笑顔、そう笑顔だけだった
求めていたのは
恋だけだった
金銭、そう金銭だけだった
求めていたのは
安定だけだった
スパリ、と変わる女性の好み
女は弱し母強し
ではなく、乙女は脆く女はしたたかで母は盲目
つまりね、あたしゃあ、女に振られたんでござすよ
それが悔しいだけですよ こんちくしょう
比較すれば地獄へいっちまう
比較せずば天国へいっちまう
数千年の変わらぬ真理じゃあございませんか
給与と年齢に加えて、いまじゃあ労働時間に、保険価値、資産に身長
他人様と数字で比較されちまう
ご先祖様への感謝の世界もどこへやら
あたしゃ独りになっちまう
世界の流れが止められないのなら
いっそこの身を修羅道へ 投げ出しちまうのが賢いかしら
いやんなるじゃあございませんか
あたしゃあ望まれて、生まれてきたんじゃなかったんですかねぇ
肉体は私のものではない
私がいくら寝たくなくても、睡眠を要求し最後には強要する
私がいくら食べたくなくても、他の命の犠牲を強いるし、果ては戦争になる
服を着たくなくても、異性を無視したくても、名誉を捨てたくても
そんな当たり前のこと
だけれど大切なこと
肉体は私のものではない
だから労ってあげなければならない
適度に運動をして肉体を喜ばせ、栄養を考えて嬉しがらせ、要求されるままに仮眠睡眠を与える
何時かはこの借り物の肉体が崩壊する
そして私もいなくなる
そんな当たり前のこと
だけれど大切なこと
後50年もあるかと思ったけれど、肉体の欲求を満たす時間を差し引けば
もう何年あるのだろうか
僕は何度も何度もある言葉を飲み込む
「どうしてこんなに駄目なんだろう」
「どうしてこんなに駄目なんだろう」
声を出すことさえ恐ろしい言葉を胸の内に
闇夜の光で増殖してしまう言葉を
JAZZを聞くとサーっと空気中に散乱していく
朝日を浴びるとポタッと氷解していく
落葉を観るとスーッとしていく
僕は芸術を愛しているんじゃない
僕は芸術を愛してなんかいない
注記 「落葉」は「観る」を受けるので、観賞の意味となる。菱田春草の「落葉」を指す。ただ、前文の自然物「朝日」とも対比。「落葉」は日の光のそぎ方にすがりつく価値があるように想われるので、前文に「朝日」を。
肉体の滓と記憶の残滓のパウンドケーキ
ゲーテ的なもの、という社会のレッテルが貼られた
多くの人に理解され、輪郭を押し付けられ、高値で売れそうだ
思わず微笑んで、蒸し暑い夕暮れ
午後の遅いお菓子のように、モフモフとしている内に うっぱらってしまおう
滝のような汗の後の風呂上り
しばしの休息
滝のような問の前の布団の上
しばしの休息
ザワメク家族の雑音
サザメク義務の体温
サワメク肉体の会話
しばしの休息
深夜の海中、息苦しくもないような
しばしの休息
見上げれば、ただゆらめく満月のような