の手すりが壊れて落ちていった。自殺か。他殺か。事故死なのか。美しいふたりの少女の間にいったいなにがあtったのだろうか。
かわりに、かいてね。
「回転木馬」 水野理瀬は松江に降り立った。列車から降りてトランクを忘れてきたことに気がついた。なぜだろう、なぜあたしはあんなに大事にしていたトランクを忘れてきたのだろう。そして二月の終わりに三月の王国へまよいこんでしまう・・・。
フィクションを求めることで、我々は他の動物たちと袂を分かったのだ。我々の向うところは分からないし、最終的に何を用意されているのかは分からないが、その日から我々は孤独で複雑で不安定な道のりを歩み始めたのだ。
この『三月は深き紅の淵を』は、タイトルと同じ『三月は深き紅の淵を』という幻の本を巡る4つの短篇集です。物語の時系列はキレイに流れていないし、内容もリンクしているようで微妙にずれている。これは陸ちゃんのほかの作品にも同様で流れを汲みつつ、それはまた別のお話であったり。こういうほんのわずかな歪みみたいなものが最高に私を惹きつけるのだと思う。 陸ちゃんの新刊・理瀬シリーズ(と言うより三月シリーズと言うべきか)の『黄昏の百合の骨』を読むために、久々に読み返した三月はやはり私をしっかり虜にし、わくわくどきどきさせてくれました。これは文庫になっているし、全ての本好きさんたちにぜひとも読んでいただきたい。 恩田陸という天才をこの世に送り出してくれた神様に心から感謝。
| 2004年04月14日(水) |
『エロチカ』 桐野夏生ほか |
「自分はエロス的でないと思う人間は、ソフト、ハード面、共にテクニックを磨く努力が足りないのだ」・・・まさに言いえて妙な桐野夏生ならではの名言である。そんな言葉を言い放つ桐野夏生による呼びかけで官能小説の競作。ずらりと並ぶビッグネームに恐れおののきつつエロスを堪能。参加の作家さんたちもだけれど、桐野夏生の相変わらずの勇ましいエロチックさにめろめろ。
「愛ランド」 桐野夏生 編集の仕事に携わる熟女3人が台湾旅行をする。そこで始まった3人の告白。自分はレズビアンだと認識したという佳枝。父にレイプされていたという菜穂子。奴隷として男たちに買われているという鶴子。3人の告白は妄想なのか?真実なのか?
「思慕」 貫井徳郎 ステーキハウスで美しいウェイトレス里海に一目惚れした一毅は、その店でアルバイトすることに。ひたすら見つめ続けていた里海が恋愛に悩み、一毅と一度だけ関係を持つ。その一度に執着する一毅は・・・
「危険な遊び」 我孫子武丸 舞は賢治とのレイプごっこに興奮していた。窓から侵入してくる賢治を強姦犯と見立てるのだ。賢治は定職につけず、友人の慎吾から借金ばかりしていた。慎吾に説教されるが、どうしても金を借りたい賢治はレイプごっこの身代わりをすすめるのだが・・・。
官能小説と言っても作家さんの感覚はさまざま。私が中でも気に入ったものはこの3人の作家さんの作品。どぎまぎしました。そのうえ只では終らないエンディングが素晴らしかったです。
『エロチカ』 2004.3.15. 桐野夏生ほか 講談社e-NOVELS
40年前、スペイン郊外の森で7人の子供たちが行方不明になった。そのうちの一人の少年だけが発見されるが、彼は興奮し錯乱し手がかりは得られない。そして少年は記憶を失った・・・。 40年後、アメリカからある家族が引っ越してきた。マークはアメリカでの生活に心のバランスを崩しかけていた。マークの父は医師として働き、マークの妻メアリーはそこに勤めるようになる。娘レジーナは自分だけでもアメリカに帰りたいと願い、メアリーと衝突する。メアリーの冷たい言動に傷つくレジーナは弟ポールの異変に気付く。買ってもらった色鉛筆で首を切られた子供たちの絵ばかり描くのだ。暗闇を怖がるようになり、なぜだか首の周囲に痣をつくるようになった。 この家はなにか変だ、レジーナは恐怖の原因をボーイフレンドと探る。家の売主も不動産屋も架空の人物。やっとたどり着いた設計士から、今の家は霊力を集めるように設計されている恐ろしい家だと知らされる。しかも40年の皆既日食の日、たったひとり行方不明から生還した少年が父親マークだったことを知る。40年ぶりの皆既日食の日はもうすぐ・・・。
『アザーズ』と言い、この『ダークネス』と言い、スペイン発のホラーは正統派ゴシックホラーと言う感じ。妙なスプラッタ的恐怖を盛り込まない。お上品な感じとでも言いましょうか。建物が悪魔を呼び寄せる設定って難しい。でもありそうだから何度でも使われる設定なのでしょうね。そう言えば、悪魔封じのため建て増しを今でも続けている妙な豪邸をテレビで見たけれど、あれって逆に悪魔たちの格好の棲家となりそうだなぁと思ったものでした。暗闇もまたホラーの永遠のテーマ。本当に暗闇にはなにかが蠢いている気がするし、人間の根源的記憶ルーツになにかが刻まれているんだと思う・・・。 面白いか、面白くないかと聞かれると返答に困っちゃうんだけど、レジーナを演じたアンナ・パキンがよかったv さすがオスカー女優。あんなに若いのに。
| 2004年04月11日(日) |
映画『プロフェシー』 |
ワシントン・ポスト紙のスター記者ジョン・クラインは、美しい妻メアリーを溺愛。喜ぶ妻のために高額な家を購入することに決めた帰り道、メアリーの運転ミス(?)で交通事故に遭遇。メアリーだけが重傷を負い、目覚めた彼女は妄想に悩まされる。メアリーはジョンに聞く。「あれを見た?」と・・・。そして彼女の脳に珍しい腫瘍が見つかり、帰らぬ人に。 2年後、メアリーを忘れられぬまま仕事に打ち込むジョンはワシントンからリッチモンドへ真夜中車で向っていたが、まったく違うウエスト・ヴァージニアの田舎町に辿り着いてしまう。その町では妙な出来事が頻繁に起こっていた。ジョンはその町の謎を追いかけるのだが・・・。
これはウエスト・バージニア州のイントプレザントという町で実際に起きたことをベースに映画化しているそうです。映画の原題は「モスマンの予言」だそうで、モスマンとは訳すと蛾男。このモスマンは昔からなにか災害や惨事が起こる前に目撃されるそうです。そして気まぐれに予言を教えて混乱させる。助けてくれるわけでも導いているわけでもないらしい。こんなホラーないですよね。 映画では、愛する妻を失った傷心の男が翻弄されていて身につまされます。どうラストへもっていくのかと思って観ていたら、とんでもないことが! しかもそのラストも実際にあったことだと言うではありませんか・・・。 きっとこの世の中には人間が認識できていない存在がある。人間が認識できていないものをイコールこの世ならざるものと思うのは人間の思い上がりだよな、なんてひとりで自省していました。ただのホラーではありませんよ。
| 2004年04月10日(土) |
『嗤う闇』 乃南アサ |
アノ音道貴子が東京の下町・隅田川東署へ転勤。機捜にいた貴子には驚きの事件が待っていた。新しい同僚たちはさまざまな人間性を見せる。恋人・昴一との時間が増えると期待していた貴子だったが・・・。
大きな事件に遭遇し、危険な目にあってきた音道貴子が転勤。しかも人情あふるる東京下町。これは良かったね〜貴子ちゃんvとならないところが乃南アサさんらしいところか(苦笑)。でも恋人の昴一との関係や会話がとてもよくて、ギスギスしていた貴子ではなくなった。そのことが本当に嬉しかったな。 今回、音道は4つの事件に遭遇しますが、タイトルにもなっている『嗤う闇』は女性として読み流せない事件を扱っています。ズバリ「レイプ」です。「レイプ」は卑劣な犯罪で、男が女を暴力でねじ伏せ屈辱をあたえる最たるものでしょう。よく女性にはレイプ願望があると言われますが、それはポルノとかでなんとなく喜んでいるふうを表現するから誤解されているのだと思いますね。年を重ねるごとに感じることですが、セックスは愛がなきゃまったくもって無意味です。 音道はどこへ行くんだろう。昴一と結婚して警察を辞めてしまうのかしら。
どんな理由があったって、レイプされていい理由なんて、女の側にはありゃしないのよ。
『嗤う闇』 2004.3.20. 乃南アサ 新潮社
| 2004年04月09日(金) |
『ヘビイチゴ・サナトリウム』 ほしおさなえ |
ハルナが学校の屋上から墜落死。自殺か?他殺か? その後、ハルナの幽霊が出ると言う噂が立ち、教師・宮坂とハルナの関係も噂となる。その宮坂もまたも墜落死。宮坂が残した謎の小説。そしてハルナ以前にも墜落死した少女が・・・。
いやはや久々に新しい衝撃。不思議な文章に惹きつけられ、謎が謎を呼ぶ。物語の最後で解決したかに思える回答も定かではない。不思議な物語。 この物語の作者は詩人なのだそうです。言葉で人を惹きつける力は半端じゃない。ただ個人的な欲を言えば、エロと言うなら(物語に登場する小説)あんな美しい表現じゃダメ。女子校という閉鎖された空間ならばエロはもろエロじゃないと。エロと言いつつ美しすぎたわ。残念。 墜落死した謎の少女の物語を読みたいと思わせる素敵な余韻を残してくれました。この方は今後も要チェックだわ! オススメv
「だって、本に書かれてるのって、単なる文字でしょ? 形も、匂いも、味もない。それなのに読んでると自分がそのなかにいるみたいな気になる。書いた人のことなにも知らなくても、その人が作った世界が、ほかの人たちに伝えられてくじゃないですか? 人って死んだらふつう忘れられてくでしょ。その人を知ってる人がみんないなくなったら、この世から消えちゃう。でも本はちがうんですよ」
『ヘビイチゴ・サナトリウム』 2003.12.25. ほしおさなえ 東京創元社
| 2004年04月08日(木) |
映画『オン★ザ★ライン 君をさがして』 |
ケビンはシャイな青年。今はシカゴで広告代理店に勤めている。ナイスガイのケビンはもてるのだが、本命と思う相手にはからきし奥手。ハイスクール時代のバンドライブでイケイケだった瞬間にダウンしてしまったことがトラウマになっているのかもしれない。ある日、電車でめぐり合った素敵な女性。カブスが好きでアル・グリーンが好きで歴代大統領の名前を一緒にはもれた。それなのに名前すら聞けないで別れてしまう・・・。 仕事ではチャンスが巡ってきたのに、やり手の同僚にアイデアを盗まれてしまう。それなのに一言も抗議できずコピーを取る。その時、ケビンの中でなにかが生まれた! そしてケビンはシカゴの街中に「電車の君」を求めるポスターを貼りまくる。それは人々の目に止まり、新聞社からのインタビューを受けるまでに。ハイスクール時代のバンド仲間は便乗してかかってくる女の子たちと片っ端からデートをする。その中に、ケビンの求めるあの娘がいたのだが・・・。
これは最高にキュートな映画です。こういうコメディタッチの恋愛青春映画はたまらなく好き。最後がハッピーエンドってとこもいい。せめて映画ではハッピーに楽しく。そういう気持ちをしっかり満たしてくれる優れものの映画です。も一回見ようv
| 2004年04月07日(水) |
WOWOW『妄想代理人』#8 今敏(こんさとし) |
「明るい家族計画」 自殺志願者が集まるチャットで一緒に自殺をする相談が繰り広げられていた。ある日、本当に実行すべくマロミのリュックを背負った老人と屈強な青年が待ち合わせ場所で出会う。老人は冬峰、青年はゼブラ。かもめという女性が遅い、チャットのイメージだと遅刻するような女性に思えないんだが・・・と話し合うふたりの視線に飛び込んできたのはマロミのリュックを背負っている少女だった・・・。 あまりにも幼い少女かもめの出現に慌てふためくふたりは、かもめを巻こうとする。しかしどこまでも追いかけてくるかもめに根負けし、3人でさまざまな自殺を図る。だがどれも失敗。汽車に乗り、山奥に入り、並んで首吊りをしようとするのだが・・・。
3人が抱えた自殺理由がさりげなく画面に提示されます。死にたいけれどひとりで死ぬのはいや。人間はかくも寂しく弱い生き物なのか。 ネタバレになりますが(最後で映像ではハッキリ示されますが)、いったい3人はどの自殺で死んだのだろう? 温泉に入った時には死んでいたはず。そこへ現れた少年バット。妄想と妄想の遭遇? うーん(悩)。 3人が抜けた自殺願望チャットで引き続き少年バットの噂が流布されていたし、どんどん加速している。タイトルがいろんな場面でいろんな形で出てきますが、今回はラストにスキンの自動販売機でした。あんな自動販売機っていまだにあるのかしら。
| 2004年04月06日(火) |
『勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛』 浅田次郎 |
面白い・・・。ビバ!浅田のオッサン節である。浅田次郎さんが好き放題書き散らしているような極悪非道(笑)エッセイシリーズ2作目ですが、今回もほのぼの笑わしていただいた。特に今回、わけあって欝っぽい春を悶々と耐えている私にとって、まさに福音のようなエッセイが。タイトルはずばり「欝について」。気分が低迷すると視野が狭くなり、自分だけが悲劇のヒロインになっていく。そんな時に愛してやまない偉大な浅田のオッサンでさえ、春には心のバランスを崩し、欝状態になると知り、目から鱗がぼろぼろ落ちた。そりゃぁ、私はこの季節に恋旦那を亡くした負荷があると言え、誰だってなにかしら耐えているものだよなぁ。浅田のオッサンはすごい。文章で私の暗闇に光を当ててくださった。神である。髪は少ないけど(ひどい)。
脂肪肝の宣告を受けたと同時に、私は医者からコレステロール値についても指摘された。何でも「悪玉」の数値が高く、「善玉」が少ないので注意を要する、というわけだ。 悪人である私は、一瞬正体をあばかれたような気分になったが、どうやらこれは物のたとえで、性格とかいまわしい過去とかは余り関係がないらしい。
『勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛』 浅田次郎 講談社文庫
| 2004年04月05日(月) |
『バトル・ロワイヤル�供…炭臆痢戞/�江松恋 |
鹿之砦中3年B組の生徒42人は拉致された。いつもは無気力な教師リキが突然生き生きとした様子でみなに告げる。「今日はみんなに、ちょっと戦争をしてもらいます」・・・彼らは改正されたBR法により、政府がテロリストと指名手配しているワイルドセブン七原秋也を殺せば助かるというものだった。そして今回はタッグマッチ。相棒になにかあればお馴染みの首輪が爆破。協調性も必要さ、とおとなたちは言うのだが・・・。
かつてバトルロ・ワイヤルで生き延びた七原秋也が、対BR組織のTOPとして活動している。失った友、三村の叔父に導かれて。そんな秋也におとなたちは迷彩服を着た中学生を差し向けた。どこまでも汚れたおとなたちの思惑に翻弄され、悩み苦しむ秋也・・・。 うーん、映画はどんな仕上がりなのでしょう。まだ観ていないのですけど、きっと藤原竜也くんが苦悩する顔がかわいいのでしょうねー。この原作は映画の続編のために書かれたものなのでしょうね。作者が変わってしまった割には、それなりに読ませてくれました。ちゃんと前作を受けて話を膨らませているし。ただ前作より中学生達の抱える問題が重いものばかりだったことが気にかかる。まぁ設定として鹿之砦中学が問題児を受け入れる学校だから仕方ないか。パート2はこれくらいなら上出来な気がしました。
「誰かが覚えてくれている限り、その人は本当に死んだことにはならないのかもね」
『バトル・ロワイヤル�供…炭臆痢戞�2003.7.23. 杉江松恋 太田出版
時は戦国時代の終わり。徳川家康は豊臣秀吉の末裔を戦いを仕掛けてくる前に根絶やしにしようと考える。そのための暗殺集団が育て上げられた。10人の少数精鋭の剣士の中に美少女「あずみ」がいた。あずみは命の恩人のために人を斬って斬って斬りまくる。ある日、大道芸の少女やえと知り合い、自分がひとりの女であることを自覚する。そして自分の流されるままの運命に疑問を抱くのだが・・・。
正直に告白するならば、オダギリジョーが見たいがために観ました(笑)。主演の上戸彩ちゃんも超かわゆいv まぶしい太もも。あの美しさはあの年代までのものだなぁ。いやらしさがまったくないもの。健康でまぶしい美しさ。じゅるる。しかし!お目当てのオダジョーの変態っぷり、よかったですよー。何故だかオネェ言葉に白塗りの美女丸。なんちゅーネーミング。ぷぷぷ。快楽殺人者なんですよね、美女丸って。オダジョーのあぶない狂気がいかしてました。 内容はどうやら原作マンガの良さを活かせていないという噂です。マンガの方が奥行きの深い物語らしい。あずみたちの受けたマインドコントロールの問題とか。映画はとにかくアクション娯楽に徹していたように思います。それはそれでいいんじゃないかな。人斬り殺し合いの映画を面白いと言うことは顰蹙なのかな、と思わないでもありませんが、フィクションとして映画としてそこそこに面白かったです。
| 2004年04月03日(土) |
ドラマ『砦なき者』(原作:野沢尚) |
渋谷の有名美少女めい子が、首吊り自殺をした。前日に首都テレビの番組「ナイン・トゥ・テン」の企画で少女売春の元締めであるかのように報じられたことが原因と思われた。そしてライバル局の東洋テレビでめい子の恋人(?)八尋が独占インタビューを受け、涙を流し大反響となる。結果、メインキャスターの長坂は謹慎処分を受け、八尋はマスコミの寵児となる。しかし、ディレクターの逢沢瑶子は八尋のさまざまなウソ(詐称)を調べ上げ、ふるさと諫早で謹慎している長坂の元へ八尋との戦いを煽りにやってくる。瑶子の熱意と愛情に動かされた長坂は、メディアが生み出した悪意の申し子・八尋と対決するのだが・・・。
うーん、まずは単発のドラマとしては非常に面白かったです。役所広司さんの演じるキャスター長坂は素晴らしかった。対する悪意のカリスマ八尋を演じる妻夫木くんも役所さんたちの胸を借りて、初の悪役をなかなかうまく演じていたと思います。なんにしても妻夫木くんはいい男v しかし、原作をあそこまでいじってしまったのは、いかがなものか。やはり時間枠の問題なのかな。まずは主人公が違う。原作での主人公は、「破線のマリス」で映像を悪用した遠藤瑶子のかつての部下・赤松。原作の彼がお気に入りだったのだけど、映像化での主人公となると地味すぎたのかな。原作では長坂も八尋もドラマほどいい男ではありません。かえってやな奴って感じがびしばし伝わってくる。そこもまったく違う。そういうことをまったく気にしなかったら、ドラマとしてかなりいい出来だったと思います。
人間の悪意を、報道という手段で具現した『破線のマリス』。そのマスコミが生み出したカリスマ八尋を描いた『砦なき者』。八尋は砦のない者はこうやって弱者を踏み台にしてのしあがっていくしかないのだと語る。その怪物を粛清するにはやはりマスコミの正義でしかない。なんだか空恐ろしいほど奥の深い物語だなぁと思いました。面白かった。
| 2004年04月02日(金) |
『富士山大噴火』 鯨統一郎 |
天童さゆりが公園でいきなりドーベルマンに襲われそうになった。恋人のカメラマン山本達也はさゆりを助けられずに忸怩たる思いを抱く。そしてそれは大いなる予兆のちょっとしたはじまりだった。地震が起こり、富士山が噴火し、そして・・・。
日本一の山、富士山は火山。宝永4(1707)年に噴火してから300年近くが経ったそうです。300年分のエネルギーを蓄え富士山が噴火する可能性がある。この物語はそこらへんのホラーよりものすごく怖い気がしました。ありえそうな自然災害というものに大して人類はどう立ち向かっていけばいいのでしょう。 しかし、鯨さんの変幻自在な物語づくりには感服します。
あなたが死んだら、生きてたって意味がない。
『富士山大噴火』 2004.3.10. 鯨統一郎 講談社
| 2004年04月01日(木) |
『ハーフリース保育園推理日誌 白昼蟲』 黒田研二 |
幼児図書の営業マン・次郎丸ことアルマジロ(笑)が、今度は平和荘という今時珍しいオンボロアパートで発生した殺人事件に巻き込まれる。その事件の背景にはおぞましく陰湿な“いじめ”の構造があった・・・。
うーぬぅ・・・これは参りましたな。前回は子供に笑顔を見せるとその子に災難が起こると笑わない保母さん。今回はいじめ。 まさかアルマジロくんにこんなハードな過去があったとは。ふぅ。最初は読みすすめることがしんどいくらいでした。残念ながら犯人は結構早い段階でわかってしまいました。その犯人の心模様も意外ではありませんでした。しかし、さすがにクロケンさんの筆力で最後までぐいぐい読ませてくださいましたので満足。 オトコマエの園長と美人の山添女史。ふたりの関係は?とやきもきするアルマジロはかわいかったです。山添女史のオオボケなコメントには苦笑。あれって好き嫌い分かれるでしょうが、私は大好きですv 山添女史がいてこそ魅力的な物語になっている気がします。
君の死を哀しむ人間がいる限り、君は絶対に死んではいけないんだ。
『ハーフリース保育園推理日誌 白昼蟲』 2004.3.5. 黒田研二 講談社ノベルス
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