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「 前しかない 前しかない 後ろを振り向いても前しかない 」
2017年07月15日(土)


 切り立つ断崖の斜面を、修行僧が飛び降りていく

 片足の幅ほど、わずかに飛び出した細かい岩に落下するように飛び降りていくのだ

 山道から、おもむろに、降りていく


 私は飛び降りる修行僧を見て、狂気に染まり絶叫をする

 修行僧は、同じ表情をして、平坦な道を歩くような、無表情で降りていく

 
 ある修行僧が岩を踏み外し、断崖の下にたたきつけられ、血肉が散乱した

 後から降りてきた、修行僧はそれを見て、軽く一礼をして、そのまま歩き出した


 「前しかない 前しかない」

 私の心の中に、声が宿った

 「前しかない 前しかない」

 「後ろを向いても前しかない 私には前しかない 後ろは決して見えない

 私の命は前しかない 後ろは決して戻れない

 ともに苦しい修行を経た仲間であるからこそ、一礼に全身全霊を込めて、そして前に進む

 前しかない 前しかない」


 断崖を降り、血肉の散乱した姿に絶叫し、滂沱(ぼうだ:雨のように涙が出る様)の涙を流した私は、

 修行僧の無表情になっていた

 「前しかない 前しかない」

 今度は私の声で、唱えた

ーーーーーーーーー

 これが悟りなのか、と気が付くやいなや、目が覚めた。

 目が覚めると、息を激しく吸い、息を激しく吐き出していた

 徐々に呼吸が落ち落ち着いていった


 昨晩、床にはいる時、

 「今日の一日は、生きるに値したのだろうか いつか私の命は尽きる。その絶望を抱えながら、眠るのだろか」

 という気持ちをことばにした

 今、この瞬間も、前しかない、のである

「 階段を上がって、すべてを捨てて 」
2017年07月01日(土)



 階段を上っている、ふわっとした感覚

 その感覚が、「すべてを捨てて、ここから抜け出そう」ということばを生み出す

 水中からプールサイドに上がるような感覚

 家も人付き合いも仕事もパソコンの中のデータも、もちろん家族もすべて


 深夜に寝付けなくて、寝る場所をかえようと階段を上がっているだけだったのに

 寝苦しい、だけ

 たったそれだけで、「すべてを捨てて」


 今日は打ち消した

 クーラーでドライを入れたから

 でも、明日、打ち消すものはあるのだろうか

 
 たったそれだけ

 でも、命のたったそれだけのもの

 存在者が狂おしいほど軽々しいそれだけのもの

 軽々しさから目を背けることだけは、「すべてを捨てて」に入れられない


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