ものかき部

MAIL │ BBS

「 勝手な人�供 �
2004年06月15日(火)



 あいつはお婆さんになっても全く勝手なやつだった。
 付き合う時も自分から決して言わないようにして、言うように仕向けた。
 「私のことどう思ってるの?」と何度もしつこく質問もした。
 結婚の時だってそうだ。
 結婚式なんて身内だけで良いのに、それじゃあ世間体が、なんて自分の意見じゃないようにした。
 家でブクブク太って、洗濯掃除の家事をしていれば良いと安閑(あんかん)としていた。
 俺の好きな漬物の1つも作れないし、俺の好きは味なんて聞きもしないし、新しい料理の研究をしたのも最初の10年だけだ。
 そのくせ「美味しいィ?」なんてわざわざ聞いてきやがる、自分の都合だけで。
 今まで出したことがある料理じゃないか。
 太って女としての魅力もないし、女性としての品もないし、人間としての気位もない。
 それを申し訳なさそうに言うけれど一向に改めない。
 全く勝手で最低だった。
 ああ全く、全く血迷ったよ。
 
 その内、高血圧だから、なんて言いやがってまずい料理は作るし、病気になったから、なんて言いやがって、
 見舞に来てうるさくするし、他の人がいるのに大泣きして涙をたれ流すし。
 恥ずかしいったらしょうがねーだろう。
 死ぬもんはしょうがねーだろうが、最後まで見守ってるからね、なんて言いやがるし。
 俺の落ち込んだ気持ちも考えろってんだ、全く。
 だから、にぎやかに死んで逝けるわな。
 3人も子供を産んでくれたしよ。

 全くもって、勝手なやつだったぜ。
 じゃあな、あばよ。
 待ってるぜ。

執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.6.21)

「 勝手な人 」
2004年06月01日(火)



 お爺さんが亡くなって1周忌も過ぎました。
 都心から近郊に移って、ぼーっと暮らしていて、子供もそれぞれ出て行ってひ孫も出来そうでドタバタしています。
 そのドタバタから離れて何十年も経ちましたが、最初は嬉しかったものです。
 もう今は、ドタバタしてくれっぱなしだったおじいさんも居なくなり、でも、子供の世話にも老人ホームに行くのも気が進みません。気が進まない、もありますが、今まで「勝手だ、わがままだ」とお爺さんを怒っていたのが懐かしくなって、時々、涙がホロリとこぼれます。
 おじいさんは何て勝手な、しょうのない人だったのでしょう。居なくなって改めて思い直します。
 おじいさんのお葬式にお友達は3人しか来てくれませんでした。あんなにお友達が多かったというのに。
 後4人は病院から連絡を下さりました。
 私のお葬式の時に何人のお友達が来てくれるのでしょう。
 私が最後かもしれませんね。
 そうだわ、私を置いていくなんて。
 
 私にこんな思いをさせるなんて、全く勝手な人だったわ。
 ほんとに。
 ほんとだわよ、おじいさん。

執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.6.18)

BACK INDEX NEXT

複製、無断転載、二次配布等を禁じます。
All Rights Reserved©ものかき部

My追加