○プラシーヴォ○
目次|←どうして?|それから?→
今日はお店の早番
18時半に終わる
ハム男はサッカー
会えるかどうか 電話
「ああ〜、20時にここ(現在試合中のグランド) を出るつもりだけど…」
私を迎えに来てくれるとも 会おうとも
言わないハム男
黙る 黙る
「…今日は、やめとこうぜ 水曜日(私の定休日)にゆっくり会おうよ」
昨日、会おうね、って
言ったやん
こんなにお洒落したのに
このまま家に帰るのね
以下、私の心の声
お前、いっぺん電車に乗って 家までこいや
どんだけしんどいのかわかってんのか
もう二度と電車に乗って ハム男の家に行かない
電話にもでない
思い知れ(何を?)
一ヶ月に一回しか 丸一日会える日が無いくらい 会えてない二人やのに
会えるときに
会いたいと思うのは
私だけ?
私ばっかり必死?
ああ、悲しいな
しばらく、
あなたに連絡をとらなくても
いいでしょう
店に、新人が入ってきた
39歳の女性と
25歳の…アメフトをやっている男の子!
顔は坂上忍をたくましくした感じだけれど とても面白い
ハム男は、あまりモノを知らなくて 私が言ったジョークに反応しなかったりするんだけど
忍君(仮名)はすいすいと話をあわせてくれて とても楽しい
ああ、充実してる
ごっつい体のくせに 小食で (晩御飯がコンビニおにぎり2個で十分らしい)
お酒飲めなくて (ビール一杯で二日酔い)
だけど、いかにも健康そうな のびのびした体
ハム男は、 3年ほど前に鎖骨を折って 鉄板とボルトが入ってる
それを、今だにとっていない
「お金がない」
「時間がない」
「全身麻酔が怖い」
だけど、それのせいで 私と付き合いだしたころから 吐き気を訴えて 胸焼けがするといって
めっきり、弱ってしまった
もちろん、鉄板のせいだけではないだろうけど
油っぽいものが食べたくないからと
居酒屋にいけなかったり 焼肉屋にいけなかったり どこかへ出かけても すぐに帰りたいと言われたり
彼女にとっては 少し辛い
そんなとき、
こんな伸びやかな人と付き合えたら どんなに楽しいだろうと 思ってしまう
姫路で働いていた時の友達とカラオケ
最中にハム男から着信
友達と別れて、自分が乗る電車の時刻を確認 後10分こない
地下の改札口から 急いで地上へ
「ハム男? 飲みすぎた、気分悪い 酎ハイにやられた」
「…おい、酎ハイは飲むなって言ったろ!」
他愛の無い会話で電話を切り、電車に乗る
電車の中で、血の気が引いてきた 気分が悪い はきそう
慌てて、電車を降り、タクシーを捕まえる
「明日は、雨らしいですよ」
なんて話かけられながら 家につく
酔った勢いでハム男にテル
「ルスバンデンワサービスニセツゾクシマス」
これを7回繰り返して ルルルルル…と急につながった
「がちゃ子?」
あせる どうしよう、 別に用事無いのに… 言うことが思いつかない…
えっと えっと
「う…うん、あのね、はきそう」
「飲みすぎだよ!明日も仕事なのに!」
沈黙… もう、だめか
「あのね…ごめん、用事は無いんだ…」
「用事はあるっちゅうねん!」
え?
え?
なになに
「ケンゾーか?」
「え、い…嫌だ」
「じゃあ、ミチコロンドンか?」
「それも…嫌」
「じゃあ、ママス アンド パパスか!」
「それは散髪屋だよ!」
これは、つい先日ハム男に 指輪を欲しいと言ったときに 言われた会話の繰り返しだった
ブランドをほとんど知らないハム男は ふざけて 10年程昔のブランドをしょっちゅう口にする
それでも 嬉しかった
用事が無くてびくびくしてかけた電話を ハム男がきちんと受け取ってくれたことが 嬉しかった
前日に買った温泉特集の本を見て、
『よかたん』という温泉に行くことにした
私は本当はもっと遠くの山奥の温泉がよかったのだけれど
「会社から配給されてるハイカが切れちゃって… なるべく高速で移動を短くしたいんだ 遠くにはいけないよ」
自腹では行けないのかよ どんだけ貧乏やねん
片道約1500円
よかたんに着くと、だだっぴろい駐車場は ほぼ満車だった
なんとか車を止めて施設に行くと、 少し並んでいたものの すぐに入れた
露天風呂はとても塩素臭い
もうすでに、『温泉』じゃない 30分ほどうろうろして温もってきたころ やたらと人が増えてきた
出ると、ハム男もすぐ待合室に出てきた
いまいちだったね、と呟きながら また車に乗る
「どこに買いに行く? 私、指輪が欲しいねん」
ははっと ハム男が微妙に笑う
「俺もう、一文無しやねんけどな」
え? この高速代だけで?
「あ…そっか じゃあ、いらないや カードとか借金してまで買って欲しくないし…」
それ以上、言葉が出なかった
ケーキも、おめでとうの言葉も無い誕生日
なかなか起きないハム男と叩き起こして 連れてきてもらった温泉
まだ15時なのに ハム男の財布はすっからかんで どこにもいけない
だけど、黙っちゃいけない
黙ったら、ハム男に怒られる
すぐ怒って黙りこむのは 私の悪いところだと言われたばかりだから
黙っちゃいけない
辛い
贅沢は言わないから
一年に一度くらい
特別を味わいたい
ハム男が迎えに来てくれた車に乗り込む
うっきうきで問う
「明日、どこに連れてってくれるの?」
「ああ…、どうしよう どこに行きたい?温泉だっけ?」
こんなことだろうと思った
「プレゼントもさ… 何がいいのか全然分からないから 一緒に見にいこうな」
ああ、やっぱり
去年とちっとも変わってない
何もサプライズがない
つまらない
お店を辞めさせられた人との飲み会
不満がつもりつもっていたのか 17時に居酒屋に入って、 出たのは 23時30分だった…
何を話していたのか いまいち記憶が無い
帰りにハム男に電話
「あと8分で27歳やな、おめでとう」
「長いものには巻かれることも必要やで」
「俺、風呂あがりでパンツ一丁やねんけど」
こんな内容で延々と話した
そして
お正月には里帰りするらしい
まただ
また寂しいお正月
いやなのに
携帯でセットしたアラームで目覚める
横で、ハム男はびくともせずに すかすかと寝ている
朝ごはんを食べて、 もう一度ハム男に抱きつく
10分程、ハム男の肩に顔を押し当てて 思い切って起き上がる
化粧して、歯を磨いて テレビを消す
ハム男がふと目を覚ます
「あ…行くの?」
「うん、行ってくる」
今日は、岐阜から2年ぶりに 友達が大阪へ来る
その子とUSJに行くのだ
待ち合わせの駅までは 電車を3つほど乗り継がなくてはいけない
「送ってやろうか」
という言葉を期待していたけれど ついにハム男の口から出ることはなかった
『ムカエニコイッテ イワナイデ』
ハム男のセリフが心でざわめいて
「送って」
の一言が言えなかった
20時すぎ、食事を注文してる間、 そっとレストランを出て ハム男に電話した
「あ〜、がちゃ子? 今、オッサンとケースケと居酒屋で飲んでるんだ〜」
もうだめだ
この二人はハム男の家に泊まる ハム男も飲んでるから 迎えには来てくれない
「ハム男の家に今から行こうと思ったんやけど… それじゃあ、無理やね」
「うん、無理やね じゃあね、またね」
ハム男はいそいそと電話を切りやがった
愛して 愛されているだけでいいなんて
かわいいこと言っちゃったけど
やっぱ足りない
もっともっと
親切にして欲しい
仕事が18時に終わると告げると ハム男は自ら
「迎えに行ってやる」
と言った
ううむ
すばらしい
大好きな焼き鳥屋さんに行く前に レンタルビデオ屋さんに寄る
ハム男が先に入り、 慌てて中から手を伸ばして 自動ドアの灰色のスイッチを押す
どうやら、自分が通った後 どんくさい私が挟まれると思ったらしい
今まで、こんなことしてくれたことなかった
こんなことで感激する私って、 安上がり?
2002年09月12日(木) |
やっとスタートラインへ |
店の最寄り駅の終電で ヘロヘロになって家路につく
ハム男から電話だ
「がちゃ子?お疲れ、今帰り? お腹がすいただろう」
「うん、ハム男もお疲れ」
「連休に仕事が入りそうだし お金が無いから 実家に帰れないって電話したら 別に帰ってきて欲しくないって言われたよ(泣)」
「愛情の裏返しだよ 帰ってきて欲しいにきまってるやんか ところで、23日はサッカーとかないの? やっと休みがとれたんだけど」
「あー…、多分サッカーの試合かもしれない…けど どーでもいいよ がちゃ子を優先するもん」
「え?」
「9月で唯一、丸一日がちゃ子に会える日やし 19日の誕生日に会えないんやから その日に会って、お祝いしなきゃな」
「いいの?」
「うん、今な、がちゃ子が欲しがるものを 一生懸命、想像してんねん プレゼント、楽しみにしといてな」
クリスマスイブや、大事な日に ことごとくサッカーを優先してきたハム男
がちゃ子の欲しい物が分からないし、 買ってから文句言われたら嫌やから プレゼントは一緒に買いにいこうと 言っていたハム男
それが
それが
なんて優しい言葉を… 大人になったのね
「車で迎えに来い」 「どこかに連れていけ」 「休みの日は特別なことをしろ」
って、押し付けなくなってから ハム男は優しくなったね
「とりあえず、 早く会いたいね」
って心の底から出た言葉だよ
車だろうが電車だろうが 吉野家だろうがビッグボーイだろうが 家だろうがUSJだろうが ビーチサンダルだろうがフェラガモだろうが
もうね、
どうでもいいの
早く、会いたいね
ハム男そのものがいれば とりあえずオーケーです
27歳になる前に そんな簡単な事に気づけて 良かった
好きな人に 好きになってもらえるなんて
簡単なことだけど なんて難しいこと
「プチマリッジ」という
同棲しているカップルの番組をハム男と見た
彼女にでれでれで 夕飯をいそいそと作っている彼氏の姿を見て
「がちゃ子は、こんな彼氏どう思う?」
とハム男が尋ねるので
「好きだよ 夕飯つくってくれてるとこが特に」
それからハム男は
「よ〜し、じゃあ焼きソバをつくってやる! 俺の焼きソバはうまいぞ〜」
といい続けている
そして、いよいよ作ってもらった
少し水っぽくて 味も薄いけど 屋台で食べるような 特別の味がした
嬉しくて嬉しくて
食べきってしまうのが 悲しかったよ
次は私の番だね
2002年09月06日(金) |
しゃくりあげるほど泣いた記憶 |
もしもし、でもいい
どうしたの、でもいい
ハム男の声が聞きたかった
「あ〜、がちゃ子? 今テレビ見てるよ〜 あと10分くらいだよね? がちゃ子の働いてる店がちらっと写る番組って」
違うよ、もう終わったよ
「えーーー!だって、だって、45分からでしょ?」
…22時45分だよ
「え?え?23時じゃなかった? うそ、あ、見逃した!」
ばか〜!
「…がちゃ子、どうした」
もう私は、すでに涙声だった
「ううん、仕事で疲れすぎてね 涙が出てきたよ わはは、じゃあ、また明日ね」
「ちょっとまて、自宅の電話でかけなおすから」
「ええ〜、何言ってるの 大丈夫だよ〜 おやすみ」
「…がちゃ子、 本当にまってて、ちゃんと電話をとってよ」
ルルルル
「話して、がちゃ子 何も無いことないでしょう そんな、泣いて」
「あのね…」
あのね、あのね 昨日一人やっぱり辞めさせられてね でも今日、皆 何事もなかったように笑顔でね 冷静でね
「それが、嫌やったんやね?」
うん、それでね、昔姫路で働いてたころと 同じような状況でしょ? 姫路のお店の時は やめさせられる子達をかばって 従業員全員で退職したけれど
でも今回は どうしてもこの店を辞められないと思ってね 自分の方が大事だと思ってね Mさんをかばってあげられなかったの
そんな自分が卑怯でね
嫌だと思ってね
「…がちゃ子はね、正しかったよ お金を稼ぐために 自分を守る為に クビになる人をかばうのを我慢したのは当然だろう? キレイゴトだけじゃね、生きていけないんやからね …優しいんやね、がちゃ子」
もう、この会話の間中、 私はしゃくりあげてしまって 本当に言葉を出すのが困難なほどだった
中学の時に 大好きだった顧問の先生が辞めてしまう時
その時以来だった
こんなにしゃくりあげて泣いたのは
少し
心がさっぱりした
「あのね、びっくりしないでね 明日、Mさんをクビにするんだ それでね、その後ミーティングをして みんなにいろいろ厳しいことを言うと思うけど それはがちゃ子ちゃんに言ってるんじゃなくて Mさんと仲が良かったSちゃんに対して言ってることだから 気にしないでね」
昨日、店長のKちゃんからこんな電話があった
以前から、44歳のMさんの事を、 オーナーは疎ましがっていた
経営に口出しをするのが気にいらないみたい
後、Sちゃんもそれにつられて お店やオーナーの悪口を言っていると思っているみたい
今日お店に行くと Mさんがスタッフルームで笑顔で言った
「クビになっちゃった… 今日で終わりなんだ」
本当だったんだ オーナーは本気だったんだ
その後、Sちゃんから話を聞くと 受付をしてくれている オーナーの義姉が
「この店のやり方に文句があるんなら やめてもらっていいのよ あなたは掃除もあまりしないし みんなにあまりよく思われてないから」
と言ったのだと
Sちゃんはとりあえずその場で頭を下げ クビは避けられた
私だって、SちゃんやMさんと一緒に 経営について頭を悩ませていた
接骨院を営むかたわら、 このマッサージ店をオープンさせたオーナーは 営業活動にまで頭がまわらない
インターネットのホームページと 手配りのチラシだけが 宣伝の要だなんて 今どきおかしい
「雑誌に載せたら? テレビ局にチラシを郵送したら? 近所のお店に招待券を配ったら?」
こんな風に提案することが 経営に口出しすることなの?
そんなに疎ましかったの?
もう理解できない。
7月で辞めた姫路のお店のオーナーにそっくりだ
自分に少しでもはむかう人を切ってきたから いつまでたっても 子供のような人
人の意見を聞かない人
頭が痛い
とてもナイスガイなお客様がいらした
めがねをかけて 髪もボサボサで
なにやってんの私
慌てて、この日の夜に まつげパーマをかけた
お人形さんのようなまつ毛(のみ)
そして 今日は太極拳教室に申し込んだ
以前から習いたかったけど
いまひとつ手がでなかった
やせてやる
ここ最近の私のデブり具合はハンパじゃない
背中にチャックがあって するりと脱げそうなくらい
笑ってしまうくらい
デブッた
気合をいれる
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