感想メモ

2002年06月26日(水) 勇気凛々ルリの色 満天の星  浅田次郎

講談社文庫 2001

浅田次郎のエッセイ集シリーズ4冊目。

 とりあえずこの4巻で「しばらく」休筆ということで、もしかしたらまた連載が再開されているのかもしれないし、再開されるのかもしれない。

 やはり3冊を連続で読んだため、だんだん飽きてきてしまったのは否めない。だが、この4冊目は所々面白い話も散りばめられている。筆者がここで筆を置いたのはよい引き際だったような気もする。

 それにしても売れっ子作家って大変なんだなーと実感。もう年も年だし、健康状態もあまりよくなさそうなので、本当に体に気をつけていい作品をこれからも書いてくださいね・・・と言いたくなったかな。



2002年06月22日(土) 勇気凛々ルリの色 福音について  浅田次郎

講談社文庫 2001

浅田次郎のエッセイ集続編第3冊目。

 浅田次郎がこのエッセイを書き始めた当初は売れない小説家であった。小説の仕事もするけれど、エッセイも書き、また、競馬関連の記事も手がけ、そして頼まれた仕事は断れず。そうこうするうちにこの3冊目ではついに「鉄道員」で直木賞を受賞し、押しもされぬ売れっ子作家となって、多忙を極める日々が綴られている。

 ということで、どうも今までの2冊とちょっと毛色が違うような気もした。この3冊目のほうが堅苦しい内容は少なく、浅田次郎本人の生活ぶりが面白おかしく綴られているような気がした。

 時事的問題についてはほとんどなかったのだが、消費税が5%に値上がりしたというのがあって、なるほど、そうだったなーと思った。よく考えりゃ不景気のときに消費税を引き上げてしまい、余計個人消費が低迷したんだった。でも、これのおかげで3%の最後の時はみんなが買い物に走ったもんねー。そんなの一時期物が売れたというだけに過ぎなかったわけだけど。

 そして、どうもこのエッセイは次の4冊目で終わりのようだ。やはり多忙すぎて週刊誌に連載するのは大変なのだろうか。書いてある内容を読むと、いつ死んでもおかしくなさそうな感じなので、何となく無理せずこれからもよい作品を書けるようにしてほしいなーとか思ってみたりする。



2002年06月18日(火) 勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛  浅田次郎

講談社文庫 2000

1995年10月〜1996年10月までに「週刊現代」で連載されていたエッセイ集。

 人は本当に歴史的に何があったかなんて忘れてしまうものだと思う。こうして6、7年ほど前のエッセイ集を読むと、時事的問題については、ああ、こんなこともあったなー程度であるのが怖い。

 この本はどちらかというと1番目のエッセイ集よりも面白くないかもしれない。固い内容と面白い内容とがあるけれど、私が好きなのはやっぱり時事問題よりもやわらかく面白い内容のほうだな。

 時事問題に関して言うと、どうやら住専の損失補てん問題とか、沖縄の軍事基地をめぐる問題(沖縄の少女レイプ事件とか)、血液非加熱製剤の問題とか・・・そういうのがあったようだ。

 こうしてあげると、本当にあれから大分経っているのもあるが、人は皆、住専の問題など忘れたと思うし、沖縄の方もアレからあまり変わっていないような・・・。HIV訴訟については、一時期よくTVに出ていた血友病からエイズにかかってしまった彼(名前が出てこない)はどうしているのだろう。まだ生きているのだろうか・・・などと、ちょっと思ったくらいで、本当にニュースにもならないんだよねえ。

 でも、住専ってよくわからないのだけど、あのあたりからどんどん不景気まっしぐらというようなイメージ。考えてみれば、私が就職活動のときは氷河期に突入して2年目。その後、超氷河期などがやってきてさらに今でも就職は大変のようだけれど、その数年前はバブル全盛期で、その頃就職活動をした人は数社からの内定を得るのはあたりまえ。断られないように拘束旅行とかそういった類のものが行われ、本当にちやほやされていた。ほんの数年の差なのに。そして、どうやらあの頃、つまり1993、4年あたりからずーっと不景気が続いているのだ。考えてみるともう来年で10年くらいになるんだ。景気の低迷はいつまで続くのだろう。

 ところで、私たち世代というのは、ちょうど大学に入った頃がバブル全盛期で、大学生がちやほやされていた。オシャレなホテルに泊まってとか、クリスマスはすごいお金をかけたリッチなことを計画して、アッシーだのメッシーだの複数の男を従わせる女もいた。しかし、私たちが大学に入学すると同時に、ブームは高校生に移ってしまい、援助交際とかそういうことが問題となる世の中に。つまり、何かで読んだが、私たちは一度もちやほやされることなく過ごした穴の世代。そして、ベビーブームで受験や就職も非常に困難を極めた、何となく損な世代・・・。

 なんか本を読んでいたらだんだんそんなことにまで考えが飛躍してしまった。



2002年06月13日(木) R.P.G  宮部みゆき

集英社文庫 2001

STORY:
ネット上で擬似家族を持っていたお父さんが殺害された。お父さん殺害の犯人が誰なのか探るために、警察は擬似家族の3人を呼び、お父さんの実の娘に怪しい人がいないかどうか確かめてもらうことにするのだが・・・。

感想:
 宮部みゆきの作品にしては、私にはあまり面白くはなかったかもしれない。とはいえ、最後のオチというか、そのオチとタイトルがすごくマッチしていることなどには、やるなぁ〜〜、と感心した。

 この作品には「クロスファイア」と「模倣犯」の刑事役の人が1人ずつ出てくる。残念ながら私は「模倣犯」の方はまだ読んだことがないのでよくわからなかったが、ファンの人がいるのなら、読んでみるのも面白いかもしれない。

 宮部みゆきについて思ったこと。まずやはり映画が相当好きそうだ。というか、多分かなり詳しいと思う。他の作品にも映画のことが出てきたりするし。それから、ネットの世界にも結構詳しいんじゃないかと思った。もしかしたら、そういうことに疎い人にはわからなかったかもしれないけれど、確かに現実にもこのようなことはありそうな話であると思った。もしかして宮部みゆきはネットにはまっていたりするのかしら?



2002年06月10日(月) メールのなかの見えないあなた  キャサリン・ターボックス

鴻巣友季子 訳 文春文庫 (2000)2001

STORY:
インターネットが今のように普及する前に、AOLのチャットで出会った男からいたずらされそうになった13歳の少女。彼女がその事件を境にどう変わっていったか、また、男を訴えることになってどうなったかをつづったノンフィクション。

感想:
 この女の子がどのようにしてチャットにはまり、相手とメールや電話のやり取りをするようになったか、そして、どうして相手を信用してしまったのかがよくわかった。それから、その後の展開も予想を超えるものだった。周りの人の反応がちょっと理解できないような気もしたけれど、今のようにネット自体が普及していなかったわけで、犯罪に巻き込まれることも普通のことではなかったからなのかもしれない。

 この作者は今はアメリカでネットで被害にあった人たちへのボランティアなどを行っているらしい。がんばってほしいものだ。



2002年06月04日(火) 愛を乞う人  下田治美

角川文庫 1993

STORY:
照恵は夫に先立たれ、高校生の娘と2人暮らし。30年ほど前に亡くなった台湾人の父の遺骨を探そうとするが、娘に語った照恵の過去は壮絶なものだった。孤児院から引き取られたあとは、実の母から暴力をふるわれ、ののしられる日々。ようやくその日々から逃れられたのは就職したあとのことだった・・・。

感想:
 この作品は映画化されていて、映画も見たいと思ってはいたのだが、かなり壮絶な虐待シーンがあるようだったのもあり、怖くてなかなか思い切れないうちに、映画を見る機会は訪れなかった。(今後見るかも知れないが) 図書館でこの作品を見つけ、小説なら大丈夫だろうと借りてきた。

 しかし、壮絶な話だった。結局最後の終わり方がちょっと釈然としないし、どういう意味を持っていたのか、結論が出そうにない。映画を見た人に聞いたら、映画では母親と再会し、身分は明かさないまでも2人で少し話すのだとか・・・。

 結局結論は出ないのだが、私としてはこの母親には愛のかけらもなかったような感じがした。もしかしたら愛の裏返しとして・・・とも思ったのだが、何となく読んでいる限りではそういうことでもなく、ただ単に本当に精神がおかしくて、人に暴力をふるうことで鬱憤を晴らしていただけではと思った。それがたまたま身近にいた実の娘に対してだったのだと。暴力をふるわれる理由があるのではと主人公は思うが、結局理由はなさそうな感じだった。いや、もしかしたら深いところに理由はあったのかもしれないが、それは主人公にも私にもわからなかったように思う。

 優しい人が赤の他人であり、冷酷な人が血のつながった者であるというのが、台湾で親族と出会うエピソードなどにも見られ、本当に血とは何だろうと思わされた。愛乞食という言葉がものすごく切なかった。いろいろ考えさせられる作品だった。



2002年06月02日(日) スパイダーマン<ネタバレあり>

サム・ライミ監督 トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト

 かなり人気の作品だけど、見る前はあのスパイダーマンのコスチュームの赤いのが、すっごく不気味であんまり見たくないような気持ちだった。見ようと思ったのは、多分朝日新聞の記事を読んだから。おじさんの死が自分のせいだったことから、正義のために働こうとすると書いてあった。その経緯みたいなものを知りたいと思ったわけだ。

 それにしても冒頭のあたりから私のつぼにはまった。どのシーンもすごく面白くてひきつけられて見た。何と言ってもおじさんとおばさんに育てられているところ、学校ではちょっとダメな(とはいえ、化学の才能はあるらしい)男、好きな子には一言も声を掛けることができず、それでも思い続けている、本当にどこにでもいそうな男なのである。ちょっとスーパーマンに似ているけど、スーパーマンと違うのは、何と言ってもその暗さというのだろうか・・・。一筋縄では行かないところだ。

 たとえば、スーパーマンは誰かを助けただけですぐにヒーロー扱いとなった。が、スパイダーマンは違う。誰かを助けても新聞には悪く書かれてしまう。またスパイダーマンとなるピーターの日常は本当に理不尽なことだらけだ。彼の父母がどういう経緯で亡くなり(?)どうしておじ夫妻の元にいるかはわからないけど、まずそれだってかなり理不尽だと思う。お金を得るためにレスリングを命がけでしても書かれていた金額をもらえないし、強盗におじを殺されるし、自分の好きな人は親友にいつのまにか奪われているし・・・。

 何と言うか本当に最近見た映画の中でなぜか一番泣けてしまったのだ、これが。本当になぜなのかわからないけど、つぼに入ってしまった。今までの映画じゃ涙がにじむことがあってもそのまま意思の力で乾かせた。でも、今回のは違ったね。普通の人はそこまで泣けない映画のような気もするのに。

 泣けたシーンはまずおじさんの死の場面だ。それも言ってはいけない一言を言ってしまったあとのことだった。こういうやり取りをしたあとに人に死なれてしまうというのはかなり苦しいよなーと思う。それから、おばさんが襲われたシーン。ああ、おばさんまで死んじゃうの?と思わされる。おばさんの病床にはおじさんと3人で写した写真が飾られている。そして、卒業式の場面。このときもかなり来た。おじさんに見せてあげたかった・・・という台詞にうう、かわいそうに・・・と思ってしまったのだった。

 でも、その涙が乾かぬうちに場面は毎回のごとく急に変わり、スパイダーマンのアクションシーンなどが繰り広げられる。だから、泣くのが苦手な人でも多分大丈夫だろう。このアクションシーンも私はかなり迫力あったし、すごく面白かった。多分スパイダーマンをよく知らなかったのもあると思う。なるほど、こういう風になるんだ・・・と。

 ま、ということで、アクションあり、ラブロマンスっぽいのあり、勧善懲悪みたいなところもあり、泣かせる場面ありと、かなり盛りだくさんで2時間ちょっと飽きずに楽しめる。かなりお勧めだし、一般受けする映画ではと思う。

 ま、ちょっと突っ込みたいところもないとは言えないけどね。それにしてもやっぱりあの重いバックグラウンドがあるからこそ、スパイダーマンは面白いのかもしれない。これがただのスーパーマンみたいな感じだったら日本人には受けないかも? やっぱり暗いところありつつ、葛藤しつつというところが、日本人にも受けるところなんじゃないかな-と思う。


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