黒川博行 文藝春秋 2014
STORY: 91歳の父が突然倒れて死亡。後妻に入った小夜子は娘たちに公正証書を見せ、すべての遺産を相続しようとするが…。
感想: 先日読んだ「紙の月」も犯罪ものだったけれど、こちらの犯罪に比べるとかわいかったな…。
というか、犯罪者をかばいたくなるような、見つからないでほしいと思うような気持ちにもなったけれど、この作品の小夜子と結婚相談所の所長・柏木は悪人すぎて、早くこんなやつ捕まってしまえ!!としか思えなかった。
小夜子は結婚相談所の所長・柏木とつるんで、資産家の老人を狙っては後妻に入り、公正証書を使って、老人の死後、莫大な財産をせしめるということを繰り返していた。
老人の死は、結婚後、数年以内に起こっており、その死にも2人が関わっている可能性が…。
父・耕造が亡くなって、小夜子から全財産を奪われそうになった尚子と朋美の姉妹は、同級生で弁護士になった守屋に相談。後妻業という職業(?)があることを初めて知る。
2人は小夜子から相続分を取り返そうと守屋とともに計画を立てるが、守屋が調査を依頼した探偵事務所の探偵・本多は、この壮大な悪事を見抜き、そのことで小夜子や柏木をゆすり、金をせしめようとするが…。
この探偵・本多が出てこなければ、物語はもっと簡単に進むのだけれど、本多が曲者。
この本多、どうしてまっとうに生きようとしなかったのかなーというのが正直な感想なのだけれど…。
最後は、この悪党どもが全員逮捕されるのかと思ったけれど、物語は意外な方向へ…。
まあ、自業自得なのかもしれないけれど、ちょっと釈然としないような気もした。
角田光代 角川春樹事務所 2014
STORY: 夫と結婚して専業主婦となった梨花は、銀行で働くうちに大学生の光太と出会い、深い仲になる。光太の借金を返すために、顧客のお金を横領したことをきっかけに、次第に梨花の行動はエスカレートしていき…。
感想: ドラマ化や映画化もされ、見たいとは思いつつ、見られなかったこの作品。
原作を読んで、お金って何だろうと考えさせられた。
結局人と人とのつながりはお金では買えない。そのことに気づかない登場人物たちが痛いし、哀れなこと…。
梨花がお金を横領するきっかけになったのは、夫の無関心にもあったと思う。
結婚しても、自分のお金で食わせてやっているという優越感を持ち続けたかった夫。妻との触れ合いを避け、子供の話も避け、常に仕事に逃げて、妻の気持ちを慮ることのなかった夫。
そんなときに光太という若い男が、自分の体をほめて好きになってくれた。触れ合いを求めていた梨花は光太との交際にのめり込んでいく。
こんな夫であり、光太という若い恋人ができたのなら、横領などせず、離婚して光太と付き合えばよかったのではないか?とも思う。
光太は決して、梨花が贅沢な暮らしをさせてくれるから梨花に惹かれたわけではなかったのに、梨花はそのことに気づかなかったのだろう。
自分の容姿や年齢に自信が持てず、どんどんドツボにはまっていくのが哀れである。
何か違う未来にすることも可能だったんじゃないのかなーと、ついつい考えてしまった。
両親の別居に伴い、香川から表参道高校に転入してきた香川真琴(芳根京子)は、名門合唱部に入り、両親が交際することになった愛の歌を探し、両親を復縁させようと思っていた。
ところが、かつて自分を合唱の魅力に取りつかせた合唱部の顧問・鈴木有明(城田優)はキャバクラに通い、全くやる気がなく、部員は3人だけ。部として成立させるためには最低8人が必要で、合唱部は存続の危機を迎えていた。
真琴は部員を増やそうと、中庭で歌を歌ったり、勧誘を繰り返すが、面白く思わない1軍の生徒に妨害される。
真琴の熱意は次第に周りの心を動かし、合唱部に入るものも増え、有明も自分を責め続け、教師を辞めようと思っていた問題が片付き、やる気に…。
しかし、学校は存続の危機を迎え、両親の離婚も決定的になりそうで…。
というようなお話。
合唱の魅力があふれた作品になっており、歌が楽しみで毎週見てしまった。爽やかで明るい気持ちになれる作品だった。
香川真琴役の芳根京子の歌がとてもうまかったし、部員を演じたメンバーも全員歌がうまくって、ハーモニーがステキだった。
それと、副顧問の瀬山えみりを神田沙也加が演じており、顧問の城田優との歌のハーモニーがミュージカルみたいで素晴らしかった。もっと神田沙也加の歌も聞きたかったなー。
両親役の川平慈英と堀内敬子の歌声も素敵だったし…。あ、あと校長役の高畑淳子の歌もうまかったなー。
|