○プラシーヴォ○
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私は会社を辞めた 4年間働き続けたマスコミ業界に さよならを言った
私は、彼に出会って 幸か不幸か 「女の子」になってしまったのだ。
徹夜でスタジオで撮影するより 1秒でも彼といたい。
東急ハンズで必死で小道具を選ぶんじゃなく、 彼と普通に商品を眺めたい。
ちょっとやそっとの仕事の困難も ひょうひょうと切りぬけてきたのに 私は、甘えることを知ってしまい、 うまく言えないが・・・すっかり弱くなってしまったのだ。
会社に行きたくなく、 同時に人間関係も最悪になり 会社にいかなくていいようにするため 死ぬ方法を考えるのが 全ての基本になってしまった。
この階段を転がり落ちたら入院できる このホームに飛び降りたら会社を休める このフォークを喉にさせば…
これらの思いを振り切りながら日常生活を するのはひどく困難だった
「死んだら、彼に会えないなあ」 それだけが唯一ちいさなクギになり、 私をこの世につなぎとめていた。
彼に会って弱くなってしまったのに 彼のために生きようと思う。
矛盾だ。
撮影で小道具に使うグラス それを一つ一つ割れないように エアーキャップで包んで行く
机の上の携帯が鳴る
バイブ機能のせいで震えながら 動き回る携帯を上から押さえ、 通話ボタンを押す
「もう9時やぞ。まだ仕事してるんか?」 「うん。もうすぐ出前で頼んだ寿司がくるから、 それ食べたら帰るよ」 「寿司かあ・・・。あ!そうそう、Kくんって覚えてる?」
ビクッ。
コンパで私が一目惚れした人だもの。 忘れるわけないわん。 ・・・なんて言えるはずもなく。
「Kくんがさあ、結婚するんだって」
やだわ、この携帯。混線してるのかしら。 ・・・ってそんなわけないわよね。
「しかも、できちゃった結婚だってえ」
ええええええええええええ!
腰が抜けた。いやマジで。
一時期、ハム男を振り捨てて Kくんへの片思いに生きようと思っていたこともあったが・・・。
彼女がいるなら コンパにくるなよ!
紛らわしいんだよう!
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