人間は愚かで汚くて、そして他人を哀しくさせる
だから、人は音楽を必要とするし、絵画や思想や文学を必要とするのだ。
全く人は未完成
だから神も味わえない感情があるのだ
そうやって自分を励ます
本当に君に逢いたいと思っていた。
心の底から君に逢いたくて仕方がなかったんだ。
逢ってみて益々好きになった。
側にいて欲しい、君にだけ。
君にだけ、側にいて欲しい。
君の側を一瞬でも離れると思うと寂しくて寂しくて、君を見つめて続けるよ。
会えて良かった、側に入れて良かった、大好きさ、愛しているよ
君を、そう君に属する性質を、愛しているよ
本当に君が好きか?ってそりゃぁ〜好きさ、大好きさ、愛しているよ
でもね、それは君じゃなくても良いんじゃないかな
君と同じ属性を持つ人だったら誰でも
だから、他に同じ属性でもっと強い性質を持った人がくれば僕はそっちへ行くだろうね
え? どうしてかって?
そりゃ〜自分でも、君が好きなのか、君の属性が好きなのか区別出来ないからさ
だから不安で不安で、多くの人に共通する属性、っていう風に考えるんだよ
不安がなければ異性も伴侶もいらないからね
けどね、1つ加えておくよ
君が好きなのか、君の属性が好きなのか分からないように、僕も僕が好きなのか、僕の属性が好いているのか良く分からないんだよ
肉体が崩れていき、精神が腐敗していく
そんな錯覚に苛(さいな)まれる
あの人は役割を持てば楽になれるよ、と囁(ささや)いた
それは性的関係における役割だったけれど確かに私が錯覚に陥るのを繋ぎ止めた
この人は役割を持てば苦しく荒れるよ、と怒鳴った
それは金銭関係における役割だったけれど確かに私が錯覚に陥るのを繋ぎ止めた
美しい音楽は、爽快な運動は、深遠な読書は、一時的に忘れさせてくれるけれど
私は私自身を追い求める罠に何時の間にか嵌(はま)っていたらしい
探求と追求が逃避と忌諱(きき)に
それでも此処に留まろうか、そんな風にも感じている
本当は弱虫だから、頑張っちゃうんだよね
本当は強いんだから、大人しくお淑やかなにって言うんだよね
そんな訳知り顔の髭面(ひげづら)が、一番弱虫だった
風邪になった時の、1歳の赤ちゃんが甘えるような声だしちゃって
普段はあんなに尊敬されて世代を問わず愛されているのに
あの、「うう〜〜〜んん」なんていう甘い甘い声
恋人の腰に手を回し耳元で囁(ささや)く甘い声よりも
愛おしい人の布団で手をひょっこりだして囁く甘声の方が
どうしてこんな風に出来ているのだろう
美しい彼女を永遠に愛したい、というのに
どうしてこんな風に出来ているのだろう
祖霊の集まる美しい富士山のようになりたい、というのに
どうして立ち止まり続けられない、どうして得られる美には限界がある
そんな風に作られているのだろう
どうして目の前にあり、考えて得られるものなのに、どうして得られる心身には限界がある
そんな風に作られているのだろう
観ることを、冷徹な論理で私の個体性を切り裂いて観ることを、喜怒哀楽や幻想に基づいた希望的観測や日々の些細な営みで止めてしまえば、もう私は生きている価値など一切ない
それは生きているのではない、肉体が死んでいないだけ
かといって、冷徹な論理の行き着く天上では私の個体性などバラバラに切り刻まれて、組織液1ccさえも、いつも噛む右手中指のささくれさえも、誰もが加齢で気にしだす横脇の脂肪細胞のたった1つさえも、残れないのだ
それは死んでいるのではない、個体が生きていないだけ
ああ
嗚呼
異郷の祈りのポーズになっていた、両手を組み支えきれないような頭を押し付ける
この両肩から生えた冷徹な論理という白い天使の翼
這いつくばったドロドロの地上から、一気に透明の透き通る青へと加速する肉体の運動エネルギーを何度ぶつけても突き破れない
厚いのか薄いのかさえ分からない透明な天上の壁
この先は、可知領域外ということなんですか この先はこの肉体では、この個別性では決して抜けられない壁なのですか
ああ、またも空気が壁などないように自由に往来している
もう祈りません その壁はとっくに下にありました
もう感情の高ぶりで超えられない壁も、名誉学歴地位の壁も、装飾美食の壁も、孤独寂しさの壁さえも超えてきたというのに
私の肉体のコントロールさえ瞬間的に消せるようになったというのに、正直や道徳などのちっぽけな社会善、政治的無能ささえ克服し、ゾーンの状態でしか超えられい壁さえ、安直な自殺願望の、勇気や明るさの、悪魔度の壁さえも
あと何が必要なのですか、あと何が足りないのですか
この意識さえ消せるようになったというのに
冷徹の論理を研ぎ澄ましていけば行くほど超えられないと分かるようになるその壁を
この個体性は後数十年です
そしてそれでしか私はないのです
また天使の翼の力は尽きてベチャリとドロリと地上へ落下して叩きつけられるのでしょう
下降する時の重力加速度だけが、上昇する時の翼の上昇力による加速度だけが、たった一つの、残ったたった1つの私の、私の確信です
また、落下して悔しがりましょう。また落下して日々の雑務をこなしましょう。また落下して孤独の寂しさ、喜怒哀楽、飽食名誉、娯楽のために生きましょう
ああ、生きてるって楽しいったらありゃしないんだから
ああ、生きてるって苦しいったらありゃしないんだから
ああ、生きてるって悲しいったらありゃしないんだから
ああ、生きてるって。。。
注記:原題は「 天上の透明な壁 」です。