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「 目の油 」
2002年12月15日(日)


 眼球の裏が、ドロ・・・・ドロリ、と音を脳に伝えた。
 滑(ぬめ)りがドロドロと殖えて離れようとするので、慌てて目蓋(まぶた)を閉じた。
 
 自由自在に動かせた視線も裏が溶けてしまったので、顔を真上に上げても右目が顎(あご)の下を左眼は右耳を向いていて、何を眺めているかよく分らない。さっきまでの記憶で部屋と推測できるけれど、白々とした蛍光灯の光だけがボーっと浮かび上がっていて、それが幾つもの固まりとなって視界全部を覆(おお)っている。顎を上げていると油の中のピンポン玉になってしまったような眼球は、水晶体の突起が真下に来てしまい、目蓋を開けても何も見えやしない。

 目に映ったとしてもその後ろに光の残像のようなものがくっついて眩(まぶ)しくて仕方がない。
 仕方が無いから、おでこを水平より少し下げてやる。
 眼球の突起が、鼻の内側を盛り上げるように撫でながら、スルスルと位置を上げてくる。
 おでこと顎を垂直にしてやるちょっと手前で止めると、慣性でもって丁度良い具合になる。
 戻すには、ちょっとしたコツがいる。
 目蓋を強く、強く閉じてやると水晶体が止めておけるから、手で耳の上をトントン、と軽くたたいてやるといい具合になる。

 同じ要領で外斜視になっていた左右のズレも戻してやる。
 頭の角度は動かせないけれど、視界は何とかまともになって、光の残像も消えて図形や数字が分るようになる。
 相も変わらず、目の裏には油が、ドロリ、ドロリと塗られたようになっていて、気持ち悪いけれど、
 まあそれも生きているのだから仕方が無いよな。

 あらら。
 また、ちょっとずれちゃったよ。
 

執筆者:藤崎 道雪


「 恋愛の峠 」
2002年12月01日(日)


 貴方は、毎日電話で「好きだよ」と言ってくれる。
 貴方は、今まで1度も大声を出した事もないし、嘘も暴力もなかった。
 
 日曜日の午後1時半。
 面白いTVもないし、漫画もないし、本を読むのは何だかめんどくさい。
 なのに貴方は、用事だと言って出て行ってしまった。
 携帯にしても電源が切られている。

 貴方は、毎回会うと「好きだよ」と言ってくれる。
 けれど、今は私の側に来てくれない。
 忙しいのは分っているけれど、私が貴方を愛しているのに答えてくれない。
 そうだ、貴方は私のことを好きだけれど、愛してはくれないのね。
 けど、この前ショウインドウで見たあの服を買ってくれたら我慢(がまん)してあげてもいいかな。
 プラチナのリングでもいいかな。シャトーマルゴーのワインでもいいかな。
 それなら、貴方が好きなだけでも許してあげる。



執筆者:藤崎 道雪



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