白痴日記
白痴



 岩牡蠣

彼方の頼んだ岩牡蠣は何と一個しかなくて
私は彼方に食べていいと言ったのに
欲張って,彼方が半分食べたところで
ぷっくりしたところを食べてしまった.

謝っていないけれど
後悔している.

何だか彼方を虐めたみたいだ.
厚岸の牡蠣を頼もうか・・・

ごめんなさい.彼方.


2007年06月30日(土)



 実りのない木

あの人はいつか私を完全に忘れる.
今だって数日に一回思い出せば多いほうだろう.

自分の人生が潰れる程,愛しても
実ることがなければこんなものだ.

見捨てない約束をあの人は破らないだろう.
それは私が云々ということではなく
あの人は約束を破る人ではないから.

でも人は忘れる機能を持っている.
嫌なものから.

自分が好ましくない存在ということくらい
知っている.



2007年06月29日(金)



 初めから知っていたような人

初めから知っていたような人と会った.
こういうことは時々ある.
特に会いたくて,会った場合には.



2007年06月28日(木)



 しっくり

しっくりくる物事を大切にしたほうがいいのだろう.
時々,何か問題が起こったとしても.

ロジテックのマウス
Mac
黒いDIESELの鞄
彼方
インド料理屋
青いマグ
あの子の身体.


2007年06月25日(月)



 私の心臓は此処だよ

殺意を感じるらしいじゃないか.
いつも言葉だけ威勢のいいことで.
と言うより,いつまで言ってるのやら.

殺意を感じたら殺しにくればいい.

私の薄い上唇が歪む.

ほら,心臓は此処だよ.

2007年06月22日(金)



 彼方の受難,私の苦難

あんなにはっきりと,
彼方が私と付き合いたくないと言ったのは,
七年で初めてだろう.
兎さえいればいいのなら,私は要らない.

彼方の仕事はとても忙しい.
今日の彼方は機嫌が悪くピリピリしていた.

だから私は弱い言葉を出して,彼方をこれ以上疲労させてはいけない.


電話を切ってから,私はモヤモヤする.

深い溜息と孤独感.

体調の悪い時に受け止めるには痛すぎる.

彼方は真面目で不器用で責任感が強い.

生活の為の仕事なのか
仕事の為の生活なのか

真面目で責任感の強い彼方は,でも時々こうして人を深くえぐる.

2007年06月21日(木)



 盲目ではない

生命の名を持つ君は
あまりに人を見通せず,私と話すと
そよ風が吹くようだ
等と悲しいことを言う.

君の愚かさと
私の狡さを合わせても
遠くまではいけないよ.

雨が全て流してしまえばいいと思った.
排水溝へ.


2007年06月15日(金)



 匂い

その列車は公衆トイレの匂いがした.
列車を降りると,焦点の合っていない中年男に声をかけられる.
私は気づく.
私は待ち合わせが苦手だと.
落ち着かないのだ.
だいたい馬鹿みたいに早く着いてしまって,ホームで本を読んだりするのだ.

待ち合わせの場所は本屋が良い.
または居心地のよい喫茶店.

改札で待ち合わせをすると
私はどこかに行きそうになってしまう.

2007年06月14日(木)



 胸が痛くて苛々する

胸が痛くて苛々する.
原因は幾つかわかっていて
頭を掻きむしりたいくらいに.

落ち着きなさい.

わかっているわよ.


気持ち悪い.
全部
自分の肌の匂いも.

疎外感.


2007年06月12日(火)



 晴哉

晴哉,とは私が此の世に一人だけ命名した子供だ.
会ったことはない.
小さい,まだ幼いけれど,本当に小さい頃の写真を二度見ただけ.

それでも私は時々小さく呟く.
その名前を.
それでも私はいつも願う.
その健康を.


2007年06月11日(月)



 身体だけなら

身体だけでも可愛がって頂戴.
下らないことは言わないで頂戴.
気持ちなど要らないの.

例えばあなたが私の身体の上で
何を呟いたとしても
その場限り.

裸足で棘の土地を歩いている.
いつでも足は血みどろで,
そのうち倒れて
私の目に棘が刺さり
その時こそ
赤い涙がたくさん溢れ出すだろう.

2007年06月10日(日)



 記憶の記録

彼方とウサギが死んでから何となく始まった
半同棲に近い生活が一ヶ月になる.
でもそれは恋愛ではない,屹度.
労り合いみたいなもの.

何事も永遠には続かない.

今朝彼方が,ティーポットの中を見て
「こういうところが,ずぼら,だ.」
と言った.
桜のお茶をいれたのだ.
私はカップに引っかける為の紙がついたままいれた.

屹度何時か,此の事を思い出すだろう.
何年も先に.
不意に.
何処かの街の喫茶店で.
桜の花びらを見た公園で.

そしてその時私の横には彼方はいないだろう.


2007年06月08日(金)



 消えていく悲鳴

寂しいから
頬の筋肉を動かして
笑ってみた.

鏡を見る気にはならなかった.

2007年06月07日(木)



 子宮

子宮は空っぽ.
血みどろが落ちて空っぽ.

どうして私は子ができないのだろう.
永遠ループ.

無理ばかりしたせいかもしれない.

母になる資格はないのかもしれない.


2007年06月06日(水)



 叫ぶ獣

私に触るなと表明.

昨日一瞬本気で思ったこと.
もしあの人が結婚や付き合ったりしたら
私は自分も含めて皆殺し.

「全部殺してやる.」

呟いた言葉は電波の悪いあの人の電話に届いただろうか.

言葉は生きる.
それがネガティブであっても.

脳味噌から
心の底から
出た言葉.

私は憎んでいたの?あの人を.


2007年06月05日(火)



 点線

電車で真っ赤な靴を履いた悲しそうな中年の女性を見ていた.
地味な格好に,靴だけが悪目立ちをして

異人さんに連れ去って貰いたいのではなくて
もしかしたら,ずっと過去に
赤い靴が似合うね,と言われたのではないかしら.

大事な人に.

そういう細く縋っても,何にもならないことでも
全くないよりはいいじゃないか.

赤い靴はよく手入れがされていたよ.


2007年06月04日(月)
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