白痴日記
白痴



 子供の手足

子供の手足.
子供といっても幼児の手足が好きで.
ほっそりとしていても
ぷっくりしていても
とても伸びやかに見えて,憎くさえなるのです.

お母さんと並んだワンピースから伸びた足.
抱っこをねだる手.

全てが私にはもうなくて
砂時計は戻らなくて.

憎んでいる.


2002年07月30日(火)



 他人

他人に例えば病気を話して,
思い通りの反応をしないからショックを受ける
なんて
センスと想像力がない.笑止.

他人を信用しているのね.
信用と期待は違うのよ.

それはエゴ.

エゴに気づかないなんて,愚か.
愚かが悪い
とは言わないけどね.



2002年07月29日(月)



 夜の川

夜の川を渡る,
闇の色をした川水.

あとどれぐらい?
と,川に訊いてもわかるわけがなくて.

夜の川に惹かれるのです.
夜の川になりたい.

2002年07月28日(日)



 鳥と蝉

鳥と蝉が競い合うように泣きだして
朝.


ぶらぶらと帰りましょう.
週刊誌と朝御飯と飲み物を買って
コロに挨拶して
帰りましょう.

2002年07月27日(土)



 HOPE一箱

雨が降って,風が強くて
土の匂いとアスファルトの濡れる匂いが混じって
そんな中で指を焼きそうになりながら
火をつけて

1本目,2本目,3本目までは嗜好.
後は自虐.舌先がぴりぴりとしてくる.
煙が雨の中へ.

気管がひゅるひゅる音を立て始める.
そのせいか動悸.

嫌なことを考えながら
何も考えないで
ちょっとした希望を考えながら.

一箱.

2002年07月25日(木)



 寂しい

寂しさは結構簡単に埋まるのかも.
霞でよければ,一瞬の温かみでよければ.

例えば
今私が電波上で寂しいと
25の女でふっくらしていて,病気も持っていないと
お金も求めないと
書けば,その辺の欲望屋さんが
私に乗るだろう.

埋まってるつもり.
埋めているつもり.

つもり貯金,寂しさを貯金.
使い道は死.


2002年07月24日(水)



 灯り

柔らかな灯りが欲しいな
すべてをぼんやりと映すような

今度街で探してみよう.
今度と言えてるのが怖ろしい.


2002年07月23日(火)



 死ね

今一番人に言いたい言葉.
死ね.
私の歩く道に邪魔にならないような場所で
死ね.

お前らの事なんて,もうまっぴらなんだよ.
死ね.

2002年07月22日(月)



 死んだ猫

死んだ猫に土をかけた.
月が出ていて明るい夜だった.

温かいはずの躰はもう冷たくなり始めていた.
私の嗚咽は一度だけ.

もう骨になっただろうか.


2002年07月20日(土)



 もし

あの人が私を愛し続けて
この人が私を愛し始めて
誰もが優しく
好機も続いて,何もかもが
上手くいったら

いいね.
それだけ.

2002年07月18日(木)



 埼玉県

人の些細な言葉に反応するのは
私で,例によって例に漏れず,少しグサリと
きたりして

ああ,でも,こういうときに
ぱっと
死んでしまうのも
愚かでよいと
思ったり.

2002年07月17日(水)



 影法師

子を真ん中にして親子三人手を繋ぐ.
時々子に高い高いをしたりして.

其れがとても欲しくなったのです.
自分を母親の位置に当てはめて想像して.

でもそこで笑っている私がふと振り返ってしまって
やっぱり
其れは私の顔で,悲しく愚かな笑顔なのです.

2002年07月16日(火)



 おさなご

乳房を含んでいるときが
人生で一番
幸せだったとしたら.

乳房がなくても生きていける
なくても平気で生きていけても
他のものが欲しくなる.

知らない頃には戻れない.

乳房だけが幸せだった頃には戻れない.

2002年07月15日(月)



 仔猫

仔猫のお腹はぷっくり膨らんで
脚は軽やかに走り回り
母猫はゆっくりと歩き,

そんな幸せな夕暮れの中

私は.

2002年07月14日(日)



 白い狂気

白く白くどこまでも
深く深く愛している.

狂気は甘い蜂蜜のように私の脳味噌に染みていくから.


2002年07月13日(土)



 虐待でも愛護でもない

私の動物への態度
全ては自分のため.

動物の心が綺麗とは思わない.
天使とも思わない.

生物.
それだけ.

殺すこともある.
苦痛かどうかは知らない.

2002年07月12日(金)



 ペケ印

この間切り刻んだとき
私は腕に大きく
ペケ印をつけたのです.

どんな気持ちだったのか.
不良品,かな.
廃棄物,かな.

ペケ印は大きく深く刻まれていて
なかなか消えそうにありません.

2002年07月11日(木)



 もし

もしつらかったら
死んでいいと

もし前が見えなかったら
立ち止まって
終わらせて

それでいいと
誰か.

解放して欲しい.
この生から.

2002年07月10日(水)



 

痺れる手足
意識が薄れていく



2002年07月09日(火)



 

死ななくちゃ

2002年07月08日(月)



 生 なま

夕べ,転がっていたとき
嗚呼,突然,自分は生ものだったと思い出して

生女 なまおんな
柔らかさと突っ込む構造
いつか別な生命を宿すかもしれない下腹.

腐ってしまうとうなされて
腐ってしまえと呪いながら

肌の匂いを嗅いで
微妙に乳と血の混ざった自分の匂い.

吐き気と安堵.
なま,生.

2002年07月07日(日)



 大好き

ただ其れだけを
思ってしまうのは

眩暈が起きそうなほど

昨日の血の匂い
明日の血の予感

全てを感じながらも

ただ其れだけを思ってしまう.

2002年07月06日(土)



 遺書

私は幸せでした.
家族が好きでした.

苦しむことにもう疲れてしまいました.
根性無しでごめんなさい.

好きな人たち
ありがとう.

何度目の遺書?

そんなこと,どうでもいいや.

さようなら.

2002年07月05日(金)



 修道女

時々
修道女になろうかなと思うのです.
戒律の厳しいところで.
或る意味,もっとも社会に背いているから.
だって神しか信じていないからね.

だけど
修道女になる前に
やっておきたいことが,いくつか
修道女になる前に
囚人に
なったり
して.

2002年07月04日(木)



 生理

手首からの出血など
馬鹿にしたような脚の間の
血溜まり.

役に立つかどうかさえ
わからない
臓器.

毎月其れは行われて
溢れる,ぬるい血.

ぬるい血.

2002年07月03日(水)



 彼女

彼女と食べた
卵の下の鰻はとても美味しくて

歩いた街は
とてもよい匂いで

彼女は悲しくて悲しくて,
けれど
強かった.
笑顔が本当に好きだった.

この
空気のどこかで
きっと今も彼女はいて.

私は彼女を尊敬し愛する.

2002年07月02日(火)



 

剃刀の先に小さな花が咲いていることに
気づいたのです.
とても可愛い.
まるで初めて産毛を剃る女の子向けのような.

お花から赤い涙が二筋流れるのを
見ながら

どこか遠くのことを
とても近くのことを

手に入らないもののことを

お花を見ながら.

2002年07月01日(月)
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