カンラン
←過未→


2011年11月18日(金) 出る三日、ほてる三日、かすける三日

インフルエンザのワクチンを打った左腕が重い。予防接種は、この土地で、もし自分が寝込んだら誰がぴのきの世話をして通園させてくれようかと考え至り、受けることにした。
起き抜けから体調がよろしくなく、どうやら軽く風邪をひいたよう。

昨夜帰宅したつちのこ氏が職場で異動者対象のカウンセリングを受け、先生から私の様子についても話があったという。それをつちのこ氏の口から聞いて、ちょっと張り続けていた気持ちがゆるんだか。ぼーっとして、弱る。ここらでガスを抜けという合図があったのだ、と自分の中で唱える。

夜、久しぶりに電話をくれた友人にもあまり明るい話をすることができず、申し訳なかったな。

掃除機をかけずにワイパーで済ませておこう。
アロマディフューザーでも使ってみようか。
冬用のスリッパを出そう。
ゆったりとしたセーターを着よう。薄くて軽いのを。
そして、温かいチャイを飲もう。しょうがも入れてさ。
疲れたら毛布にくるまったっていい。
そんな風にして過ごしてみる。

今日のタイトルは、石田千の「ぽっぺん」より。


2011年11月17日(木) モーリー、クール

朝のうちから毛布にくるまって映画を観る。昼近くになるとそのまま温かいミルクティーを飲んだり、ピザをむしゃむしゃしながらも観る。
『トイレット』。最近観た映画のなかで一番好きだな。くすっと笑ったと思ったら、ほろりとする。
「欲求に理由を求めるのは無意味だ」
好きなものは好きで。ありのままの自分で。



古本屋で「ミュージック・マガジン」のUAとくるりの特集号を見つけ、思わず購入する。一冊105円で計210円。真剣に読んでみると、少しばかり気が遠のく。それほど音楽に明るくない者にとってはピンとこない文章が多いため。興味ひかれた箇所をつまみ食いする程度でちょうどいい。


2011年11月15日(火) こびとのひと

物事には知りどき、というものがある。不思議に思っていたこと、気になっていたことに関しての真実や理由やときには正解が、ふぁさっと目の前に舞い降りる瞬間がある。これはごほうびだな、と思う。





こちらの幼稚園に転入してはじめて、絵本の読み聞かせを担当する。もともとは読み聞かせグループというのがあって、その人たちが毎回行っていたのだけど、年々メンバーが減っていって、ついには保護者でぐるぐるまわすようになったという経緯があるらしい。

何をどうしたらいいのか勝手が全くわからないので、我が家の愛読絵本『みんなのこびと』を持っていき、全園児の前で声を震わせつつ読む。よその子に読むなんてはじめてなのに、いきなりハードルが高い。

いつも読んでもらっている類の絵本とは一線を画しているからか、開始早々変な歓声が上がる。女の子は、こわい、と言い、男の子は、おもしろい、と言う。女の子でも、男兄弟がいる子は好印象だったりもする。そのあたり、さくっと分かれるところ。
しばらくは、こびとのひと、と呼ばれるであろう。
ひとまず終わってほっとする。

幼稚園が終わってから、ぴのきの友だちのおうちにぞろぞろと向かう。うちよりも海に近いところにあって窓からは大きな橋が見えて、そしてどことなく結婚当初に住んでいた山の上の家を思い出させる感じのおうちだった。

そういえば、徳島に来てから懐かしさに触れることが多々ある。ものだったり、人だったり、景色だったり。
完全アウェーなのだが。


2011年11月14日(月) 七五三詣り

徳島眉山天神社へ七五三詣り。
いっちょうらのお子様スーツを着てぴのきは終始ごきげん。
木工教室の代休となった月曜日、しかも仏滅ということもあり、うちだけかと思ったら、5組ほど。市内では大人気の場所と聞いていたけど、意外とこじんまりとした神社だった。ゆずや瀬戸内寂聴さんの写真を拝見したりもする。
ぴのきのひいたおみくじは、吉。失物は出る、物の間だよ、と読み上げてやると、わかった、わすれないようにこのおみくじをもっておくよ、と言うので結ばず持ち帰る。日に5回はあれがないこれがないと大騒ぎする人なので、今後はいい方に向かうと信じたい。
眉山ロープウェイのすぐそば、裏には山へと続く石段があり、尾道の景色と重なる。お天気にも恵まれ、よいお詣りとなる。

夜、眠る直前になって神社でもらった千歳飴のことを思い出したようで、ひとなめだけさせてー、などと言いながらしぶしぶ布団に入る。
また、明日。


2011年11月13日(日) 高松へ

朝がた、ぴのきの靴をごしごし洗っていたら崩壊へのカウントダウンが始まっていた。子どもの靴って本当にだめになるのが早い。




高松まで出かける。このあたりでは都会である、との噂だけを頼りに向かう。
土地勘ゼロにつき、ひとまず車をデパートの近くに止め、立ち寄ったお店の店員さんからぽろぽろと入手した情報を基に街をぶらぶら歩く。
三越周辺にきれいな商店街がありますよ、でもここからはちょっと離れているから車で行かれた方がいいですよ、と教えてもらうが、歩く。歩いてみると大したことない。見知らぬ土地の街並みにきょろきょろするせいか。徳島の人も目と鼻の先にある場所でも車を使う人が多い。糖尿病患者数全国ナンバーワンとツー。こんな生活習慣が原因のひとつなのだと、つちのこ氏。仕事がら、ちょこちょことした豆知識(?)を教えてくれる。

その後、郊外のショッピングセンターへ場所を移し、ぴのきの靴を買う。普段履きのを一足と、ボアつきのブーツが安くなっていたのでそれもいっしょに。
フードコートで広島風のお好み焼きを食べる。最近少々後ろ向きだった気持ちを立て直す。わがソウルフード。




家に帰ると、郵便受けに友だちからの手紙を見つけて心躍らす。


2011年11月12日(土) にわかーぺんたー

木工教室のため登園。
つちのこ氏率いる我々は、ワゴン車型のボックスを作る。車好きなぴのきのためのつちのこ氏オリジナル。子どもが好きそうな手作り感ぷんぷんの小ぶりなボックスができたが、周りを見れば皆なかなかに本格的。大多数は大小さまざまな棚関係。中には引き出しつきの机とか椅子まで!普段から日曜大工が好きなお父さんがいたら楽しそうだなあなどと思いながら作品を眺める。

どさくさに紛れて個人的に箱をひとつ、作った。ちょうど文庫本が入るぐらいの。引っ越し以来、ずっと本棚を欲しているのだが購入に踏み切れず、哀れ私の本たちはいまだ段ボール箱の中でじっとしている。このまま冬ごもりか。



ヨーガ教室の体験レッスンに申し込む。勢いで。


2011年11月10日(木) 冬支度

スカーフを首にぐるぐる巻いている人に向かって指さしで「どうしたん?おしゃれ?」と言っている人(結構年配、結構大きな声)を発見。これは、まさに仕事をしていた頃におじさんあたりからよくきかれた類のコメントで、懐かしい感じすらする。

「おしゃれ?」との質問には、<私にはそうは見えないけど>という前提がある上で、それっておしゃれなの?ときいているわけであって、答える側も「そうです、これはおしゃれなんです」とは言いにくい、と思う。
人がおしゃれと思っていることが自分にとってのおしゃれかどうか・・・そこは一致させておかねばならぬことなのか・・・どちらの感覚がよりおしゃれなのか白黒はっきりさせるのか、ここで・・・そして周りはそれとなく事の成り行きを固唾をのんで見守っているが・・・などとそばで悶々と物思いにふける。

そうこうしているうちにその質問に対する返しのことばを聞き逃してしまい、これ以上ないぐらいに後悔する。こういうとき、一体どんな言葉を返したら正解なのか。中からネギを取り出せば「おおっ!」と歓声があがるか?





注文していたラグが届く。そろそろフローリングでは寒々しくなり、ホットカーペットカバーとしても使えるものを購入。引っ越しの際、今まで使っていた薄っぺらの敷物も一応処分せずに持ってきたものの、広げてみると思ってた以上に色が褪せてる。結婚前、つきあって間もない頃に買って、つちのこ氏の部屋で使ってたものだもの。無理もない。

今回悩んだ末に買ったものは、花粉やアレルギーにも効果あるというもの(つちのこ氏:花粉、ぴのきと私:ダニ、ハウスダスト)。ちなみに、色は、赤茶系のカカオに惹かれつつも、ベージュに決めた。一時期流行った、お湯でつくる顆粒タイプのカプチーノみたいな色。発泡してる感じ。なかなか部屋になじんでいる、と思う。

ためしにごろりと転がって指で撫でてみたら、ずっとずっと昔のこども部屋のカーペットを思い出した。ベージュと茶の混じったこんな色合いだったような気がする。それよりあとの記憶を押しのけて、そこだけがぴょんと勢いよく飛び出した。

あの頃、家にあったものに不満も何も感じることはなく、ひとつひとつのものが集まったものこそが自分の家だった。親はそれなりに、ああでもないこうでもないと迷ったり、予算的なことで諦めたりすることもありながら選んだんだろうなあ。なんとぼうっとして幸せな存在だったんだろう、子どもの私よ。


2011年11月07日(月) 秋風と陽だまりと

幼稚園のお母さんと携帯の赤外線通信で連絡先の交換をしていたら、ぴのきが近づいてきて、まま、よかったね、おともだちできて、と祝福してくれる。こちらに越してきて、二度、そんなことがあった。彼なりに私のことを心配してくれているらしい。ありがたく感じると同時に、少々恥ずかしくもある。そんな私たち親子の傍らで、相手方のお母さんは、うんうん、よかった、おばちゃんもお友達になれてうれしいんだよ、と照れることもなく言ってくれる。こういう瞬間は子どもがいてこその世界だ。少し、ふんわりしていて、その時ばかりは世の中の悲しいこととか不安なことから切り離されたところに立っている。



もともとDKだったのがLDKに変わり、掃除機をかけるのが億劫になった。自分の感覚としてはちょうど1部屋増えたようで、終わったと思ったら和室が残っている事実にがっかりさせられる。広くなって嬉しいけど、実際のところ現在の私たちの生活は1部屋持て余している状態なのだ。ぴのきがもう少し大きくなって自分の部屋を持つようになるまでは。



腰が痛いため、マッサージクッションが活躍中。
徳島市内に気軽に行ける(値段的にも、雰囲気的にも)マッサージ屋さん、ないかなあ。


2011年11月06日(日) マリオとルイージ

ここのところ、休みといえば雨が降る。

Wiiの無料ダウンロード、とかで、つちのこ氏とぴのきが懐かしのスーパーマリオブラザーズをやっている。画面だけ見ていたら、弟と遊んでいた小学生の頃に戻ったかのよう。今の、この大人のこころを持ってあの頃に帰ったらば、どんなことを思うだろう。どんな風に行動するだろう。などとぼんやり思う。
何か命綱のようなものをざっくと地面に埋め込んだように、遠くへ行ったり、何か新しいことにチャレンジするような人間ではないので、結局何も変わらないかもな。前世は飼い犬だったか。



週末のあいだに手紙を二通書く。


2011年11月01日(火) 自分に恐怖する

夜、燃えカスになってしまいそうなほど激しい焼きもちをやく夢を見る。自分の抱く抑えきれない感情があまりにおそろしく、文字通りの悪夢。
最近は夢を見るにあたって、途中でふと、これは夢だから大丈夫、と思う瞬間が訪れるようになった。何十年か生きてきた知恵か、救いか、はたまたあきらめか。
今回も呪文のように、これは夢これは夢・・・と歯を食いしばり続けた。で、おそらく現実には歯ぎしりしていたのではないかと。危険な目にあったり、何か凶悪なものに追われたりするのも苦しいけど、自分の感情という見えないものも相当こわい。こういうものがきっかけになって身を滅ぼすことだって当然ありうる、と思う。そんな時は、小池さん(お坊さん)の本が頭をよぎる。



実家より小包が届く。ぴのきの洋服だ。母は週に一度、百貨店内にある手芸店で編み物の教室に参加していて、駐車料金の割引サービスを受けるためにちょこっとこどものものを買ってくれることがある。同じ市内で暮らしていた頃はお声が掛かれば喜んでひとつずつ受け取りに行っていたが、これからはそうもいかず、ズボンとトレーナー、2回分をまとめて送ってくれた次第。ありがたく頂戴し、ぴのきとお礼の電話をする。

風邪声で母は、日取りがうまくいけば、冬休みにこちらの住まいをのぞきがてら、父と二人で私とぴのきを迎えに来てくれるという。未知の土地、徳島市を見てみたいらしい。
眉山からのきれいな景色をみせてあげたい。でも多分、不安をもらすだろうなと思う。海抜ほぼゼロ。そして異様に高い川面。以前住んでいた広島市内のアパートにだって、川が近すぎるとか、1階だから心配だとか、なんだかんだと言っていたぐらいだから。ザ・親心。


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