箱の日記
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フヒポ星人は笑わない 悲しまないし怒らない そういうことをきっと知らない
でもフヒポ星人のきれいな羽根をみて わたしたちは立ち止まる なにも知らない彼らをみつけては きょうも 嬉しいのです
ティッシュ
娼婦を好きだと思った。 きょう、街で消費者金融のティッシュを配る女の子が (おそらくそれは、アルバイトなのだろうけれど) 娼婦にみえた。風俗のお店へ行ったこともないけれど、 路地裏で娼婦に話しかけられたことも ないのだけれど。 安っぽい、売り尽くされたような声が、僕の 心を、 打った。
ティッシュを手に握り、街を北へ向かった。 恋人との待ち合わせ。 遅れてはいけない、そう、思った。まだこんな場所。 このままじゃ間に合わない。 急ぎ足で。 ティッシュはつぶれた。 はやく、行かなきゃ。
告白
僕らは、陰のない公園のベンチに座って、 どんなささいなことでも、話題にしなくちゃいけなかった。 子供がつくりあげた砂山だとか、 そこにやっと通ったトンネルのはなしだとか、 刈られたばかりの草むらのにおいだとか。 あとは、 どうしようもない日照りのこと。 そのどれもが、長くは続かないのだし、一度言葉にしてしまったものは それっきり。 汗を拭いて、僕は途方に暮れた。
(きみにはなしたいことなんてほんとうはなにひとつないんだ)
僕らは、午後の一時から、いったい何時まで あのベンチに座っていたんだろう。
その夜、きみに電話する声がふるえて、すごく恥ずかしかったし、 なにより、電話ボックスのなか、見たことのないくらい 大きな蛾が、じっとみつめていることに驚いたんだ。
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