チョコをもらうのは毎年のことで、彼は「今年もお前の方が多いな」と笑っていた。
2年間病院に入っていた時は友達が限られていき、2年目が3個に減った。
一番少なかった年だけれど、一番嬉しいチョコだったし、それからあんまりチョコをもらっても嬉しくなくなった。
「そらお前、人ってそんなもんだって。そしてお前も同じ人なんだってー」って韻を踏んだ彼のダサさに一発で、つもられてしまった。
出会ったのは歯医者のバイト仲間のコンパだった。
ボサボサの頭で来たから、からかったら「頭はボサボサでもよ〜く寝たから心はガサガサじゃないよ」って返してきた。それで色々話すようになって、その日の内にほれちゃった。
大学2年の時に会って、もう3年も経つけど今もボサボサの髪型で街にトレーナーとかで平気で行く。
さすがに友達に会う時は、トレーナーじゃないけど28歳なのにスーツが2着しかないし、ズボンはジーンズしかないのでラフな格好になっちゃう。
ぼーっとしててあんまり話に入ってこないから、つまんないのかな?って思うけど、本人は、ちょっと緊張してるんだよ〜だって。
友達は、「ぼーっとした良い人そうね。里美ははっきりしてるから良いんじゃない?」ってよく言う。
ラーメン大好きで東京から名古屋や喜多方まで一緒に行ったこともある。たった800円のラーメンに何万もかけて、「通信販売でいいじゃん。何十杯も何百杯も食えるよ」って言うと、「雰囲気が好きじゃー。お前もお前の雰囲気が好きなんじゃー」って誤魔化した(笑)
手がおっきくて介護のお仕事には向いているし、私を安心させるのにも向いている。
赤色が好きで苺も大好き。C1000タケダとカルピスウォーターをこよなく愛していて、私とキスをするより安心するって言う。
彼に抱きつくと2日くらいお風呂に入っていない時の匂いが、私の頭をクラクラさせるのに気がついたけれど、夏は別の意味で頭がクラクラして注意する。
何より注意すればちゃんと聞いてくれる、そんな所に彼の誠実さを感じて、もっと一緒に居たくなる。
嫌いな所は、変にもてる所。アーパーな恋愛ジャンキーじゃなくて本気の人ばっかり連れてくるからだ。
おば〜ちゃん達に大人気なのは大目にみてあげている。
後、映画を観ると感想を聞いてくる所。
映画なんて楽しきゃいいのに、自分の中でまとめないと気がすまないらしい。
歯をちゃんと磨かなかったりするのがよくあるから、凝り性なんだか、いい加減なんだか分からない。
意外な所は煙草を吸わないのとお酒の弱いの。あ、後ギャンブルしないって所も。
プー太郎っぽいんだか、みみっちいんだからよく分からない。
そんな話を友達に延々すると、「仲良くやってるんだね」とつくづく言われる。
そんな気はないんだけどな〜、月に1回くらい喧嘩するし。
追記:「U」はスラング(俗語)で、「you」。
「in me」は文法的に可笑しいけれど、詩的にあえて使用。
執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.2.19)
私はいつものように大学をサボっていた。
いつものように10時過ぎに起きて、「腹が減った〜」と言いながら6畳一間のカーテンを開ける。開けないと緑色の光が差し込んできて、部屋全体が森のようになってしまう。パンツやブラジャーをまとめてはいるけれど、畳の上だし、本や雑誌は3畳しかなくて白いビニール床の上に放りっぱなしだ。冬になると白い床は全く寒くて、誰が考え出したんだが殺したくなる。トイレに行く数歩で足がガチガチになる。全く。
起きればそのままTVをつけて、音を部屋に充満させる。そうするとちょっとやる気が出てくる。「あら〜世のおばさんはこんなつまらんゴシップで騒いでるんだー」とやじを入れると、もっと元気が出てくる。
1時からコンビニのバイト。だいたいは7時か8時までで帰ってきて、またTVをつけて、お風呂に入ったりして夜中にメールしたりする。バイトの無い日はサークルに顔を出したり、街をブラブラしたりする。
そういえば最近は、アンアンなんかの雑誌を買わなくなった。買わなくてもあたしは女だし、買ってもおんなだし、と思ったらアホらしくなったからだ。友達のK子に話したら、「プッ」っと吹き出された。ついでに、「前から変わってると思ったけれど」と言われた。K子は年中恋愛に夢中の子。格好もそれなりに今時にするし、それなりに遊ぶし、男の気を引くのが巧(うま)い。とっかえひっかえみたいにガツガツしてないから、周りの女友達にも嫌がられないし、人当たりも良いし悪口も自然に言わないから、コンパによくお呼ばれする。
実は私も2年生の最初まで、よくコンパに行っていた。1週間に1回か、2週間に1回はあって、時々変わった人がいて面白かった。でも、コンパはコンパなんだな〜って思ったら行く気が無くなってしまった。同じクラスの男友達の友達だったTは、変な奴だ。あたしよりも変わってる。いっつも坊主だし、炭酸飲まないし、勧められたら飲むけど、煙草も吸わないし酒も。女とも遊ばないから、「何して休日過ごしてんの?」と最初の話題に聞くと「本読んでるか散歩してるか空想しているか、電車乗ってるか漫画読んでるか音楽を聞いているか散歩しているか・・・」と5分くらい続けた。真顔で私のおでこを見つめながら。私が「わかった分かった」と両手を広げたので彼は黙った。その後、無性に可笑しくなって、本当に腹を抱えて笑ってしまった。彼は、一瞬目を大きくしたが、直ぐに微笑に移った。彼は何でそんな台詞を言うんだろう、と、最近、ボーっとした時に考えたりしている。
授業に殆ど出ていなくて留年、ほぼ決定。テストも受けていないし、3日後のバレンタインのために手作りチョコを作っている。防腐剤が入らないから、丁度お腹にくるかな?って思って。あげるのはバイトのはげかかっている40歳の店長と、同じバイトの仲間。それとクラスの友達。Tには上げない。彼は最高7個も貰ったことがあるそうだ。なのにお返しが面倒くさいからとつき返してしまったらしい。それでいて何人かともつきあったことがあるらしい。 全く全く。
一時、K子もTが気に入っていたが、なびかないから直ぐに次にいった。私は多分Tが好きだし、K子とTが付き合えば、Tのことが沢山分かるな〜って思ってた。自分が付き合うと苦しくなったりするだけで、相手のことが解らなくなる。解るのは相手が何で私のことを考えてくれないのか??ってことばっかりになる。私のことを理解しようとしてくれた大分年上の人もいたし、彼のことが好きだったけれど、どうも私はそういうのは上手くいかなかった。
私が雑誌を買わなくなったのは、皆恋愛したがっている、って思ったからだ。Tは私と付き合わなくても誰かと付き合って結婚するだろう。K子も適当に遊んだら玉の輿(こし)に乗るって言ってる。無理そうなおばさんになったら適当に妥協するだろう。真剣な恋愛だって、命や人生を賭けた恋愛だって結局は気持ちが変わるんだから。なのに皆恋愛をしたがってる。何だか不思議だ。あんなに1つのことを真剣に誠実にしようとしているTも何度も別れているし、その理由を聞くと「�〔そ呂機´∨槐修寮�差 �4超�による性差 �の�愛の本質が種の保存のためにあるので �ァΑΑΑ廚搬海�そうだったので、「分かったよ」と大きく両手を開いた。彼はずっと続けられたかもしれないが、そんな理由はどうでも良かった。皆が恋愛したがっている、ってことが変わらないんだろうから。
私はレイプされたこともないし、おろした経験もないし、ちょっと乱暴なのはあるけれど、特にはなかった。嫌いになる理由もないけれど、どうしてするんだろう。
考えは此処で止まっちゃう。
そんな時は、いっつもチョコを食べるようにしてる。バレンタインの前だから、今日は多めに食べようと思った。
プ〜ン、とチョコの匂いが部屋に充満したので、カーテンと窓を開けた。目の前には京王線が走っていって、電線の上に月がチラッと出ていた。
ちょっと黄色っぽくて、美味しそうなホワイトチョコレートに見えた。
あんなホワイトチョコレートを食べたら、毎日学校に行くようになるかな〜。恋愛できるようになるかな〜。部屋もきちんと片付けられるかな〜。
さて、9時になる。TVのドラマをみよっと。
執筆者:藤崎 道雪 (校正H16.2.18)