2009年04月30日(木) |
いつもそばにいるよ 江上剛 |
江上剛 実業之日本社 2009
STORY: 妻子を残して飛び降り自殺をした哲也は自分の葬儀を見ていた。妻は過労死だとして労災申請をしようとするが、会社からの圧力を受ける。自分がなぜ死んだのか思い出せないまま、哲也は霊として妻たちの様子を見守るが…。
感想: 主人公は最初から死んでしまっており、自分がなぜどのように死んだのかを覚えていない。また、よくある話とは違って、死んでしまった主人公が妻やその他の人々と話ができたり、自分の意思を伝えようと何かをすることもない。ただ主人公が霊としてそばで見守るというスタンスなのはよいと思った。
結局主人公が過労死で自殺したのか、なんで死んでしまったのかがわからないので、残された妻はそれを究明したいと思い、労災申請をしようと思うが、会社からの圧力を受け、同時に損害賠償も請求しようと思う。
そこで明らかになったのは、夫が過酷な労働をしていたことやパワハラを受けていたという事実。
さらに、主人公が会社の談合を暴こうとしていたことがわかって来て、事態は思わぬ方向へ…。
面白くないわけではなかったのだが、組織ってそんなものなのかも…とも少し思った。
そして、ちょっとネタばれになってしまうのだけれど、最後まで主人公の死因が解明されなかったことがちょっと残念だった…。
レディースデーに鑑賞。脚本の岡田惠和は結構好きなのだけれど、やっぱりいい感じに仕上がっていたかな。
中学生の男の子たちのHなことに興味津々なバカっぽさの中に、不純な動機ながらも何かに必死に取り組む爽やか青春物、そして、教師になるきっかけを与えてくれた人物とのちょっと感動話あり…と、笑いあり、しんみりあり…。上映時間も適切で飽きずに最後まで…。
新任教師の美香子(綾瀬はるか)は男子バレー部の顧問に。バレー部は5人しかおらず、活動はほぼ休止状態。Hなことに夢中な彼ら、先生が「試合に勝ったら何でもするから…」と言うので、「試合に勝ったら先生のおっぱいを見せてください!」と頼む。美香子は何が何だかわからないうちに約束させられていて…。
5人ではバレーボールの試合ができないので、元実業団バレー選手(仲村トオル)を父に持つ城(橘義尋)を何とか勧誘し、美香子先生の指導のもと、6人はものすごいがんばりを見せるのであった…。
しかし、不戦勝で2回戦に進んだものの、2回戦の相手は「死を覚悟してバレーに臨め!」というような強豪校であった。また不純な動機で試合に勝とうとしていることを知った学校から、美香子は辞めるように言われてしまい…。
この強豪チームの監督が田口浩正だったのね…。全然気づかなかった…。こういうチーム…ホントにありそう…。
でも、2回戦の試合が行われるまでにすごく時間があってちょっと不自然かな?とか思った。普通地区大会なんていったら、1日で2試合くらいはしない? せめて中1日くらいで連続で試合が行われそうなんだけど。
合宿では、堀内先生(青木崇高)とちょっといい感じに? しかし、男の子たちの興味あることは、「イレブンPM」…。この番組も懐かしいね…。
そうそう、この舞台は昭和54年の北九州だった。最初、女子の体操着がブルマで、うん?って思ったんだけど…。懐かしい空気がするのはそのせいかも?
私は美香子が教師になるきっかけを作ってくれた先生の墓前に報告をし、先生のご自宅に招かれるシーンに一番感動してしまった。
バカらしい!と思うところもなくはないけど、カラッとした明るさの中に、笑いと涙があるような、そんな感じ。まあ、だから何?って言われたらそれまでだけど、見て損はないかな…。
2009年04月19日(日) |
どーすんの?私 細川貂々 |
細川貂々 小学館 2008
作者が実際に体験した、高校卒業から美術学校に入学するまでの、人生の進路を選ぶまでのことを描いた漫画。
しかし…面白すぎる…。
こんな人いるのか? いるんだ…。
そしてそして、どうしてこんなあらゆる面白い(?)人々と知り合えたんだ…。(本人にとっては決して面白い経験ではなかったと思うけど、こんな経験したからこそ、漫画に描けるわけで…)
つい笑ってしまうところ、多々あり…。
夫にも読ませたところ、「こんな風な人だから、ツレさんがウツになっても大丈夫だったのかもね…」と一言。
確かに、そうかも。
ちなみに私も夫も、このようにアバウトな生き方はできない…とのことで意見が一致…。
2009年04月15日(水) |
ポトスライムの舟 津村記久子 |
津村記久子 講談社 2009
STORY: 「ポトスライムの舟」:工場や喫茶店などで働きづめのナガセは、世界一周クルージングに行こうと思う。クルージングは工場の年収と同じ。工場で働いた賃金に手をつけず、毎日を質素に過ごそうとするが…。 「十二月の窓辺」:ツガワは上司のV係長とそりが合わず、毎日針の筵のような生活をしていて…。
感想: 2編の短編が入っている。1編目の「ポトスライムの舟」は、芥川賞受賞の作品。もともと芥川賞受賞作品はあまり好きになることがない私…。今回も2編のうち、どちらかというと「十二月の窓辺」の方が、面白かった…。
「ポトスライム〜」の方は、もしかしたら、現代の世相(ワーキングプア)みたいなのに焦点が当てられてるのがいいのか…。
正直な話、クルージングのために、何もかも切り詰めようと思う姿勢にあまり共感できない。目標のためにお金を貯めるのはもちろん私にもわからないことはないが、この主人公が流されるように生きていて、特に意味もなくクルージングを目標にしているからますます共感できない感じ。
その上、病気になっても、病院にも行かないなんて…。今流行り(?)の肺結核かと思ったよ…。結局そういうことではなかったみたいだけど、働きづめで、食べ物もケチってたらなってもおかしくないかも。
あと、この作者さんは登場人物の名前をすべてカタカナで表記してるんだけど、日本人の名前(名字)をカタカナで表されると、なんかすごくイメージがつかみにくいような…。
「十二月の窓辺」の方は、パワハラについて描かれた作品。人がどういう風に人に無理に従わされ、心を砕かれていくのかがわかる。
辞表を出そうとしても、「辞めるなんて言わないよな」「そんなに無責任じゃないよな」と来られ、でも、何か失敗すれば、「辞めれば」と言われ…。
肉体的暴力を受けることも辛いと思うけど、言葉や態度での精神的暴力もひどい…。
早く辞めなよ、こんな会社!とちょっと最後の方はイライラしてしまった…。
精神的に穏やかになりたいときには、こういうのは読まない方がいいかも。
子供の頃に見ていて、最初、実写化すると聞いて、誰が見るんだー?なんて思っていたら、すごい大人気!ならしい。予告編を見たら、すっごくツボにはまって、これは楽しめそう!とばかりに見に行ってきた。
さすがに子供映画だから、見に来ているのも子供が多いのだが、見ての感想の一番目としては、「もしかして大人の方が受けるかも?」ということだったりして…。
子供は案外笑っていなかったのだ…。それより結構マニアックな下ネタギャグに、大人の方がブフッって笑っちゃう感じ? それと私たちの世代はたぶん子供の頃にこのシリーズのどれかを見ているはずなので、懐かしさとバカらしさ、ちょっとHな感じのギャグなどがない混ぜになり、なんとも言えない気分になっちゃうような気がする。大人こそ見るべき?なんて…。
深田恭子のドロンジョはかなり人気が高いみたいなんだけど、声がちょっとかわいすぎるかな? もう少し大人びた声を出してもらった方が雰囲気出たような気がするけど、いい感じだった。
一番生々しかったのは、ボヤッキー役の生瀬勝久…。アニメの方がまだ爽やかかも。あまりのねちっこい演技にちょっと気持ち悪さも…。やり過ぎかなーとも思うけど、まあ、こんなものなのか…。
それに比べるとトンズラー(ケンドーコバヤシ)はあんまり目立たない感じがした…。
ヤッターマンは1号(櫻井翔)も2号(福田沙紀)もまあいい感じか…。
どちらにせよ、ドロンボー一味もヤッターマンもお互いのテーマ曲でノリノリに踊っているんだけど、これがまたいい! ああ、こんなんだったー!と思い出し、終わってからも頭の中でテーマ曲がぐるぐる流れてしまった。
ドクロベエの声が懐かしい。ドクロベエにさらわれた海江田博士(阿部サダヲ)の娘・翔子(岡本杏理)はなんだか地味な顔だったなぁ…。阿部サダヲは最後の演技がすごかったな…。
そして、途中でドロンボー一味の声優さんたちが特別出演。それで気づいたけど、ドロンジョの声ってのび太の声とおんなじだっ! 今まで気づいてなかったよー。(のび太は旧ドラえもんの方…。っていうか、最近のドラえもんの声は知らない…)
すべて架空の場所ながら、渋谷やその他の地域を模していて、その小さな子細工(看板とか)がさらにおかしかった。
この映画、大人はいろんな見方ができそうな気がした。子供より大人が見る方がやっぱり面白いかもね…。
2009年04月08日(水) |
DOOR TO DOOR〜僕は脳性まひのトップセールスマン |
二宮和也が脳性まひの青年を演じるとのことで、見ることに。原作はアメリカの実在人物で、実際に脳性まひがあるのにトップセールスマンになったという男性の話。
とはいえ、時代の設定も違うだろうから、脚本の人はがんばったのかも…。場所を日本、時代を現代に置き換えて、ネット販売なども取り入れていた。
英雄は生まれつき脳性まひのため、体が不自由で言葉も聞き取りにくい。父は幼い頃に亡くなり、母・美津江(樋口可南子)と2人暮らし。母は毎日パートで忙しいが、英雄のサポートも怠らない。
このドラマ…本当に母は強し!っていう言葉が当てはまる。母がよく「死んだお父さんが言っていた言葉」を話して聞かせ、その言葉をノートに綴ってある。毎日作ってくれるお弁当には、必ずカードが入っていて、何か一つ言葉が書いてあるのだ。
初めは誰からも相手にしてもらえなかった英雄だったが、次第に人々に受け入れられていく。特にマンションの管理人さん(金田明夫)がネクタイを結んでくれたのには感動…。管理人さんが辞めるときには、結ばなくても片手でつけられるネクタイをプレゼントしてくれる。
英雄が最初に入社した会社の社長(渡辺いっけい)は、初めは英雄がすぐに辞めるだろうと思っていたが、そのがんばり具合に打たれ、会社が倒産した後も、次の就職先を見つけるために土下座までしていた。
そして、英雄を影から支えることになるさおり(加藤ローサ)。最初から英雄のことを邪険にしないところがすごい。英雄のあきらめない心や、父からの言葉に動かされて、自分も変化していく。
でも何より、一番すごいのはやはり母だと思う。女手ひとつで障害のある息子を育て上げたのはすごかったと思う。長年の苦労にたたられ、ついに脳梗塞を起こして入院。
障害のある息子を残して死んでいくのは、きっと心残りだっただろうと思うのだが、自立していき、さおりを連れてきた英雄に安堵し、最後は息子は大丈夫だろうと思って亡くなったのだろう…。
もし自分が母の立場だとしたら、すごく無念なんじゃないかと…。そして、こんな風にはなれないのではないかと思う。
ただなんだか白戸(ホワイト)家族のイメージが強くて、時々英雄の母には見えないときがあった…。あのCM、やっぱりすごく印象が強いのかな…。
二宮和也は本当に演技がうまい…。素晴らしかった。
2009年04月07日(火) |
欲情の作法 渡辺淳一 |
渡辺淳一 幻冬舎 2009
男女の恋愛から一線を超えるまでを、男女の体や精神の違いなどを科学的(?)に説き、自分の例などを使いながら、わかりやすくまとめた本…。
なんだけど、なるほど〜と思う部分もなくはないが、この考え方はちょっと古いんでは?と思う部分も多々あり…。
もしかしたら最近の草食系と言われるような男性には当てはまらないのかも…。
ものすごく読みやすい文章で、面白おかしく読めるので、話題作りにはもってこいかと思われる。
けど、渡辺淳一さん、あなたは一体何人の女性と関係があったの? 私にはそっちの方が興味あるかも…。
2009年04月03日(金) |
瑠璃でもなく、玻璃でもなく 唯川恵 |
唯川恵 集英社 2008
STORY: 美月は朔也と不倫をしていた。朔也の妻・英利子は何の疑いも持たず暮らしていたが、料理教室の秘書を頼まれたときから生活が一変、朔也から離婚してほしいと告げられ…。
感想: 女性にとって結婚とは何かということを考えさせる話ではあった。
仕事をしているときは、寿退社というものに憧れたり、早く結婚してしまいたいと思ったり…。
でも、実際に家庭に入ると、単調な毎日の繰り返しだし、恋愛していた頃とは全然違っていく夫に幻滅し、外で働いている女性がまぶしく見える。
女性の生き方が多種多様化してきたからこそ、どんな生き方をしていても、それに自分が満足だと思わない限り、他の人の生き方が素晴らしく思えてくる…。そんなものなんかもしれない。
以下ネタばれあり。
それはまあ理解できるのだが、この物語の前半の中心は、不倫である…。このエピソードだけがどうにも釈然としない感じである。
普通に考えて、不倫というのは、うまくいくものだろうか?
特に妻がいる男性との不倫となると、その男が妻と別れて自分と一緒になる確率って、そんなに高くないような気がするのだが、どうなのだろう?
でも、この作品の場合、普通に男の方が不倫相手と結婚したいと思ってしまうから微妙である…。
さらに、こうして不倫してから結婚した場合って、夫となる相手がまた別の相手と不倫をするんじゃないかと思ったりしないのかな…と。私ならそういうことを不安に思いそう。(不倫しようとは思わないけど)
そういう心理が描かれず、不倫相手と結婚し、子供にも恵まれ幸せな毎日を送っているっていう描写がちょっとどうなのかなぁと、引っかかるような気がした。
それと、友章という男性が出てくるのだが、結婚しない主義なのか、女性とはいいところまで行ったり、ベッドをともにしたりもするのだが、決してそれ以上の関係にはならない…。これも不思議な感じが…。
色々なことが組み合わさって、面白くないわけじゃないんだけど、それぞれの人同士がどこかでつながっていたりして、やっぱりあり得ないよなーと思ってしまう。わかる部分もあるけど、薄っぺらな感じがちょっとしてしまったかな…。
ところで、タイトルはどういう意味なのだろう。説明がなかったからいまいちよくわからなかった。
2009年04月02日(木) |
春さらば〜おばあちゃん 天国に財布はいらないよ〜 |
なんとなく気になって、録画して、ようやく見ることができた。
男にそそのかされて、会社の金を横領。そのときにはお腹に赤ちゃんが。その後、女手ひとつで子育て中のシングルマザーかすみ(夏川結衣)。彼女の仕事は介護ヘルパー。人が嫌がる仕事も積極的に引き受け、老人からの受けもよい。しかし、かすみは老人たちに尽くしながら、彼らからお金をせしめようとしていたのだった…。
かすみがあやしいということに気づいた富山りく(市原悦子)の家族は、警察に相談する。警察官の高宮(小泉孝太郎)は、かすみを尾行し、彼女はシロだと思うのだが、前科があることを知り、さらに捜査に精を出す。
りくはかすみを心底信頼し、180万円を金に換えてもらうように頼む。またわがままな老人海野(原田芳雄)もかすみに今まで稼いできたお金を寄付してくれと渡してしまう。さらに原川(山本學)が亡くなり、すべての遺産をかすみに残すと遺言を残していたことから、大騒動に…。
最後まで老人をだましていると信じているかすみだったが、老人たちはかすみが嘘をついていることもうすうす気づきながら、お金を渡していたのだった。それは、かすみが老人たちのよい話し相手になって、献身的に介護していたから…。
かすみは口で老人はずっと世間の荒波にもまれて生きてきたんだから、そんなに頭が悪くないみたいな発言をしつつ、実のところは、だましていると思っていた。でも、実際は…。
介護や老人に対する姿勢についてちょっと考えさせられるようなドラマだった。
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