2017年08月26日(土) |
秋山善吉工務店 中山七里 |
中山七里 光文社 2017
STORY: 職を失った父は失火で爆死。残された一家3人は父の実家である秋山善吉工務店にお世話になることになるが、祖父・善吉は昔気質の職人で…。
感想: 父が職を失い、自宅の2階に引きこもり、火事を出し、3人だけは助かったものの、生活することができず、妻であり母である景子は苦手だった夫の実家にお世話になることにする。
転校を余儀なくされた兄・雅彦、弟・太一は、転校先の学校でうまくいかず、何とかまた3人で独立して暮らしたいと焦る景子は、パート先で難題にぶち当たり…。
それらを見事に陰から見守り解決する善吉。昔気質の職人で近寄りがたいけれど、いざというときには頼りになる、こんなおじいちゃんがいたらいいよね…。
そして、失火は本当に過失だったのか? もしかしたら殺人ではないのかと嗅ぎまわる警視庁捜査一課の宮藤。善吉とも真っ向からぶつかるのだが…。
中山七里さんだからミステリ要素が加わるのかな? この部分はなくてもよかったような気もするけれど…。
残された一家にこれからがんばって生きていってほしいなーと思わせるお話であった。
宮下奈都 文藝春秋 2016
STORY: たい焼き屋の店主のこよみと、たまたまたい焼きを買ってこよみと仲良くなった行助。こよみは不幸な事故に遭い、前日のことを覚えていられない記憶障害になってしまい…。
感想: 記憶障害の人物を描いた小説はいくつか読んできて、またそういうのか…というような気もしたけど、読んでみた。しかし、読んでから時間が経ってしまったのもあって、印象が薄くなってきているような。
ものすごく話も短くて、特に何か話が進展するわけでもなく、淡々と続いて、終わるような印象。
でも、その人物に障害があってもなくても、人生ってそんなものなのかもしれない。
森絵都 集英社 2016
STORY: 戦中の教育に嫌気をさし、文部省に対抗しようと塾を始めようと思い立った千明は、学校の用務員として働く吾郎の教えの才能に目をつけて、一緒に塾を始めるが…。
感想: 塾の歴史を垣間見られる作品だった。
自分は1980年代が塾などの対象となる年齢だったが、そんなだったかもなーと思い出したり。
自分が対象となる年齢以前の塾の様子や、それ以降の様子が時代とともに描かれていて、興味深かった。
それと、この千明の一家もすごくて…。千明のパワフルさ、吾郎の教えにかける情熱、その娘たちの生き方、周りの塾に関係する人々たち。
最後に千明の孫・一郎がNPO法人のような感じでボランティアで貧困世帯の子供たちに無償で勉強を教える場を開くが、今の時代を反映しているなと思った。
そして、タイトルの「みかづき」にあるように、教育の現場は毎日工夫を凝らしてがんばっているけれど、決して満足する「満月」にはならず、いつもいつも何かが足りない「みかづき」のような状態なのだということに、そうかもしれないと思った。
昔はよかった…とか、今の教育はなっていない…とか、そういう言葉をもとに、より良い教育を目指してがんばっているのが、教育関係者たちなのではないかと。
金銭のためだけに教えるのではなく、本当に子供たちのことを考え、未来のためにがんばっている人たちがいるのだということを、考えさせられる本だった。
そして、これからもより良い教育のためにがんばっていってほしいと思った。
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