感想メモ

2019年01月30日(水) BUTTER  柚木麻子


柚木麻子 新潮社 2017

STORY:
婚活サイトを利用して男たちから金を奪い、3人を殺した罪に問われて世間を騒がせている梶井真奈子。週刊誌記者の里佳は東京拘置所に拘留中の梶井と接見することに成功するが…。

感想:
 実際にあった木嶋佳苗の事件をもとにしたこの作品。木嶋佳苗の事件にも興味があったので、面白く読むことができた。もちろんフィクションだとは思うけれど。

 孤独で金のある男に尽くし、料理をし、家事をし、邪魔になると殺人をしたという罪に問われている梶井真奈子を取材したいと思う里佳は、親友の伶子に「料理のレシピを聞いてみたら教えたくなるかもしれない」と言われ、レシピを教えてほしいという手紙を書く。

 梶井真奈子から会ってもいいと言われ、早速会いに行くが、梶井真奈子の変な魅力に里佳は取りつかれていく。梶井真奈子に言われた通りに料理をし、食べてみろと言われた高級店で食事をしたり、言われたように行動をしたり…。

 梶井真奈子の指示通りにすることにより、殺されたかもしれない人々の心情や梶井真奈子の言動が段々理解できるようになっていく里佳。

 そして、梶井真奈子の連載記事を書くことを了承され、一躍有名になったのだが…。

 梶井真奈子の異常なんだけど、なぜか人を惹きつける魅力みたいなものに圧倒されながら読んだ。

 品薄になっているバターを使った料理がこの小説ではよく出てくる。どれもおいしそうな感じで、少し食べてみたいような気がした。でも、里佳のように体重が激増するのは嫌だな…。

 とにかく木嶋佳苗事件とはフィクションで別なんだろうとは思うけれど、あの事件に興味がある人は面白く読めると思うので、オススメ。



2019年01月09日(水) 下町ロケット〜新春ドラマ特別編

 「下町ロケット(2018)」の続編で、事実上の最終回かな。

 下町無人農業トラクター・ダーウィンは、帝国重工製のトラクター・ランドクロウを圧倒的に上回る売り上げを記録していたが、突然動かなくなる不具合に見舞われていた。「トランスミッションに何らかの問題があるのでは?」と問うギアゴースト社長・伊丹(尾上菊之助)に対し、島津(イモトアヤコ)の代わりを務めてきた氷室(高橋努)は自分の非を認めようとしない。

 ランドクロウを精査した結果、ダーウィンのトランスミッションに決定的な不具合が見つかる。伊丹はリコールをしなくてはならないかもという事態に追い込まれる。その不具合を修正するには、佃製作所が特許申請をした部品を使わなくてはならないのだが、伊丹は佃(阿部寛)に対してひどい仕打ちをしたこともあり、相手が認めてくれるかわからなかった。

 帝国重工では、トラクターだけではなく、コンバインの製作にも着手し、無事に売り出しを始めた。殿村家には早速コンバインも納品され、殿村(立川談春)や殿村の父(山本學)らもその性能の素晴らしさに目を見張った。

 伊丹は佃にライセンス許可をもらおうと何度も佃のもとを訪ねるが、従業員たちからも不評だった。また、たとえ従業員がいいと言っても、ランドクロウは帝国重工製なので、帝国重工がいいと言うとは思えないでいた。

 そんな時、巨大な台風が殿村たちの田んぼに襲いかかろうとしていた。おりしも稲刈りの直前。台風が直撃する前に収穫をしてしまわなければ、大損害になってしまう。

 殿村家は無人コンバインを使って、暴風雨が近づく悪天候の中、順調に稲刈りを進めていた。ところが、殿村が災害に遭って、米が全滅したときにも嫌味を言ってきた同じ農家の稲本(岡田浩暉)は広大な田んぼの収穫が追い付かずにいた。その上、機械が動かなくなってしまい、殿村の家に助けを求めに来るが…。

 また、帝国重工の財前(吉川晃司)は、農家を悪天候などの災害から救済するために無人農業ロボットを活用することを提案。今回、別の地方に台風が上陸しそうだということで、応援を要請されていたが、台風がそれたため、待機中だった。稲本の田んぼを助けに来てほしいという要請を佃から受けた財前。稲本は他社製農業ロボットを使っているし、田んぼのデータもない。また、この救助は帝国重工に逆らうことにもなるかもしれない。果たして財前の選んだ道は…?

 と、今回も熱い展開を見せる。

 前回の最終回できっちり終わらなかった事柄にもきちんと終わりがあって、やはりこちらが最終回だよなーと。

 嫌味な奴らや悪い奴らに報いがあるシーンは、気の毒ながらも少し胸がすっとするような気にもなる。

 日本の農業、これからは無人ロボットの時代が来るのかもしれない。そして、異常気象からの大災害が増えている昨今、こうした農業ロボットで臨時支援体制を取ることができたら、被害を少しでも食い止められるのかもしれない。

 そして、仕事をすることの正義や仕事に向き合う姿勢、責任感などについても考えさせられる良作であったと思う。人のアイデアを盗んだり、人を陥れたり、下請けいじめをして利益を得ようとしたりするのではなく、自らの技術力や仕事に向き合う努力を積み重ねて成功することの大切さのような、最近の日本人が忘れがちになっていることに目を向けさせてもらえた気がする。



2019年01月06日(日) 2018年 今年の10冊

 毎年恒例の2018年の10冊を選んでみた。

 2018年に読んだ本は37冊。結構大作も読んだのだけれど、そういうののほうが10冊の中に入らなかったりして…。

 読んだ順に。

・ジゼル 秋吉理香子 2月
・毒母ですが、なにか 山口恵以子 3月
・カーテンコール! 加納朋子 4月
・i(アイ) 西加奈子 5月
・アキラとあきら 池井戸潤 7月
・老後の資金がありません 垣谷美雨 7月
・ひと 小野寺史宜 7月
・そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ 8月
・路上のX 桐野夏生 10月
・地球星人 村田沙耶香 12月

 以上10冊。

 「ジゼル」はバレエが好きな人ならより楽しめる作品。封印された舞台「ジゼル」を上演することになったバレエ団で次々に起こる不思議な出来事。ミステリータッチの作品。

 「毒母ですが、なにか」は子育て中の人にはより胸に響くかも。子供を自分の思い通りに動かそうとする毒母と、その母に翻弄される娘。そして、毒母だと開き直る母が怖すぎる。

 「カーテンコール!」は、廃校が決まった大学で、卒業できなくなった人たちを救済するために、学校に住み込んで授業を受けることになった人々のお話。前向きになれる感じ。

 「i(アイ)」は自分のアイデンティティに苦しみつつ毎日を送る養女の子の話。その世界観が面白かった。

 「アキラとあきら」は、池井戸潤が描く物語。さすがに池井戸潤といった感じの話。倒産を余儀なくされた中小工場の息子と、資産家の息子の二人のあきらを軸に、企業や銀行のあり方といったことについて考えさせられる話だった。

 「老後の資金がありません」は、老後のために貯金したはずだったお金が、娘の結婚費用や、夫が仕事を辞めたりといったことで危うくなっていく話。高級老人ホームに入っていた義母をお金がないために自宅に引き取ることにしてからが面白かった。

 「ひと」は、人と人との触れ合いによって癒されることがあるんだなと思うような話。両親の死によって窮地に立たされた主人公が、惣菜屋で惣菜を食べようとしたところからそこで働くことになって…。

 「そして、バトンは渡された」は、血のつながりとは何か?ということを考えさせられる話。こんな家族もあっていいのかも…と思わされる。

 「路上のX」は、虐げられる女子中高生たちの話。渋谷近辺に集まり、その中で必死に生きようとするけれど、社会の荒波に飲みこまれていく痛々しさが強烈に印象に残った。

 「地球星人」は、これまたインパクト大な作品だった。

 2019年もあまりたくさんは読めないと思うけれど、自分なりによい本と巡り合えたらな〜と思っている。



2019年01月03日(木) 結婚相手は抽選で  垣谷美雨


垣谷美雨 双葉文庫 2014

STORY:
少子化対策のため、「抽選見合い結婚法」が成立。25歳から35歳までの未婚独身男女が抽選でお見合いをし、3回断るとテロ撲滅隊送りに。様々な男女が抽選でお見合いをすることになるが…。

感想:
 少子化対策には、まず未婚男女の結婚率を上げなくては…ということで、施行が決定された「抽選見合い結婚法」。こんな法案はおかしいと思う者もいれば、今まで誰とも交際したことのない男子はもしかしたら結婚できるかもと希望を持ったり、反応は様々であった。

 しかし、実際に抽選が行われ、お見合いが始まると、相手がいなくて残っている人は、いまいちな人の集まりでもあった。

 3回断るとテロ撲滅隊に送られる、または医療従事者なら、離島に送られることから、それが嫌で、相手に返事をしないまま引きずる者なども現れたり、相手に断らせようと、相手に嫌われるような態度をわざと取ったり…。

 結局断り続ける人が続出し、テロ撲滅隊は人員が余るようになってしまったりというのも、何だかうなずける。でも、離島に送られる医療従事者は貴重で、こういう法律でもないとなかなか離島とかの医療はよくならないのかもとも思ったり。

 と、なかなか面白い内容であった。

 テレビドラマ化もされたこの作品。ドラマは見なかったけれど、興味はあったし、本で読んで気軽に、でも、ちょっと考えさせられる作品に仕上がっていて、新年最初の読書が楽しかった。

 余談だが、実は違う本も並行して読んでいたのだが、どうにも新春にはいまいちな感じで、進まず、こちらを先に読んでしまった…。


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