千羽鶴
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消える…
消える…
人は一人では活きてはゆけぬ 人に自分を映さなくては活きてゆけぬ 自分の姿を 存在を 見つめなくては活きてはゆけぬ
もしも
もしもこの世に姿を映すものが無かったら もしも鏡や硝子や水が 人の姿を映し出さなければ 人は自分の顔を見ることは無い 人は自分を知ることは無い
自分の存在を実感出来なければ 人は活きてはいけぬ
消えていく…
消えていく…
いっそ消えようか…
…消えたく無い…
活きたい…
……怖い…
……消えたく…無い…
風が 止んだ
あれだけ五月蝿かった風が
止んだ
外に飛び出して踊る
踊る
踊る
逃げる
動けないんじゃない
動かないんだ
怖いんだろ?
風が
止んだ
静かな日々
静かな夜
何か分かった
何か無くした
風が
止んだ
ふわりふわり
…止んだ
ぬるい夕暮れ 家路に向かう沢山の足 いつも通りの道 いつもと違う景色 通り過ぎる人 通り過ぎる俺
この道でどれだけ人とすれ違っただろう この道でどれだけ出会いを見過ごしてきただろう
小さな笑い声 静かな電車のホーム 見慣れた黄色の線 見慣れた空の違う顔 隣で煙草を吸う人 隣で煙草を吸う俺
このホームでどれだけの人とすれ違っただろう このホームでどれだけの人を見てきただろう
駅前のラーメン屋の裏で猫が座ってた 過ぎ行く人々を眺める猫を眺めてた 急に君を抱きしめたくなったよ
ホームの隅で煙草を吸いながら お気に入りの唄を口ずさんで 見慣れた空の始めて見るその顔を見て ずっと同じでいられるモノなんて無いんだななんて 思ったりして
変わり続ける今を見送りながら 全てが繋がっているんだって 気付いたりして
僕等は沢山の名前を付けた 俺 君 貴方 沢山のモノに名前を付けた 自動販売機 時刻表 電車 何の為の言葉だろう 気持ち 恋 愛 何の為の名前だろう
太陽も月も昇り沈む 海は寄せては返す 俺も君も何度も繰り返す
時間は常に動いていて 今は常に流れていて 君も俺も変わり続けて
区切りをつける為に 名前を付けた
明日 昨日 今日 今 君 俺 僕 私 貴方
繰り返す事を恐れるから 人は名前を付けたのかもね
僕等はどれだけすれ違ってきただろう 僕等はどれだけ近くにいただろう
時間は常に動いていて 日は昇り海へ沈む 朝が来て夜が来て 俺は君に出会って
全ては繋がっているよ 君も俺も貴方も君も 何処かで繋がっているよ
いつも どこかで
mocco
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