感想メモ

2003年01月31日(金) セレブな田園  ウェンディ・ホールデン

安藤由紀子訳 文春文庫 (2001)2002

STORY:
ロージーは恋人のマークとロンドンの狭くうるさいフラット暮らし。田園に引っ越したいと思ったロージーはマークが田園を題材にしたコラムを書くことになったため念願の田園暮らしを始める。世捨て人のような大人気ロッカーのマット・ロックや自分を偉大なる女優と勘違いしている金遣いの荒いサマンサなど都会から移り住む人、他人の郵便物を全て覗き見している郵便屋ダフィー、牧場主のジャックなどなど、個性的な人たちがいっぱいで・・・。

感想:
 最初のうち、とても面白くないような気がして、途中でやめたくなったが、読み進めるうちに何だか考えもしなかった展開になっていって、結構面白くなった。舞台はイギリスで、現代では都会を捨て田園で過ごすというのがちょっとした流行ならしい。作品中にはイギリスや欧米で人気のあるスターたちの名前が実名で出てきたりして、そういったことに興味がある人にはもっと楽しめるかもしれない。(あのJ・K・ローリングも再婚して田舎の城みたいなところに住んでるらしい)

 結局、ロージーが最後に誰と一緒になるのか・・・といったところに注目が。恋人のマークなのか、牧場主のジャックなのか、世捨て人ロッカーのマットなのか? 最後までどうなるかわからない展開だったのがなかなか面白かった。

 でも、実際にサマンサとかみたいに金遣いが荒い人とか、高慢ちきな人とかっているのかなー? ある意味そういうことができる人ってすごいと思う。



2003年01月29日(水) 千と千尋の神隠し(TV)

 映画を見て以来、一度も見てなかったけれど、ついにTV放映ということでもちろんビデオに録画。出かけていたのだけれど、家に帰ったら家族全員が珍しくTVの前に集まって一緒に見ていて、私もついつい途中から見始めてしまった。で、映画を1回見ただけじゃよくわかってなかったところが、くっきりわかってきたりという部分もあったかなーと思った。

 映画を最初に見ての印象は、最初の方は引き込まれるように見たのだけれど(展開が早かったのもある)、後半ちょっとだれて面白くないというか、退屈な感じがしてしまったということだ。多分映画自体の時間が長かったのもあるのだと思う。TVだと途中でCMが入るのでそういうのがないからか、わりかし飽きないと思った。(途中から見てたのもあると思うが) にしても、CMになるととたんにものすごい大音量になるのは本当に迷惑だ。うるさすぎる。あとCMが多すぎ、長すぎ。仕方ないことなのかもしれないけれどやっぱりちょっと興ざめ。

 途中から見た後、今度は宮崎駿の特番(放映の30分前からやっていたやつ)とともに最初から途中まで映画を見た。宮崎駿の幻の名作がと言われていたので楽しみにしていたけど、なんか途中途中しか映らないし、うーん?って感じ。そんな風に宣伝しなくてもいいのになーと。

 映画を見てわからなかったけど、何となく確認できたのは、ハクが食べたのが契約のハンコだったこと。でも、このハンコを盗んで一体何をしたかったのだろう? 千尋はハンコを銭婆に返しに行くわけだけど、千尋が踏み潰したのはハクを操っていた魔法の虫。ということは、ハンコの魔法はまだかかっていたはず。でも、千尋が大丈夫だったのは、あの河の神からもらったダンゴが魔法を消したということなのかな。前に誰かが書いていてそこまで見てなかったなと思ったんだけど、あの契約のハンコは実際は千尋をも支配していたハンコだったのかな? あのハンコがあれば、千尋は湯婆婆との契約も無効にできたとか? その辺が相変わらずちょっとわからなかった。

 もう一つ、帰りの車のシーン。両親は何も覚えてない。彼らは引越しの最中で、引越し屋さんのトラックがやって来るからそれまでに新居にたどり着かねばならない。車がほこりをかぶってよごれていたということは、やはりかなりの日数が経っていたということなのだろうか? 映画はそこで終わりなので、実際に引越しに間に合ったのかどうなのか、全く描写はないのだが。

 私は最初見たときこの部分に何だか釈然としないものを感じた。まず両親が豚になったこととかを全く覚えていないこと。これもちょっとなーと思った。で、その後、一体どれだけの日数が経ったのかが最後まで描かれていなかったこと。

 今回見ていて、一体千尋は何日向こうの世界にいたのかを考えてみたら、まず最初の日の1日。雨が降って河の神がやって来る2日。カオナシが暴れ、銭婆のところに出かける3日。銭婆のところから帰って来た4日目の日にそのまま元の世界に帰った・・・となると、やっぱり4日しか留守にしていないはず。車の汚れ具合としてはもっともっと乗らなかったくらい汚かったような気もして・・・。

 ということで、今回見て思ったのは、やっぱり元の世界の時間はあのまま少ししか経っていない。だから、あのあと引越し屋さんもやって来ただろうということ。ただ車が汚れていたのは、千尋一人だけに「これは夢ではなくて本当の出来事だった」ということを教えるためのものだったということ。そんな風に思った。

 はじめに映画を見た後は千尋はどうせ元の世界の戻ったらまた同じに戻るだろうと思ったのだが、今回はあまりそういう風には思わなかった。それよりあの両親、おまえたちこそ反省しろ!と思うのだが、結局この両親は自分たちが豚になったことも何もかも覚えていないわけで、全く何の進歩もないままなわけだ。これってどうなのかなーとも思うのだが・・・。

 ちなみに非売品プレスシートを持っているので、久しぶりに見てみたら、「千尋の才能はああいう世界にあっても消されたり食べられたりしないことにある。普通の人ならばすぐに消されてしまうだろう」とあって、うーん、まさに自分だと思った。きっともう最初の時点で私なら終わってしまってるだろうなー。でも、豚になったみたいな両親のような行動は取らないだろうけど・・・。

 ちなみにうちの両親は評判の割にどこが面白いんだかわからないというような反応だった。年を取るとともによさがわからない傾向にあるような気がするのは気のせいだろうか? あとは多分、あまりにも評判だけが先行しているような気がしてならない。いい、いいと聞かされていると、それが期待はずれのような気がするときに大したことないという感情が大きくなってしまうのではないだろうか? あと、視聴率がすごかったらしいが、これも大人も見る上に子供たち向けでもあったことが一番の要因だろう。大人向けだけ、子供向けだけの映画ならこれほどの視聴率にはならなかったはず。

 あともう一つ。DVDが赤くて問題になっていて、現在裁判を起こそうという動きもあるらしいが、放送されたのはやはりDVDと同じバージョンだったらしく、確かに言われると画面が赤味がかっているような気もしなくはなかった。でも私はあまり気にならなかったし、言われてみればそうかもという程度。大体があの映画、赤系がバックのところが多いし、または背景がものすごくごてごてしていていろんな色が混ざっていてよくわからないという場面が多かったような・・・。裁判の行方は実は気になって見てはいるのだけど、今後どういう展開になるのかな?



2003年01月19日(日) 2002年 本のベスト・テン

毎年恒例、独断と偏見による、本のベスト・テン。

これは私が毎年、その年に読んだ本の中から、ベスト・テンを決めるという、めちゃくちゃな企画。

今年は海外の作品、日本の作品となるべく交互に読んでみようか・・・という感じで取り組んでみました。けれど、実のところシリーズものにトライしていた時期があり、その意味であまりたくさんの本を読むことができなかったかもしれません。

総冊数は72冊。その内訳は、本56冊、漫画16冊。なんと本は去年と同じ冊数でした。びっくりしました。漫画は新しいシリーズ物を一つも読まなかったので冊数が大幅減となっています。

では、今年のベスト・テンの発表です。

1 ハリー・ポッターシリーズ J・K・ローリング 4・8・11月
2 模倣犯(上)(下) 宮部みゆき 10月
3 椿山課長の七日間 浅田次郎 12月
4 ハッピー・バースディ 新井素子 11月
5 女たちのジハード 篠田節子 2月
6 地下鉄(メトロ)に乗って 浅田次郎 5月
7 聖域 篠田節子 3月
8 指輪物語 全9巻 J・R・R・トールキン 8〜12月
9 リバーズ・エンド(上)(下) ノーラ・ロバーツ 5月
10 伯爵夫人は万華鏡 ドロシー・ギルマン 7月

以上です。
感想等はこの日記をご覧下さい。
でも、一言くらいコメントを書いてみます。

1位の「ハリー・ポッター」シリーズは「ハリー・ポッターと賢者の石」「ハリー・ポッターと秘密の部屋」「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の3冊を読みました。シリーズものの最新刊としては現在4巻目が発売されていますが、そちらは未読です。やはり人気があるシリーズだけあって、子供向けと思われがちでしょうが、大人でも楽しめます。現代作家が描いているファンタジーなので、すんなりと読めるところが受けている理由かもしれません。古典ちっくなのが好きな人には「指輪物語」などの方が受けるかもしれません。

2位の「模倣犯」は非常に考えさせられる作品でした。とにかく分厚く、読むのは大変ですが、犯罪が巻き起こす悲惨さを十分に描ききっていると思います。是非一度は読んでもらいたい作品ですが、あまりにも悲惨な部分があって人によっては受け付けないかもしれません。

3位の「椿山課長の七日間」は朝日新聞の夕刊に連載されていた小説。夕刊小説は毎日読んでいましたが、その後、ハードカバーとして出版されたものをもう一度読んでみました。軽いタッチながら結構考えさせられる内容の作品です。

4位の「ハッピー・バースディ」は新井素子の久しぶりの新刊。装丁がとても美しいのが印象的でした。新井素子が嫌いな人には受けないかもしれないのですが、私はもともとのファンなので彼女の作品なら上位に入ってしまうかも。

5位の「女たちのジハード」はずいぶん前に評判になっていた作品ですが、タイトルが嫌いだったため読む気がしませんでした。篠田節子の作品をいくつか読んで面白かったため、この作品にチャレンジしたのですが、食わず嫌いはいけないかも・・・と思った次第です。色々な女性の生き方が面白かった。

6位の「地下鉄(メトロ)に乗って」は浅田次郎の作品です。今年は結構浅田次郎に凝った時期があってこの作品も読んでみました。タイムスリップものはもともと好きなので、それも受けた理由かもしれません。

7位の「聖域」はこれまた篠田節子の作品です。壮大なスケールで描かれた作品で、死生観のようなものが述べられています。宗教系に興味がある人には結構面白い作品かも。

8位の「指輪物語」はトールキンの名作。最近では「ロード・オブ・ザ・リング」というタイトルで映画化もされています。全部で9冊というシリーズもので、久しぶりにファンタジー長編を読みました。どちらかというと私は「ハリー・ポッター」のような軽い作品の方が好きかもしれません。

9位の「リバーズ・エンド」はノーラ・ロバーツの作品。今年はシリーズ物以外ではあまり外国の作品が印象に残らなかった中で、この作品はかなり強烈なインパクトがありました。

10位の「伯爵夫人は万華鏡」は「伯爵夫人は超能力」の続編です。ドロシー・ギルマンは「おばちゃまシリーズ」で有名ですが、その他の短編にも面白い作品が多いです。この「伯爵夫人シリーズ」も私には面白いシリーズです。

以上が、ベストテンに入った作品でした。

その他に印象に残った作品は下記のとおりです。

「スキャンダル」 ノーラ・ロバーツ 1月
「長い長い殺人」 宮部みゆき 1月
「「少年A」この子を生んで・・・」 「少年A」の父母 1月
「愛をこう人」 下田治美 6月
「白い犬とワルツを」 テリー・ケイ 7月
「ユカリューシャ」 斎藤友佳理 7月
「インストール」 綿矢りさ 9月
「勇気凛凛ルリの色」シリーズ 浅田次郎 5〜6月



2003年01月15日(水) 再生の朝  乃南アサ

新潮文庫 1998

STORY:
東京から萩へ向かう長距離バス。様々な事情を持って乗り込んだ人が10人と、運転手2人が乗っていた。しかし、運転手は殺され、バスジャックされてしまう。運悪く、台風が近づいてきていて天候は最悪。果たして乗客たちの運命は?

感想:
 久しぶりに読んだ乃南アサの小説だったけれど、やはり面白い。特にバスが走り出してからは、続きが気になって一気に読めてしまった。

 乗客の人数が多いため、実のところ誰が誰だっけ?と思ってしまう部分がないわけではなかったのだけれど、それも最後には何となくはわかったし、そんなのがわからなくても楽しめる。

 最後にバスが停まった場所の地名を見て、そうか、そういうことか・・・と思ったわけだけど、実はこの長距離バスの車名にも意味がこめられていたと解説で読んで、なるほど、そうだなーって思った。そういう細かい点も結構考えられている作品なのかも。

 一番幸せそうに見えていた人が、実は一番自分のことしか考えてなくて冷たいんだ・・・っていう部分がちょっと怖かった。



2003年01月10日(金) バックスキンの少女  ドロシー・ギルマン

柳沢由実子訳 集英社文庫 (1956)2002

STORY:
舞台は開拓時代のアメリカ(多分)。インディアンと白人の戦いが繰り広げられている頃。ベッキーは幼い頃インディアンに襲われ、両親を殺される。兄はインディアンに捕らえられてしまい、インディアンに育てられる。ベッキーは丁稚奉公としてレゲット家で住み込みで働いていたが、ある日、残忍そうな金持ちの男に結婚を申し込まれる。結婚がいやなベッキーは兄とともに未開の土地へと逃げることを決心し、そこで新しい生活を始めるが・・・。

感想:
 読み終わって気づいたけれど、1956年の作品なのか・・・。ものすごい古い作品だったのでちょっとびっくり。こんな作品が今になって訳され出版されるということは、やはりドロシー・ギルマンに根強いファンがいるということだろうか。いや、私もその一人なのかもしれないけれど。

 でも、この作品。少女が力強く生きていくというそれだけではなく、最後にはちょっと悲惨なというか、なんともいえない結末が待っていて。解説に反戦小説とあったけれど、そうなのだろうか? 人間は肌の色が違ってもいい人も悪い人もいるという点では同じなのだろうけれど、少女は「インディアン=悪、魂のない人」と教えられ、幼い頃にインディアンに襲われた記憶とあいまって、自分がインディアンに助けられても、実際のところは心を開くことができていない。でも、本能の内側では、きっとこの子はすべてをわかってるんだろうなーと思わされる。

 人は一人で生きるというのはやっぱり辛いものだ。誰かと一緒に、色々な考えを知りつつ生きていかないとずっと同じことにこだわったりするのかも。全然関係ないけど、ふとそんなことを思ったりした。


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