宿題

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2005年12月31日(土) 日曜日よりの使者/甲本ヒロト
適当な嘘をついてその場を切り抜けて 
誰一人傷つけない 日曜日よりの使者


★日曜日よりの使者/甲本ヒロト★

2005年12月30日(金) 空中レジスター/ピロウズ
鳥になって地上捨てて
キミに会いに行くんだよ
指差されるような色使いの
羽で飛んで
無駄にもっとふざけながら
歌をさえずったりして
狙うライフルには
宙返りのサービスを

汚れた空気も吸うしかなかった
わずかな隙間に夢はふくらんだ

灰になってもまだ燃える
愛に火をつけたんだよ
神様が逃げた不完全な
地球上で

キミが見てるから
僕の人生は孤独じゃないのさ
それは真実なんだ

回る回るトリックスター
僕は小さなレジスター
自転に逆らって遊ぶのさ
I can fly

キミと月が並んでて
僕を照らすんだ
待ちに待ったハッピーエンド
神様が逃げた不完全な
地球上で


★空中レジスター/ピロウズ★

2005年12月29日(木) デンジブルーのアンパン/中川翔子
人生貪欲に濃厚にすごすために。思い出にのこる出会いや出来事や景色、
音楽、美味しいもの、かわいいものきれいなもの、かなしいこと、
光の速さですぎてゆく日々に詰め込まないと!こぼれちゃうくらいに!

とかまで曲の四分のあいだに考えてしまうくらい松田聖子の曲はすげえ。


★デンジブルーのアンパン/中川翔子★

2005年12月28日(水) パーマパビリオン/星井七瀬
なんだこりは?失敗なレイディー?
パーマパビリオンつってかなり
フラッと寄るカット&シャンプー
だったら代官山そば
やってくれたアフロについて…
どっちなんだ?ハテ?わかんない
ググってみるカット&シャンプー
だったら代官山そば

アフロじゃないのよアレなのよ
「アレじゃわかんねよ、おネイちゃん」
違う違う!ありったけのセンスで
何とかそこまで仕上げてよ!
万年行事で疲れ切ったけど 髪は女の真心よ?
逃げたら終いにパンチをお見舞い
明日のガッコなんか行けやしない

ちょっとね 待ってーなオジサン!
どっからやり直し?

宿題抱えて将来背負って満員電車でゾーロゾロ
凄い凄い ○○(マル)マーニのスーツで
イケてるメンズが乗ってくるよ
隣のボーズは上手に立ち寝で
ビクともしないの何でなの?
私の頭と貴方の狭間でスーツのメンズが酔ってくるよ

ちょっとね 待ってーなオニィサン!
どっかで途中下車?

愛の徒労だ Sweet&Sweetなボディー
パーマパイオニア ゆってる間に
違う感じの 「ビーナス」(かっこビーナス)
だったら代官山そば
まったく 骨が折れるわ!

なんなんだこりは? 推定サバンナ
どーにかして 判定はDotch?
まぢ?やばい グッドフィーリン? だったら代官山そば

愛の徒労だ Sweet&Sweetなボディー
パーマパイオニア ゆってる間に
違う感じの 「ビーナス」
だったら代官山そば
まったく 骨が折れるわ!




★パーマパビリオン/星井七瀬★

2005年12月27日(火) 愛と洗顔/嶽本野ばら
文学も美術も思想も数式も生物も時間も、美しければ全て正解。
内容なんて必要ないのです。
内面の美しささえあれば外見なんて構わない、という正論の何と傲慢なことよ。
僕は自分の内面なんてとてもじゃないけどさらけだせない。
こんなに混沌とした醜悪なものをどうして人に見せられましょうか。
きっと相手は不快になるばかり。
僕の表面だけを見てくれとおっしゃったのはウォーホル先生。
そう、表層なら努力すれば取り繕える。
こうありたいと思うものに近づける。切なる願望の結晶こそが表面なのです。

きっと美の中に存在する切なさとは、醜悪な現実をひた隠しにして
自分の存在の理想を求めている羞恥心と不安です(嘘と同じ構成要素ですね)。


★愛と洗顔/嶽本野ばら★

2005年12月26日(月) 何にもないうた/友部正人
なくしたまま生きている 生きているけどなくしたままさ
わからないで歩いている 歩いているけどわからないのさ
呼んでみても答えない 答えないけど呼んでみるのさ

川のほとりに まぼろしがすむ
何もないうた うたっているよ

来ない人を待っている いくら待っても来るわけないさ
きみはぼくによく似ている いくら似てても同じじゃないさ

まちのまんなか 煙突がたつ
何にもないうた うたっているよ

こどもの影 長くなる おおきくなって立ちあがる影
おとなの影 長くなる ちいさくなってふりかえる影
ふたつの影 求めあい 出会わないまま時がすぎたよ

山のふもとに あのまちがある
何にもないうた うたっていたよ
あの雲の下 あのまちがある
何にもないうた きこえてくるよ
あの雲の下 あのまちがある
何にもないうた きこえてくるよ


★何にもないうた◇パスカルズ/友部正人★ 

2005年12月25日(日) A FROZEN GIRL,A BOY IN LOVE/滋田みちよ
君の心の窓ガラス
打ち砕きたいよ それが僕にとって今すべて


★A FROZEN GIRL,A BOY IN LOVE◇ムーンライダーズ/滋田みちよ★

2005年12月24日(土) Passion/宇多田ヒカル
前を向いてればまた会えますか
未来はどこへでも続いてるんだ
大きな看板の下で
時代の移ろいを見ていたいな

二度と会えぬ人に場所に
窓を開ける
思い出せば遥か遥か
未来はどこまでも輝いていた
きれいな青空の下で
僕らはいつまでも眠っていた

ずっと前に好きだった人
冬に子供が産まれるそうだ
昔からの決まり事を
たまに疑いたくなるよ
ずっと忘れられなかったの
年賀状は写真付きかな
わたしたちに出来なかったことを
とても懐かしく思うよ。


★Passion/宇多田ヒカル★

2005年12月23日(金) ふたりのロッテ/ケストナー
パルフィー氏は、しばらくドアを見つめていたのち、
ベーゼンドルファーのピアノの方に歩いてゆき、自作の子どものオペラの譜をめくり、
その一枚を抜き出して、キーの前にこしかけます。しばらく譜を見てひきます。
古い教会旋法の一つで、厳格で簡素な典則曲です。
それから、調子を変えます。中世期の協会旋法からハ短調へ。
ハ短調から変ホ長調へ。ゆっくりと、まったくゆっくりと、
パラフレーズの中から新しいメロディーが、からを破って出てきます。
単純で、心を奪うメロディーです。
ふたりの小さい少女が、澄んだ清い声でうたってでもいるように。
夏の草はらの上で。青い空をうつしている涼しい山間の湖のほとりで。
──それはどんな分別よりも高い空です。
その太陽は、善人だろうと悪人だろうと、煮えきらない人だろうと区別せずに、
万物をあたため照らすのです。


★ふたりのロッテ/ケストナー★

2005年12月22日(木) ふたりのロッテ/ケストナー
ミュンヘンで、ルートウィッヒ・パルフィーの新作の演奏される音楽会のあるごとに、
ルイーゼロッテ・ケルナーは切符を買って、いちばんうしろの安い列の席に、
頭をたれてこしかけ、別れた夫の音楽から、夫が幸福な人になっていないことを
ききとるのでした。
成功を博しているにもかかわらず。ひとりになれたのにもかかわらず。


★ふたりのロッテ/ケストナー★

2005年12月21日(水) My Revolution/川村真澄
ホームシックの恋人たちは
ユーモアだけを信じている


★My Revolution/川村真澄★

2005年12月20日(火) LOVEマシーン/モーニング娘。
あんたの笑顔は
世界がうらやむ
夢があるんじゃないか!
Dance! Dancin'all of the night


★LOVEマシーン/モーニング娘。★

2005年12月19日(月) 恋は桃色/細野晴臣
ここがどこなのか どうでもいいことさ
どうやって来たのか 忘れられるかな
土の香りこのペンキのにおい
壁は象牙色 空は硝子の色

夜をつかって辿り着くまで
陽気な唄を吐き出しながら
闇へとつっぱしる火の車
赤いお月様と鬼ごっこ

ここは前に来た道
川沿いの道
雲の切れ目からのぞいた
見覚えのある街
トゥー トゥー トゥー

おまえの中で 雨が降れば
僕は傘を閉じて濡れていけるかな
雨の香りこの黴のくさみ
空は鼠色 恋は桃色


★恋は桃色/細野晴臣★

2005年12月18日(日) 終りの季節/細野晴臣
扉の陰で 息を殺した
かすかな言葉はさようなら
6時発の 貨物列車が
窓の彼方で ガタゴト
朝焼けが 燃えているので
窓から 招き入れると
笑いながら入りこんで来て
暗い顔を 紅く染める
それで 救われる気持

今頃は 終りの季節
つぶやく言葉はさようなら
6時起きの あいつの顔が
窓の彼方で チラチラ
朝焼けが 燃えているので
窓から 招き入れると
笑いながら入りこんで来て
暗い顔を紅く染める
それで 救われる気持


★終りの季節/細野晴臣★

2005年12月17日(土) 野ブタ。をプロデュース/木皿泉
タクシーから外国にいるはずの母が。
母「すぐに戻りますから」

家に駈け込むと、家族3人で引越しの準備中。
母(ぜいぜいしながら)「ちょ、ちょっと、ちょっと待ったっ!」
父「なにー、なんで帰ってきたのー?」
母(何かの家具の裏に隠してあった何かを取り出して)「あった!」
父「何?」
母「見せたくないもの隠してたの。カトマンズ歩いてて、急に思い出しちゃって」
父「電話してくれれば良かったじゃない」
母「だって見るじゃない」
父「いいじゃない。夫婦なんだから」
母「じゃ、私戻るわ。(テーブルの上に置いてあったおにぎりを1個取って)
あ、今度帰ってくるの新しい家よね」
父「ああ」
母「まちがえないようにしないとね。ははは(笑って出て行く、何か落とす)」
父「ふふふ(笑う)かーわいー」

弟「あれ?落としちゃった(手紙のようなものを拾う)。
あ、これキリタニサトルって書いてある。あ、お父さんだ」
父「俺が若い頃出した手紙だ」
弟「父さんからの手紙だ」
兄「え、なにちょっと待って。これ取りにわざわざカトマンズから戻ってきたの」
父「自分の中だけに閉まっておきたい思い出ってあるんだよなぁ。
捨てられるのも見られるのもやだったんじゃない」
弟「うっそ、のぶたんて呼んでたの?」
父「え、見るでない、こらっ!コドモ!こらっ」


★野ブタ。をプロデュース/木皿泉★

2005年12月16日(金) 田家春望/井伏鱒二訳
出門何所見  
春色満平蕪 
可歎無知己 
高陽一酒徒

ウチヲデテミリヤアテドモナイガ
正月キブンガドコニモミエタ
トコロガ会ヒタイヒトモナク
アサガヤアタリデ大ザケノンダ


★田家春望/井伏鱒二訳★

2005年12月15日(木) 飲酒/井伏鱒二訳
勧君金屈巵 
満酌不須辞
花発多風雨 
人生足別離 

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ


★飲酒/井伏鱒二訳★

2005年12月14日(水) 随筆井伏鱒二/小沼丹
夜になつて、通りの「ここが酒場だ」と云ふ妙な名前の酒場に入った。
店の女性たちは僕らの服装から、僕らの泊まつてゐる旅館が判つたらしい。
あそこには偉い小説家が泊つてゐるさうだが、何をしてゐるのか?と訊ねた。
すると「偉い小説家」の井伏さんは眼ををぱちくりさせて、
──ああ、あのひとは昨日帰つたさうだ。オレたちは将棋指しだよ、
と云われた。



一度、何のときだつたか、井伏さんは僕を見て憫笑された。
──君は、飲んでゐるんだらう?
──ええ、まあ……。
──僕は酒をやめたよ。酒をやめると調子がいいね。
原稿もよく書ける。遅くまで飲んでる奴の気がしれないね。
──はあ?しかし…。
──いや、断じてやめたんだ。
それから、一週間ばかりして、荻窪の飲みやにゐたら、
井伏さんがとことこと入って来られた。
少し話が怪訝しいと思ったけれども、最初は黙つてゐた。暫くしてから、
──お酒はやめた筈ぢやなかつたんですか?
と訊ねると、井伏さんは再び憫笑された。
──君、オレが酒をやめるわけがあるかね。
まことにその通りであつて、僕だつて本気でさう思つたわけではない。



僕は学生の頃、一度だけ井伏さんの講演を聴いたことがある。
尤も、井伏さんはその時、講演、とは云わずに、演説、と云はれた。
──無理に演説をさせられるんだ。君、僕は演説なんて大嫌ひなんだ。
当日、井伏さんは文学部の大教室の壇上に、何だか心細さうな様子で上られた。
僕は会場の後の方に坐って、多大の期待と多少の不安を覚えながら聴耳を立ててゐた。
ところが、井伏さんの声は僕の席まで届かない。
そんな筈はない。
飲みやにおける井伏さんの声は、まことによく透るのである。
三.四分、井伏さんは何か話された。
それから、口が動かなくなつた。井伏さんは時計を出して見ると、
これでおしまひ、と云って降壇された。
あとで、井伏さんに感想を訊ねたところ、
──オレはもうメチャメチャだよ。
と大きな声で云はれ、さらに大きな声で梶井基次郎の話をされた。
その後、僕は井伏さんの演説は聞いてゐない。



大きな収穫があつたあとなぞ、そのときの様子を話す井伏さんは、
たいへん愉快さうであって、聞いてゐるわれわれは、
釣りを知らなくても、胸がごとんごとんするやうな錯覚を覚えるから不思議である。


★随筆井伏鱒二/小沼丹★

2005年12月13日(火) 将棋/小沼丹
「君、暗いよ。だから僕が負けるんだ」


★将棋/小沼丹★

2005年12月12日(月) ぴったんこカン・カン(香川&倉敷)/安住紳一郎×泉ピン子
P「香川の○○ってお店、昔、営業で来たことあるのよ。
みそ汁出してもらったんだけど、なんだかどろどろしてるのよ。
なんだろう、と思ったらお店の女の子が
「昨日のシチューにお味噌入れたでしょ!」って怒っててね。
シチューにお味噌だよ、まったくもう」

A「人生って結構そういうちっちゃな記憶で出来てますよね」

P「(珍しく穏やかな顔で安住さんの顔を見て)…そうよねぇ。
私○○というとそのことしか思い出せないわ」


★ぴったんこカン・カン(香川&倉敷)/安住紳一郎×泉ピン子★

2005年12月11日(日) わたしが子どもだったころ/ケストナー
戦時中、宝物を埋めるように、
じぶんでも見つからなくなるほど深くに埋めてしまう思い出がある。
また別に、縁起銭のようにいつも持って歩くような思い出もある。
それはわたしたちにとってだけ値うちがある。
得意になって、こっそり人に見せると、その人は
「おやおや、たった一ペニヒぽっち!そんなものをだいじにしているの?
なんだって緑青なんか集めるの?」
というかもしれない。


★わたしが子どもだったころ◇あとがき/ケストナー★

2005年12月10日(土) ★★★★
3年目。

2005年12月09日(金) わたしが子どもだったころ/ケストナー
思い出を書き記すには二つの法則がある。
第一の法則は、たくさんのことをはぶくことができる、
いやはぶかなければならない、というのである。
第二の法則は、何ひとつ、ハツカネズミ一ぴきだって付け加えてはならない、
というのである。


★わたしが子どもだったころ◇あとがき/ケストナー★

2005年12月08日(木) 20世紀少年/浦沢直樹
万博へは行ったかい?
開幕から三年…いまだに大勢の人々がやってくる。
あの万博は永遠に開催されるんだ。
僕はもう、何百回も行ったよ。
子供の頃……一九七〇年の万博……
行きたくて行きたくて行きたくて……
「人類の進歩と調和」……本当にその通りだよね。
あれが、人類の文明の完成形だ。
あそこだけが残る……
すべての文明が滅んだあと、あれだけが残るんだ。
素晴らしいよね。


★20世紀少年/浦沢直樹★

2005年12月07日(水) さよなら絶望先生/久米田康治
「あなたの本心が分からない」
昔からよくそう言われます。
親にも言われました。学級担任にも言われました。
昨日初めて会ってそんなに仲良くない人にも言われました。
もう少し心を開いてみてはと他人に言われます。
とんでもありません。もし心を開いて本心を話したら、
その場で絶好されてしまいます。
この醜い心を閉じてこそ、人とようやく関われるのです。
迷惑かけぬように臭いものにフタをする。
ご近所づきあいのマナーなんです。
「あなたの本心がわからない」そう言われても、
実のところボク自身ボクの本心がわからないのです。
ボクは本当は何がしたいのでしょうか?
ボクはどんな漫画が描きたいのでしょうか?
ボクは何ですか?
アナタはボクの何なんですか?
何でもありませんか?
どうもすみません。

ボクの心は二重扉。
奥の一つはボクでも開きません。


★さよなら絶望先生◇巻末の紙ブログ「開きなさい」/久米田康治★

2005年12月06日(火) 流星ノ滝/中川翔子
宇宙がすきだから空や星を見上げるのがだいすき。
今日も夕方空きれいだよ。星がすごく輝いてるよ、
寒いから空気が澄んでるし、今年はよく晴れるね。

木星カワユス、木星なでまわしたい。
メタンとアンモニアのガスすいこんで目をまわしたい。
大赤斑に手をつっこみたい。
シューメーカーレビー第9彗星を木星のかわりに仁王立ちして受け止めたい。
惑星のことかんがえるとワクワクして手が震えてくる。
プラネタリウムのお姉さんになりたいな。


★流星ノ滝/中川翔子★

2005年12月05日(月) 今夜ひとりのベッドで/龍居由佳里
お前らって、ほんと寂しい奴らだよな。
子供の頃、愛されなかったから、愛する事が下手でもいい。
家庭が複雑だったから、家庭になんか夢を持てなくてもしょうがない。
誰かを許すのは嫌だから、自分も許されなくていい。
そうやって理屈つけて、楽しよう楽しようと思って、
結局人の心を推し量れない寂しい人間になってくんだよ。
我が家の家訓は代々な「人には優しく」なんだよ。
姉貴はそれを胸に弁護士になった女なんだ。
その姉貴のことを、お前が笑うのが一番許せない!


★今夜ひとりのベッドで/龍居由佳里★

2005年12月04日(日) 「淋しいのはお前だけじゃない」のこと/丸谷才一
日常的な現実によりかかる形式では、
すこしくらゐ傷があっても見物のほうで何とか繕ってくれるが、
童話劇ではさうはゆかない。
そこでは世界は自立してゐなければならないし、
完璧であることを求められる。
一旦リアリズムに背を向けた以上、もう仕方がない、
織りムラのない夢を織りつづけ、
決してバレない嘘をつきとほすしかないのである。


★「淋しいのはお前だけじゃない」のこと/丸谷才一★

2005年12月03日(土) 淋しいのはお前だけじゃない(あとがき)/市川森一
忘れられない光景がある。
一九八二年度テレビ大賞の授賞式の大会場で、
大賞の光栄に俗した「淋しいのはお前だけじゃない」の出演者たちが、
受賞のお礼返しにと、西田敏行、梅沢富美男、泉ピン子以下十二名うち揃って、
目も彩な「隅田川ぞめき」の舞踊を披露した時のことだ。
予定外のとび入りアトラクションに会場は湧きに湧いた。
その中で、ひときわ目立つ声援を送っている人が目にとまった。
その人は、ステージのかぶりつきまで押し出してきて、
人一倍大きな手拍子を打ち、踊る役者たちに向って、
「イヨッ日本一!」「待ってマシタ!」等の掛け声をだれ憚るころなく浴びせかけている。
「どこのオッサンやろ?」と近づいて見ると、誰あろう、NHKの川口幹夫氏
その人ではないか。
僕は、感動してしまった。
当時、川口さんはNHKの専務理事だった筈だ。そんな偉い人が、
己が立場も身分も省みずに、ヤンヤとはしゃいでくれている。
「面白いドラマだった」と心から喜んでくれている。
なにが、川口さんをあんなにも喜ばせているのか?
狭い利害関係だけでは判断し難いことだった。
TBSのドラマがテレビ大賞を獲ったからといって、
NHKの川口さんの得になることは何もない。
それどころか、むしろひとつの賞を競い合ったライバルではないか。
そのドラマに、心底から拍手を送ってくれる、この人は…。
「ここにもひとり、本当にテレビドラマを愛している人がいるのだ」と、
そう思うよりほかに僕には理解の仕様がなかった。
受賞を喜び舞い踊る役者たちの姿よりも、僕は、そんな連中に「日本一!」
と声を掛けてくれる川口さんの姿に、不覚の涙を流してしまった。

告白すれば、この作品は、生みの親である作者にとっては、近所(業界)の
評判も悪い、はみだしッ子の厄介者だった。
理由は単純で、成績(視聴率)が合格点に達しきれなかったからである。
「もう(高橋)一郎クンとは遊ばせませんッ」と言ってまわる恐いオバサンも近所にはいた。
そんな悪ガキを「坊やにもイイトコあるョ」と、頭ヨシヨシしてくれたのが、
丸谷才一さんであり、井上ひさしさんであり、小田島雄志さんであり、
山田太一さんといった当代一流のかたがただった。
おかげで、悪ガキは村から追放されずに済んだ。
のみならず、ダメ親のために、第一回向田邦子賞やギャラクシー賞までもらてきてくれて、
アララという間にとんでもない孝行息子に変身してしまった。
放送評論家の佐怒賀三夫氏は、かつて、僕のこれらの作品群を
「テレビドラマの現状についての対抗陳述だ」と評されたことがあるが、
それは、結果的には当たっているかもしれない。

僕はまだ、テレビ大衆が、フィクショナルなものを全面拒絶しているとは断言したくない。
そんなうわ言を言っているせいかどうか、僕のドラマは、ついつい、
現状のテレビ文化に対して「フィクション復興を」陳述しつづけるという立場に
さらされてしまう。
似非リアリズム本流の中で、こんなに淋しく、心細い立場もないが、
独りで支えきれなくなったら、そのつどに思い出せばいいのだろう。
かの日の、川口さんの「待ってマシタ!」の掛け声を、高橋一郎さんの頼もしい笑顔を、
丸谷才一さんの励ましを──そして、自らに言い聞かせる台詞はただ一言、
「淋しいのは……」


★淋しいのはおまえだけじゃない(あとがき全文)/市川森一★

2005年12月02日(金) 四畳半神話大系/森見登美彦
「明石さんってどうです?」
小津が言った。
「どうって何が」
「だからね、あなたという未曾有の阿呆で醜悪無比な人間をですよ、
理解できてしまう不幸な人間はこれまで僕しかいなかったわけだけれども」
「やかましい」
「彼女はそれができる。これは好機だ。
この好機を掴まないと、あなたにはもう手の施しようがない」
小津は下劣な笑みを浮かべて私を眺めた。
私は手を振って彼を制した。
「あのね、君。俺は、俺のような人間を理解できる女性は嫌だ。
もっと何かこう、ふはふはして、繊細微妙で夢のような、
美しいものだけで頭がいっぱいな黒髪の乙女がいい」


★四畳半神話大系/森見登美彦★

2005年12月01日(木) 野ブタ。をプロデュース/木皿泉
「もうプロデュースはいい」
「え、なんで」
「だってわたし、あんなこと」
「あ、あ、あれでしょ、はげましてくれたわけでしょ」
(うなずく)
「えじゃあ、それじゃあ、ありがと(お辞儀)。じゃこれでおしまいね、うん」
「…お、おこってない?」
「え、なんで、なんで」
「だ、だってわ、わたしあんな非常識なこと」
「や、ややや俺も悪かったんだよ、うん。ぶっちゃけ、どういう風に、
なんかリアクションとったらいいのかもわかんなかったし。
っていうか、たぶんあの、なぐさめてもらうようにできてないんだよね、俺」
「…マリコさんもあの日、だれかになぐさめてもらえたのかな」


「世の中ちゅうもんはな、ホンマかどうかなんてどうでもええんや。
信じてもらえる男か、信じてもらえへん男か、そのどっちかや。
それからなぁ、兄ちゃん、どん底に落ちても人生終わるとちゃうぞ。
落ちても人生続くぞ。人生はなかなか終わってくれんど、おう」


「本当の事なんてだれもわかんないの!
だったら信じたい方を選ぶしかないでしょー」


★野ブタ。をプロデュース/木皿泉★

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