白痴日記
白痴



 おんなゆく

私を好きなようにしてよ.
何でもしてよ.
その代わり,あなたの人生をちょうだい.

そのような恰好悪いことを
申し上げるわけにもいかず,尚かつ
拒否されることは
目に見えて,おりますので

私は此の世から
失礼致します.

いち,にい,さん.

2007年02月27日(火)



 私が言うこと

私が言うことを
全体像で受け取って.
具体的にではなくて.

話している時間の全てを
受け取って.
それは息継ぎだとか
沈黙にあるから.

声が空気を震わせるのは
実はあまり好きではないの.

2007年02月25日(日)



 センターライン

戻ることができるなら
あの場所へ.

二人で夜遅く車に乗って
風が気持ちよかった時間へ.

私は笑いながら
ハンドルを.

2007年02月23日(金)



 

梅の花
咲き乱れ
白い色は何かを隠しているようで

雪が降らないで
花が咲いていく.

順番など待っていられないと
咲いて,散っていく.


2007年02月22日(木)



 私は君を

殺すことだってできるのよ?
油断をしないで.
馴れ合わないで.
肌を粟立てて待て.

君を切り取って
海に沈もう.
深く,深く.

そして漂う.

予め手錠に繋いでおいた手首.
ほら,見てご覧.
その手錠,外れることはない.

2007年02月21日(水)



 習慣

私には最近習慣というものがない.
毎日決まってすることもない.
爪も乱れている.

習慣がないということは寂しいことかもしれず.



2007年02月16日(金)



 街角6

もうすぐ掃除屋が来る.
また後から文句を言われるだろう.
臓器が使い物にならないと.
でも実は喜んでいるのを知っている.
好きじゃなくて掃除屋になるはずがない.

切った瞬間は,本当に瞬間だけれど
血は出ない.
切る速さとも関係する.
私の売りは速さだ.
だから返り血ひとつ浴びていない.

問題は,血だらけで気絶している子供だ.
掃除屋は彼も掃除するだろう.
生きている臓器は高いから.

ふと顔を見てみる.
連れて帰りたくなった.
あの部屋は子供くらい居てもいいだろう.
自販機で水を買って,一通り子供を洗い流して担ぐ.

時計を見る.
3分間の出来事だった.

2007年02月07日(水)



 街角5

幾らと聞かれてもわからなかった.
「十万円でいいかな.」
僕は頷く.
とりあえず悪い金額ではないはずだ.

肩に手を置かれたまま,歩いていく.
中年の普通のオヤジに見える.
でも嫌な匂いがする.あの女と同じような.
逃げ出したい.
逃げ出した方がいい.
客は他にもいるし.いるだろうし.
そんな気持ちが伝わったように腰を抱き寄せられた.

「あのマンションだよ.」
それは豪華なマンションで,もう目の前だった.
僕はあの中で裸にされて,犯される.
きっとすぐ終わる.

その時
視界が揺れた.腰から手が離れた.
横を見ると自販機に男が向かっている.
何か飲み物でも買うのだろうか,逃げるなら今か.

それは瞬間だった.
男の身体が半分に裂けていった.
ピンク色の腸がアスファルトに伸びた.
脳味噌のようなものが僕に降り注ぐ.
意識が遠くなる.
目を閉じる瞬間に裂けた身体の向こうに

サングラスの女がいた.

2007年02月06日(火)



 街角4

ファーストフードのトイレットで自分の顔を見る.
サングラスを外して.
そして血を洗い流す.
今日は何本持っていたっけ.
鏡の中の自分と目を合わせる.

もう少し機嫌が悪ければ鏡を割っただろう.

店から出るとターゲットがいた.
一人のところが好ましかったのに,もう物色している.
そう,理由を思い出した.
重症のペドだったわ.サディスティックな.
でも何でそれが理由?
お仕事,お仕事と鼻歌.

近くに借りているマンションに連れて行くはず.
此処からの道を頭に描く.
殺すのは自動販売機の横.

お仕事,お仕事.


2007年02月05日(月)



 街角3

サングラスをかけた背の高い女の人がいる.
あの人も売っているのだろう.
僕は売れるだろうか.
第一経験がない.経験がないことは売り物になるだろうか.

女の人のところには客がきている.
ビルの陰に消えていった.
数分で女の人だけがでてきた.
薬か何かの取引だったのだろうか.

上機嫌のようだ.
傍のファーストフード屋に入っていく.

「幾ら?」
僕の肩に手が置かれた.

2007年02月04日(日)



 街角2

ターゲットはつまらない中年.
街角にぼんやり立って待っている.
殺す理由は忘れてしまった.

この辺りは葉子さんの言う「立ちんぼ」が多い.
まだ子供もいる.
子供のほうが高いのだろう.

「幾ら?」
声をかけられた.
立ちんぼ,ではないのに.
目を伏せて首を振る.
罵声が聞こえた.
私は今日苛々している.

誘うように罵声を浴びせた男をビルの陰に連れて行く.
髪の毛が汚れるのは嫌いだから束ねる.

ズボンを下げていく.
罵声を吐いた唇は見にくく弛緩していく.
私の頬も微笑む.

それは瞬間だ.

口を塞いで
膨張している汚物を切断.
それはペラペラのキノコのよう.二枚おろし.
蹴り上げてゴミ山に捨てる.

血は私には一滴もついていない.
満足.

嗚呼,でもナイフを清浄しなくては.
ターゲットはこれではなかった.

髪を解く.

2007年02月03日(土)



 街角

街角に僕は立っていた.
まだあまりルールはわからないけれど,
この場所はフリースペースらしい.
僕は僕の身体を売る.

とりあえず眠るところが欲しい.
家はない.
僕の家は両親が死んだ時になくなった.
地獄があった.
あの女は嫌いだ.
血の繋がりがなくて安心する.

強いて言えば今日から街角が,家だ.

2007年02月02日(金)



 疲労

死んだらどうですか.
どうでしょう.

2007年02月01日(木)
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