2億8万年後に、日本列島がなくなるというニュースに触れた。
「私は結局誰にも覚えつづけてもらえず、死骸を埋めるであろう日本国土もなくなってしまう」
と想う。
何気なく、ふーん、とニュースを流せない。
己の生きた証をなんとかして残したい。
けれど、その出口はふさがれている。
これが地球の地盤が動く、という自然の摂理だ、
これが人間という個性のあり方、という哲学の原理だ、
これがお前の努力が足りない、という道徳の視点だ、
と切り捨てることなどできやしない。
引き鶴。 冬に到来して春にシベリアに帰っていく鶴をいう。
いつか、私は肉体の老化などによって、引き鶴のように、引きよせられるであろう。
永劫回帰しない、その暗闇に。
死にゆくもの
寝起きの屁がくさい
寝起きの口臭は自分でも嫌になるほどだ
寝起きの股がぬめり過ぎてベトベト、べとべと
二十代までは決してなかった体の変化
自然な体の変化の先に、死があるはボンヤリとしている
死にゆくもの
屁がくさくて逃げ惑う同居人がいる
くさい屁を、がはは、と笑い飛ばすのは独りではないから
うわぁ〜と逃げ惑う声を聴いて、
体の変化を、やっと受け入れられるようになった