感想メモ

2009年08月26日(水) 鷺と雪  北村薫


北村薫 文藝春秋 2009

STORY:
昭和10年〜11年、時代が戦争へと暗い道を進み始める中、英子はベッキーさんとともに日常のちょっとした謎を解いていく。

感想:
 確か直木賞を取ったはずのこの作品は、シリーズの最新刊。昭和初期の上流階級を舞台にしたこの作品、当時の風俗がよく描かれていて、そういうことに興味がある人には面白いと思う。

 今回もそういった面では面白かったが、推理という面でいうと、今までの中で一番パッとしなかったような気もしたり…。

 まあ、日常にそんなに色々な出来事があるわけではないのが普通かな。

 これで終わりというような噂も聞いたけれど、中途半端なところで終わっているので、この先、さらに続編が出るのだろうか? 

 英子や雅吉兄さん、若月さんなどのその後が非常に気になる…。



2009年08月23日(日) 流星の絆  東野圭吾


東野圭吾 講談社 2008

STORY:
幼い頃に両親を刺殺された3兄弟は、いつか犯人を見つけ復讐することを誓う。大人になった彼らは詐欺師として生計を立てる。一方殺人事件の時効が近づいてきており…。

感想:
 ドラマを先に見ており、どうしてもドラマの印象が強くなってしまい、読んでいてもドラマの配役が思い浮かんでしまうくらいだった。

 あのドラマは本当に原作に近かったんだなと思う。けれど、やはりちょっと変わった演出で、ギャグテイストとかを入れていたんだな…と思う。(原作とは違う部分も結構あるのだが、面白い演出で気にならなかった)

 原作はやはりとてもよい。終わり方も満足いく終わり方で、ちょっとジーンとした。

 ドラマと両方楽しむことをオススメしたい。



2009年08月21日(金) サマーウォーズ

 予告を見て面白そうかと思い、見に行ってみた。

 しかし、最初のシーンで結構違和感があり、失敗したかな…と思ってしまった。(最後まで見たら、悪くなかったかな…という感想)

 ネットや携帯電話etcすべてのネットワークをコントロールする仮想都市OZ。人々はこのOZでアカウントを取り、アバターを作っている。セキュリティ対策もバッチリで、買い物だけでなく、ビジネスにも欠かせない世界をつなぐネットワークとなっている。

 健二は数学オリンピック日本代表にもう少しのところで洩れてしまう。夏休みはOZでのバイトを入れていたが、先輩の夏希に曽祖母・栄の誕生会の手伝いのバイトをしないか誘われる。

 バイト内容をよく知らされないまま健二は長野県上田市の旧家へ連れて行かれる。そこで栄の誕生パーティの準備が進められているのだ。

 栄に挨拶をした健二は、夏希の彼氏ということにされてしまう。抗議する健二だったが、夏希に押し切られ、そのまま彼氏ということに。栄に認められた健二は、陣内家の面々にも受け入れられる。

 その夜、健二のもとに1通のメールが。数学の問題だと思った健二は、その暗号を解き明かし、答えを送り返す。

 すると、翌日、仮想都市OZが大変なことになっていた。セキュリティが万全だったはずのOZのセキュリティパスワードが読み取られて、健二がその犯人になっていたのだ。

 健二のアカウントは犯人に乗っ取られ、自分の携帯も使えなくなってしまう。

 慌てた健二は、栄の曾孫・佳主馬が持っているPCを借りて、OZの世界へ。アカウントを盗んだ犯人は、OZの世界で大暴れ。そして、現実の世界も大混乱に…。

 実はこの騒ぎ、先代(栄の夫)の妾の子・侘助が開発した人工知能AIをアメリカに売ろうとしたことから始まったのだった。

 そのことを知った栄は、身内の不始末は自分でつけると言って、この騒ぎが収まるように尽力し…、陣内家の面々や健二も事態が収束するように奮闘する…。

 この話…子供向けでも、大人向けでもないような、ちょっと不思議な位置にあるような気がした。

 登場人物が多いのと、OZ世界でのアバターが多いのとで、なんかつながりがちょっとわからなかったりも…。

 でも、家族の愛とか、あきらめてはならない心とか、そういうところでジーンと感動したり、泣ける場面があって…。

 その割には、世界観がちょっと薄いというか。特に世界中に広まっているネットワークなのに、最後の対決が花札だったりするのには、??っていうような気も…。

 日本人だって、花札の「こいこい」のルールはわからない人も多いのでは? 実は私も昔、子供の頃、花札はやったことがあるけど、「こいこい」ではなかったので、いまいちわからなかった…。

 まあ、あんまり深く考えちゃいけないのかもしれないが、もう少し世界観を詰めていけば、もっと面白いものができたんじゃなかろうか…と思うと、ちょっと残念かな。

 それと、重要なキャラクターである栄が一体どのくらいすごい人なのかという描写が少なくて、この辺もちょっと残念。



2009年08月19日(水) シェエラザード(上)(下)  浅田次郎


浅田次郎 講談社文庫 (1999)2002 

STORY:
戦時中に民間人2000人以上を乗せて航行中、敵潜水艦に沈められた弥勒丸。その引き揚げを依頼された2人の男が、弥勒丸の正体の真相に迫っていく…。

感想:
 この本は、以前ドラマ化されて「シェエラザード〜海底に眠る永遠の愛」というタイトルで放映された。そのときに原作を読みたいと思いつつ、すっかり忘れていた。

 今回手に取ったとき、このドラマのことはすっかり忘れており、読んでいるうちになんだか聞いたことがあるような…と思って、考えてみたら、反町主演のドラマを見たような…と淡い記憶が…。

 あまりにも昔のことなので、ドラマの内容は忘れてしまった。

 それはともかくとして、原作のこちらは、次第に明らかになる弥勒丸の内部のことや当時の戦況がどうだったのか、なぜ弥勒丸は航路を変更して、危険を冒し、潜水艦に撃沈されてしまったのか…など、ぐいぐいと引き込まれるように読んでしまった。

 特に弥勒丸が撃沈されるところは、なんだか涙が出てきそうなくらい、感動する場面だった。

 この物語のモデルとなったのは、「阿波丸」という実在の船が戦時中に撃沈されたという事件らしい。

 もちろん弥勒丸と阿波丸は違うし、こちらは作者のフィクションだとは思うが、こういう事件を下敷きにしているだけに、何かリアルさが非常に伝わってきた。

 タイトルの「シェエラザード」はリムスキー・コルサコフの曲のタイトル。弥勒丸の中で、この曲がよくかかっていたという設定。この曲、美しく物悲しい旋律で、この物語に非常に合うように思った。



2009年08月15日(土) レスラー

レスラー
 夫が一度見て、どうしてももう一度見たいというので、お付き合いすることにした映画。

 この映画、どちらかというとやっぱり男性向けかも…。

 若い頃に大ブレイクしたプロレスラーのランディ(ミッキー・ローク)。あれから20年、今では場末の様々な興業に出演し、カツカツの生活を送っている。

 しかし、彼はプロ意識を忘れたことはなく、ファンが喜ぶ姿恰好をするために努力は惜しまない。また、どうしたら客が盛り上がるかの演出にも余念がない。

 長年の無理がたたって、ついに心臓のバイパス手術を受けることに。医者からはプロレスなんてとんでもないと言われ、一時は引退を決意。

 長年不和の続いた娘(エヴァン・レイチェル・ウッド)とやり直そうとするが、大失敗をしてしまい、娘からは縁を切られる。

 店のストリッパーと客という関係から少しずつ仲良くなったキャシディ(マリサ・トメイ)からも、一線を引かれてしまったとき、ランディはもう一度リングに上がることを決意し…。

 一つのことを一途にやり続けた男。引き際を間違えたのかもしれないけれど、こういう生き方もあるとは思う。

 人間関係にはとんと不器用で、晩年は体もボロボロになってしまい、見ていてかわいそうなくらい。

 最後のリングに立つとき、彼はマイクを手に取り、ファンに感謝の言葉をかける。そして、彼は最後に…。

 この続きがどうなったのか…実は気になった。

 キャシディはどうしたのか、そして、娘は…。

 でもまあ、そこまで描かないのがやっぱり余韻を残すということなのだろうけど…。



2009年08月09日(日) 日本人の知らない日本語  蛇蔵&海野凪子


蛇蔵&海野凪子 メディアファクトリー 2009

 日本語学校の教師をしている海野凪子のエピソードを蛇蔵が漫画にしたコミックエッセイ。

 日本語学校の教師が実際に体験した外国人学生とのやり取りを、非常にわかりやすく面白く漫画にしている。

 映画で日本語を学んできた学生の言葉づかいにはびっくり! またいつの時代かと思われる古い日本語を学んできた生徒の話にもびっくり!

 とにかく笑える!

 ところどころに挟まる日本語テスト。全くわからないものもあり…。

 外国人の方が日本人よりも日本語のことに詳しいような…。

 大体、話すのと文法とか言葉の意味を教えるのは別物だしね…。

 気晴らしに読むのにはうってつけの本。



2009年08月01日(土) ツレはパパ1年生  細川貂々


細川貂々 朝日新聞出版社 2009

 ツレうつシリーズの細川貂々&ツレ夫妻のもとに生まれた赤ちゃん・ちーとくん。ちーとくんが1歳になるまでの育児の顛末を描いたコミック・エッセイ。

 自分に子供はいないけど、出産・育児ものが大好きな私…。人の経験を読むのは、それが苦労話でもそうでなくても面白い…。そして、出産も育児も一つとして同じはないのがいいのかな。

 まあ、もし縁があれば、自分が参考にしたいってのもあるのかもしれないんだけど…。

 この本では、母乳が出なかったり、高齢出産で夫婦二人に体力がなくてヒーヒーいったり、産後うつのような状態になったり…と子供が生まれて大変なことが結構描かれている。

 けど、この家、もともと主夫はツレさんで、その形態は子供が生まれても変わらないようで、育児と家事はツレさん(ツレさんは一応会社社長も兼務)、仕事は貂々さん…という状態に。

 母乳が出なかったものだから、すぐにほとんどすべてをツレさんがするようになっていき…。

 平成時代の形式にとらわれない新しい夫婦の形なのかなぁ。

 子育て学級みたいなのに参加したら、20代のお父さんとツレさんの2人しか父親はいなかったらしい。そしたら、担当の人が、「今回は2人もお父さんが参加してくれた!」と喜んでいたんだとか…。やっぱり子育てにかかわる男性って、増えてはいるんだろうけど、まだまだ少ないのが現実なんだろうなぁ。

 にしても、その20代パパさんに、ツレさんが「うちの父と同じくらいの年齢」と言われてしまった…というのは、私も他人事とは言えない…。

 っていうか、もしこれから産むとすると、この2人より高齢になるような…。先が思いやられる…。


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