2004年01月31日(土) |
D-ブリッジ・テープ 沙藤一樹 |
D-ブリッジ・テープ 沙藤一樹 角川ホラー文庫 1998
STORY: ごみの山となっているD-ブリッジ。そこで見つかった1本のテープ。それには衝撃的な内容が吹き込まれていた…。
感想: 確かにすごい衝撃的だった。大変薄い本であり、また文章はほとんどが少年の独白である。そのため、短い文が続いていくだけで、ものすごく短時間で読めてしまった。
が、衝撃的過ぎて、途中あまりにも気持ち悪い描写があり、思わず本を閉じてしまった。確かに衝撃的だ。面白いかはともかくとして、ものすごい印象を残したことだけは確かだ。
これは何かのたとえとか批判なのだろうか? 衝撃的ではあるけど、こんなことがあるのか?って感じだ。どうして〜しなかったんだろう?と、ついつい思ってしまう自分もいる。もっとうまい具合にできたんじゃないかって…。
2004年01月30日(金) |
私のかけらを、見つけて ジョイ・フィールディング |
ジョイ・フィールディング 吉田利子訳 文春文庫 (1997) 1999
STORY: 家族問題セラピストのケート。更年期障害に苦しむ中、年の離れた異父妹が凶悪殺人犯と結婚すると言い出したり、娘は反抗期で親の手には負えなくなってきたり、母親がアルツハイマーにかかったり、また自分もかつての恋人と再会し不倫への道に足を踏み入れようとしたり、と、様々な問題が起きてきて…。
感想: 久し振りにジョイ・フィールディングの本を読んだ。それまでに読んだ3冊のどれもがとても面白かった印象がある。この本もやはり例外ではなかった。特に何が起こるというわけではないのであるが、どのような展開になっていくのかが主人公の視点から描かれている。
家族問題のセラピストでありながら、自分の家族の問題にはつい目をそらしてしまったりするものなのだろう。近いところは客観的に見られないということだと思う。とにかく何だか引き込まれるように読んでしまった。
このところ、海外の小説をあまり読まなくなってきている。それは、以前愛用していた図書館を変わって、別の図書館に変えたからというのもある。日本の小説の面白さにも気づいたからでもあるのだけれど、やはり久し振りに海外の物を読むと面白いなーと思う。日本の小説にはない面白さというのか。本当は日本、海外、日本…と交互に読んでいけたらと思うのだけれど。なかなか面白そうな本がないというのが現状だ。この本は久々のヒットだったかなと思う。
2004年01月27日(火) |
草にすわる 白石一文 |
白石一文 光文社 2003
STORY: 「草にすわる」・・・大手の会社を辞めてから病気にかかり、その後は療養生活を送る男と、家族を火事で亡くした女の奇妙な恋愛関係を描く。 「砂の城」・・・かなり名の知れた作家は、私小説のネタに家族のことを描いてきた。その特殊な状況などについて回想せざるをえなくなり・・・。
感想: 長編かと思っていたら短編が2編だった。
「草にすわる」は、結局生きるのがいやになっていた主人公が、薬物自殺を図るわけだが、助かったことにより、そこから生の素晴らしさなどに気づいていくというような感じの話。どちらかと言うとこっちの方が前向きな感じで好きだった。
「砂の城」は、作家のかなり激しい生き様がちょっと受け付けないような気もした。
しかし、どちらの小説にもただ生きているだけでいいのだという、人生を肯定するような思考が感じられ、また、生の喜びを主人公が取り戻すという内容は同じであると感じた。暗いエピソードの中で、最悪の状況に追い詰められたようなときに生きているありがたさに気づく・・・そんなものなのかも。でも、気づけずに死んでしまう人もいるから、そういう人には「草にすわる」の方を是非お勧めしたいような気がする。
2004年01月15日(木) |
5年目の魔女 乃南アサ |
5年目の魔女 乃南アサ 幻冬舎文庫 1997
STORY: 会社のよい仲間だった貴世美と景子。貴世美が上司と不倫を始めたことから歯車が狂い始めて景子は職場を去ることになる。それから5年の月日が経ち、縁を切ったはずの貴世美の影が再び付きまとい始めて…。
感想: 乃南アサはどろどろした人間模様、特に女性の人間関係なんかについて描いていて、ちょっとスリリングな展開だったりする。この話も例にたがわずと言うような感じ。でも、なんかあっけなく終わってしまった。
それにしても、魔性の女というのがあるけれど、怖いなーと思う。体の相性が合って男が吸い寄せられずにはいられない関係って一体どういう感じなんだろう…。うーん…。
2004年01月10日(土) |
ぼくと未来屋の夏 はやみねかおる |
はやみねかおる 講談社 2003
STORY: 小学6年生の風太はある日未来を売る未来屋と名乗る猫柳と出会う。猫柳は風太の家に居候することになる。風太は夏休みの自由研究として地元の町の神隠しの謎に迫ることにするが…。
感想: この本は児童文学でかなり人気がある作品ということで、図書館で借りたのだが、さすがに子供向けの本というだけあって、約1日で読破できてしまった。子供の頃なら面白かったのかもしれないが、やはり大人となった今ではちょっとそこまでの面白さは感じられないというのが正直なところだ。その点、子供向けに書かれていても大人も楽しめてしまう「ハリー・ポッター」のシリーズなんかはやっぱり格上だなーとちょっと思ったりした…。
桐野夏生 講談社文庫 2002
STORY: 深夜の弁当工場でパートとして重労働に耐える4人の女たち。弥生が夫を殺し、その死体を処理するのを雅子、ヨシエ、邦子の3人が手伝うことになって…。
感想: この作品は映画化もされている作品。映画のストーリーを見た限りでは、結構さばさばしてすかっとするような作品だと思っていたのだが、本だとそういう感じではなかった。最初から最後まで何だか圧迫されるような重苦しさみたいなのが付きまとっている感じで、あまり気持ちのいい描写じゃない部分も結構あって、正直読むのをやめようかとも思ったのだが、読み進めるうちに段々面白くなってのめりこむように読んでしまった。
にしても、この作品が去年の読み納め、そして、今年の読み初めになってしまった…。面白かったけど、なんか年末年始にはあんまりふさわしくない作品だったかな…。
これを読んで思ったのは、主婦になり、何の資格も技術も持っていないとパートをするのも厳しくて、なおかつ、時給も安くきつい労働しか残っていないのだということであった。そして、自分たちがいつも食べているコンビニの弁当とかも、こういう風に深夜に労働している人たちがいるからできるのだろうかとちょっと思った。ああいうのもすごく大変な作業を経ているのだろうかと。
それから、やはり作者がうまいのか、4人のキャラクターがとてもよく描かれているし、その他の登場人物についてもものすごくわかりやすい描写で、誰が誰だかわからなくなるということはなかった。やはり面白い作品は登場人物がわかりやすいと思う。
でも、やっぱりちょっとすごい話だった。今度はもう少しさわやかな話が夜みたいなという感じ。
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