2003年11月20日(木) |
ファイアボール・ブルース2 桐野夏生 |
桐野夏生 文春文庫 2001
STORY: 火渡の付き人として相変わらず女子プロの世界で生きている近田。同期の与謝野が活躍する中、自分の限界を感じ始めて・・・。
感想: 「ファイアボール・ブルース」の続編。ちょっと短編のような感じで、色々な話が出てくるが、基本的に話はつながっている。
やはり女子プロの世界、女の世界が垣間見れてなかなか面白かった。そして、最後に出した近田の結論。苦しみぬいた末の決断だったんだろうなーと思った。プロレスでの事故なども含めて、ちょっと考えさせられた。
篠田節子 朝日新聞社 2000 作中育児日記・青山智樹
STORY: 信託銀行に勤めるエリートキャリアウーマン梨香子と年収200万円のしがないフリーライター真一がなぜか結婚することになり、不釣合いな二人の生活が始まったが・・・。
感想: かなり面白かったのだけど、最後の方からちょっと失速という感じかな。もともと育児日記をベースに書くつもりだったから仕方ないのかもしれない。育児日記は日記で面白いけれど、いきなり文章が出てきたときには正直流れがちょっと違う気もした。
たまたま書店で本の帯を目にして面白そうだと思って借りることにしたこの本だけど、NHKの夜ドラの原作だったらしい。ドラマの方も見始めたのだけれど、ドラマと本ではかなり設定も違うみたいだし、イメージがちょっと違うなという感じ。
本の方は真一の無口加減、不器用さが面白い。子供が生まれて少しは自分の意見も言えるようになるかと思ったら、そんなこともなかったのはちょっとびっくり。梨香子の方は、多分汚部屋の持ち主なんだろうなと、最初の段階で予測がついた。ただ、どっちかというと真一の視点で描かれていたから、私もどうしても真一に肩入れして読んでしまった。自分が女なのに。秋山の言葉ではっとした・・・。やっぱり共働きの場合は断然女の方がつらいんだろうなーって思ったし、女は感謝もされずにだんなや子供たちのための家事をやってきたんだなって。そう考えると確かにそうだなーって思った。そのあと結局梨香子が部屋をきれいにするようになれたのかは書かれていないから、ちょっと気になるといえば気になるんだけど。
本の中の描写で気になったのは、真一が梨香子の子供を自分の子ではなく岡本の子では?と疑っているのだけれど、この二人にそういう関係があったんだろうか・・・ということだったりする。もちろん最初の段階でそういうことがあったけど、その後一気に結婚することになって、それから先のことは書いていないし、仕事が忙しそうでそういうことはしていないのかなーとか。真一が疑うということはそういうことなのかなと。まあ、すぐに妊娠してしまったからそこからないだけなんだろうけど。何だか二人の間の愛情みたいなものの表現が少なかったのがちょっと残念だった。そういうのがもう少しあると、どうしてくっついたとかわかるんだけど。
でも、結婚ってタイミングというか。お互いにしたいと思っているときに出会ったらすぐに結婚に結びつくんだろうね。この場合の結婚はまさにそれに近かったような気もするし。(あ、真一の方は別に結婚したくはなかったのかな・・・)
それにしてもタイトルからするとこういう話だとは思わなかったなあ。もっと二人の間に愛があって、身分(?)の差なんて関係ない!っていうような話かと思っていたので、ちょっと意外だった。でも、とっても面白かったのだけは確かだ。
梨木香歩 偕成社 1999
STORY: りかちゃん人形がほしいと思っていたようこの元におばあちゃんから人形が送られてくる。その人形は黒髪の人形でようこが思っていた人形とは違った。しかし、りかさんと名づけられた人形は不思議な力を持っていて・・・。
感想: 最初のうちは乗れない感じで、あまり面白くないような気がしてしまった。いや、りかさんが話すあたりまでは面白かったけれど、他の人形との絡みみたいなのがそんなに面白くないような気がして・・・。でも、じっくり読んだら面白いし、味わい深い作品ではないかと思う。
これの続きが「からくりからくさ」という作品のようなので、今読んでいるけれど、「からくりからくさ」を読む人は「りかさん」も合わせて読むとよいのかも。それにしてもなぜかこれが児童文学なのだよね。児童が読むには難しいというか、面白くないような気もしたりするんだが、どうなんだろう?
2003年11月03日(月) |
青空のむこう アレックス・シアラー |
アレックス・シアラー 金原瑞人訳 求龍堂 (2001)2002
STORY: ハリーは気づいたら交通事故で死亡していた。事故に遭う前にお姉さんとけんかになって言ってはいけないことを言ってしまったことを後悔していたハリーは、死者が先に進むべき世界に行く前にお姉さんに自分の気持ちを伝えようと思うが・・・。
感想(ネタバレあり): この間の「13ヵ月と・・・」を書いた同じ作者の本。前に書店で見かけたときも読みたいと思っていたことを思い出して借りてみた。
この本、自殺したいとか、生きるのが疲れたとかいう人が読むとよい本なのでは?と思った。自分が死んでしまったあとのことを想像したことは多くの人にあるのではないかと思う。私も子供の頃などはそんなことを想像したりして、葬式はどうなるのかとか、死んだあとで後悔する人がいるのでは?とか思ったりもした。
ハリーも学校に戻ったときにそれを期待するが、自分がいなくなったからといって周りの子供たちの日常が変わるわけでもない。自分が忘れられていることに怒ってみたりするハリーだが、やがて気づく。いつまでも悲しんでいてもらっても自分がつらいっていうことに。
自分の墓で父と会い、家族が暗く沈んでいることを知ったハリーはショックを受け、自分の姿が相手に見えないとはわかっていても、家族を励まそうと精一杯の態度を取る。お姉さんとどうしても和解しなくてはとがんばるハリー。このあたりで涙が溢れ出しそうになった。が、電車の中で読んでいたので、さすがに泣くわけにもいかなかったけど・・・。
幽霊になってもやり残したことに縛られて同じところを延々と回っている人もいた。ギョッとしたのは映画館で寒く感じるのは幽霊がいっぱいいるからという文章・・・。実は私も映画館って寒いなと思ってたから。まあ、関係ないね。
とにかくいろんなことに縛られていてはダメで、そのことを消化して先に進んでいかなくてはならないということ、縛られている本人は自分が縛られていることには気づきにくいこと、どんな日常であっても死んでしまったらそのことができないのだから、生きているうちに楽しまなくてはならないこと、死んだとしても自分がいなくなったことに影響を受ける人間はそうは多くはないこと、また死ぬということは最愛の人たちを悲しませること・・・。
なんか色々なことを伝えているような気はした。泣きたい人にはお勧めの作品かも。
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