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■ 札束を着る
あたしが住んでいるのは狭くて古臭い地方都市である。
町の本屋も、電器屋も、郊外型に押されてつぶれていく。
なのに呉服屋は多いし、どこもつぶれずに商売を続けている。
秋冬になると着物で出歩いているばあさんに、一日何回もすれ違う。
普段着として着物を着てるババアがそこそこにいるってことだ。
こんなにたっくさん呉服屋あるんだから、知りあいと一軒の店で鉢合わせすることなんてありえないと思っていた。
ところが昨日、○×屋にいたら、店の前にベンツが停まり、夫の妹とそのダンナが入ってきた。
もおお、ほんっとにびっくりだ。
そこんちの次女が来年の成人式に着るという振袖が出来上がったので見に来たのだ。 自分の家に置いておく気などないらしい。まだ1年も……。
成人式っていったって出来ちゃった結婚で高校中退して、まだ19歳なのに子持ちの人妻だぜ。 まったくもう。
それにしても見事な着物だった。
染めといい、柄といい、金糸の縫い取りといい……。
振袖なんて興味ないあたしだが、ため息が出た。
どこにそんな金があるんだろう?
でもやつらには品も学もない。
義妹のダンナはあたしが結婚したころはまだ塀の中にいたんだし……。
まあ、そういうことだ。
呉服屋で義妹に会ったことを誰かに話したい。
夫に言っても鼻で、ふん、というだけでつまらない。
舅は義妹と仲がいいから、下手なことはいえない。
告げ口するなら、姑だ。
義妹は自分の母親をバカにしすぎている。 やつに比べたら、嫁のあたしのほうが姑とはうまくいってるくらいだ。
「○▼子の振袖見たよ」
「わしにも○▼子に振袖作ってやりたいから金出せって言ってきたが、断ったんだ。なんだ、金あるんじゃないか。ふん。まあ、しかしねえ、子どももいて結婚もしてるのに、今さら振袖なんてねえ」
ほんっと、金だけあってもだめだ。
品性も教養も金では買えない。
2003年01月31日(金)
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