カンラン 覧|←過|未→ |
1ミリ,2ミリ,少しでも遠くへと 両の手を伸ばす夾竹桃の花々 そのうちで今にも花びらがこぼれ出してしまいそうな 一際鮮やかに咲いた夾竹桃のつくる木陰で 待っています 花びらがこぼれそうになったら 受け止めなくてはならないので それが私の仕事なので 気を抜けないのです 近くまで来たなら 一歩一歩を大事に歩いて来てください あなたの踏みしめる砂地と木の葉の音が合図となります それではそのときまで
蝉の寝言を聴き数えながら 布団に入り 眠りにつきます 私のこの感情は 蝉の寝言以上に 理由がなく 役立たずです
自分のまぬけさ加減で予定が狂ってしまったので・・・ 翔ちゃん連れて川まで散歩。 午前中とはいえ,太陽の高くのぼった真夏は じりじりじりじり私たちの体温をこれでもかと言う程上昇させ, 本日2回目の散歩となった翔ちゃんもさすがにばてばて。 あまりの暑さに舌が口に戻らなくなっちゃうんじゃないかと 心配になりました。 ちょうど満潮を迎える時間だったので, 少しの間,木陰で川が海にかわる様子を眺め, 波が最後の小さな緑の孤島に打ち寄せる音を聴いて, 水に入ろうと試みる臆病な翔ちゃんがきっぱり諦めるのを待って, 二人で影を選ぶように道の隅っこを歩いてうちまで帰ってきました。 お昼寝明け,ふと思い立って隣町のレンタル・ビデオ屋さんへ・・・。 思い立ってはみたものの,まだまだあたりは熱気に包まれてる。 勇気をだして,自転車に乗って出かけてみることにしました。 さて,うちには2台の自転車。 ひとつは両親愛用のママチャリ。(カゴ,ライト完備。) もひとつはパン屋さんでもらったおりたたみ自転車。 このおりたたみ自転車,いまだ未使用の品。 小さな車輪が疲れを誘う,という理由で家族は乗ってないんですね。 で,私は自転車より徒歩の人,なので。 ずっと玄関先に置きっぱなしになってます。 で,今日はせっかくだから乗ってみようかと。 タイヤ触ってみると,やっぱりやわらかい。 古着のワンピースと両手を真っ黒黒にしながら 臆病者の自分の不安を解消するべく徹底的にあちこち点検してから 出かけてみました。 家を飛び出したのはよかったんですけれど, やっぱり久しぶりの自転車,なんとなくこわくて 行きの道,約半分ぐらいの距離は押して歩きました。 「あぁ,なんで自転車持って来ちゃったんだろう・・・。」と思いながら。 気持ちにふんぎりつけて,隣町へと架かる橋を渡りきってから 乗ってみました。 こわい!! サドルは小さくて固いわ,ハンドルがやけに遠く感じるわ, そして何より,ハンドルが軽すぎます! うわわわわ・・・とがくがく運転をしながらなんとかお店に到着。 ひょいっと持っていかれないようにフェンスにつないどいて ビデオを吟味しました。 でも,帰りの道は爽快でしたよぉ。 ビデオがたっぷり詰まった袋と私のかばんをハンドルの左右に下げて びゅんびゅん(私にしては。)走ったら気持ちよかった。 今度は少し遠くまでぐんぐんサイクリングしたい,と思ったぐらい。 ただし,重たい荷物はかかせませんが・・・。 まずは『ムーラン・ルージュ!』観て 遅めのしょっぱい夜ご飯を食べてひとここちついたとこです。 いまいま洗面台の鏡見たら,目のまわり真っ黒け。 すんごい心に残る映画!ってわけではないですが, ひとりでじっくり観てるとたいがいの作品で一度は泣いてしまう。 これでこころのバランスとってるんじゃなかろうか,と思います。 誰かと一緒だと素直に観れない不器用者です。
いつも,そう。 私の頭は, 私のからだは, 予告なんてしてくれない。 今朝は踏み切りへと繋がる小道を歩いていて, 蝉がたくさんとまっている木々のそばを通りかかったとき, その羽を懸命にこすり合わせて生み出す みんみんという音に 頭を左右から, ちょうどこめかみあたりをざくざくと刺されるような痛みを感じて, そのけたたましい音以外は聞こえなくなった。 煩いぐらいに頭の中にはつぎつぎとみんみんが 降り注いで溢れ返っているというのに, 何も聴こえない状態。 みんみんにすべての機能を支配されてしまったような感覚。 くらくらした。 こんなとき, よりにもよって, 「いのちってすばらしい。」っていうことばが ぽわっと浮かんでくることがある。 よりにもよって。 小さな頃に見た教育番組だか,CMだかのキャッチ・フレーズのような気がする。 くらくら中,もしくはくらくら回避直後の私は, ぼそっと「くそくらえ。」とつぶやく。 こころの中で。 生きている証は, 時々, あまりにも毒々しく強烈でどぎつく, 目の当たりにした者を飽食の末の消化不良に似た症状に陥らせる。 物事のひとつひとつの出会いは, 互いの波長がその瞬間, どんな状態にあるかで左右される。 今朝の私とみんみんの波長はあまりにも食い違ってたんだろう。 あー。 暑さのせいで心までもが溶け出し,飴のようにかたちをなくしてる。
もぅっとする熱気の中州の電停で 頭の中ももぅっとなりかけた頃, 大きなかばんを下げて横断歩道から渡ってきた旅の人。 「すいません。」ということばがまず耳の中に流れてきて, その人のすがたが目の中に映りこんできてどんどん大きくなり, ようやく「あらあら。」と頭が動き始めた。 宮島に行くというその旅の人は路面電車には不慣れなようで, しきりに「電車って,次から次にたくさん来るんですね。」と うれしそうに大きく見開いた目で 電車の乗っかったレールを右へ左へ追っていて, 変な感じだけど,私はその人の様子を目で追ってる方が楽しかった。 そうそう。 私にとってはすっかり通勤手段になってる電車だけど, 車やバスやトラック,タクシー,バイクなんかと並んで道路を走る姿は 旅の人の心を掴んじゃうんだろう。 前にも,「どうしても一駅だけでも乗りたくて。」と 頭を掻き掻き子供の手をひいて興奮気味の旅の人に出会ったことがあった。 旅の人の目には,この街はどんなふうにうつったんだろう。 そんなことを思いながら私も電車に揺られていると, 原爆ドームの暗がりがいつもよりも暗く深く, 十日市のカーブがいつもよりも振りが大きく, 西広島のホームがいつもより遊園地のジェットコースター乗り場ライクで, 市外線の線路沿いに干されっぱなしの夕方の洗濯物はいつもより白く感じた。
生息し続けてるえんぴつだこ 今はペンだこ 中には何が入ってるんだろう ものを書くとき 変な力の入れ方します めちゃくちゃ力入れる割に筆圧はそう高くもなく お習字の先生から与えられたエンピツは6B 今はノン・カーボンの3枚複写の用紙を使うことが多くて 無意識にしっかりしっかり力を入れて書くようで 数時間ペンを握っていると 中指にペンの曲線にぴったりのくぼみができるぐらい 痛い痛い 痛みをごまかそうとあーでもないこーでもないと 微妙に握り方を変えるため ときにものすごく変なペンの持ち方をしていることに 自分でびっくりすることもある どこかにふんわりやさしいボールペンないでしょうか
たくさんたくさん咲いているよ まだまだ背丈も小さくて 花も私のこぶしぐらい 朝にはたくさんの水を飲む ごくごくごくごく聴こえるような気さえする プランターじゃなくて 大地に根を張るひまわりの群れを 私の目が黄色に染まってしまうぐらいのひまわりの群れを いつか見てみたいと思う あの絵葉書みたいな
人がどれだけしあわせなのかは どれだけ思いだし笑いをするかでわかるんだって じゃあ私はとってもしあわせな人だ 今日も何度も思いだし笑い,した
そして月曜日もまた健康診断に出かける。 VDT作業従事者の検査で、 機械が動いてくれなかったから。 もう一回出向くことになった。 日常と違う流れで一日を始められるのが 案外嬉しかったりする。 それにしてもJRの通勤ラッシュも 相当だということを実感。 駅という建物がある分、 到着してからむっとする空気の中、 人で溢れる階段を登り降りしていると、 気持ち悪かった。
お姉さんは両端を同時に引っ張っていて それじゃだめだろうと思っていたら ほんとにだめで 次にお姉さんは 真ん中のこぶの所からくずしていこうとして 長くのばした爪がぴきぴきいっていたので 横から手をのばして 片っぽの端だけをするっと引っ張ってみた はらりとほどけたちょうちょを見たお姉さんは ひどくびっくりしていた まるで私が手品でも披露したかのように びっくりしたお姉さんの顔を見て まつげがきれいだなと思った。
うちの家の場合, 気恥ずかしくてダイニング・キッチンなんてことば使えないんですけど, とにかくその部屋の 天井に取り付けられた電気のひもがぶっちり切れてしまいました。 ぼろぼろでそろそろあぶないなぁと思ってた矢先のことでした。 で,お父さんがホームセンターだかスーパーだかで買ってきてくれました。 「これしかなかった・・・。」と 手のひらに乗っかっていたもの。 それは, 小さい子がよろこびそうなキャラクター約2名がポイントとしてついてる 黄色いひも・・・。 子供のいない家の しかもキッチンに ぶらさげるにしてはあまりにもかなしすぎます。 とは言うものの,ひっぱるひもがないままでは不便なので, 取り付けてみました。 高いところにねこちゃん。 電気をつけたり消したりするときにはわんちゃん(?)を引っ張る具合です。 ちなみにもうちょっと状況を詳しく説明すると, うちの電気,カバー取ってるんです。 ぼわぁっと暗いから, 蛍光灯や配線,その他もろもろがまるはだかの状態にしてあります。 そこからぶら下がる例のひも・・・。 しばらく沈みそうです。
開け放したカーテン 網戸越しに雨音を聴ながら トタン屋根をたたく雨音を聴きながら 草にはねる雨音を聴きながら ひんやり流れ込む空気をほっぺたに心地良く感じて ほわっと眠りにおちていく瞬間 お風呂あがりの熱い足の裏と 冷え始めた耳たぶの ちょうど真ん中あたりで 今日の寝場所を探す私の習慣
街はすっかりバーゲン一色ですね。
かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって かまってかまってかまってかまってかまって 翔ちゃんから出てくる電波みたいな空気の震動 おとくいのやつ 喋るでもなく 音をたてるでもなく ただひたすらに からだ全体でうったえる ときにちょっとなみだ目 そういえば私はこんなふうに 思いっきり何かをお願いしたことがないなぁと思う あったとしたらいつのことだろう 小さな子がおもちゃ売り場でばたばたばたばたするのが 人間の思いっきりお願いの最後かも とそんなことを考えたら デパートに行きたくなった 観察しに。
手がブレーキをかけた。 いつもよく私が好んで撮るような写真の中に 数枚だけ雰囲気の違う写真。 いつのことだったかはっきり思い出せないけれど, 着てる洋服からして, 去年の夏がうっすらとあたりに漂い残ってる頃だったんだろうと思う。 私の髪もまだ長い。 あの時期のことはあんまり記憶に残ってない。 それは多分,ほんとうに忘れてしまったわけではなくて, 上から新しい日常のこまごまとしたものを被せに被せただけで, きっと心を決めてしまえば, 何層にも積み重ねたものをどかしさえすれば, あの頃のちっぽけな私がきっと膝を抱えて丸まってるのがあらわになるんだろう。 引っ張り出さないようにしようと決めてること。 見ないでおこうと決めてること。 何も見ていない目で 車窓から流れる景色を眺めつついつもと変わらないように生活して, 何も聞いていない耳に ピアスをもいっこ増やして, 何にも触れたがらない手のひらを ぐうにして握り締めて, 何も喋りたがらない口で とりあえずの相槌をうって大丈夫だからと言って, 何もしたがらない手で 荷物をまとめた。 どこまで行くのか, どれぐらい行くのか, 分からなくなるほど なんでもかんでも鞄に詰め込もうとして, 出発の朝になっても荷物はまとまらなかった。 自分の正直な気持ち, 面倒くさかった。 家を出るまで,駅に着くまで,新幹線に乗るまで,降りるまで, どこまでいっても面倒だった。 以前から計画していたこの旅は, 人を祝福するためのものだった。 だから,私がこんな状態だということが, 人のことを考える余裕をなくしてることが, とても申し訳なかった。 けれど,表だけはせめて普通にしとこう,普通でありたい。 (けど,普通ってなんだろう?) そうじゃなきゃ,二度と笑えないような気がしていた。 キャンセルを言い出さないまま 気がつけば当日になっていた,という旅。 ただのうそつきかも知れないけど, そんなふうにして普通に楽しい休日を過ごすフリをしてみようと思った。 自分を取り戻すために 自分を取り繕うためでも 普通に楽しげな休日を過ごしてみたいと思った。 旅の間, 撮った写真はたったの2枚だけで, 写真の中, 私の顔を見て, 時間てすごいなと思った。 あんな顔して写ってる。 それから・・・ そう言えば, 「普通に楽しげな」写真を1枚も撮れてなかったことに気づいた。
大きな体のこっち側にはどんどんどんどん成長を続ける住宅地が 夜には銀紙金紙に包まれたチョコレートのように びっしりと並ぶ ひとつひとつの家の明かり あそこからは海に浮かぶ島だって見えるらしい 時には波間を行き交う船だって 大きな体のむこう側にはどんな風景が広がっているんだろう 私の好きだった先生はあっちの方に行ったんだって 随分前のことになるけど お母さんが言って指差した あの大きな大きな山のむこう側
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