白痴日記
白痴



 

私は音に敏感です.音痴だけど.
たぶん目が悪いから,他の器官が頑張ってくれるのでしょう.

人の大きな声や
不必要に乱暴な仕草から出る音.
大嫌い.

だけど

耳を澄ましてあの人の湿度の高い呼吸を聞くとき
歩くときのふとした空気の流れを聞くとき
嗚呼,
この耳で正解だった
と思うのです.



2002年06月28日(金)



 泥すすり

ひび割れた皮膚の間を
血液が満たしていく.

めでたし聖籠満ち充てし聖なるマリア
私を早く主の元へ

これ以上の苦しみが私の人生への
あなたのプレゼントなのですか?

今さら祈れないけど,迎えに来てくれた

と言ったのは私の好きな小説の主人公で.
私はあの子ほど綺麗ではなく腐泥にまみれているけれど

迎えに来て.
迎えに来てください.

2002年06月27日(木)



 汚い玩具

玩具の神経細胞をすべて断ち切ってしまいましょう
私は追い詰められている
汚い玩具
壊れた玩具
悲しさなど感じることが愚かな玩具

めでたし,聖籠満ち充てしマリア

もう迎えに来て
あたしを生かしておかないで


2002年06月25日(火)



 左足の小指

なかなか来ないバスを待っているとき
剥きだしの小指を
蚊に喰われたのです.

それはそれは痒くて
指を切り落とすことがふっと頭に浮かんだけれど

痛いことが苦手な私は
同じく剥きだしの右足でさすっていました.

2002年06月19日(水)



 絶望の惰性

絶望があたりまえのように
横にいて

血を流すのがあたりまえの
毎日で

ああ.

2002年06月18日(火)



 家族

朝起きて
誰かの息が近くにあることが
あたりまえに
なる日は

私には一生訪れないと思う.
一生,を今すぐ終わらせることが
できるから.

2002年06月17日(月)



 自分の汎用

自分に対しての
潔さが
ない汎用は

掴むことのできない自分の汎用は

自己責任の
とれなくなるような
自分の汎用は

危険だよ.


2002年06月16日(日)



 ぷちん

血管はぷちんと弾けました.
紅い水玉ができました.

其れだけのことです.
其れだけ,なのです.

2002年06月15日(土)



 鳴かぬなら殺してしまえ,不如帰

欲しいものは手に入らない.

あきらめる?
泣き叫ぶ?
恨む?
妬む?

無理矢理にでも
手に入れる?
命と引き替えに.

欲しいものが手にはいるのだったら
何の迷いもない.

2002年06月14日(金)



 あいのうた

あいのうたを
誰にも歌えなかったな

子供も産むことがなかったし.
心残りだな.

2002年06月12日(水)



 SM

虐めるのも虐められるのも私.
血を流して
恥を晒して.

快楽?

2002年06月11日(火)



 絶賛独り

私は二号さんになることが多い
他人にとって.

そこそこ大事にされるけれど
一号さんが当然ながら
一番なので

二号さんは生死も放置されてしまう.
でもね
それでいいの.

大事なものがちゃんとわかってよかったね.

私は私が一番だから
生も死も
平気.
独りで平気.

2002年06月10日(月)



 電子メール,電話

肉体の触れあわないものたち
優しくもなれるし
鬼畜生にもなれるでしょう.
自分以上にはなれないけれど.

たぶん肉体よりは嘘がばれにくい.
肉体は肉塊で嘘などつかない.
そこに
意味など求めない限り.

私が欲しいのは肉塊だけ.
意味を求めるのには疲れ果ててしまった.
嘘にも吐き気がする.

2002年06月09日(日)



 天国

天国なんてあると思ってない.

神様が万能かどうかは
知らないけれど
優しくないのは,確かだね.



2002年06月08日(土)



 ユメ

夢はよく見る
毎日覚えている

色や匂いや
感触や
精神的苦痛まで

私の夢は私に司られているはず.

ユメもゲンジツも弾け飛んだら
それで.

2002年06月07日(金)



 制限

私に制限などかけないで
好きな言葉を吐いて
動いて

ぼろぼろになって

生きていくのだから.

誰にも責任など求めないのだから
制限をかけられる覚えはないわ.

2002年06月06日(木)



 止まらない列車

止まらない列車に乗って
そこから
降りるにはどうしたらいい.

どうしたらいい.

2002年06月05日(水)



 マスターベーション


躰の反応だけを,その動きだけを繰り返す.
確かなのは其れだけ.
目を閉じて上を向く.

「すごいね.」

声だけ頭の中に残しておいて耳元で再生.

25年のセックスの記憶.
あの人との記憶.



2002年06月04日(火)



 エンドレス

終わりのないものなどないのだけれど


2002年06月03日(月)



 切り捨て

最近いらないものを
次々と
捨てている.

人も物も.

ああ軽くなってきた.

私でなくてもよい人とは
さようなら.
だって信用できないもの.
さようなら.
嫌いだという人とでも同じように話せる人
さようなら.

別にあからさまにはしないけれど
もう私の中には
いないわ.
密かなくっきりしたさようなら.

2002年06月02日(日)



 好きな人

好きな人と一緒にいたい
小さな頃から,ずっとそう思っていて.
それが
私にとっての夢のようなものだった.

夢は夢のまま
年月は過ぎていき
いつのまにか

いつのまにか



2002年06月01日(土)
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