ものかき部

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「 ラブレター�供 �
2004年07月17日(土)



 黒い大皿に乗せられたパンケーキのように、熱帯夜に揺らいでいる食べかけの地球の衛星
 鈴虫が五重奏を奏でたくなるような優艶さと絶世の美女に例えられる白磁の肌をさらす悠遠な望月

 私と貴方が産み出す潮に足をさらし、貴方に奥底の心(うら)をさらわれています
 満ち満ちている貴方の遠心力を恨(うら)めしく、求心力の誘起を願っております
 
 幾ら貴方が月のように遠くとも、幾ら2人の接近が現世の破滅を突きつけようとも、
 幾ら心細(うらぐわ)しい姿が朽ち果てるだけだとしても
 うらうら、勇往に晴れ晴れとしております


 
注記:「奏(かな)でる」「優艶:しとやかで美しい・こと。女性に使う形容」「悠遠:時間的・空間的にはるかに遠い・こと」「望月:� ̄⇔餔豸淨�の夜の満月��特に陰暦八月十五日の中秋の月。��また満月のような見事なさま。」「遠心力:円運動する座標系に現れるみかけの力(慣性力)で、回転の中心から遠ざかる向きに働く。対義語は「求心力」と「向心力」」 「求心力:質点が円運動をするとき、質点に働く力。円の中心に向かう。」「心細(うらぐわ)し:心にしみて美しい。」「うらうら:�‖斥曚�明るくのどかに照るさま。�⊃瓦�穏やかでのどかなさま。」「勇往(ゆうおう):勇んで行くこと。恐れずためらわず進んで行くこと。」

執筆者:藤崎 道雪(校正H16.7.31)

「 シースノーの現世性 」
2004年07月16日(金)



 悲しいことがあるね。ああ、あるね、悲しいこと。
 嬉しいことがあるね。ああ、あるね、嬉しいこと。
 辛いことがあったんだ。苦しいことがあったんだ。
 理不尽なことに遭ったんだ。身を引き裂かれる思いだったんだ。

 垂れ流されていく感情。
 揺蕩(うたゆた)う感情の波に洗われて往くのだろう。
 集積の無い海上の小船は何時の日か自由端に辿り着くのだろうか。
 それとも肉体に穴が、それとも感情に転覆が、それとも不慮の餓死が、それとも慮外の出来事がやってくるのを待たずとも待つのか。
 
 海中に飛び込んで嵐を避けようとすれば、勲章としての珊瑚、莫大な魚群、浮力の生み出す爽快感の裏に、ゴルゴンのステノの魅惑が隠されている。
 遊泳の快楽すら、もたらした浮力が体内の水分と血流を圧迫してくる。
 さらに嵐を避けて潜れば、魯陽の説得が、拘尸那城の永眠が、ゴルゴダの信仰が、バアーシー海峡の義憤が待ち構えては誘ってくる。
 やっと観えてくるのは、最も弱きもの達のシースノーだ。
 民衆に肯定されなければ生き残れない依存体質を持たざるをえない宗教の超越、具体的実験に浸食され信仰としてしか生き残れない哲学の限界、崇高大義の裏に隠された集団切捨て作業を行う政治の此岸、可知の限界が方法と対象の不可分によって規定される知識そのものの涅槃が、死骸たちの無彩色と眼前に現れる。
 2,3秒後には次々と全身を、靄(もや)のようにゆっくりとそして確実に囲み取り巻いていく。
 
 また、荒れ狂う波の上に酸素を取り入れなければ、靄に包み込まれてシースノーの1つの塵になってしまう。
 此処に住み着くことは此岸の肉体では無理なんだね。
 今世だけでなく後世でも来世でも叶えられないんだね。
 現世の矛盾や量子のような確率的存在者であったとしても、不可能なのはありありとしている。
 知識と智恵の加速性が浮力を切り裂いて到達した今今。
 その彼らが、形式主義を放棄しようという形式主義を構築させようとする。
 見事なシースノーの2重性という現世性によって、海中へ引き摺りまわされる。


注記:敢えて注は省きます。

執筆者:藤崎 道雪

「 副調色 」
2004年07月15日(木)




 貴方の前では、「いい女でいよう」と思っていたのに。
 何で今日のデートで「生理現象」のことを口にしてしまったんでしょう。

 最近、私のやりたい事が揺らいで来ている。前はあんなにも確固としていて、付き合っていた彼氏でも触ることすら出来なかった私のやりたい事。それが本当に私の中心に座っているとは感じられなくなってきました。貴方に軽蔑されるのが恐くて、恐くてしょうがない。今まで見たことがないけれど、どうしたら軽蔑された目で見られないか、というのを基準に物事を考えてしまいます。ますます自分のしたいことが分からなくなっていく。貴方は「自分のやりたい事を優先してね。多少会えなくなってもしょうがないし、やりたい事をやっている方が格好良いから、ずっと好きでいられると思う」と言ってくれました。最初は、そのお手軽な言葉が気に入ったのに、今はもう逆説に聞こえる程、私の心を締め付けます。私は貴方に軽蔑されないこと、そのことが心の中心に来ていて、だからこそ軽蔑されそうだ、と感じてしまう。貴方に寄り添うほど、やりたい事が揺らいでしまうからです。

 それだけじゃなくて、なんで今日はポロリと「生理現象」を言ってしまったのだろう。ああ、恥ずかしい。
 今日だけリセットしたい。
 今日のデートは無かった事にしたい、本当に。

 
 そんな自分の我儘(わがまま)な思いは貴方に伝わってしまうんでしょうか。
 そんな自分の心の貧しさは貴方に伝わってしまうんでしょうか。
 貴方のゆったりとした暖かい心は、私を射抜いてしまうんでしょうか。

 右往左往させられるから憎たらしくて、それだから大好きで、益々貴方に寄り添っていたくて。ずーっと寄り添っていられれば、とばっかり考えてしまう。もうどうしたら良いのか分からない。だから、貴方の側を祈って寝る事にしますね。今日は本当にごめんなさい。次にデート出来るのを楽しみにしています。おやすみなさい。


注記:昔の題は「貴方の前で(女性形)」。「副調色」は全体の25%を占める色を指す。

執筆者:藤崎 道雪

「 灼熱の汗 」
2004年07月04日(日)



 無限に近い徒労。
 膨大すぎるほどの無駄と、拡大し続ける無我。
 種の存続のための個体死、けれど種の存続理由が与えられないからだ。
 いや、種の存続理由を知り得ないからこそ無限に近い徒労が繰り返す。

 灼熱の炎天下、タオルで顔の汗を拭(ぬぐ)うようなものだ。
 拭ってもいいし拭わなくてもいい、直ぐに乾いてしまうのだから。何時まで続くか、何時までも続き、何時でも拭(ふ)けば一瞬で一時的に消え去るのだから。
 面倒くさければ体の感覚に任せっぱなしても良いし、自我に従って拭いても良い。
 物理的な心身が脅かされるわけでもないし、3ヶ月もすれば忘れられる行為だ。

 私たちの個体も種に比べれば、種の存在理由から眺めれば、灼熱の炎天下にタオルで汗を拭うようなものだ。
 嗚呼、あたいの肉体が老いていくよ。
 嗚呼、僕の心が病んでいくよ。
 嗚呼、私の全てがいつの間にか蒸発していくよ。
 嗚呼、原子の集まりがまた原子の集まりに置き換えられるだけなんだよ。
 人間全てが、人間の歴史が、人間の未来全てが全てが。
 真夏の湿度の中へと。

 愛憎?ああ。
 名誉? 金銭? 地位? 肌の色? 学歴? 知識? 智恵? 平和?? 戦争とは? 社会主義 民主制? 
 ああ、全てが必要だね。
 ああそうさ、音楽を混ぜても良い。芸術も文学も思想も自然科学も歴史だって何だってござれだ。製品だって技術みたいな即物的なものだって、進歩や怠惰、高尚という概念でも形而上学全体だって何だって良いんだ。
 あぜ道の上でかく汗の中にいるんだから必要なんだろうさ。膨大すぎるほどの無駄と、拡大し続ける無我としてね。
 無限に近い徒労。
 
 汗。ああ。
 汗 嗚呼

執筆者:藤崎 道雪

「 汗のオーラ 」
2004年07月03日(土)



 眉毛の真中から、ほとり、と落ちる涙滴から始まる。

 髪の毛から、馬のように出た眉の中央までの骨張(ほねば)りを伝い、汗が集まる。汗は眼球の黒い外側を撫でるようにして、落ちていく。自然に視界は狭くなっていく。次に耳の複雑な地形が汗を集める。耳口を丁度、栓をするように類滴が被さり落ちていく。聴界も狭まっていくのだ。気づくと襟足(えりあし)から腕全体までが、汗浸(あせびた)しになっている。タオルで拭けども拭けども、湯水のように湧き出してくる。

 次第に頬は紅潮し、胸から下だけが赤々と蠢(うごめ)いていく。肉体は無意識反応のように、条件反射をしていく。せめて考えられるのは1つくらいだ。「足を動かせ」とか「負けたくない」と思うのが精々で、絶対的な存在者の前で己の無力さに打ちひしがれているかのようだ。
 ぬるり、とした汗に取り囲まれて小さく収縮して、鼻の後ろにいすわる冷静さが汗に梗塞(こうそく)されて、中で鬱々と爆発した肉体を眺めている。新芽のようにヨチヨチとして何も出来ないけれど、その冷静は肉体の煉動と思い通りに行かない世界の2つを、ただ、観ている。

 汗のオーロラに遮断されて何も出来ずに、私はいた。
 

執筆者:藤崎 道雪

「 融通無碍�供 �
2004年07月02日(金)



(夏の朱色の入道雲を見上げながら、女は土手へと歩いていく。女の心の中の声)

「私の誘いを断った男は、だからこそ私の心の底を暴いていった男。そういう本物は中々いないな。」
「相談だって、理屈をこねるだけだし、あの男はどうでも良さそうにきちんと聞いていたっけ」
「その方が落ち着いたし、心が穏やかになった」
「今、私は男を振ったけれど、それでもあの人がいてくれるって感じで最後の安全パイは持ってるって感じ」
「だから私には苦しみだけになる、ってことが無くなったんだった。それだけで十分だと思ってたのに」
「あの人に抱きつかなくても良いけれど、抱きつきたい」
「そういう欲がある」
「「欲は自分で追い込まなければ苦しくならないけど、性(さが)は苦しむけれど預けることは出来る」ってあの男は言っていた」
「あの男は、今、天国でも地獄でも外国の煉獄でも黄泉の国でも、どこに居てもいいんだ」
「必ず逢えるから」
「ああ、有り難うね」
「だから私は生きて、欲に惑わされよ〜♪ぅっと♪♪」
「また帰ってあの坊主の子を産もうかしら。何だか楽な生活が出来そうだもんね〜ww 」

(振り返る女 見つめていた男)

執筆者:藤崎 道雪

「 融通無碍 」
2004年07月01日(木)



(ある寺で僧による仏陀についての話が終わった後。女が堂の後ろへ消える僧へ質問に行く場面)

女「お話では仏は天国にいない、って言っていましたけど、お母さんはいる、って言ってましたよ。」
僧「今日、お話したようにやはり、仏は天国にいるのではないです。何故なら楽しいことも、また苦しみと同じですから。」
女「苦しみと楽しみが一緒ってのは解らないけれど、じゃあ、何故普通のお坊さんは、お墓を立てるの? 何故天国に行けるみたいのなことをいうのかしら?」
僧「それは1つの方便でしょう。なぜ・・」
女「方便って難しいわ。もっと簡単に言ってよ!」
僧「あ、そうでしたね。判りやすく人それぞれに合わせたんですよ。それが信じられたら次のことも言うんです。」
女「ああ、服と同じね。服を脱いだら下着って具合に誘っていくのと」
僧「まあ、そういう例えもありますね」
女「でも、そういうのってずるくない? ずるいよ。何か大切なことが2つもあるんだもん」
僧「社会が求めるものと、理屈の上で正しいことは違うんです。その違いを埋めるのは本当に難しいんです。」
女「さっき言っていた、「社会的要求と論理的要求が違う」って話?」
僧「そうそう。その通りですよ。凄いですね。」
女「キャ〜♪」
(僧の首に嬉しがって両手で抱きつく)

女「(* ̄(     )チュウウウウゥゥ〜」
僧「ぅ・・・ぅぅぉぅ・・・・・」

・・・(半時後)・・・
僧「良かったですか??久しぶりだっ・・・」
女「やっぱり、貴方じゃないわ・・・」
(女は視線を落す)
僧「ぇ??」
女「やっぱり貴方じゃないわ、って言ったの」
僧「どういう意味ですか?」
女「貴方は自分の言ったことと行動が違うもの。
 私と交わって宗教みたいなちっぽけな大衆に支持されないと続いていかない仏教を信じているもの。
 人間は交わって続いてきたんだもの。
 貴方は宗教よりも人間を今取ったのよ。それで良いのよ、貴方はね。」
僧「・・・1本取られましたね、全く」
女「そういう所も全然違う!! あの人みたいにさっき、みんなの前で話していた時は自信に満ちて格好良かったわ。
女「あの人は私の誘いを無碍(むげ)もなく断ったわ。」
僧「あの人って? 無碍とどう関係が??」
女「あははははは・・・・」
(腹を抱えて大笑い)
女「無碍ってのはね、仏教用語じゃないの。頭でっかちなのね。
  あの人なんて誰でもいいのよ。それが融通無碍でしょ。」

(目からの涙をぬぐいながら、振り返って本堂を帰っていく。もう日差しがすっかり夕暮れ)

執筆者:藤崎 道雪

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