朝食後のトイレを出ようとする
扉の外の子供達のはしゃぐ声、声、声
会話になっていない世界が広がっている
「さあて、また義務を果たしにいくか」
と想うが良い
「また、一緒に居られる有り難いなぁ」
と想うが良い
「孤独な死にゆく私の不安を振り払う装置へ入ろうか」
と想うが良い
どの想いでも選べる、という自由だけは与えられているのだから。
子規が血を吐くゆえに、彼に同情し、彼に憐憫の情を抱く輩は多い
けれど、同じ死すべき存在(Mortis)の此方方と違いが何程であろうか
同情と憐憫との情は、短命ゆえか、激痛ゆえか
将又真理の忘却ゆえか
ソクラテス(Socrates)が再興を願ったロゴス(Logos)とノモス(Nomos)の緊張を放擲したゆえか
ゆえに、吾等に足りぬのは、短命の焦燥と病魔の激痛への想像になろう
知なきものの出発は皮肉(ironia)ではなく、時空間を充満する程の想像(imaginatio)になろう
付記:憐憫(れんびん)、此方方(こなたざま)、将又(はたまた)