酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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やっと、岩井志麻子さんの作品でこれならいいと言えるものを読めました。岩井志麻子さんという方は、岡山出身の方で、作品よりそのとんでもない言動が一部岡山人を震撼させておられます(苦笑)。自由奔放と言うか、はじけたと言うか。 『ぼっけぇきょうてぇ』も『岡山女』も、いや全部拝読しているのですが、どうしても点数が辛くなってしまっていましたが、この『がふいしんぢゅう』はなかなか面白かったです。岡山を売り物にしようという灰汁がかなり抜けられた気がします。これは明治時代の岡山を舞台にしたさまざまな事件の短編集。物語の終わり方もこれならいいなぁ。 『がふいしんぢゅう』 2002.4.30. 岩井志麻子 角川書店
ひさーしぶりに赤川次郎さんのご本を読みましたよ。西澤先生もその昔コンプリートされていたと言う赤川次郎さん。私もずーっと読んでいたものだわv 今回、どこかの予告を見て興味を持って読みました。 さつきと言う少女が封印した辛い過去と現在が追いつくまでのお話です。いろんな事件が起こりますが、以前現実であった遅刻した生徒を門で死なせてしまう事件を下敷きにされていました。痛ましいことだ。 たくさんの悪意があって、でもいい人もたくさんいる。赤川次郎さんらしい雰囲気でした。
『校庭に、虹は落ちる』 2002.8.20. 赤川次郎 新潮社
2002年10月27日(日) |
ハッピー・バースディ |
しばらく動きのなかった、‘酔わされて2002’に変動が生まれました。新井素子健在なり! いやぁーおもしろかったなぁ。 私は、姉の影響で星新一と横溝正史で活字中毒の扉を開けました。そんな私が自分で初めて開眼した作家さんが新井素子さんの『グリーン・レクイエム』でした。振り返ってみると私の原点にはSFがあるようです。『ひとめあなたに』と『あなたにここにいて欲しい』は、今でも心に大切にしまわれている作品です。 さて、そんな多大な影響を受けた新井素子さんの久々のSF(・・・かな?)。うーん、ジャンル分けなんて不要って気がします。とにかく面白かったv それに尽きてしまう作品です。だもんで‘酔わされて2002’にランクイーン! 物語は、あきらという社会不適合者寸前の作家と浪人生祐司の視点で交互にすすめられていきます。はじめての小説が賞を取り、この世の春を謳歌するあきらと、浪人して腐っている祐司が交錯した時、物語は動きます。どう動くかは読んでください。 あきらという女性の破綻していく様は、私なぜだかシンクロしてしまうんですよね。つくづくそういう描写のうまさに唸らされます。あきらと祐司がどうして交錯して、どうかかわって、どう結末がつくのか。これはここでは書きません。 是非、自分で読んでみてください。新井素子さんのSFをお好きな方でしたら、絶対的にはずれはありえません。断言。
『ハッピー・バースディ』 2002.9.30. 新井素子 角川書店
1999年のホラーウェイブ02に恩田陸さんのエッセイが載っていました。これが私の大好きな『六番目の小夜子』に関するもの。この私の大好きな小夜子、当時審査された人たちに、「(悪い意味で)漫画みたいだ」とボロクソに評されたとか。そう言えば、ドラマにも漫画にもなりやすい内容にちがいない。そこがいいと私などは思って好きなのだけど。そして、この時に絶版にまで追いやられたからこそ、『幻の処女作』になりえた訳で、つくづく不思議な流れを持った神秘的な本です。なぜならばこの小夜子という作品、陸ちゃんにある日突然降ってきて、自動書記状態で書き上げたそう・・・。まさに神がかり的。さすがは陸ちゃん。 1998年の新潮社から出ているハードカバーも手に入れたい一冊なので、雷音堂さんどうぞよろしくですv
うーん、おもしろい。やはり私は野沢尚さんの物語は好きv 物語は、照屋礼子と言う女性の手記の形をとっている。この照屋礼子、生来問題があり(この問題があるという言い回しが良いか悪いかわからないけど)、警察官になり、公安警察官となり、メシア神道という新興宗教へ潜伏し、逆に洗脳され稀代のテロリストとなり果ててしまう・・・。そのテロリストとしての孤独な戦いの好敵手となるのが、刑事鳴尾、そして獄中のその妻、籐子。鳴尾と籐子の奇妙な関係も物語のポイントであるし、この籐子という女性がプロファイルするところも面白い。公安は、木乃伊取りが木乃伊になってしまった照屋礼子の抹殺を願う。それを阻止しようとする鳴尾。このクライマックスは頭にバーンっとシーンが浮かんできた。鳥肌もんのシーン。 照屋礼子という大量殺人犯の目線で描かれることが、最初は読みづらく、途中から馴染むと一気に引っ張っていく。今の北朝鮮問題を鑑み、人間というものはその状況で変わってしまう(誤解を恐れず言うならば洗脳されてしまう)。おもしろいのだけど、身に迫る怖さを感じた。
『魔笛』 2002.9.20. 野沢尚 講談社
はじめてホラーウェイブという日本初のホラー小説専門誌を読んでみている。(でも数年前のぶに) 森奈津子さんと恩田陸さんの名前が連なっていたからv陸ちゃんはエッセイらしいけど。森奈津子さんの作品は鬼畜ホラー競作の中に牧野修さんと名前を並べておいでです(笑)。 しかし、この『一卵性』ものすごぉーくエロティック〜。読んでいてどきどきしちゃう。森奈津子さんの描く危ない世界って好きなのよねー。タイトルどおりお人形のように美しい一卵性双生児のいけない物語です。
『一卵性』 1999.ホラーウェイブ2より 森奈津子 ぶんか社
2002年10月23日(水) |
炎迷宮 −京&一平シリーズ25− |
ま、また漫画です。ええ。汗っ。駄目なんですよー。漫画コーナーに行くと知らずに済ませられなくなっちゃう。京ちゃんの行く末も気になるのよ、私。とほほ。 事件があるから名探偵を呼ぶでなく、名探偵が行くとこ事件が起きる(笑)。じゃ、もう動くなよーっ。アハハ。今回も京ちゃんは一平くんとこのみちゃんのデートにくっついて行って事件に巻き込まれてしまいます。でも京ちゃんを釣るこのみちゃんの餌の撒き方はあいかわらず的を射ている。今回はゲームショウ。前はアクセサリー店のオープンだったなぁ。 交通事故で足をリハビリしている女の子が、がんばれって言われることが辛いのって泣きます。自分ではがんばっているのにどうしたらいいかわからなくなる時に励ましの言葉は重いですよね。かくいう私、旦那が死んだ時、逃亡者となり、博多や東京や大阪を転々と逃げ回っていました。マンションにいると誰かが来てくれるんですよ。心配してくれて。でもそれにすら対応できないから消えていた。そのまま消えようかとも思った。頑張れという言葉を私もよく使うけれど、あの頃の自分を思い出すとただそう言うことも罪作りかもしれないなぁ。 おお、話がいつもどおりそれまくりました。一平くんとこのみちゃんの結婚もやーっと決まりました。でもおおらかな一平くんの未来には必ず京ちゃんがいる。京ちゃん、よかったね。でも今回うさぎになった京ちゃんが見れなくてちょっと残念。漫画でこんなに長く語ってるー。
『炎迷宮』 2002.8.25. 神谷悠 白泉社
豪華作家陣による書下ろしホラー・アンソロジー。アンソロジーのよいところは未読の作家さんの作品に触れることができること。そこからまたその作家さんのご本を読むようになる訳でv 今回、読んでみようと思いながら、いまだ未読作家さんのおひとり北川歩実さんの「心の眼鏡」を読むことができました。ふーん北川さんってこういう文章をお書きになるのね。また長編にチャレンジさせていただこうっと。 9人の作家さんの作品が載っていて、どの作品もそれぞれになかなかおもしろいです。「リカ」でデビューされた五十嵐貴久さんの「嗜虐」、これはよい。かなりエロですが、最後への持っていき方が好き。あと倉坂鬼一郎さんの「分析不能」、これは怖いですー。ヒロインの立場になって考えると発狂もんです。 ほかにも柴田さんや牧野さんもご登場されていて、中身の濃い一冊です。
『紅と蒼の恐怖』 2002.9.5. 祥伝社 NON NOVEL
月間の漫画を買わなくなって久しいです。でも買っていた頃に好きだった漫画は気になるのでコミックスで読むことになりますv しかぁーしっ! ま、まさか最終巻だとはーっ。しかぁーもっ!! 前巻を読み逃しているし・・・。うーにゃぁ。明日買わなきゃ。 終わってしまいましたよー。大好きだった学園漫画。主人公より脇キャラの方がよっぽど主人公だらけだったこの漫画。私のお気に入りは北大路理々子嬢。麻生みことさんの言に寄ると、彼女がダントツ人気だったそうな。彼女のラストと美晴のラストはおおいによし。でも・・・そりゃぁ影の薄い存在感のないヒロインだったけど、二美ちゃんがぁぁぁ。あーんあーんあーん。読んで私は泣けました。クスンクスン。 三千院に、千津や百合ねぇや居酒屋ジョージさんや薫やナルさん。ストーカーのうさぎくんに美晴のねぇちゃんズ。本当にヒロインとその兄意外は個性の強い脇役陣だったこと。あ、高雄氏を忘れていた。汗っ。 好きな物語のラストシーンは見たくない。読みたくない。いつまでも続いて欲しい。そんな漫画でした。 なんだか最近漫画づいてますv
『天然素材でいこう。』10巻 麻生みこと 2002年10月10日 白泉社
2002年10月20日(日) |
天然素材でいこう。ー9巻ー |
えっと、これを書いているのは実は10月22日です。21日の前にきてしまいますが、あしからずぅー。 昨日(21日)読んだ「天然素材でいこう。」Lastが涙ぼたぼただったのですが、未読の9巻を買ってきて読んだらもっともっと涙が流れましたー。あーん、ああーん、あああーんっす。この9巻があってこそのラスト10巻だったのですねぇ。 高校卒業を間近にした、女王様ズ(理々子と美晴)と二美ちゃん。想う人が自分の親友を大好き・・・それってつらいだろうなぁ。はぁ。理々子の恋心が痛かった。千津が原因で二美が高雄氏に振られたことを知った美晴が「ちょっとシメて来てよろしい?」と行きかけるシーンが一番好きー。そう美晴も最高に気持ちいい女(やつ)なんだよねー。 ずっとのほほーんとあまあまな関係が入り乱れていたけれど、最終章に向かった時、麻生みことさんは厳しい現実をつきつけたんだなぁ。 漫画あなどれず。
『天然素材でいこう。』9巻 2002.4.10. 麻生みこと 白泉社
漫画というのは、ここまでの表現力があるものなのか。もう映像を見ている感覚でしたよ。浦沢直樹さんは『モンスター』で、心底楽しませてもらっていたので、この『20世紀少年』も読みたくてたまらなかった。今日やっと1巻から4巻まで読みましたが、面白すぎます。もう次が次が読みたぁーいっ!!! 主人公ケンヂは、姉の娘カンナを育てながらコンビニを切り盛りしています。普通の生活をしているケンヂのもとに少年時代の過去が関わってくる。しかもそれは日本を世界を滅亡させるものかもしれない・・・。 すごいですよ。テンポと言い、次々起こる事件に登場人物。浦沢直樹さんはただものじゃない。たまたま漫画という表現方を選ばれたわけですが、きっとどんな表現方を選んでいても人を惹き付けずにはいないでしょうね。天才です。 私が、今いちばん気になる登場人物は‘ショーグン’vらぶvv
『20世紀少年』 浦沢直樹 (今のとこ4巻まで)
この作品は、1990年に講談社ノベルスから『パソコン通信殺人事件』として刊行されたものを、文庫化にあたり改題し、大幅加筆修正したそうです。 今から10年以上前の電脳社会の問題は漏れ聞いていました。その当時を反映した物語です。主人公の薫は、夜な夜なチャットにはまり、仮想世界でモテモテアイドルに変身します。仮想世界と現実の世界が交錯したときに起きてしまう事件は。 うーん、ほんの一昔前のことですが、実際あったような事件なのでしょうね。今でこそみんな慎重だし、マナーもありますが。 こういう下手をすると匿名で済んでしまう世界だからこそ、礼節を重んじたいと思います。文はひとなり、ですよね。つくづく。
『ライン』 1997.11.15. 乃南アサ 講談社文庫
漫画も好きなのですが、本を読むほうが忙しくてなかなか漫画にまで手がでません〜。まぁそれはしょうがないことなんですが。時間には限りがある。うむっ。 それでも、読み続けている漫画はやはりあって、この『輝夜姫』はずーっと揃えています。昨日お使いの途中で病のように近所の本屋に寄り、見つけて買ってきてしまいました。輝夜姫最新刊20! あいかわらず清水玲子さんの絵は惚れ惚れします。ヒロインの晶、こんな子が側にいたらアータ私ゃ押し倒しますね。ええ。でも返り討ちにあうな、晶ちゃん強いから。 この物語、清水玲子さんの連載当初の物語とはずいぶんと路線変更があったような気がします。最初はこういう物語になるなんて思われてなかったんじゃないかなー。うーん。 今回は、碧の苦悩がいじましくも可哀想。まゆも相変わらず苦しんでる。愛って時として残酷なものだから。碧とまゆってとんでもなくKeyPersonなのでしょう。この輝夜姫の物語において。そしてミラーとサットンの恋の行方(笑)も気になるところ。新しい不気味なおじさまも出てきちゃったしなぁ。あ、マギーの復活は嬉しい〜。あぁいうおねぃさん大好き。ころころ寝返りそうだしv 最後に頑張れ、晶。君のヌードが堪能できてこの新刊よだれもんだったわよー。
『輝夜姫20』 2002.10.10. 清水玲子 白泉社
RIKOシリーズで訳ありな、練ちゃんと麻生さんの長い長い因縁の物語。たくさんの登場人物の過去が複雑に絡み合い、最後にすべてがときほぐされます。 非難を恐れずに言うならば、栗本薫さんの魔性の少年(彼はシンガーだったかな)ものを彷彿とさせました。どうしても男性同士の恋愛もの路線は、出てくるタイプがかたまってきてしまうのかなぁ。がちがちに堅い男が男にのめりこむ、とか。女よりフェロモンだしまくって関わる男をどん底に突き落としてしまう魔性の男、とか。 RIKOシリーズでは、練ちゃんと麻生さんの‘訳あり’なところがわからなくてもどかしかったけれど、やっとふたりの関わりの全てがわかりました。運命のいたずら、そうとしか言いようのない物語でした。おもしろいですよーv 練ちゃんに真実を聞いた時の麻生さんの心の声; 夜はなかなか明けない。もう永遠に夜明けは来ないのかもしれない。 ・・・うーん。そういう気持ちになること人生には何度かある。
練ちゃんと麻生さんが出会うきっかけになった事件とその裏に隠された陰謀の物語が、またいつか読めるのかもしれませんね。楽しみです。
『聖なる黒夜』 2002.10.5. 柴田よしき 角川書店
チャットや掲示板で、美月とよっちゃんが絶賛していた漫画家の西村しのぶさん。知らなかったのですが、美月が送ってくれました。 ブティックを経営する×1のリツコが、目にとめた帽子を作る年下の青年との恋の物語。漫画も小説と同じで言葉のリズムがとても大事だと思うのですが、それがとってもいいんですねー。絵もいいし。西村しのぶさんのリツコに言わせる言葉がとてもよいです。あと、吹き出しじゃない西村さんの手書きの文字がすごーくいいです。しゅたっ、とか、ちっ弱虫め、とか字面からムードがにじみ出る。 ブラをつけないリツコねぇさんの名言; わたしは街のナチュラリスト 心はヒッピーよ ナイロンでしめつけるなんて ・・・惚れたv
『ライン』 1998.8.7. 西村しのぶ 講談社
乃南アサさんの作品では、女刑事音道貴子シリーズがお気に入りv 今出ているのは『凍える牙』(テレビ化では天海祐希が音道役を演りました)、『花散る頃の殺人』、『鎖』、『未練』の4作品だと思います。 今回、久しぶりに音道貴子の物語を読み返すにあたり、読みやすい短編集を読んでみました。音道貴子は離婚歴があり、まだまだ男性社会である警察の中で彼女なりに懸命に生きようとしています。男性上位の警察機構において腹の中で彼女が毒づくさまは気分爽快(笑)。警察内でのセクハラなぞ洒落になりません! この短編の中で一番気に入っている作品が、「長夜」です。ここに音道貴子のかつての同僚、元警察官のおかまのママが素敵。村越鉄平から村越安曇と変身した友人の知り合いが自殺します。その原因を探ろうとする安曇と、安曇の気持ちを思いやる音道貴子のかけあいが微笑ましい。こういう友情もあるんだなぁなんて思います。 まだ音道貴子シリーズを読んでいない方は、この短編集から入ってみられたらどうでしょう。長編の『凍える牙』と『鎖』もよいですが、これなりに読みきるパワーが必要です。その前にこの短編集で音道貴子を好きになれるかどうか判断してみてください。
『花散る頃の殺人』 1999.1.15. 乃南アサ 新潮社
『海辺のカフカ』打撃から立ち直れず、あれこれ再読している。 この『ローズガーデン』は、ミロシリーズ初の短編集。 自殺したミロの夫、博夫からの視点で語られるミロと博夫とミロの村野善三(義父)との三角関係にはどぎまぎ。ミロに囚われてしまった博夫の気持ちがよくわかります。>「ローズガーデン」 ミロの隣人であるゲイのトモさんがなかなかいい男。トモさんの部屋に転がり込んでいるカイに嫉妬するミロの気持ちがわかります。>「漂う魂」 心はレズビアンでもある私にとっては、興味深々な世界を垣間見ることができます。>「独りにしないで」 またまた非常に興味の湧くお店、SMクラブに絡んだ仕事をミロが引き受けます。世の中は奥が深い。まだまだ知りたいこと山盛り。>「愛のトンネル」
『ローズガーデン』 2000.6.15. 桐野夏生 講談社
2002年10月09日(水) |
それでも警官は微笑う |
第25回メフィスト賞作品。メフィスト賞では珍しい(ハッ、私が知らないだけかもしてない)ハードカバー。女性が描いた警察小説です。 無骨なデカ(出世できない)武本正純と、武本が未知の生物と思っている年下のおぼっちゃまくん上司潮崎哲夫警部補。このふたりが事件を追ううちにほのぼのと心を通わせていく過程がとてもよいですv 意外に繊細でいちいち傷つく武本は笑いを誘います。笑っては可哀想なんですけどね。
『それでも警官は微笑う』 2002.6.20. 日明恩 講談社
2002年10月08日(火) |
今日を忘れた明日の僕へ |
タイトルの魅力は大切だと思うのですが、この『今日を忘れた明日の僕へ』は感心するほど素敵なタイトル。そしてタイトルどおり主人公は、事故で記憶の蓄積ができなくなった男の物語です。最後にとんでもない事実が明らかになりますが、うーんこのラスト考えさせられます。おもしろくもどかしく読めます。 それにしても、この作品から記憶障害ものが増えた気がするのですが、いかがでしょうか。 『今日を忘れた明日の僕へ』 2002.1.15. 黒田研二 原書房
東野圭吾さんの物語は、欠かさず拝読しておりますが、この『トキオ』、ただただ読んでくださいと言いたいです。読んだ後に、号泣してました。私。 23才の宮本拓実が花やしきで出会った少年<トキオ>は、俺の親はこの世界にはいない、と言います。トキオが法螺で言う親の名前は、ことあろうか‘キムタク’v こういうおちゃめな会話が随所に盛り込まれ、笑いを誘います。とある事件に巻き込まれ、大阪に行き出会う竹美と黒人のジェシー。このふたりがまたいいキャラクターです。竹美が、苦労が顔に出たら惨めだとか、悲観しててもしょうがないとか言います。ホントその通りだよねー、と気分は竹美とマブダチです。 なにかのせいにして、なにかを言い訳にばかりして生きるんじゃない。そんな当たり前のことをあらためて教えてくれる物語です。必読。
『トキオ』 2002.7.18. 東野圭吾 講談社
数多く出版されている怪談本のなかで、最も恐ろしい本としてインターネット上で伝説となっていた、というシロモノの改訂版です。 本当にあった怖い話、ともだちから聞いた怖い話、たくさんあるものですね。私も聞いたことのある‘あやかし’がかなりありました。中でも「合わない人数」の四角い場所の四隅に人を4人配置して・・・と言うお話は、昔ラジオで別バージョンで聞いて怖いなぁ〜と思った記憶があります。私が聞いた設定は幽霊が出るというお寺で真夜中〜と言うものでした。 背筋がひんやりする、本当にあったのかもしれないお話です。
『あやかし通信「怪」』 2002.6.18. 大迫純一 ハルキホラー文庫
今や、空前のぶたぶたさんブーム到来! 矢崎存美さんの‘ぶたぶたシリーズ’は、心温まる物語です。ぬいぐるみのぶたさんが(モンスイユの製品ショコラがモデル)、人間? ・・・これは読んで頂かないと理解不能でしょう。山崎ぶたぶたさんに出会う人はなにか暖かな幸せをもらえるのです。私もどこかでぶたぶたさんに会えないかなぁ。タクシーの運ちゃんがぶたぶたさんだったら延々と夜中を走ってもらいたいなぁ。いろんなことを話しながら。 矢崎存美さんが、ゲリラ撮影をされると言うことで、私も今年岡山に遊びにやってきた某ひろただくんと撮影会をやってみました。これがむちゃくちゃ面白い! 人々の奇異の視線を浴びながらの撮影はもはやカ・イ・カ・ン(古いか)。某矢崎先生もご存知のカメラマンひろただは様々な場所で撮影に励むのでありました。アハハ。私が参加できたのは、岡山編・明治村編・都庁編であります。そして最近では、新しいぶたぶたさんカメラーを発見。日本に広がるぶたぶたの輪っ。 『ぶたぶた』の中で、私が一番好きなお話は、「銀色のプール」。少年が家出してぶたぶたさんのところへ転がり込むのですが、泣けます。よすぎて。 ぬいぐるみが人間!?と言う場面での人々の心の叫びが微笑ましくて笑えます。心が疲れたときに、騙されたと思って読んでみてください。 私の部屋には、元祖ひろただモデルのぶたぶたさんと、かわゆいチビぶたぶたが抱き合って飾られています。
『ぶたぶた』 1998.8. 矢崎存美 廣済堂出版
2002年10月04日(金) |
なつこ、孤島に囚われ。 |
大好きな西澤保彦さんのよくも悪くも様々な反響を受けたであろうこの一冊(笑)。西澤先生が、師匠と慕われている森奈津子さんを実名モデルにして書かれた架空の(当たり前だ)孤島もの! アハハ。 私は、こういう物語は気楽にガハハと楽しめばいいな、と思っています。孤島に囚われた奈津子が、自分のいる島を<百合島>、向かい側の男性の姿が見える島を<アニキ島>と名づけちゃうなんて、お茶目で大好きだけどなぁv 全ての人におすすめとは言いがたい物語でありますが(あぁ、西澤先生ごめんなさい)、気軽に楽しめる奇想天外な孤島密室でございます。
『なつこ、孤島に囚われ。』 2000.1.1. 西澤保彦 詳伝社文庫
2002年は、明野照葉さんとの出会いで幕をあけました。今年一番最初にすごい!と思い(『輪廻』酒蔵に置いています)、ずーっと追いかけています。明野照葉さんと出会い、新しい本仲間が増えたことも嬉しい収穫v この『棲家』は、明野照葉さんの作品では一番怖いホラーかもしれない。あ、明野さんはホラー作家ではなく、上質のホラーも書ける作家さんだと認識しています。家を題材にしたホラーというのは、かなり出尽くしている感がありますが、この『棲家』の家の怖さは変化と変化の原因にあります。怖いですよ。これ。ホラー好きな方にはおすすめの一品ですv
『棲家』 2001.8.18. 明野照葉 ハルキ・ホラー文庫
お姿だけ拝見すると、その作風とのあまりのギャップにますます愛を捧げたくなってしまう作家、それが森奈津子さん。森奈津子さんの作品もさまざまなジャンルがあり、根底に流れるエロスにはしびれます。 このとんでもタイトルは、ルナティックホラー(らしい)。物語のWヒロイン緋紗子と小雪がとてもとても素敵なのですーv 私は、小雪派!森奈津子さんならではのエロスとホラーの物語。槻城ゆう子さんの装画も綺麗で淫靡でよいですのうv 「あんた、死ぬよ」
『あんただけ死なない』 2000.11.18. 森奈津子 ハルキ・ホラー文庫
再読本は、あいた日にちに書き込んでいくことに決定(2002.10.12.朝)
昨夜のチャット(2002.10.11.〜)で、近藤史恵さんの話題になりました。近藤史恵さんは大好きな作家さんですが、捕物帖シリーズが未読であることが判明。それは読まなければv 今泉探偵シリーズ(歌舞伎シリーズもかぶる)も、整体師シリーズも好きですが、一番好きなのがこの『凍える島』です。この作品で近藤史恵さんは、最年少で鮎川哲也賞をお取りになっています。すごーい。 内容は、‘孤島もの’ですね。妖しいムード満載でぞくぞくします。喫茶店を経営するあやめが、常連さんたちと慰安旅行に行きます。そのメンバーにはあやめの愛人とその妻も含まれている。そこで起きる事件。この物語の終わり方で私は、近藤史恵さんのファンになりました。 ちなみに、私がハンドルネームを変えるとしたら、《あやめ》にしたい。勿論この物語からいただきたいのです。あやめ、それは菖蒲そして殺めv 日本脱出したし 皇帝ペンギンも 皇帝ペンギン飼育係りも
『凍える島』 1993.9.1. 近藤史恵 創元推理文庫
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