白痴日記
白痴



 夢を見た

知り合いが,大事な人たちが
二人ずつ,旅立っていく.たぶんシアワセナ家へ.
私はひたすら笑顔で見送り続けた.

手を振って最後の二人の姿が見えなくなるまで
手を振って
下ろして気づいた.否,最初からわかっていたかもしれない.
でも,もしかしたら.と思っていたのかもしれない.

下ろして気づいた.
私の手は誰にも繋がれる事なく.
永遠に一人きりだと.夢の中で私は立ち竦んでいた.

起きて暫く,その感情が消えない.
永遠に一人きりなのか.
この手は誰とも繋がれることなく,灰になっていくのだろうか.

2003年11月29日(土)



 たぶん,今日

晴れた一日だったのだろう.
最近の体育はマラソンなのだろう.

あの人は相変わらずなのだろう.
かの人は外国から戻ってこない.
あいつは展望のない将来に嫌気がさしたらしい.

ぐるぐるまわって.
放っぽりだされる,何処かへ.

2003年11月28日(金)



 生きてる実感

動脈を切って血を見たとき,生きている実感が湧いてきましたか?
などと訊かれ
いいえ,と
下を向いたまま答える.
笑いたくなったけど,引きつって笑えず.

生きている実感って何ですか.
それっておいしいの?

自分を呪う.

2003年11月27日(木)



 アイスクリーム

風邪の時はアイスクリームが特別おいしい.
ひんやりと喉を通っていく.
何となく栄養もある気がする,ないか.
身体に籠もった熱を冷やしてくれる.

けれどアイスクリームを食べた後は,大体悪化する.
けれど今日のラムレーズンもおいしかった.

2003年11月26日(水)



 他人の不在

自分以外の人がいないということが
悲しくて
寂しくて
悔しくて
闇を見てた,痛む腕を押さえながら.

ずっと一人だったよ.
これからもずっと一人だよ.

わかっている.わかっている.

2003年11月25日(火)



 除雪車

よく一緒に顕微鏡室で,明け方,未だ暗い中で除雪車の音を聴いた.
何となくこんな事を言ったら負けだけれど,
その頃が一番幸せだったように思う.

君の珈琲は美味しく,暖かく,濃くて.
おかわりを二人で分け合ったり.
おすすめのジャズがかかっていたり.
笑ったり.

外は雪で.
よく朝の光がパチパチしてる中を歩くのが遅い私を
君が追い越した.寒そうな背中.
新雪に二人分の足跡が残って,とてもとても幸せだった.



2003年11月20日(木)



 再開

自傷の再開はないから.
例えばコンビニエンスストアの剃刀売り場で冷や汗をかいても
手にとって戻したり,を繰り返しても.
包丁や注射器やメスや,インターネットで睨みつけても.
鉄柵に頭を打ち付けたく,立ち止まっても.

嗚呼.嗚呼.

2003年11月19日(水)



 わからない

わからない
知らぬ存ぜぬ

首を傾げて何かを辿るような目をして.

ぽかんと口開けて生きたいものを.

2003年11月18日(火)



 吐き気

吐き気を覚える.
郊外の家の前で,ポストが落ちてゴミがたまっている.
最悪な想像を消し去ろうとして
耳を澄ます.

左手が首が脚が切ってくれと喚きだして耳を塞ぐ.

2003年11月17日(月)



 巡りあい

どうして会ってしまったのか.
色々な人に.
傷つけた人々.
私は傷に強いから,私は傷つかないから.

精算をしなければならないと.
枯れ葉を避けて歩きながら,私は.

2003年11月16日(日)



 傷の舐めあい

他人の傷など舐めたくもない.
私,自分の傷は自分で舐めるわ.

他人の傷を舐めて,その後自分の傷も舐めてもらって
それから?

こうやって強がっていないと同情の沼にはまりこんでしまいそうでさ.
同情はいらない.
自分自身にも同情しない,自己憐憫など最低.

なんてね.
有言不実行.

自殺未遂繰り返し女が言う事じゃないね.

生きていって何が見える?

2003年11月15日(土)



 本気

私は本気になりすぎる.
曖昧さとか適当さとか器用さとか
身につけるべきものがたくさんある.
本気になるべき処を判断する力も必要.

信じることは信じないことだ.
信じることと期待することは違う.

頑張らないといけない.

嗚呼,また本気になっている.


2003年11月14日(金)



 無駄

無駄な事って結構あるなと思う.
人に対しても.
できるだけ簡素に物事や人々と接していきたい.

そんなことを考える.

2003年11月13日(木)



 何処で間違ったのだろう

幼稚園の時上手に笑えなくて,他の子とお話しできなかった.
小学校の頃保健室が好きだった.
中学三年の時の記憶がない.
高校の時・・・

後ろを向いても仕方なく.
前には何も見えなくて.
ただ震えている.
誰か私の涙腺を壊して欲しい.
泣いたら楽だって,よく聞くから.
泣いてもどうにもならないって,奥歯が音を立ててから
涙腺は何処かにいってしまった.

泣いてもどうにもならない.

2003年11月12日(水)



 

今日久しぶりに空を見た.
雲や青や少し赤くなった空気を.

外に出るのは珍しくない.
けれど空を見ることはなかった.
私の目は信号や,行き交う人々に奪われていた.

空を見た.

2003年11月11日(火)



 二ヶ月後

二ヶ月後の航空券を取る手筈.

空席を示す液晶画面を見ながら.
今の私には酷く遠い期間に思える.
想像もできない.

死にたくても,無様に生き残り
生きることに苦しくて
苦しくて.

クリックできないままウィンドウを閉じた.



2003年11月10日(月)



 実験室で作成可,が不許可

ガスホース
透明ホース
漏斗
ニッパーのような金具
水4リットル
阿呆な患者
バケツ

あ,マウスピースがない.あれ重要だ.





2003年11月09日(日)



 何もない

苛立つこと
悲しいこと

どうにもならないこと

以上を除くと私には何もなかった.

2003年11月08日(土)



 視界

裸眼で散らばった髪の間から見えるぐらいが
丁度良く
安心する.

私の一日は髪を視界から消すことから始まる.
眼鏡をかけて,水を飲む.

2003年11月07日(金)



 たわし

躯を洗う物を探して,ボディタオルの売り場に行って
何故かたわしを買ってきてしまった.

痛い.けどすっきり.
しばらくたわしを使おう.

2003年11月06日(木)



 価値観

共通の価値観が持てて良かったね.
でも私はそれがちっとも魅力的じゃない.
価値観なんて,自分の形だろう.

集合体の価値観はとてもすごい力を持つね.

2003年11月05日(水)



 皆殺しのブルース

嗚呼,この人達皆死んでしまえばいいと
不意に想うことがある.
そして,それより自分が死んだ方が簡単だと気づく.

憎しみは簡単に湧き出る.

2003年11月04日(火)



 造語憎悪

くだらない.
でも屹度何かを助長するだろう.
知識など欠片もなく,其れは育っていくだろう.

溜息を重ねていくと過呼吸になる.

くだらない.

2003年11月03日(月)



 焼き林檎

林檎の芯を抜いて
バターを詰めて
アルミホイルにくるんで
オーブンで20分.

焼き林檎を作ってくれるときはご機嫌な時で
私はほっとしていた.

他愛のない事を話しながら食べた.



2003年11月02日(日)



 他人を傷つけること

肉体的に傷つけることは,何とか自制がきいている.
その分を自分の躯から血を流す.アスファルトに頭を打ち付ける.
何度もそんなことはあった.

精神的に傷つけることは,たぶん,七割ぐらいしか自制がきいていない.
傷つけようとして傷つける,質の悪い悪意.
このタイミング,この言葉.
そんな恥ずかしいことをよくも繰り返して
生き続けていられる.私は.

畜生.

2003年11月01日(土)
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