白痴日記
白痴



 蛆の流れる日

死後の世界など信じていない.
私は腐り,分解されて,溶ける.
そして私の形は消滅する.

その何と安らかなことだろう.
その何と健やかなことだろう.

生きているより,余程,健やかだ.

私の眼窩から涙の代わりに蛆が流れる日を
静かに待っていたい.

2007年04月30日(月)



 

到底叶わないことを
明日にでも叶うように笑う.
そうして
明日を軽くする.

素足を伸ばして,ラインを越える.
足の裏に地の感触.
それは脳までやってくる.

自分の形.


2007年04月28日(土)



 23年

君とは23年前に出会って
昨日はその頃はなかった携帯電話で話をした.

君はずっと気にかけてくれる.
私も君を忘れない.

23年間ありがとう.
誕生日おめでとう.

2007年04月25日(水)



 私の終わりに.

手を繋いで,じっと踞っていたい.
私の終わりに.
君を見て,時々笑って.
そしてゆっくり終わりたい.
まるで最初からそうであったように.

2007年04月21日(土)



 免疫

私の躰の免疫はひどく下がっていて
医師にも指摘されている.
少しの傷にも過剰に反応する.
微熱は治まらない.

心は麻痺しそうだ.もう.

2007年04月20日(金)



 冷たいそれ

冷たくて,湿っていて
愛した.

2007年04月16日(月)



 

言い訳をするつもりもなく
言い訳をする必要もなく.

それほど強くもないけれど
それほど弱くもない.

変わってはいくだろうけれど
無理はできない.
無理強いは,嫌い.

できること
できないこと.

私の形.

2007年04月15日(日)



 有難う

その声を聞く度に君の存在全てに私は感動する.
刻み込まれたことは
決して優しいことばかりではないけれど
それでも傷跡さえ愛しい.

有難う.

2007年04月13日(金)



 気分

一瞬で全てが変わること.
徐々に一部が変わること.

2007年04月12日(木)



 証明写真

証明写真を傘をさして撮りにいく.
狭い箱の中.固い回転椅子.
コトン,と出てきた私の写真は
雨の夕暮れよりも暗かった.

私の,何を,証明するの?


2007年04月11日(水)



 溜息ピラミッド

一日が終わるのはいつだろう.
不眠の酷い時は,リセットの時間がない.
いつまでも怠く長い時間は続く.

溜息が部屋に充満している.
飽和している.

押し潰されるのは自分自身.

2007年04月10日(火)



 健全

健全に過ごしているか訊かれた.
健全に過ごしていたのは,何時の日か.

怒ったり泣いたりを,自由に.
笑ったり,喜んだりを,自然に.

何時の日か.
何処でだったか.

思い出すことは可能だけれど
思い出しても遠いから,私はもう笑うことなく
泣くこともなく.

2007年04月09日(月)



 親子3人で自転車

お姉ちゃんと妹とお父さんで自転車.
お父さんの行く方に曲がるのよ,とお姉ちゃん.
聞こえているのかはしゃぐ妹.
楽しそうなお父さんの背中.

そういうものを一人見ていた.
日曜昼間.
道路に立ち竦んで.
微笑ましい光景を撮ろうにも,ぐんぐん去っていく.
遠い.



2007年04月08日(日)



 お仕事

仕事に関する嫌味や苦言は
もう素直に頭を垂れています.

仕事に合格できないのは
やっぱり私の一部分が傲慢だからだろうか.

日々否定を重ねられる.

疲れた.

2007年04月07日(土)



 自由

逃げ道がなかったら,空を飛べばいいじゃない?
空に道などない.飛行機の空路など関係ない.

本当は地球のどこにでも行ける.
理性や言い訳で律しているだけだったのだわ.

道など他人が決めたものだもの.
けものみち,のほうを信頼する.

2007年04月06日(金)



 

嫌いな音,好きな音.
あまりわけたくないけれど
状況によって異なるし.

だから好きな音を幾つか.

うさぎの声
からだの音
砂の音

2007年04月05日(木)



 36th

お誕生日おめでとう.
お兄ちゃん.
あなたは家族の明るさを背負った人.
責任感に満ちあふれ,優しい人.

私は闇を背負って,いつも迷惑をかけるけれど
ずっとあなたの健康を祈っています.
地球に祈っています.
足りなかったら宇宙にも.

あなたは長生きして下さい.
父母を頼みます.

2007年04月04日(水)



 世界

何かを否定することは
それだけ自分を縛るのだと
二十代前半の私は気づいても,それすら快と思った.

縛られたくない脳味噌.
幾ら潤滑剤があったとしても
上手くいかない.
そういうことではないの.

与えられたいなら
与えなくてはいけない.
世界は美しいけれど優しくはない.


2007年04月03日(火)



 私は大丈夫と思うの

そういうようなことを呟いて
空を見た.

バレエシューズの中の素足がすうすうとして
風が髪を遊ぶ.

でもたぶん何が大丈夫かなど説明できない.

生かされている.
私はたぶん.
この躰で,この脳で.

生かされている.

2007年04月02日(月)



 

誰のどこまでが嘘か,など日替わりで
私のどこまでが嘘か,など分刻み.

ほら,この唇から
ねえ,この声帯が
嘘を空気に流していく.

嘘がなかったら
もっと素敵かなと思うけれど
もっと痛いのは確かで.

君の頬に触れて,もう唇は動かしたくない.

2007年04月01日(日)
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