○プラシーヴォ○
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2002年11月28日(木) これでいいのね

暇だ、とカウンターに頬杖をつく忍君


新しくかったジャンバーを
見せびらかす忍君


宝くじで一千万円あたったら
家を改築すると
自分の家の見取り図を書く忍君

今やっと

血が繋がった兄弟のように

穏やかに見ることができる



このまま

明日で終わる




明日で忍君と会わなくなれば


私の束の間の恋は終わる


「土曜日お休みもらってるからね
 私、明日で終わりなんだ」


忍君に言うと

「あ、そっかあ
 早出のシフト?
 がんばってね!」


あっさり


何も期待してなかったといえば
ウソになるけれど



でも本当に楽しかった

店に来る唯一の意味だった忍君


ありがとう


明日で

会えなく

なるね


2002年11月27日(水) 僕らはひたすら悩む

裏番長マユミさんが
アヤちゃんを連れて
スタッフルームから出てきた


「ポスティング、行ってくるわ」


え、私達30日で解雇なのに
どうしてまだ店の事手伝わなきゃいけないの


私の思いと視線に気づいたのか
アヤちゃんがおどおどと口を開いた


「あの…お客さんいないし
 暇だし、ボーッとしててもしょうがないし
 お給料もらってるんだから
 手伝わないとね…」


勝手な理由で解雇されるんだよ?

店に出てこなくったって
一ヶ月分の給与を保障されてもいいくらいなのに

どうしてこんな店に恩義を感じてるの?



「手が空いてたら
 店の前でチラシ配りしてね」


言い残して二人は出て行った


吐き気がする


2002年11月25日(月) 忘れてたけど

今日は休み


youちゃんとトモと久しぶりに飲んだ


喋って
笑って

何年かぶりに撮ったプリクラ


家に帰る間に
3回ハム男から着信があった

これはとても
珍しいこと


一回着信があったら
私からのリコールがあると
思い込んで
ハム男は滅多に2回3回と私に電話を
かけなおさない



水を飲んで

ハム男にかけなおす


「…がちゃ子?」


「元気?」


「ん…元気とは言い切れないけど…
 ところであれから何か動きは?」

そっか
四日ぶりの電話

近況報告だね


「大阪のマッサージの店で求人があって
 そこにコンタクトとろうと思ってる」


「そっか、いいやん、そうしいや」


言う気は無かったのに
酔った勢いで言ってしまった


「私とね、もう一人のいつも店に対して
 ブウブウ言ってる子が嫌われてるからね
 私達だけリストラされて
 実は他の子達は店を続けてる気がするの」


「それはな、当然やで
 文句を言うんやったら
 クビになったり、
 それなりのリスクは覚悟せなあかん」

私、

怒られてるの?

唯一の味方だと思ってたハム男に?


「だからな、よかったやん
 俺だっていつもビクビクしながら
 社長に意見してるで
 
 がちゃ子は何でもできるやん
 パソコンでもマッサージでもさ
  
 俺、今クビになったら
 ホームレスになるしかないもんな
 建築業の端っこしか知らない使えない奴やもん」


ん?


「youちゃんは、楽しそうに仕事してるやろ?」


そうだね
あの子は適応能力が高いから


「がちゃ子も大丈夫やで」

そうかな


既に私は
号泣だった


「今度の休みは、温泉に行こうな
 京都に行ってから
 温泉やで」


ウソ、すごいね
私の夢がいっぺんにかなっちゃう


「今度は温泉俺が選ぶで」

この前の有馬だって
ハム男が選んだんだよ


「そうやったっけ?
 がちゃ子は老舗っぽい
 古いところは嫌なんやろ?」


古くてもいいけどね
とにかく露天がないと嫌なの


「そっか、分かった、まかせとけ」


うん


「…もう、泣くなよ
 いつからそんなにがちゃ子は
 泣き虫になったんやろな

 とにかく、がちゃ子は大丈夫やからな
 何でもできる子やねんから
 
 それじゃ、またな」



ありがと
ありがとハム男


ソツが無くて
何でもできるのは
長所で短所だけど


がんばるね

愛してる


2002年11月24日(日) その日は意外と早くきた

店に出ても
なんだか皆に無視されてる気がする


もういいや


どうせあと少しの勤めだ


店に一箇所、奥まっている場所がある

壁一面が窓になっているところにあって
柱が立っていて死角になっているところ


そこに座り込んで外を眺める







飽きない



何十分そうしていただろう


足がしびれて

お尻もジンジンしたきたころ


人の気配を感じて
横を向くと

忍君が心配そうに私を見てた


「ここにいたのか…
 何してるの」


外を見てたの


そのままを言うと
忍君は不思議そうに笑って
引き返していった


それにつられて
私もカウンターの辺りへ帰る



忍君は
オーナーのお兄さんの知り合いらしい


オーナーの身内も同然

だからオーナーの味方


今日、それがしみじみと分かった


私はオーナーが大嫌いだから
オーナーを庇護する忍君を見ると
正直辛い


今日忍君の顔を見て
少し情熱が収まった


今なら
離れられると思った



きっとこれは
私の自衛本能のおかげ


だってこうしないと
生きていけないもん


こういうこと
何度かあった


かしゃんという音がして
心のシャッターが閉じる


普通じゃないくらい
フラットな気持ちになる


どうかこのままでいられますように


最後の日に
泣き喚いたりしませんように


2002年11月23日(土) 心の準備だなんて無理

なんだかオーナーの動きが変


こそこそしてる

反抗的な私とサオリちゃんだけやめさせて
残りのスタッフは
もう一度召集して
店を続けようと思ってるのかもしれない


胃が痛い

別に、私に辞めて欲しいのはかまわない


辛いのは

忍君が残りの人たちと過ごすこと
私が知らないところで笑って
私が知らないところで面白いことをいって
私が知らないところで眠ったりすること

いやだ
いやだ


覚悟ができない


痛い
痛い


本当に、勘弁して
愛してる

卒業式とか
もう、自分じゃどうしようもない
別れのシチュエーションなら
我慢できるけど


もし、私がイイ子で
オーナーに反抗しないでいたら
店に残れて
忍君と過ごせたかと思うと
自分で自分を殴り殺したくなる




あ、


電話だ

予約かな


「はい、ありがとうございます
 ○○でございます」



「あ、お疲れ様で〜す
 忍です〜」


店のカウンターの裏に
崩れ落ちそうになる

どうしよう
嬉しい

膝が、声が、震える

今日は
休みのはずなのに?

どうしたの?

「明日の16時頃って、
 予約いれれます〜?
 俺の友達がマッサージに行きたいって言ってるんスよ」


「は、はい、16時ですね
 大丈夫です」

パニクって
丁寧語の私に忍君が笑い声をあげる


「じゃあ、お願いしまっす!」


電話を切った後
意識が薄くなる


声が、聞けた



違う違う、

喜んじゃだめだ

あと一週間で逢えなくなるんだから



『あきらめる、って
 どうすればできるんだろう
 
 あきらめるって一旦決めて
 繰り返し繰り返しそれに向かって行動すれば
 いいのかな

 それとも
 今の気持ちとひたすら反対へ
 行けばいいのかな

 この気持ちは
 ちゃんといつか
 薄れてくれるの?』


2002年11月22日(金) いつか無くなるとは分かってるけど

店に直結してるエレベーターの
ガラスの部分に顔を映して
髪を直している忍君


一センチくらいの
短い髪なのに


「思春期?」

と聞くと


「ううん、発情期」


「え〜、遅いなあ、タチ悪いで」


最近、笑う忍君を見ると
1upキノコをとったマリオのように
ぶるぶるぶるん!と
固まって震える感じがする


金縛り?

っていうか
もう体が言うこときかない



「ね、腰揉んであげるから
 肩もんでよ」


忍君が私の肩に手を置く


ハグしてくれなんて
いえないから

これがせめてもの
私の欲求


ぎうぎうと
力まかせに押す忍君
あまり上手とは言えないけれど
とにかく幸せ


痛すぎて
息を吐くとき笑ってしまった

しばらくして
また笑ってしまう

「痛いの?」


違うよ


もう飛び上がって
尻尾振って
窓から顔を出して叫びたいほど


嬉しくて死にそうなの

どうにもならないの

「硬いなあ
 お客さんより硬いやんか」



「ありがと、気持ちよかったよ」


「もういいの?」


「うん、なんか申し訳なくなってくる」


私が遠慮してるのが分かって
忍君はしばらく揉みつづけてくれた

そして最後に

ポクっと

私の頭を叩いた


私にイジメられるキャラなのに

そんなことされると


泣きそうだ

嬉しい
嬉しい


私、狂ってる


最後にスタッフルームで着替えをし終わって
タイムカードを押そうとすると
まだ時間になってなかった


あと一分

外で着替えていた忍君が入ってくる


「タイムカード、押しておいてあげるよ
 もう、帰りな」

忍君は

「いいよいいよ」

と笑う


そして、あ、と声をあげた


スタッフルームにあったカレンダーが
なくなってる


ロッカー代わりにつかっている
低い棚の後ろに落ちてしまったらしい


ぐぐっと忍君が動かす

まだ手が入らない

ホウキを取り出して
一生懸命カレンダーをほじくりだそうとする



わーーーーー!





理屈じゃなかった

もう、その広い背中を見てると

抱きつかずにいられない
思いに襲われた


気がつくと
忍君を放って


一人で外に飛び出ていた


駅まで一緒に帰ればいいのに

お疲れ様、と声もかけずに


私、明らかに挙動不審


もう、狂ってる

彼氏いるのに



別腹、じゃないけど

全く別の気持ちで

忍君を愛してる


あと一週間で会えなくなるなんて
だれか
だれか

私の頭を死ぬほど殴って

忍君の記憶を消してください


2002年11月21日(木) や---め----て---

チラシ配りを終えて
店に戻ると、
アヤちゃんが

「予約、入ったよ」

ウソウソ〜、と
予約表を見ると

忍君の名前

お金を払って(社員割引)
遠慮なしにマッサージを
受けたいらしい


いつもいつも

「揉んだろか?」

と聞いても

「俺、マッサージして欲しいと
 思ったことないねん」

と断られつづけていたのに

どういう心境の変化?


個室に入るドキドキ

腰が痛いとの事で

思い浮かぶかぎりの
いろんな技をつくす


「どこだっけ?
 腰が痛いんだよね?」


「うん、腰〜」


めちゃめちゃ可愛らしい声で
答える忍君


嬉しすぎて

吐きそう!

30分が短く感じた


終わって、

「どう?」

と覗き込むと


うう〜ん、とうなって

また倒れこんだ



「あ、お客さん、
 寝ないでくださいね、困ります!」


「ええ〜、もう終わりなんですか〜??」

ふにゃふにゃの笑顔で
私を見る

助けて〜
理性が崩れる〜


慌てて部屋を出て
お茶を飲んで
気を落ち着ける


これまた、ふらふら
ふにゃふにゃのポーズで出てくる忍君


「う〜、気持ちよかった〜
 家に帰りたくね〜よ」

すんごく嬉しいよ
ありがとね忍君



いつもいつも店の文句を言い合っている
同志のサオリちゃんと
片づけを終えて


さ、帰ろっか


と行った時、

「ちょ…ちょっと、いい??」

とオーナーが私達を通せんぼした



今、店がこんな状態で
とても維持していけない

時給も払えない

店長(オーナーの義理の従姉妹)
は、とりあえず無給でも
やってくれるって言ってる…

店を縮小するか
いっそつぶしてしまうつもりでいる


どちらにしても
スタッフは全員クビにするしかない





はああああああああああああああああああ???


うそ???????????????











私は頭がパニックになった


とりあえず

忍君に会えなくなるのが

死ぬほど辛かった


2002年11月20日(水) ひあわへ

今日はチキンカツだ!と

何故か心に浮かんだ



じゅうじゅうと揚げてると
ハム男が帰ってきた


「うあ〜、いい匂い〜
 俺、こないだスマスマのトンカツ見てから
 カツっぽいものが食べたかったんだ〜」


と嬉しそう


食事の準備をしている私の周りをくるくると
まわりながら
会社の話や
気候の話をし続ける


昨日、


どうせ
サッカーばっかり見て
私なんて無視するんでしょ


と言ったのが

気になってるのかな?



もくもくと
おいしそうに食べてくれた


やや

半生のチキンカツ


大丈夫?


焼酎の烏龍茶割をグビグビ飲んで

「よし、今年こそおいしい蟹が食べれる宿を
 予約してやるぞう!!
 がちゃ子、待ってろよう!!」


ハム男…
酔うとかわいいなあ



0時頃になって

急にハム男がコロンと
ベッドに横になった
(酔ってる)


私の手を握ったりして
もじもじしてる



「がちゃ子、ハムちゃんが
 元気だよ」


(注)私達の間では
  ハム男の性器のことを
  ハムちゃんと呼んでいる



パンツをめくってみると
本当に元気になっていた


食べた



久しぶり?
何年ぶり?




入れられてイキそうになった


子宮がムズムズして


気持ちよかった



ので


イッタふりをした



ハム男も少しして果てた



シャツを着て
パンツをはいて


さ、寝ようか



電気を消した後に


いきなり抱きしめられた


「久しぶりに
 がちゃ子をいかせたな〜」


嬉しそう

スキ、と言うと



ぐりぐりぐり、と

ホッペを押し付けてきた


本当に酔うと
可愛いくなる


握った熱い手に
うっとりしながら


気持ちよく眠りにつく 


2002年11月19日(火) 比率がおかしいよ

忍君がいない


いや、辞めたわけではなく
単に今日が休みの日だったんだけど



もう、
このがっかり加減を
なんと表現したらいいのかしら



ハム男と会わないのは平気なのに
忍君と一日会わないのが
こんなにぽっかり



会いたい



2002年11月18日(月) うろたえ合戦

ハム男から電話


「今日、何してたの?」


「インコのぴーちゃんを半年ぶりにカゴから出したよ
 凶暴だから
 長袖長ズボン軍手に靴下でフル装備でね」


なんじゃそりゃ、と笑うハム男


「水曜日、休みだろ?
 ウチにくる?」


「うん、いく」


「早く帰るよ、なんせ(サッカー)
 アルゼンチン戦があるから」


「え…じゃあ、行かない」


「え?なんで?」


「だって、どうせハム男
 テレビ見るばっかりで
 喋ってくれないでしょ
 行く意味がないもん」


「なに…何それ
 本気で言ってるの?
 本気でこないつもりなの?」


「だって…」


「来いよ、大丈夫だから」



強く

来いといわれるのは久しぶりで


うろたえる


当然来るものだと思っていた(だろう)
私が行かないと言ったので
ハム男も動揺してる


忍君に恋をして
私は余裕ができた


最近、占い特集の雑誌が
多く出ていて


読めば読むほど

乙女座A型土星人の私は


ロマンティストで
潔癖で
完全主義で
自己矛盾に気づかないでいて
永遠の乙女で
正義感が強くて
他人のミスを許さなくて


とても
息詰まる性格だと
再認識させられる



誰か

肩の力を抜く方法を教えてください


2002年11月17日(日) セクハラ

「じゃ、行ってくるね〜」

とお店の子達がチラシ配りに行ってしまい


唐突に私は忍君と二人きりになってしまった





うう


話題が無い


続く沈黙



「し…忍君、充実してる?」


何かのキャッチコピーかよ!的な私の質問に
忍君はいたって冷静に首をかしげた


「一日がってこと? 
 う〜ん、最近仕事が暇だから
 不完全燃焼っぽいなあ」


「で、でもさ、拠りどころがあっていいよね」


「俺に?拠りどころ?
 何?それ」


「ほら、かわいい子がいるじゃない」


私の顔を見て固まる忍君



「ち、違うよ!!
 私じゃ無くて、美容室の、かわいい子!」


「ああ…って、一ヶ月に一回くらいしか逢えないし!(笑)
 店もちょっと離れてるから偶然会えないし!」


つい私は、昨日モンモンと考えていたことを
忍君に言ってしまった


「う〜ん、何か熱中できることがあったからって
 それが完全な拠りどころになるのかなあ」

忍君の真剣な声に涙が出そうになる

「まあ、俺のアメフトも遊びみたいなもんだから
 がちゃ子ちゃんがいうほどのものじゃないけれど
 無いと、俺、本当につまんない人間だと思う」


私のことを
心底スキだと言ってくれる人が現れたらね
その人に私の臓器を売って
お金をあげてもいいの


「心臓と腎臓あげちゃったら、がちゃ子ちゃん死んじゃうよ??」


「うん、いいの
 愛されてるって分かったら
 もうその時点で死んでいいの」


忍君が、喉の奥でうなる


そして、
私を見た

「それは、せっかく愛してくれた人の存在を
 軽く思ってるんじゃない?
 
 がちゃ子ちゃんへの思いは本物なのに
 がちゃ子ちゃんはその人を捨てて 
 あっさり死ねるの?」

「そ、そっか、死ぬなんて、私のエゴだね
 生きることがその人のためになるんだもんね」


満足そうにうなずく忍君



「やっぱり、恋をしないとだめだね!!」


恋、なんて言葉が
忍君から出てくるなんて思わなくて
嬉しくて頬がむずむずする


もうすぐクリスマスだから
誘う口実がいっぱいある  だとか


美容師の彼女に髪を切ってもらって
俺はお返しにマッサージをしてあげる だとか


そろそろ髪が伸びてきたから
切りにいける  だとか


耳を塞ぎたい言葉も一杯あったけど

私の急な重い告白を
笑わずに受けてくれた忍君が
愛しい



そろそろ夕食だからと
私はお弁当屋さんに電話をした

すると、スタッフルームに忍君が入ってきた


そっか、もう帰っちゃうのか


電話を終わって振り返ると

着替え中の上半身裸の忍君



気がつくと

私は忍君の背中を触っていた



衝撃に耐えるために
脂肪と筋肉がちょうどいい配分の背中


汗をかいてしっとりした背中


「冷たい手やなあ」


笑う忍君


よかった、変態扱いされなくて



ハム男がかすむ



忍君が
他の女の子を見てると思うと

気が狂いそうになる


2002年11月16日(土) なんだなんだ

忍君が
美容院に行って、帰ってきた


かわいい頭にしてもらってた


「あ〜、早く髪のびないかなあ
 切ってもらったお嬢さん、かわいかったなあ
 俺、タイプだわ」


ずんずんっと
心臓を握られた感じ


オンナに興味無いっぽかった
忍君だけに

ショックが大きい


そこから、
あれやこれやと
ソノ子にアタック(死語)する方法を語り合う


「忍君、今年は二人でルミナリエにいけるといいね」


すると、
同僚のサオリちゃんが


「え?がちゃ子ちゃんと忍君ってこと?」



あせって、言い返す

また、私の

『忍君のことなんて
 ちっとも気にしてないのよスイッチ』が

入りそうになったけど
慌ててそれを阻止した

素直に、なれえええええ!


「わ…私は嬉しいよ?忍君とデートできたらさ!
 で、でもね違うっちゅーの!
 美容院の女の子と二人でってことだよ!」


忍君が笑ってる

私も笑う



店が終わって、ハム男に電話する

2日間、連絡がなかったハム男


風邪気味みたい
鼻声だった

明日サッカーだから
今日はおとなしくしとくよって

別に迎えにきてくれなんて
言ってないよ


途切れ途切れの会話

自分から話そうとしないハム男


しんどくて
すぐ切った


ヘッドフォンからは
MINMIの歌声

別に泣けるような歌詞じゃないのに


泣けてきた


拠りどころが欲しい



忍君も
ハム男も

なんだか遠い

愛したって
報われない

仕事が死ぬほど楽しいわけじゃない


太極拳だって、のめりこんでるわけじゃない


観劇だって
私より詳しい人はいっぱいいる



何かに依存したい


私は昔、依存が大嫌いで

タバコもお酒も嫌いだった


今は、タバコはすわないけど
お酒は飲まないと眠れない


恋人だって

できるだけ
他人の距離でいたいと思ってた



今、願いはかなっているじゃない

こんなに
離れた恋人同士



私、浮いてる?
宙に浮いてる?


今、私だけを一生愛するよって
言ってくれる人がいたら

私の心臓と腎臓を売って
大金をあげる



誰かにがっしりと
ハグして欲しい


部屋にいる
ETの人形を見てまた泣ける


この子のとなりに
小さいバッチャン焼きの器を二つおいて
一つにはお塩
一つにはお水をいれて

天国のチビちゃんの祭壇にしてる


この子に降りてるのかな?


とても愛しい


2002年11月12日(火) 憧れてしまう

太極拳


今日はいやに人数が少ない

しかも、
カンフー服を着た人が
いつもより多い
(カンフー服を着た人=上級者)



上級者は、組み手…というか
格闘に似た型をはじめた


初心者達は
先生に教わって、それぞれの
進み具合に応じて少しずつ型を教えてもらう




しばらくして、
お互いの右手と右手を合わせて
押したり引いたりする組み手が始まった

これは、
交流の意味も込めて上級者と初心者が
組む



少しヤセ気味の
髪の長い女性が相手だった


「あら…体が硬いわね
 リラックスして」

「だめなんです…私、リラックスが苦手で
 美容室のシャンプーの時にも
 よく言われるんです」


「初めたばかりの人って、結果をすぐ求めてしまうんだけど
 ゆっくりね、長い間がんばって続けてね
 そうすれば、きっと知らず知らずの間に
 リラックスできるから」



にっこり笑ったその人はとてもきれいな動きで


ああ

この人になりたいと
思った


2002年11月10日(日) とろけた

スキップをする女の子

私はそれを見て

「元気やね〜」


はっと目が覚める


ハム男がにやにやしながら
私を見てる

「がちゃ子…苦しそうに何言ってたの」


「あ…私今、寝言いったの分かったよ
 自分で…分かった」


顔をつき合わせて笑う


サッカーの試合があるハム男は
私の頭をくしゃくしゃと撫でて出ていった



ハム男の声を聞きたかった


用がないと滅多に電話をしない私だけど


声が聞きたかったから


電話をした



私からの用事がない電話が珍しかったのか
ハム男の声はトロトロだった

「今から帰るのか?
 気をつけろよ」



うん、愛してるよ


2002年11月09日(土) セックスレスが止まるとき

十円ハゲができたり

ハム男に振られたり


ふと目を覚ますたびに
パターンの違う悪夢を何度も見ながら

お昼前にようやく完全に目を覚ます


着替えてから
まだスコスコと寝息をたてているハム男を
起こす


起きない

しばらくほうっておくと


いきなりガバリと起きた

「早く起きないとがちゃ子に怒られる」

怒ってるっつーの


温泉雑誌をざっと眺めて
有馬に行くことにする

少し紅葉が見える

まだ緑の山の中に
ときおり燃えるような
赤い木が


最近できた『銀の湯』という
外湯に入る


入湯料は550円だが
シャンプーもリンスも石鹸もついてない

お風呂は人が10人も入ればいっぱいの
半円形の風呂が一つだけ


なんじゃこりゃ〜!

以前、テレビで見たいい温泉の条件

・お湯が浴槽から常にあふれている
・お湯に入ると体に細かい気泡がつく


どっちも無い

しょんぼり


10分程度でさっさと出る

待合室も狭い


せっかくだから、と
ハム男と駐車場に戻るまでに
少し遠回りをしていく


みたらし団子を買う

横に網があるのに
焼きたてじゃなく
パックに入っているのをよこしやがった

しかも粉っぽくてマズい


でも、嬉しい
ハム男とデートしてることが
嬉しい


家に帰って
水炊きをした


お腹いっぱい


かわりばんこにお風呂に入って
眠りにつく


久しぶりに
腕枕をしてくれたハム男


思い切って聞いてみる


「ハムちゃん…食べていい?」
(私はハム男のアソコをハムちゃんと呼んでいる)


「いいよ〜」


ハム男と繋がる


珍しくイキそうになったけど
やっぱりハム男が先だった


それでもいい

ハム男に抱きしめられながら
眠りにつく


少し前まで、
手も繋がずに
泣きながら寝ていた日がウソのよう


私が態度を軟化させたから?


セックスが減っているのは
辛いから
夜の、その瞬間だけに目がいきがちだけど

そこにたどりつくまでの
デートだったり
会話だったりが

実は9割9分重要なのね


それらが積み重なって
ようやく私達はセックスをする気持ちになる


ハム男、大好き
指の先がしびれるくらい
幸せよ


2002年11月08日(金) おみやげおみやげ

飛騨高山への社員旅行から帰ってきたハム男


お土産をもらった


お願いしていた
わさびの佃煮と


ベビースターのミソせんべい



油取り紙



俺はセンスがないからーーーー!と


いつも
プレゼントとかお土産とかは
頼んだものしかかってくれないのに

せんべいと油取り紙がついているのに
驚いた



予想外に嬉しくて

ハム男に何度もキスをした


思えばここから


セックスレス打破への

私達の態度の軟化が始まったのかもしれない


2002年11月07日(木) こまけーな

店で弁当を食べていると
店長が近寄ってきた


「今、洗濯機回したのがちゃ子ちゃん?」


「うん、制服のズボン洗ってるの」


「あのね…私物は家に持って帰って
 洗ってもらえるかな?」


「は??
 私物って…制服のこと?
 制服だよ?店で使ってるものだよ?」


「うう…そっか…」



くやしそうに笑いながら
店長が受付の方へ帰っていった


ヒソヒソ声が聞こえる

裏の番長マユミさん(オーナーの義姉 受付嬢)
と相談してるんだ


つかつかと戻ってくる


「じゃあ、皆の制服を集めて
 まとめて洗ってよ
 一人分のをちまちま洗ってたら
 もったいないでしょ??」



皆、家で洗ってて
私はここで洗いたいんだから
それでいいじゃん!!

皆つったって全部で6人=6枚しかないんだから
水道代も洗剤代もそんなに違わないじゃん!!!



しかし、大人の理性をフル活動させて
にっこり笑う



「分かった〜 そうする〜」


満足そうに店長がまた帰っていく



暖房が入ってカラカラの店内がいやで
私が自宅から持ってきた加湿器を平気で使ってるくせに


南の島の写真集が二冊しかなかった
お客様用テーブルに
アロマの本やいろいろ家から持ってきたやつを
平気で使ってるくせに


なんで私が店のもん使っちゃだめなんだ!!


明日、加湿器と本を撤収してやる

フン


2002年11月05日(火) 生存確認

5日間ハム男から連絡が無い


本気で生死の確認をしようかと
思った矢先

電話がかかってきた


風邪をひいていたらしい



それにしたって
電話くらいできただろうと


「しんどいんなら
 寝とき」


つっけんどんに言って
一方的に電話をきった



さすがに悪かったかと
すぐにかけなおす


「明日…何かいるものがあれば
 買っていくけど?」


「ううん…いらないよ」


少し和らいだ声


一人暮らしで病気するって
どれだけ怖いことだろう


2002年11月03日(日) もしもしのもし

11月1日に、ハム男に電話した


でない

留守電になる



そして今日は3日

応答なし


社員旅行に行ってるから

電話する暇もないのでしょうか




「明日暇?遊べる?」


現在応答無し


社員旅行からは帰ってきてるはずなのに



こういう基本的なズレが積み重なって

恋人同士というのは
たやすくダメになってしまうんでしょうね



会いたいのは

私だけ


2002年11月02日(土) やっちまった

ふうっと

頬に冷たい風を感じて
目を開けると


サオリちゃんの顔


しまった


店の中で

ばりばり営業時間中で


隣の隣の部屋でオーナーがマッサージを
している最中に



イビキをかいて
寝てしまった



「私…寝てた?」


「うん…オーナーにも
 聞こえたかも…」


はああああ、やっちまっただよ


それでなくとも
私はオーナーに嫌われてる


私が近づくと
磁石の同じ極同士のように
するすると逃げてゆく



言いたいことあるんやったら

言えやボケー


私がいつも
経営の仕方に口を出すもんだから
うっとおしいみたい


ちっちゃい人間やで


がちゃ子 |偽写bbs

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