感想メモ

2003年05月31日(土) ゲド戦記V アースシーの風  ル=グウィン

清水真砂子訳 岩波書店 (2001)2003

STORY:
夢の中で黄泉の国との境で死んだ妻に触れられたハンノキは、その日を境に眠るたびに黄泉の国の人々に呼ばれるという悪夢を見続けていた。ロークで元大賢人のゲドに会うように言われたハンノキは、ゴントで隠居生活を送るゲドの元へ向かう。その頃、ゲドの妻となったテナーは王子レバンネンに乞われて、娘テハヌーとともにハブナーに滞在していた。ハブナーはカルガドから王女を無理矢理押し付けられ、困っていたのである。ゲドと会ったハンノキはテハヌーたちの元へ行くよう言われ、ハブナーへと向かう。同じ頃、竜たちが再び人間たちを脅かし始めて・・・。

感想:
 「ゲド戦記」は元々3部作で、3作目からだいぶ経ったときにゲド戦記最終巻として4作目が出た。そして、なぜかそれからやはり10年くらい経っていると思うのだが、このたび本当の最終巻となるらしい5作目が出た。実は私はこの「ゲド戦記」を卒論に選んだ。ちょうど4作目が出て完結ということだったので取り上げたのだけど。なぜか5作目が出ていた・・・。

 ということで、これは5作目も読まなくては・・・と思った次第なのだが、実際、卒論で取り上げてからもう10年くらい経っていて、ストーリーをすっかり忘れてしまっていた。しかし、最初から4作読む暇もないので、結局自分の卒論を少し読み返して、この世界を思い出し、ストーリーも確認した。

 しかし、この5巻・・・一体何が言いたいんだろうと・・・。卒論をやったときはもちろんいっぱい考えたし、何度も読み返したし、他の参考資料も読んだ。でも、今回は4巻までのストーリーもうろ覚えだし、おまけに早く読まなくてはというプレッシャーもかかっていたので(図書館で借りているため)どうもそこまで深くつきつめては考えられなかった。

 それにしてもこれが小学校6年生以上向けなわけだよね。これは本当のことを言って子供向けの話ではないような気がする。やはり昔のファンタジーの方が現代の「ハリー・ポッター」よりも深い意味があるというか・・・。もちろん「ハリー・ポッター」も私は好きだ。「ハリー・ポッター」にはファンタジーの中にエンタテインメントがちりばめられている。でも、「ゲド戦記」にはそういうエンタテインメントの要素はほとんどないといっていい。アースシーという架空の世界でも、その世界観ははっきりしている。(「ハリー・ポッター」はこうした世界がなく、現在が舞台で、巻が進むに連れとってつけたように世界が広がっている感もある)また魔法というのも「ゲド戦記」では世の中の均衡を乱すからあまり使わないほうがいい存在。それに反して、「ハリー・ポッター」では友達同士でも魔法をかけあったりしている。同じ魔法の学校でも全然趣が違う。「ハリー・ポッター」はイギリスなのだけれど、「ゲド戦記」はアメリカ。その違いもあるのかとも思うけれど、それは関係ないか。

 この5巻目では、竜と人間の関係とか、テハヌーが一体どこから来た何者なのかということが描かれている。ストーリー的に何か大きなことが起こるというわけでもなくて、本当に地味な話だなーと思う。4作目までで終わりにしてもよかったような気も。ただ確かにテハヌーが何者かという問題は残っていたと思うけれど。つまりは結局5作目はテハヌーとレバンネンの問題を取り上げた巻ともいえて、ゲドも出てくるけれど、あまり活躍しないし、すでに世代は若者たちに移っているのだなーという印象はぬぐえないような・・・。

 ともかく難しかった。外伝というのがこの本の前に出ていたのだそうで、そちらもこの先翻訳されるそう。アースシーの世界が好きな人は必読かも・・・。



2003年05月27日(火) 四日間の奇蹟  浅倉卓弥

宝島社 2003

STORY:
将来を期待されていたピアニスト如月。彼は留学先のウィーンで事故に巻き込まれ薬指を吹き飛ばされてしまい、ピアニストへの道を閉ざされてしまう。その事故で孤児となった知的障害のある千織を引き取り、2人は日本へ帰る。その後、千織にピアノの特殊な才能があることに気づいた如月は彼女にピアノを教え込み、彼女のピアノで慰問公演を時々行う生活を続けていた。ある時、訪れたセンターでの4日間とそこで起こった出来事について描く。

感想:
 最初、好きな系統の話だと思った。この本は最近ものすごく読まれている図書館でも人気があってなかなか借りられない本だ。「このミステリーがすごい」というのでも1位になった作品である。

 淡々とした描写は如月の心の様子をよく表している。また知的障害を負いながらもピアノにだけものすごい才能を示す千織についても、ありうる話だと思ったし、科学的な内容も盛り込まれていてなかなか興味深く読める。

 途中まではすごく面白かったし、これからどういう奇跡が起こるのかと思いつつ読んだ。多分千織に何かが起こるのであろうことは想像ができた。し・・・しかし・・・。こう来るとは・・・と呆然とした。私は結構不思議な話は好きだし、ものすごく受け入れられるほうなのだけれど、それまでがあまりにも淡々としていたので、なぜにこういう展開になるのか?とちょっと冷めてしまった。千織に奇跡を起こす方法ならもっと他にもあったんじゃなかろうかと。

 最後の方のピアノを弾くシーンも、多分盛り上がりのある一番のシーンなのだと思うけど、なんだか乗れなかった。でも、最後の展開とかは嫌いではなかったのだけれど。内容的には嫌いじゃないし、いい話だとは思うんだけど、いまいち乗れなかったのは文体のせいなのかな? 終わり方はよかったと思うのだけれど、実際このあとどうなったかがちょっと気になった・・・。

 ところで、「きせき」は普通「奇跡」と書くけれど、この本のタイトルは「奇蹟」。この字の違いは何かあるのだろうか? それから、一応読者投票かなんかで1位に選ばれた作品なわけだし、多分、私のような感想を持つ人の方が少ないんだろうと思う。きっとみんな純粋に感動して楽しく読んでるんだろう。あと、最後にベートーベンの「月光」。多分あの曲だったとは思うけど、3楽章が思い浮かばなかった。どういう曲だったかな。なんかとても聞きたくなった。それにこの話はこの曲を知っているのと知らないのとでも味わいには差がでそうな気がする。今度機会があったら聞いてみよう。



2003年05月22日(木) ジェインに舞いおりた奇跡  ファーン・マイケルズ

中村凪子訳 ヴィレッジブックス (2001)2003

STORY:
大学卒業間近、友人コニーと夜道を歩いているときに襲われたジェイン。卒業後結婚予定だったコニーはレイプされ自殺。ジェインはその時のことが忘れられず、精神科医となる。ラジオ番組を持つなどして地位を確立したジェインは、ある患者を受け持ったことから過去の出来事を思い出し、その決着をつけようと動き出すが・・・。

感想:
 読む本がなくなってしまい、何か1冊買おうと思って久しぶりに買った本なのだけど、面白くて買って正解だった。

 この話、いろんな要素が絡み合って、どういうストーリーとかどういう話と一言で言うのは難しいかも。

 大筋はレイプ犯を探し出すというサスペンスミステリーといってもいいかもしれないけれど、途中で幽霊が出てきて助けてくれたり、恋人となるマイクとの恋愛模様があったり、ジェインの愛犬やジェインの名付け親たちが預かることになった元警察犬のK9と呼ばれる犬との交流の話があったり、はたまたジェインが子供時代に受けた心の傷の話があったり・・・。とまあ、色々な要素が入っているけど、そのどれもが中途半端にならずうまい具合に絡み合っていたかも。

 特に犬好きな人は絶対に面白いと思うと思うので、お勧めだな。私は犬好きではないけど、犬が出てくる話って結構好き。全体としてもドキドキして、続きが気になるような感じで、かなりお勧めです。



2003年05月19日(月) 闇が呼んでいる  赤川次郎

2001 幻冬舎

STORY:
仲良し4人グループは、自分たちの犯した罪を免れるためにクラスメートの男をレイプ犯に仕立て、彼と両親を自殺に追い込む。その後、事件はうやむやになる。数年後、大臣の父を持つ美香は一児の母となり、小百合は大物政治家の愛人となり、さとみはテレビ局のアナウンサー、敦子は大学の講師と、皆それぞれ幸せな道を歩んでいた。しかし、そのとき死んだはずの男の名前で手紙やFAXなどが届き始め・・・。

感想:
 ものすごく久しぶりに赤川次郎を読んだのだけれど、今までとは作風がちょっと違うような気が。もっとすぐに読めるかと思っていたのだけれど、案外読み終わるまでに時間がかかったのは、もちろん分量が多かったというのもあるとは思うのだけれど、作風がちょっと違うからかなとも思った。何というかもっとユーモアミステリーみたいなイメージがあったので。

 この話はもっとドロドロした話で、所々ユーモアっぽい表現(赤川次郎っぽいというのかな)が混じるものの、どっちかというとシリアスな人間模様を描いた作品だったかもしれない。

 それにしても大臣とか政治家というのは、今でもこのような権力をもっているのだろうか? だとしたら、すごいなーと思う。多少そういうのって残っているのかもしれないけど、今ってこういうことがすぐにスキャンダルとかになってしまいそうだけれど。

 自分の幸せのために他人がどうなっても構わないというような美香の強さ。ある意味すごいかもしれないと思ったけれど、やっぱり不幸なのかもしれないなーと思った。



2003年05月15日(木) ももこの21世紀日記 N’02  さくらももこ

2003 幻冬舎

さくらももこがi-modeのサイトかなんかに発表しているらしい日常の一こまをまとめたもの。絵は書き下ろし。そのシリーズ第2作目。01年秋〜02年秋までを収録。

 ということで、このシリーズ2冊目が出ているということは、今後3,4と続いていくことだろう・・・。

 この日記ではついにさくらももこの息子が、母親がさくらももこだということに気づいたことがさらっと書かれていた。そして、二人で作った絵本なのかな? 「おばけの手」というものを出版することになっていて(もう出版されているみたい)、母親がさくらももこだから、息子もペンネームをつけるということになり、「さくらめろん」というペンネームにしたとあった。さくらももこもそのセンスのよさを誉めたとあったけど、私も確かに「さくらめろん」というのはなかなかいいかもなと思った。今後親子で何かやっていったりする予定なのだろうか。とりあえず、ちょっとこの共作は見てみたい気がする。

 ずっと出ていなかった「ちびまるこちゃん」の15巻も発売されたりと、ぼちぼちと仕事をしているらしい。今後もこんな感じでぼちぼち本が出て行くんだろうな。ベストセラーと呼ばれる作家の中で、これほど人気があまり衰えず、毎年のように本が出て、図書館などで人気本になっているのを見る作家もそんなに多くはないのではないだろうか。特にこういうジャンルの人はいないと思う。きっとそこがこの人の売りなんだろうけど。そして、軽く読める内容なのがいいんだと思う。ただ、コストパフォーマンスで考えると、あまりにもすぐに読み終わるため、ちょっとどうなのかと思う。図書館で借りて面白さをちょっと味わえれば十分という、私と同じような人が多そうな気がするんだけど・・・。



2003年05月12日(月) 少年  ビートたけし

新潮文庫 1992

ビートたけしが少年を題材にした短編集。「ドテラのチャンピオン」「星の巣」「おかめさん」の3本。

 実はこの作品、最初の主人公の話が3篇だと思っていたのだけれど、そうではなく、まさに主人公が別の3篇だった。

 この3作品の中では「ドテラのチャンピオン」が最も面白く、あとのはそうでもなかった。ただ「ドテラ」って??とちょっと思った。ゆかたみたいなものなんだろうか・・・。挿絵とかもないし、よくわからなかった。あと「はだし足袋」というのも知らない。やはり世代が違うからか。でも、この運動会の描写は古きよき時代の(?)運動会そのものの様子を良く表していると思う。私たちの世代の運動会とはまたちょっと違うし、現代の運動会はもっと違うんだろうなーと思うけれど。(だって、最近ブルマーなんてはいている学校ってほとんどないらしいし・・・)



2003年05月10日(土) 私がアナウンサー  菊間千乃

文藝春秋 2001

フジテレビアナウンサーで生中継中にビルの5Fから転落した菊間千乃さんの手記。

 ビルの5Fから生中継中に落ちた菊間さん。私は番組自体を見ていたわけではないけれど、その日のニュースの映像で何度も流れたので転落シーンは見ていた。きっと下半身付随とかになるだろうと、みんな思っていたと思うけど、今では復帰して「あるある大事典」などでも見かける。その事故のことや闘病についてを語った本なのである。が、事故のこと、闘病のことだけではなくて、菊間さんのバックグラウンドについてとかもかなり書いてある。

 事故と闘病については、実際のところ読んでいてこっちまで具合が悪くなってくるような感じがしてしまった。でも、本当に健康のありがたさというのを感じることはできるとは思う。

 闘病以外のことも、なるほどと思って読んだが、もしかしたら、この作者がきれいごとを言っているようにも取れるような気もして・・・。多分とてもいい子すぎる文章だからじゃないかと思う。恨んだりとか荒れたりとかもほとんどないし・・・。いや、そういうものを期待しているわけじゃないけど、あまりにも読む人の反応を考えて、いいことしか書いていないような気もしてしまったのよ。それから、手記だから仕方ないのかもしれないけど、あったことが順番に書かれていない部分があって、ちょっと困惑したところもあった。転落ビデオを見たのは2年後ならしいのだが、その部分が数ヵ月後の日記のところで出てきて・・・。あと日記の月日が何年なのかが抜けているので、もう2年もいきなりたったのか?と誤解を与えたような気もする。

 でも、本当にこのままの人なのだとしたら、闘病をする上で本当にすごい人だなあと思う。やっぱ人に感謝して、こういう風にポジティブに生きていくことは重要だよね。

 それから、転落アナウンサーと呼ばれることについての苦悩が書いてあったけれど、きっとこれからも転落アナウンサーというのはついて回るだろう。普段その番組を見ていなかった私ですら知っているアナウンサーなのだから、注目される存在であることは間違いない。だから、これからもそのことを背負いながら、受け入れ、宣伝材料の一つくらいの気持ちでがんばってほしいと思った。

 ところで、この事故の引き金となった会社の社長さんのその後について触れられていなかったんだけど、どうなったのだろう? 裁判にするみたいなことが文章中に出てきたけど、その後のことが書かれていないのは気になる。それから、この本の最初に出てきた彼とはどうなったんだろう? 結婚してましたっけ? 最近文庫化されたみたいだけど、そっちにはその後のこととかに触れられているのでしょうか?



2003年05月09日(金) 西の魔女が死んだ  梨木香歩

新潮文庫 2001

STORY:
学校に行きたくなくなったまいは、英国人のおばあちゃんの家に預けられる。おばあちゃんは魔女の末裔ということで、まいに魔女修行について教える。まいもおばあちゃんの言うことを聞こうと努力をするが・・・。

感想:
 最後の部分で感動の涙が出そうになった。電車の中だったから押さえたけど。子供が主人公の作品はかなり好きなので、この作品もかなり自分好みだろうとは思ったのだけど、案の定だった。

 おばあちゃんとの暮らしは、田舎での規則正しい生活。自然と一体になった無理のない生活というか、本当にここにある描写だけでも、好きな人にはぞくっとくると思う。シンプルな田舎の生活というのかなあ。自給自足に近い。自然の描写もすごくきれいで、この花は一体どういう花なんだろう?とか色々と思うところがあった。

 それにしても、まいは偉い! 片づけがあまり好きじゃない私。こういうきっちりした生活に憧れるものの、無理っぽい気がしてしょうがない。タオルやシーツのたたみ方まで決まってるなんてさー。でも、いいなあ、こういう厳格そうな生活・・・と思ってしまう自分もいる。1週間くらいなら体験してみてもいいかも。

 魔女修行の第一はきちんとしたリズムでの生活ときちんとした食事。それじゃあ、運動の修行と変わらないというまいに、はじめの部分は同じなんだよと教えるおばあちゃん。そう、やっぱり規則正しい生活、きちんとした食事・・・これは人間が生きる上で一番大切なことなんだろうなー。現代人はなかなかこういったことを忘れがちだし、社会に出ればなかなかそうも言っていられない状況もあるけど、体調を整えるにはこういうのが一番大事だと思う。

 魔女の修行は意志の修行。自分がやろうと決めたことをきちんとやる。それが修行。そして、それが積み重なっていくと自信となって気づいたら違うところにいる。これはすごくわかると思った。自分自身、何事も中途半端な自分が嫌だと思って、高校時代に日記を毎日つけることを始めた。そしたら、まあ性に合っていたのか、今でも毎日のように日記を書きつづける生活が続いている。でも、一つのことをこうやって続けられると、本当にたった一つでも自信になる。そして、その一つができたら、次の一つに挑戦して・・・。今、一つが増えてたくさんの継続している事柄がある。私も魔女修行できていたのかな・・・。不思議な声を聞いたりはできないけどね・・・。



2003年05月08日(木) アミ 3度めの約束 愛はすべてをこえて  エンリケ・バリオス

石原彰二訳 さくらももこ絵 徳間書店 (1998)2000

STORY:
双子の魂のビンカと会いたいという思いが募るペドゥリート。ある日、アミがまたやってきてビンカとの再会を果たす。二人は地球で一緒に暮らすために、石頭のおじさんに許しを乞おうとするが・・・。

感想:
 いよいよ第3段。最終編。

 今回の話はスリリングでどうなることやら・・・と先が気になった。愛があれば何とかなる、そのことが書かれていた訳だが・・・。
 
 自分としてはおじさんがスワマに変わっていく様子にびっくりした・・・。それと宇宙人の高度な文明のこととか。また実際1冊目で出てきたことをひっくり返すような描写なんかもあって、どうせだったらやっぱり3冊読んだほうが世界がわかるんだなーと思った。個人的におばあちゃんとクラトの関係が気になった。この二人も双子の魂だったのかなあ・・・。結局そうじゃなくても結婚するということなのか・・・。いまいちこの辺がわからなかったりもしたけど、あまり深く考えるのはよそう。



2003年05月02日(金) シカゴ(ネタバレあり)

 アカデミー賞を数個受賞したミュージカル映画「シカゴ」を見に行った。

 正直、こういう話だとは思っていなくて、最初の方でいきなりロキシーが不倫相手を銃で3発も撃ったのにはびっくりした。それも相当大胆な殺し方で・・・。

 私はミュージカル映画ってほとんど見たことがないのだけれど、この映画がちょっと違うと思ったのは、普通のシーンとミュージカルのシーンとの融合の仕方。普通のシーンと絡めてミュージカルシーンが交錯してくる。だから、最初ロキシーが頭の中で妄想を感じているシーンがミュージカルになっているという設定か?と思ったが、別にそういうわけじゃなかったんだろう。

 刑務所に入ったロキシー。そこには殺人の罪で収容されている囚人が6人いた。どの女も男を殺して入所している。舞台は1920年代のシカゴ。ここではいまだに女性の囚人が死刑執行をされたことはない。この6人は男は殺されても当然のことをしたから自業自得よ・・・と言って歌って踊るわけだが・・・。この中の一人がシカゴ始まって以来、初めての絞首台に送られる女囚一号となる。そして、このお方、エカテリーナ何とかという名前だとクレジットの英語でわかったのだが、絶対にバレエをやっていたと思う。ハンガリー出身という設定なのか、中で歌を歌うんだけれど、それが英語じゃなくて、字幕も出なかったので、一体何をして刑務所に入っていたのかはわからないのだけれど・・・。何となく言葉がわからなくて、弁護士もうまく雇えなくてそれで絞首台送りになってしまったような気がする。それにしても、本当にラインがきれいで、他の人と全く違うというのがわかる。やっぱり自分がバレエをやっているので、バレエが一番美しいと思ってしまうのだが・・・。(もちろん他の踊りも嫌いではないのだけれど・・・)

 この刑務所を束ねているのがママと呼ばれる人物。お金をもらえれば囚人に親身になってくれるわけ。最初にママによく尽くせばママもよくしてあげる・・・っていう歌で登場するんだけど、もうこのインパクトの強いこと! 一気に気に入ってしまった。私ってこういう貫禄のある人、好きなのよねえ。

 そして、この人に頼めば絶対に有罪にならないといわれる敏腕弁護士ビリー・フリン! この人もお金で動く人なわけなんだけど、めっちゃくちゃ面白い。リチャード・ギアのイメージは私の中ではもっと違ったものだったので、あまりの変わりっぷりとそのあまりのおかしさに、別の意味で笑いがこみ上げてきてしまった。あれってコミカルなつもりはあまりなかったのかなー? いや、そんなことはないよね。とにかく登場シーンの踊りはにやけた顔がおかしくておかしくて・・・。笑うシーンじゃないのかもしれないけど、吹き出しそうになった。でも、最後の法廷のシーンではタップダンスで締めてくれていたけれど。リチャード・ギアも昔は舞台に立っていたことがあるそうで。

 でも、彼の踊りで最も面白かったのは、ロキシーとの記者会見の踊り。操り人形に見立てた踊りなのだけれど、ものすごくおかしくておかしくて! このシーンはかなりいけてたと思うんだけど、どうでしょう? この踊りの振り付けとかを考えた人は本当にすごいなーなんて思ってしまいました。それと、女性記者というかアナウンサーの方。個人的に面白くて気に入ったな。

 ロキシーは結局有名になりたいわけ。注目を集めるためならどんなことでもする。当時の陪審員は男だけだし、自分と違う人物を演じれば、顔はかわいいし男はだまされるというわけ。多分自分の体もフルに活用しているとは思うのだけれど。髪形もかつてのマリリン・モンローみたいな感じにしてしまって、目をパチパチしてみせる。こんなことで男は簡単にだまされるわけなの?と突っ込みたくなるんだけど、だまされるらしいよ。妊娠した振りをして倒れこみ、病院に担がれる。そして、病院の先生も嘘を真実と言ってしまうわけで・・・。一体この人たちの間に何があったかは・・・。

 にしても、かわいそうなのはロキシーのだんなさんよねえ。名前は間違えられるし。妻は他の男と不倫。でも、妻のために弁護士に高いお金を払う。彼は貧しくお金がないのに。離婚しようかとも思うけれど、子供の話を聞いて自分の子供だと思い込んだり・・・。本当にこの中で一番かわいそうなのは彼ではなかろうか・・・。

 そして、ヴェルマ。彼女はロキシーが来るまでフリンの弁護を受けるはずだったけれど、ロキシーが来たことによって公判日がずれてしまうし、誰からも注目されなくなってしまう。ロキシーは最初に彼女に冷たくされたことから、その後、同じような態度で彼女に接するが・・・。弱肉強食じゃないけれど、強い方が弱い方にひどい態度を取るとよくないことが起こるのねなんて思った。いつ立場が入れ替わるかわからないのだから、適当に接しておくのがよかったのかも。でも、最後には二人は利害関係の一致から殺人犯2人のショウダンサーとして、大人気になるわけだけれど。この最後のショウシーンで二人がライフルに見立てたものを担いで踊るのはものすごく受けたわ。

 ロキシー役はレニー・ゼルウィガー。彼女は「ブリジット・ジョーンズの日記」では体重を増やしたらしいのだけれど、この「シカゴ」では見事なプロポーションを見せている。ミュージカルは初めてだというけれど、結構はまっていたように思った。甘い声で、男をだませる役だなーという感じ。対するヴェルマ役のキャサリン・ゼタ・ジョーンズはかつてはミュージカルをやっていたことがあると言う。やめてしまって、カンを取り戻すのが大変だったらしいが、そのため冒頭のシーンでは開脚などその肢体を十分に生かした踊りと歌を披露していた。人によってはキャサリンがレニーを圧倒していたというような声もあるが、どうなのかな。役柄が違うからこれはこれでいいかなって思ったけれど。それとキャサリンの踊りのシーンなどが少ないので・・・。まあ、レニーの方も実際踊ったり歌ったりのシーンはそんなにあるわけじゃない。

 結局歌って踊れる人がわりかし重要な部分を占めていたのと、周りで踊っている人がもり立てていたのもあって、絢爛豪華な感じに仕上がっていたと思う。また時間的にも長すぎも短すぎもせず、ストーリーも山あり谷ありというような感じで、こう来るか?とひきつけられたりして、飽きずに楽しめたと思う。

 この作品を見ると歌が頭の中を回るし、踊りも踊りたくなってくる。(踊れないけど・・・) それと、英語もそんなに難しくはないものもあって、歌の部分なんかは結構何を言っているのかわかったりなんかして。踊りに気を取られてついつい字幕を読むのを忘れてしまったりという場面もあったのだけれど、それでも意味は通じるから大丈夫・・・。とりあえず満足した映画でした。



2003年05月01日(木) ちゅらさん2

 NHKの朝の連続ドラマでやっていた「ちゅらさん」の続編「ちゅらさん2」。9時15分からの45分で、全6回だった。

 だいぶストーリーを忘れていたような気がするが、朝ドラでやっていたときはものすごく面白く感じられた。特に最初の方が素晴らしくよくて、また沖縄の底抜けの明るさ、能天気さに何となく晴れやかな気分になったりしたものだ。(沖縄って仕事しなくても生きていけそうな環境で少しうらやましいと思うときもあるけど、実際はどうなのだろう?)

 その続編ということで見たわけだが・・・。よいところと悪いところと半々だったかもしれない。というか、以前よいと思っていたノリに私のほうがついていけなくなってきていたような感じもあった。あの頃はよいと思っていた能天気さ、コミカルさ・・・そういったものがすべて裏目に感じられてしまうというか。

 「ちゅらさん」はもともと私のような肯定派と否定派の対立が結構あったようだ。当時、私はなぜ否定する人がいるのかよくわからなかったけど、確かに能天気でご都合主義すぎる、リアリティに欠けるといわれるとそうであるし、今回の私のようにそういうところが一度気になりだすと、なんだかのれなくなってしまうということはあるのかもしれないと思った。

 今回の2は最初の方はまだよかったのだが、段々最後に行くにしたがってうん?と思うところが多かったような気もする。だが、時折やはり年上の人たちの含蓄のありそうな言葉があったりして、そういう部分は相変わらず嫌いではなかった。でも、あまりにも茶化したような構成になる部分では、ついていけなさを感じてしまった。特に「似ている」というところはもう飛ばしたくなったし・・・。せっかくのいい話なのだから敢えて受けねらいの構成にする必要はないわけで、もう少し落ち着いた作り方にしたらもっとよいものになったような気がした。

 ということで、つまらなくはないが、だからといって、画面にかじりついてまで見たいとも思うようなものではなく、少し残念だった。やはり続編を作るのは難しいということなのかもしれない。「私の青空」の続編の方がこれに比べると数倍面白かったような気がする。


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