白痴日記
白痴
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もう手はない
死のうとすると伸びてきた手はもうなくなっちゃった.
あの手じゃないと駄目だったのに.
あの手なら何をされてもよかったのに.
欲しいものは手に入らない.
生物は駄目だ.
かといって金もないし物欲もない.
薬.
薬が一番のお友達.
アンパンマンといい勝負だ.
愛と勇気だけが友達のアンパンマン.
でも何だか薬のほうが勝つ気がするわ.
愛と勇気って何?
わかっても私とは縁がない.
2005年06月30日(木)
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海
テレビで生まれた所の海を見た.
生まれた所は資本主義の中,どんどん変化し
思い出の中の建物は消え失せたが
海だけはあった.
海だけはまだある.
波の砕け方が同じだった.
あの海に帰りたい.
水死体は汚いときく.
迷惑をかけてしまうな.
コンクリートの塊と共に沈めば
静かに魚に食べられて
なくなるだろうか.
この身体.
海の中で.
2005年06月29日(水)
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いつも苦しい
私はいつも苦しいので
苦しいか?
と訊かれても
苦しくない
と答えます.
生き物には依存しない.
私が人生で唯一決めていること.
生き物には依存しない.
ひとりでいい.
いつも苦しくても
ひとりがいい.
私はいつも苦しくない.
2005年06月28日(火)
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わるいゆめ
眠るたびに悪夢を見る.
悪夢しか見ていないのか
悪夢しか覚えていないのか
わからないけれど.
それはとても現実的で
感情の動きや,人々の言葉や
崩れていく様や.
眠ると衰弱する.
眠らなくても衰弱する.
夢でも,ほっとしなくなって随分経つ.
積み重なる悪夢と疲労感.
疲れると死にたいのは,自然の摂理?
もう何もかもやめたいのだ.
眠ることも.
起きることも.
2005年06月27日(月)
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光
赤,青,逆光,紫.
照らされて,歌う姿は楽しそうだった.
無表情でも楽しそうに見えた.
光は次々変わり,やがて客電がつく.
その寂しさを埋められないまま
地下鉄まで歩く.
汽車に乗り継ぎ,揺られていると
音が蘇ってきた.
ふわりと浮いたよ.
目を閉じた.
2005年06月26日(日)
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プラム
果物が好きなのだけれど自分でなぜか買わない.
知人にプラムをいただいた.
プラムは運動会の味.
運動会のお重にいつも入っていた.
いなり寿司や巻き寿司や
卵焼きや鮭や北海しま海老と一緒に.
ママがいてパパがいて,お兄ちゃまもいた.
足が遅くても応援してくれたし
卵焼きはとてもおいしかったの.
2005年06月25日(土)
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前の恋人の誕生日
優しくできていただろうか.
七年間の日々.
七年間,普通に恋人でいたこと.
私が追い続けているのを知っていても
和らぎの気持ちをくれた人.
最後はわからなかったね.
もう見えなくなっていた.
携帯電話のメールで送るハッピーバースデー.
数日前から気づいていたよ.
普通に,誕生日だと.
プレゼントは途中から贈らなかったけれど
あなたと私は誕生日の言葉と年始の挨拶は欠かさなかったね.
お誕生日おめでとう.
2005年06月24日(金)
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亀の子たわし
身体を洗う時は亀の子たわしを使う.
由緒正しきパッケージを愛おしく見ながら.
肌は紅くなり,少し痛いけれど
シャワーで泡を流すと,疲れがとれていることがわかる.
ゴシゴシと洗う.
脳味噌も洗いたい.
2005年06月23日(木)
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風邪が治らないのは
長風呂のせいかもしれない.
私の風呂は最近,前にも増して長い.
文庫本なら,一冊半というところ.
風呂で読むと没頭できる.
まるで風呂がモロッコになったり,阿片窟になったりする.
気がつくと,湯は冷えている.
2005年06月22日(水)
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セルフカット
ずっと行っていた美容室の担当がやめたことで
私はぽんと放りだされた.
覗いてみた美容室達は音楽と美容師のこじゃれた格好ばかりが目立ち
私の気分は暗くなり,逃げ出す.
そんなことにも疲れ
二種類の鋏と櫛を使って自分でざくざく切っていく.
浴室で.
黒い髪.
染めなくなって何年経つだろう.
最近はパーマすらあてていない.
毛量の多い私の髪は浴室を埋める.
ゴミだ.
2005年06月21日(火)
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火傷
この間バイクの後ろに乗っていて
降車のとき,マフラーにつけてしまったアキレス腱.
焦げた色をしている.
肌が死んでる.
触るとがさがさする.
同じ失敗はもうしないと思う.
2005年06月20日(月)
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帰っていった道
帰っていた道を見ていた.
時間は計っていなかったけれど,可成り長く.
君の姿がなくなっても.
朝のまだ少し暗い中を.
ベランダに裸足で
柵に寄りかかって
見ていた.
あと何回これができるだろう.
私はもう一人だから泣きはしないけれど.
2005年06月19日(日)
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賽子
出た目の数だけ進む.
それとも退く.
私は一人で遊ぶ.
賽子を振るのは,あくまで
此の世でも彼の世でも
彼一人である.
一生踊らされていたい.
2005年06月18日(土)
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もう何処にも
行かせるのは嫌.
抜け殻は嫌.
痛いのも嫌.
でも行ってしまう.
君は自由だもの.
絶叫.
頭の内部で.
助けも求めることができない.
なるべく表情に出さないように目礼するのがやっとで.
嗚呼,行ってしまう.
悲しすぎて死にたい.
2005年06月17日(金)
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終わってんだよ
かさかさの唇から出る言葉.
床に当たって,自分に返ってくる.
終わってんだよ.
2005年06月16日(木)
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言葉が子供
言葉は真っ赤で羊膜に包まれた餓鬼で
八重歯で羊膜を引き裂いて
キーボードを叩きつける.
だらだらと産みっぱなし.
忘れ去る餓鬼もいる.
忘れ去ったらそれまでで.
陣痛のかわりになっているものは
何だろう.
2005年06月15日(水)
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意味のない日付
別に今日が14だろうが25だろうが
どうでもよくて
それは
今日が特に私にとって意味のない一日だから.
違う.
日付なんて関係ない.
メモの一部に過ぎない.
死んでしまうものは死んでいく.
命日なんてどうでもいい.
2005年06月13日(月)
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心は
心はいつも君に寄り添っていたい.
シフォンケーキについたホイップクリームみたいに.
食べられてしまう時は,たっぷりと君に塗られて
私は口内に入りたい.
2005年06月12日(日)
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写真
写真で構成される記憶は,時間が経つほどに
濃くなり,何れ見えなくなる.
嗚呼,でも写真の束が欲しいと思った.
2005年06月11日(土)
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スターバックスの禁煙理由
「珈琲の香りを楽しんでいただきたいので」
明らかに嘘.
珈琲に一番良く似合う香りは煙草だ.
綺麗な長い指先が煙草の灰を落として
静かな声で,話す時
その合間の珈琲の匂い.
そこが東京でも,どこでも.
2005年06月10日(金)
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私は私だというのに
この空虚感は何だろう.
埋められないものは,決して埋められない.
情報では自分で埋めるしかないと,宣伝しているけれど
嘘だ.
埋められないものは存在する.
2005年06月09日(木)
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一気に,がばっと
恋に落ちて
深みに落ちて
人生が変わっていく.
そういうもの.
そしてその恋は壊れても,私を構成する.
だから思いだすと
身体中が軋むよ.
会いたいよ.
2005年06月08日(水)
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少しの流行
陽射しを受けて,セール中の服を見る.
蝶々のキラキラ.
くしゅくしゅした綿のパンツ.
時々はいいかもしれない.
こういうのも.
重ね着は嫌いだったのだけれど.
嫌いをやってみるのも,余裕の一つかもしれない.
2005年06月07日(火)
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本音
本当の音が君に響くならば,どれほどうれしいことでしょう.
2005年06月06日(月)
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腐る
私は生物が嫌いだ.
頼っても,甘えても,いつか何処かに行ってしまう.
蝋人形を抱いて眠った方がいい.
無理に幸せを意識するなら
不幸な方がいい.
一人の方がいい.
愛情も,精子も,この躰も
腐るものは嫌いだ.
2005年06月05日(日)
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日向の匂い
子供の髪は日向の匂い.
少し汗ですっぱいけれど,干し草の匂い.
手を引かれて家路を急ぐ後ろ姿.
私が手に入れられないもの.
なくしてしまったもの.
私の髪はぱさついて
汗の匂いさえしない.
手を引いてくれる人もいない.
手を引く人もいない.
頼りない子宮と精神.
2005年06月04日(土)
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もう何もかもが
踵を先に着けて,蹴り上げるように歩く.
赤を濁した花びら,足下に.
受粉できなかった雌蘂.
爪先で踏みたくなって
踏めなくて
カメラを向ける.
切り取られた,保存された.
私もそうされたい.
2005年06月03日(金)
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雨の音を頭痛の私が聴く.
激しく降るといわれていた雨は期待はずれ.
一定のテンポで降っていく雨.
頭が痛い.
眠ることのできない弊害.
血生臭い部屋.
雨の匂いを混ぜたくて窓を開ける.
頭痛と雨の音がリンクする.
2005年06月02日(木)
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別に何も
ただ私の無責任な口は
大好きだと思えば,大好きと口にする.
それからのことは知らない.
大事にしたいことは大事にする.
着けられている足枷に気づいていないことはない.
時々ガチャガチャと引いて遊ぶ.
足枷さえも愛したい.
狡いから.
水を飲んだら唇が濡れた.
君と話したら膣が濡れた.
離れたら目が濡れた.
2005年06月01日(水)
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