荻原浩 光文社 2004
STORY: 広告代理店の営業を勤める主人公は、若年性アルツハイマーと診断される。徐々に日常生活が困難になっていって・・・。
感想: 「王様のブランチ」だったかで、上位にランキングしていた本だったと思った。それで読んでみたいと思って借りたのだが、実はアルツハイマーの本だとは思っていなかった。ただの記憶喪失とかそういう話だと思っていたのだ。
若年性アルツハイマーといえば、昔、永作博美が演じたドラマがあった。『Pure Soul〜君が僕を忘れても〜』というタイトルだったらしい。(忘れていて思わず検索してしまった・・・) これを見ていたので、最初にこの物語がどういう結末に向かうのかがわかってしまって、何というものを読み始めてしまったのだろうと思った。
記憶を徐々に失い、段々できることが少なくなっていき、最後には死に至るこの病気。まだ原因も治療法もわかっていない。介護者の人も大変だと思うし、なった本人も自分が記憶を失っていくことに対してのすごい恐怖と戦わなくてはならないのだと思った。
主人公も仕事の際、ほかの人に病気を気取られないように様々なことを試みる。カミングアウトする気にならない気持ちもよくわかる。娘の結婚式まではなんとか会社員を続けたいと願うのもわかりすぎるほどわかって悲しいものがあった。
主人公の趣味の陶芸。こちらの先生が主人公の病気を知り、お金を騙し取っていくのにはかなり辟易した。つい最近、痴呆症の姉妹からリフォーム詐欺でお金を騙し取ったという事件が発覚したところだったので余計にリアルさを感じた。いくらお金に苦しかったからといえ、やっていいことではないと思った。
妻に対する愛情、娘に対する気持ち・・・様々なものを抱えながら、徐々に病気が悪化していく様子がよくわかった。ところどころに入る主人公の日記も、病状が進むにつれ、漢字が少なくなっていったり・・・。
とにかく泣ける話であるなーと思った。変なファンタジーなどはないからこそ、何だか胸に迫る作品だった。
2005年05月28日(土) |
今日的良妻賢母 鈴木健二 |
鈴木健二 グラフ社 2005
昔、『気くばりのすすめ』という本で大ブレイク(?)したアナウンサー鈴木健二が、どういう女性がすばらしいかというのを、自分なりにまとめた本。何となく面白そうで手にとってみた。
うんうんとうなずくところももちろんあったが、私は早起きができなくて、夫の方がいつも先に起きるので、そのあたりはもう良妻失格というような気が・・・。賢母については、まだ子供がいないのでよくわからないけれど・・・。
2005年05月23日(月) |
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 |
夫とともに映画館で見る。原作は世界でベストセラーとなっている『世にも不幸なできごと』シリーズだそうだ。原作を読んだ人によると、映画はかなりはしょりすぎているとのことだが、原作を読んでいないのでどうだったのかはわからない。
子供たちの暗さが何だか印象的。それと対照的におかしすぎて大げさな演技をしているジム・キャリーのオラフ伯爵。その他、出てくる大人たちもどこかちょっと変な感じが漂う人ばかり。わざと対比でそういう風にしたのか?
不気味な雰囲気が漂う作風は、『アダムス・ファミリー』だったかを彷彿とさせる。好きな人にはすごく面白い世界かもしれないが、受け付けない人には受け付けない。私はどっちかというと後者。
でも、舞台の装置に関して言うとすごく凝っていて面白かった。それぞれの屋敷の感じだとか、雰囲気については非常に楽しめると思う。
ストーリーは両親が突然火災により死亡し、孤児となった3兄弟が、後見人である伯爵に最初預けられる。伯爵は子供たちの遺産を狙っており、子供たちを殺そうと企てるが失敗。後見人の地位を剥奪される。その後、3兄弟は別の人に預けられるが、伯爵の魔の手が忍びより、後見人となるはずの大人たちは次々に死亡していく・・・というようなお話だ。どうやら原作は11巻で、映画はまだ最初の3巻までの部分のようで、この先続編などができるのかも?
ジム・キャリーのオラフ伯爵は正直言って竹中直人みたいな感じで、大げさすぎてあまり好きになれなかった。とはいえ、この人の変装は確かに別人かと思わせるほどすごい。メリル・ストリープのジョゼフィーンおばさんは、小林幸子に見えて仕方がなかった・・・。一番まともなおじさんは爬虫類が大好きなモンティおじさん。ビリー・コノリーという人が演じているらしい。ちなみにこの話は書き手のレモニー・スニケットが語るという形を取っているが、このレモニー・スニケットはジュード・ロウ。ちょっとびっくり。
子供たちの中では私は男の子が一番かわいいと思った。長女のエミリー・ブラウニングはあまりにも暗そうな感じであまり好きじゃなかった。末っ子は双子が演じ分けていたようだ。
最後のエンドロールのところのアニメーションが非常に凝っていた。でも、そのせいなのか、ものすごく長くて、さすがにもういいだろう!と突っ込みたくなったが・・・。
映画としてはすごく面白いものでもなかったというのが正直なところだ。この世界観というものがその人にヒットするかどうかにかかっているように思う。
機会があったら原作も読んでみたい気はするが、11巻とのことなので、ちょっとたじろぐかも・・・
2005年05月22日(日) |
夢をかなえるオーダーメイドの方法 藤沢優月 |
夢をかなえるオーダーメイドの方法 藤沢優月 幻冬舎 2004
何となく手にとってみたこの本。特にすごくためになったということはなかったように思う。とはいえ、読んで無駄ということでもないとは思う。
最近時間が慌しく過ぎていくと感じていた私にとっては、自分のできる60%で時間を組み、必ず自分を見つめなおす時間のようなものを持つというのは、すごく新鮮に思った。別に100%ぎっしりスケジュールを詰め込まなくても、なぜか押せ押せになっている私だけれど、やっぱりじっくり座って本を読んだり、新聞を読んだり、テレビを見たりする時間もほしいなと思った。
夢をかなえるためにどうすべきかが書かれているので、何かこれといった目標がある人にとっては参考になるだろう。
2005年05月16日(月) |
問題な日本語 北原保雄 編 |
北原保雄編 大修館書店 2004
最近よく使われる、一見誤っているのではと思える用法や、こういう言い方をするのか?ということに対して、明鏡国語辞典を作っている人々(多分)が、文法的、歴史的な観点などを踏まえながら解説を加えた本。
ところどころ漫画が入っていて、その漫画の中になぜか笑いを誘うものが結構あった。
最近こうした日本語に関する本がブームのようである。先日読んだ『ダーリンの頭ン中』は外国語に関する本であったけれど、こういう本よりも自国語である日本語の本の方がどちらかと言うとためになるような気もする。そして、自分の日本語が案外あやしいものであるということに気づかされたような気がする。
解説の中にはやはり文法的な観点のものもあり、そうしたものは、あまり読む気にならないものもあった。自分が興味を持ったところだけを読むのもいいと思う。
ちなみにところどころ例文として出てくる例が非常に現代的な表現で、この辞書を作っている人々はかなり若者言葉を知っているんだろうなーと思った。でも、多分編集している人々はそんなに若くないと想像できるので、なんだかそのギャップを考えるとすごくおかしいような気がした。
2005年05月11日(水) |
対岸の彼女 角田光代 |
角田光代 文藝春秋 2004
STORY: 結婚のため退職し、専業主婦として子育てに専念する日々を送る小夜子、独身のまま企業家として奔走する葵。葵の会社で小夜子は働くことになり・・・。
感想: 角田光代の本は、以前に児童文学の『キッドナップ・ツアー』を読んだが、私はあまり面白くなかった。そういうイメージがあってどうなのだろう?と思っていたのだが、この作品は非常に面白かった。直木賞を受賞した作品なのもあるのかな。
今、主婦として生活をしている。仕事も一応しているけれど、あまりメインにやっているわけではない。仕事を持たず主婦に専念し、育児を始めたら、こういう風になるのかなと、リアルな感じを抱いた。公園ジプシーを繰り返す親子、保育園にするか幼稚園にするかでもめたり、親同士のいろいろなやり取りと価値観の違いに振り回される・・・。今は主婦になって全く知らない土地に来て、知り合いも全然いないからそういうストレスはないけれど、こうしてまたいろいろなストレスと渡り合っていくのだろうかと思う。
小夜子はそんな生活を抜け出すために、子供を保育園に預けて働くことにするが、働くということだってストレスいっぱい社会だ。結局人と人とが関わるというところに、何も生じないということのほうが少ない。あまり深く付き合わないでいるというのが、一番相手の嫌なところなども見えずに楽しくやっていけるのかもしれない。人から人のことを聞かされれば、やはり誰でも先入観を持ってその人を見てしまったりもする。難しいものだと思う。
そんなことがすごくリアルに描かれているので、自分自身のことを振り返ってみたりしてしまった。
でも、この本のいいところは、人と人との関係に疲れても、やはり人と人との出会いや触れ合いが人を癒すというところにある。葵とナナコが高校生のときにバイトをした民宿のおばさんも、前年、ひどい目にあったばかりで人を信じられないが、2人に考えを変えさせられる。とにかく人に傷つけられてそこで誰とも交わらない生活をするというのは、簡単なことなのかもしれないが、それではきっと心は癒されない。誰かと関わって、その中で心が癒されたりする瞬間がある。だから、人を信じ、だまされてもまた前向きに生きていく葵の姿は、自分もこうありたいと思わせるものがあった。
★角田光代のその他の本 ・『キッドナップ・ツアー』 →その感想ページ
2005年05月10日(火) |
フォーエヴァー・ヤング(DVD) |
以前から目をつけていたDVDを夫とともに見る。
恋人にプロポーズを切り出せない男。目の前で恋人が自動車事故にあい、医者にもう助からないだろうと宣告される。絶望した男は、親友の発明した冷凍装置に入って彼女の死をやり過ごそうとするが、目覚めたのは約50年後であった・・・。男は何が起きたのかを知るため、親友の消息をつかもうとするが・・・。
というように、結構ミステリー色が強いのではあるが、男を助けてくれる子供たちとの交流やその母親とのちょっとロマンスめいたこと、元パイロットであるので、戦闘機を操縦するシーンなどという何となく爽快な部分もあり、いろいろな意味で楽しめる作品だった。そして最後は感動。
もともとタイムスリップものは好きなのだけれど、この作品もすごくよい仕上がり。時代は第2次世界大戦前と1992年。そのギャップが楽しめる。かなりオススメの1本。
NHKの夜ドラ。
最初は『スウィングガールズ』とかみたいにへたくそな人たちがうまくなっていく過程を描くのかと思っていた。が、この話は違った。下手なのは最初の1週くらいで、すぐにアカペラが上手になる。そして、メインは社宅に住むダメ主婦たちがアカペラを通して自信をつけていく様子と、それぞれの家庭の事情、夫たちの仕事のことなどなど・・・。
おばさんパワー炸裂!という感じで、特にあかり役の片平なぎさの異様な明るさには、何となく笑いがこみ上げるし、すごく明るい気分になれる感じで、ありえるかどうかはともかくとして、夜の楽しみの一つになっていた。
また、アカペラも聞き応えがあって、特に『ケ・セラ・セラ』は私のヒット。その他の歌についても、なんだか口ずさみたくなる曲ばかりで、家で一人で歌ったりしてしまった・・・。
それからバイクの免許を取るのも面白かった。原付ではなくて、二輪。バイクで颯爽と走る5人の姿はなんかすがすがしいものがあった。各家庭のそれぞれの幸せみたいなものもきちんと描かれていてなかなか面白かった。
こういう明るくて前向きなドラマが合ってもいいんじゃないかなと思った。今季は朝ドラも面白いし、ドラマが楽しい。
★どうやらサントラが出ているらしいです。 愛と友情のブギウギ オリジナル・サウンドトラック
2005年05月02日(月) |
痕跡(上)(下) パトリシア・コーンウェル |
パトリシア・コーンウェル 相原真理子訳 講談社文庫 2004(2004)
STORY: ケイはかつて自分がやめさせられたリッチモンドの検屍局の検屍局長に呼ばれ、死亡原因のわからない少女の遺体について調べるよう頼まれる。かつて自分が統率していた検屍局は様変わりしていて・・・。
感想: 検屍官シリーズの最新刊。前回より変更になった三人称の文章にやはり最初は慣れなかった。が、次第に慣れてくると、今まではケイ以外の登場人物の心情についてはあまりわからなかったが、ベントンやマリーノといった人物の心のうちもわかったりして、それはそれで面白い部分もあった。
以前やめた場所に戻るとき、その場所が前より発展していたら嫌な気分になるだろう。前よりも荒廃している様子を見て、ケイがなんとなく優越感を覚える気持ちはよくわかるような気がした。他にもこの本では、ケイやその他の人物の心情も前よりわかりやすくなっていたかと思う。
今後も三人称での新しいシリーズとなるのだろうが、やはりどういう風になっていくのかが気になるので読み続けてしまいそうな気がする。
★パトリシア・コーンウェルのその他の作品 ・黒蠅 (上) →その感想ページ
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