くじら浜
 夢使い







秋の色   2003年10月31日(金)

赤く染まった落葉は僕の血でしょうか
母樹から放たれひらひらひらと地面に重なり
そして枯れてゆく

朝はいつも真っ赤に染まって
僕の血を照らすのでしょうか
宙から放たれふつふつふつと空に重なり
雲も真っ赤に染まっていく

雲に溶け宙に溶け地に溶け
そしていつか母樹に溶けゆくのでしょうか






イメージの向こう側   2003年10月27日(月)

伝えたい言葉がイメージに色を付け君に伝わる
伝えたいのは言葉ではなくその色だと気がつく
朝に呼ばれて空を見上げ
真っ白な空に言葉を付ける
一滴の赤はやがて朱になりオレンジになり
そして青と交じって僕に落ちてくる






さわ   2003年10月26日(日)

ひとのいとなみは
かわのながれのよほ
ときにさらさら
ときにごうごう
はげしく
やさしく
りゅうりゅうと






空が震える   2003年10月25日(土)

夏の終りはいつも突然で
薄い空をただ唖然と見上げて
そこに立ちつくすだけだ

遠い山鳴りが天に木霊し
くもが萌えている。






色がつく   2003年10月17日(金)

午前5時50分
石油コンビナートの真上に出た太陽が、
フロントガラスを照らした。
色のない工業地帯が真っ赤に染まり、
沸々と息を吹き返す瞬間。
僕の顔も真っ赤に染まった。






かさぶた   2003年10月15日(水)

幾層にも重なった雨雲は、
幼い頃度々つくったかさぶたを思い出させた。

あの頃母は厳しい人だった。
理にかなわない事をする僕を、
時計の掛かった部屋の角の柱に容赦なく縛りつけたり、
押し入れに何十分も閉じ込めたり、
そんな人だった。

膝小僧にできた傷のかさぶたを、
まだ生乾きのまま無理やりはがした僕を見て、
母は物凄い形相で叱りとばした。
治りかけていたかさぶたの下の傷は、
また見るも無残な程真っ赤に染まり、
その痛さと母の罵声で僕は泣き出してしまった。

母に叱られるのは恐かったが、
まだ乾かないままのかさぶたをはがすのが、
たまらなく好きだったのだ。
 ちょっと痛いけど・・

そして
いつの間にかその頃の母の年を追い越し、
気が付くと
いつの間にか母は優しい人になっていた。

雨雲が東へ散り南へ散り
すっかり乾いたかさぶたを母は静かにはがしてくれた。
かさぶたの下にはきれいに治った薄紅色の傷の跡が残っていた。






チョウタリ   2003年10月13日(月)

遠い山の匂いを思い出し
ふと立ち寄った
2年ぶりの友は相変わらず
力強い音色と共に
そこにいた
生きるとは風のようで





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