独り言
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2006年12月30日(土) R-CUBEライブのお知らせ

2007.1.30(火)
下北沢440(four forty)

440 presents

open/18:30
start/19:00

ticket/前売り2000円,当日2500円(drink代別500円)

出演/R-CUBE,狩野良明,植田謙太,他



出順は1番目、19:00からになります


チケット予約、お問い合わせは


rcubesound@yahoo.co.jp


または、440電話予約までお願い致します


440電話予約/03-5481-4143(14:00〜20:00)公演前日まで受け付け


だそうです




よろしくお願い致します








ー追伸ー


赤信号でも気にせず渡る

ツイてりゃ行ける

もしくは逝ける





片輪の男が

雨に打たれて

妊娠中毒症とへそピアスの因果関係についての

学説をまとめている



誰にもそれを否定する事は出来ないし

邪魔する事も出来ない




もちろん受け入れる必要も無いのだが






一切根拠の無い学説

しかし男は「絶対に間違えていない」と確信している


2006年12月29日(金) 夜明け前

どうして
こんなに夜が永く
凍てついてしまった様な
気がするんだい?

まだ遠い…Sunrise



こうして
凍えた心を休め
誤魔化してみたって

まだ遠いSunrise

なら夜明け前で構わない




最高の暗闇へ
全て乗せて
さぁ行けよ
どの道でも構わない
あとは星にでも乞え

喜びも悲しみも
全て乗せて
さぁ行けよ
何様でもかなわない
あとは神にでも乞え



「去り行け全ての」

「去り行け全ての」

「去り行け全ての」




「優しいだけの手よ」


2006年12月28日(木) Excuse you?

永遠に枯れない花を
丁寧にへし折る様で
振り切った断頭台

穴の開いた現在過去未来
クソ食らえが性にあった世界
辛くないだなんて冗句みたい

あぁなんて素晴らしいんだろう





生命に染み付くあざを
剣で一から剥ぎ取る様で
誤魔化した演奏会

穴の開いた現在過去未来
クソ食らえが性にあった世界
辛くないだなんて冗句みたい

あぁなんて素晴らしいんだろう

素晴らしいんだろう

素晴らしいんだろう

素晴らしいんだろう


2006年12月27日(水) Call girl

生まれる前から
恋してた私
抱いたり抱かれたり
心は捨て去り


泣いても又体は身悶えて

明日も又知らない男に抱かれてみる





求める体は
欲望に満ちて
苛む心は
遠く地獄の果てで


泣いても又体は身悶えて

明日もまだ見えない所で抱かれている




優等生じゃ渡れない

金木犀が似合わない

流線型しか能が無い





あんたのせいにするしかない


2006年12月26日(火) Cheap Melody

朝焼けに焼けて夕暮れに暮れて
全ての景色を愛しむ程
道端に咲いた喜びは溢れ
全ての想いが優しく響く


…なんて言うこのメロディーの価値は

どんくらい?

どんくらい?


きっと君がするあの悪さよりずっと低い

そんくらい

そんくらい





寂びれた言葉は優柔不断で
錆びれたギターが悲しく響く
それでも歌った
今では誰もが
誰もが
誰もが
優しく見える


…なんて言うこのメロディーの価値は

どんくらい?

どんくらい?


きっと君が流すあの涙よりずっと低い

そんくらい

そんくらい





だから

Don't cry

Don't cry

Don't cry


だから

Don't cry

Don't cry

Don't cry


だから

Don't cry

Don't cry

Don't cry


どうか

Don't cry

Don't cry

Don't cry


2006年12月25日(月) from delivery

男は共同墓地から胎内へと舞い戻り、新たな出生を迎える

子宮口の先で待っているのは薄汚れた世界だと知っている

「…構うもんか」



「医者もナースも信用ならねぇ」

「誰にも取り上げさせたりしない」




無理矢理引きずりだそうとする医者の手を振り払い、ナースの顔にゲロぶちまける



そして床に転げ落ちながらニヒルに微笑み最初の一言

「人が生きるか死ぬかって時に、その資本主義丸出しの金縁メガネは勘弁しろよドクター」



医者は見下ろしこう返す

「お前はガキだから知らないんだろ?」

「…金縁メガネをかけて見る世界は最高だぜ!!」

医者は続けて

「格好つけんのもいい加減にしろ」

「お前だって資本主義の恩恵を受けて生まれてきたんだろ」


「…いや、お前自身が資本主義の恩恵そのものさ」




男は床に唾を吐き捨て、ドアを蹴り開ける

そして去りゆく途中で背中越しに次の一言


「ご忠告ありがとうドクター」

「あんたはいつだって正しいよ」




「…でもこれでその忠告も無駄になる」



男は体液で湿った指で両の目を潰し、ありったけの力で耳を引きちぎる





こうして男は、何物にも汚されない、汚す事の出来ない孤立無援の世界を手に入れた


いつ逝ってもおかしくないリスクと引き替えに




繰り返す幼稚なニヒリズム

分娩室から共同墓地への旅が始まる






赤子の様に泣き叫ぶ手法はもう通用しない


2006年12月24日(日) ライブのお知らせ

急遽、来年の1月30日にライブをする事になりました



場所は下北沢CLUB-440

私一人でのアコースティック・ライブとなります




若干イレギュラー気味な出足ですが、くじかれない様に気を付けます



急だもんで詳細等一切不明


わかり次第こちらでお知らせ致しますので、どうぞ宜しく





お問い合わせは

rcubesound@yahoo.co.jp

までお願い致します



でわでは







追伸


お前がケーキを切り分けていた時、俺は自分を切り刻む事で手一杯だった

お前がケーキを頬張った時、俺は自分を葬る為の歌を作っていた



そしてお前がケーキを消化している今も、俺は次の音をどう“しようか”とそればかり考えている




「鉄は熱いうちに打て」とはよく言ったもんだ

早くしないと

カチカチの

ジジィになっちまうぜ





お前が誰かとプレゼント交換している時も

俺は次のプレゼンを後悔しない為に必死で生きている




同情は必要ない

だって俺は今日の朝方まで

今日がX'masだって事さえすっかり忘れちまってたんだから





息子A:「サンタさん…来るかなぁ?」

母親:「えぇもちろんよ…だからいい子にして早く寝なさい」



息子B:「サンタさんは毎年毎年大きな袋にプレゼントを詰め込んでみんなのお家を回って…大変だね」



母親:「そうね。…でもあの袋の中に入っているのは、本当は子供達にあげるプレゼントじゃないの。あの袋の中にはね…大人達にあげるビジネスチャンスが詰まってるのよ」


息子A・B「ビージネスチャンスッ!!ビージネスチャーンスッ!!」


母親:「さぁ早く寝なさい。お父さんが…もう1時間近くまってるんだから」



父親は扉の向こうでサンタの衣裳を身にまとい、息子達が寝入るのをただひたすら待っていた




手にはデパートの包装紙で包まれた、嘘を持って


2006年12月23日(土) word/街は無罪

容疑者は居ない
捕われるべきはいつだって君で
夜汽車は来ない
代わりに来た電車に揺られた


流れゆく景色は季節さえ判らない位に爛々
彩れば彩る程
色褪せて
見えたのは…


君だけなんだろう






被疑者は居ない
責められるべきはいつだって僕で
荷馬車は来ない
代わりにあのバス停で待っていた


目に入る全ては素顔さえ判らない位に散々
華やげば華やぐ程
離されて
しまったのは…


僕だけなんだろう






世界は今日も

色彩を増し

この目の色は

消える

消える

消える

消えていく



彩れば彩る程色褪せて見えたのさ

華やげば華やぐ程離されてしまったのさ

生まれた事それさえも罪だとしても仕様が無い位に暗い

枯れゆけば枯れゆく程

輝いて

見えたのは…





僕等だけなんだろう


2006年12月22日(金) 『オレンジジュース』後記

全4回に渡り掲載した『オレンジジュース』

まず初めに、この物語は全てフィクションであり幾つかのシーンとそれに付随するストーリーが登場しますが、その中で私が実際に経験した事がある物等一切無いと言う事を堅くお断わりしておきます



「…バンド解散?聞いてないわよ…」




「…そして日記の中では子供が産ま……お父さん!!おとぅうさぁーんっ!!」


という声が遠く北の大地に響かない様にね

私の親兄弟も見てる恐れがあるのでね

当然、人もあやめてません
私は喧嘩した事さえないんですから



…本当ですよぅ…まったくもぅ





物語は平凡な日常を生きる男の、平凡とは思い難い視点で描かれています

彼がどういった経緯であの様な視点を手にしたのか、手にせざるを得なかったのかは、私にもわかりませんが、きっと人の子なら当然与えられるべき愛情を与えられずに生きてきたのでしょう


全般に渡り何度か登場する「主人公は必ず死ぬべきだ」や「その方が美しいに決まっている」という文句から推察するに、彼は自分の人生も映画の様な一つの物語であると考え、その中で死という終わりを美化し、何らかの憧れめいた感情を抱いていたのではないかと思います

そして「偶然」にも彼は、映画の様に美しい死を得られそうな「機会」と巡り合い、直ぐ様実行に移す

機会は得ようと思っても、簡単に得られるものではありません

それを彼は充分に知っていたのでしょうね



直ぐ様実行に移すが…上手くいきませんでした

上手くいかないばかりか、余計なものまで背負ってしまう羽目になる

…生きているとよくある事です


「あるあるネタ」です


はい




彼はすっかり失望し、理想とは程遠い現実的な死を得ようとする

部屋で首を吊ったり、手首を切る様なつまらない行為

そんな事しても無駄です

逃げられません




しかしそこで、かつては軽蔑していた、性の対象としてしか見ていなかった女と再会

やがて我が娘と出会い、愛に目覚め、映画の様な美しい死よりも、現実的で美しくない生を選ぶわけです

私は幸か不幸か子を持った事が無いので、シーンCの女の心情や、シーンラストでの男のそれもまた、残念ながら想像の域を脱していません



こうあるべきだなんて思いません

こうあって欲しいとも思いません



こうなんじゃないか?というだけ



男もそんな私の心情を汲み取ってくれたのか「これは詭弁ではない」と言ってくれています

…がしかし、彼も確信を掴みかねている様で「詭弁ではない」と言い切る事は避け「詭弁ではないと思いたい」と言っていますね



結局は詭弁なのかもしれません

何の裏付けも無い単なる理想でしか無いのかもしれません

その真相はわかりません…でもわかるのです


私はあの男とは違い、素晴らしい両親に恵まれ、共に暮らし、育てられ、彼等は決して「愛している」等とは口にしませんが、幼い頃から「愛されている」と感じていました




…いや詭弁でなくてな




…ゴマ擦ってる訳でもねぇよ




女が男にした様にそっと背中から抱き締めるだけの行為

親が子にする様な行為

それだけでも「愛」を示すに充分な行為かと思われます

「愛している」と口にするよりもずっと




言葉にしても伝わらないものがあります

言葉にしなくても伝わるものもあります



女は「愛してる」と言葉にし、抱き締めました

でも「愛してる」という言葉は上手く伝わらず、その想いは無駄だったかの様に見えますが、結果として男は死ぬ事をやめ、生きようと思った

男は終始冷めた視点であの部屋でのやり取りを語っていますが、その中でたった一度だけ非常に人間らしい温もりを感じた事を認めています

男をこの世にとどめたのは「愛してる」という言葉でも、女が言う「愛」の真相を暴こうとするひねくれた意志でも無く、その温もりだったのではないだろうかというのが今の私の見解です



ただ想うだけでも伝わればそれに越した事は無い

もしかするとそんな感情も存在するかもしれません…が、私にそれを肯定する事は出来ない

まったく未知の領域なので


私に言える事は、ただ抱き締めるだけ、ただ触れるだけ、ただ微笑みかけるだけでも愛情は伝わり、それは「愛してる」という言葉なんかよりずっと真実味があり、その行為がすぐ側で腐ってる誰かの人生を健やかなものに変えてしまう位に力強いものかもよって事だけ



言葉は簡単に嘘をつく

でも仕草や表情はそうはいかない

余程「性根の腐った女優」は別として




話を戻すとその逆もしかりで、抱き締めもしない、触れもしない、微笑みもしなければ、すぐ側の誰かの健やかな人生を腐ったものに変えてしまうかもよ







赤子は母親の背中にぶら下がり、その後も事ある毎に父親の元を訪れ、両親の他愛も無い会話が終わると、帰っていく

母親の手にはいつものオレンジジュースが入ったビニール袋

飲み物の差し入れは許されていないと言っているのに…




父親はあの日愛に目覚めたが、その愛が深まれば深まるほど、それに触れる事さえ許されない自分とその罪を嘆く様になり、仕舞いには恨む程にまでその心情は荒れ果てる


赤子が成長し物心がつく頃になると、その荒廃ぶりはさらに悲惨なものとなり、母親と娘が面会に訪れても、微笑みもしない、出来ない、まるで人で無しの様に、ガラスの向こうで座っているだけになってしまった


母親はそんな欠落した父親の分も娘を愛そうと努め、そしてそれはしっかりと実を結ぶが、母親が愛すれば愛する程、それとは逆に微笑んでくれさえしない父親に対し

「どうしてお父さんは私を愛してくれないの?」

と嘆く様になる



母親の絶大なる愛を幼くして知ってしまったが故に、是が否にでも得たい人の子なら当然与えられるべき父親の愛

娘はただそれが欲しかった





やがて時は流れあの娘も今では、因数分解や歴史上の人物を羅列する事等も難なくこなせる程にまで成長した


しかし父親の愛情は未だ得られず、高まり過ぎた欲求と一向に高まらない愛情の落差が彼女をあらぬ場面へとおとしいれ、かつてあの男がそうだった様に、彼女もまた平凡な日常を平凡とは思い難い視点で描き始める








グラスに注がれた黒ずんだ液体

それはまるで底の無い沼の様

その水面に映る私の顔は今日も波打ち、悲しい程に歪んで見える





受け取られないオレンジジュースを飲むのはいつも私の役目

オレンジジュースは嫌いじゃないけど…子供の頃から毎日毎日朝昼晩朝昼晩…もう飽きてしまった




だから私はオレンジジュースに色んな物を混ぜて飲む




…ゴマ油は最低だったけど

醤油は悪くない




きっとお父さんも気に入ってくれるはず





お父さんに逢いたい


…逢いたい





…逢いたくない




顔も見たくない


…位に






逢いたい






いっそ居なくなってくれればいいのに




そしたら私もこんな黒ずんだ

『ミックスジュース』

を作らなくて済むのに






別の物語へ










…なんつってなー


( ゜3゜)←将来の夢:フィジーに住む事






↑馬鹿丸出し

…ホントの天国の方がお似合いだ

地獄も可



ご清聴ありがとうございましーた



m(__)mぺそり


2006年12月21日(木) 感謝

12月20日のライブを持ちまして、yokは解散致しました

素晴らしい時間と場所、そしてそれに巡り合う機会を与えてくれたcublic-cetts

同じステージを共有してくれたjimmyhat

そしてそれをサポートして下さったClub-251のスタッフの皆様に、元yokを代表しこの場を借りて心より感謝申し上げます

本当にありがとうございました


そして何より、早い出演時間にも関わらず、様々な諸事情を押し退けてでも御来場下さった皆様、並びにこれまでyokの活動をご支援下さった皆様には「ありがとうございます」という言葉を何度繰り返しても届かない程に深遠な感情を、今も尚、抱き続けています

販売した音源もお陰様で完売し、ご購入頂けなかった方々には大変申し訳無く思いますが、手にして下さった方々にはいつまでも大切に聴き続けて頂きたく思います


解散という結論に至までの経緯を、ここで述べる事に意味が無いとは思いませんが、それは小説まがいの駄文を書く事の様に単純な作業では無く、何処迄も果てし無く、途方も無い事の様に思われますので、お気を病んで下さっている方々にとっては許しがたい裏切り行為かもしれませんが、全て割愛させて頂こうと思います


しかしこの解散は、昨日のステージ上でも申し上げた通り決して悲観するべきものでは無く、全てを終えたその瞬間から私達はそれぞれに新しい始まりを迎え、今この瞬間もその中でそれぞれに音楽と向き合っていますし、向き合ってくれている事と思います


元yokの滝本寛氏のご好意によりこの「独り言」は、私が人で無くなるか、素晴らしきクソッタレ・インターネット社会が崩壊する日まで存続出来る事になりましたので、超面白いクソッタレ・テレビジョンや超格好良いクソッタレ・ポップンロール、猫も杓子もあなたも私も思わず飛び付いてしまう程に魅力的で煌びやかな現代にはびこる全てのクソッタ・レ・クリエーションに飽きてしまった時は、暇つぶしで構いませんので覗いて頂ければと思います

尚、私、滝本寛氏、そして村岡“サイドバーン”ジョージ船長の今後の音楽活動並びに音楽という名の航海に関しまして、まだ具体的な事は何一つとして申し上げられません

しかしそれぞれに意志はある様ですので、詳細がわかり次第、随時、即座に、責任を持ってこの場でお伝えしていく所存でありんす





ありんすぅ






不思議の国のありんす


そして谷村



…なんのその堀内




べーやん



最後になりますが、今この段になっても私は…私達yokは何一つとして間違っていないと胸を張って言えます



真実は

決して華やかな物ばかりでは無い



真実は

決して輝かしい物ばかりでは無い





真実は

時として

不格好な心のもとに
不様な醜態をさらし
不器用な己のせいで
不必要な血を見ても
流れた血は流れたままで
流れた汗は流れたままで
眺めた景色が例え冷たくとも
眺めた景色に合わせる事無く
ありのままの己を信じ
ありのままの己を信じる者を信じ

歌い

奏で

刻む

三人の

馬鹿で

幼稚な

バンドマンの様なもの





真実は



時として



yok








様なもの






「Take off your own yoke」

この言葉をyokとそれが生み出した全ての音達にたむけ、恐縮ですがこの公の場を借りて、その御冥福を地の底よりも深い愛と共にお祈り申し上げます



黙祷

















本当に

ありがとうございました


2006年12月19日(火) 『オレンジジュース』シーンC

前のシーンから



その時私は交番の外に気配を感じ直ぐ様反応する

見上げた視界に映りこんだのは、先程私の行動に戸惑い、不審を抱いたコンビニ店員だった



彼は文字通り絶句し、口をパクつかせながら、今にも腰を抜かしそうな姿勢でうろたえている


私もうろたえた

「俺じゃない…これは俺じゃないんだ!!」



しかしこの現場を100人が目撃したら、その全員が私を犯人だとして疑わないのは明らかだ

…何とかしようとするが

…何とも出来ない


「いいか…良く聞いてくれ……俺じゃない…俺がここに来た時には……多分もう死んでたんだよ…わかるか?」

私には…もはや否定する事以外何も出来なかった

なるべく彼を刺激しない様に、ゆっくりゆっくりと近付きながら、私は何度も否定し続けた




私が交番入口付近に差し掛かった時、彼はいよいよ決死の表情を浮かべ、まるで金縛りを強引に振りほどくかの様に手をばたつかせながら走りだした


衝動というより本能に近い意志に従い、私は後を追い掛け、直ぐ様襟首をつかみ、力任せに吊り上げ、落とし、真暗な路地裏へと引きずりこみ…恐怖で声もあげられずにいるいたいけな命を、善良な命を、罪の無い命を、何度も…何度も…殴り付けた



彼の目蓋が腫れあがれば、私の拳が腫れあがる

彼の唇から飛び散った血液が、私の拳から飛び散った血液と混ざりあう

彼の意識が遠退く程に、私の拳は感覚を失う



夢中だった

ただただ…夢中だった




気が付けば彼はもうすでにこの世の者ではなく、その上にまたがる私は、あの青春とは程遠い…完全なる悪に成り代わっていた




私は、口元に飛び散った彼…か私の血液をシャツの袖口で拭いながら、決して答えの出ない質問を繰り返す


「どうしてこんな事に…」




あの時抱いた崇高な目的は何処へ行った?

あの清々しい感覚は幻だったのか?

生きるとは…どういう事だ?



生きるとは…


警官殺害

拳銃強奪

そして自害…



…何一つ上手くいかない



上手くいかないばかりか、罪の無い命を己の保身の為だけに殺した

とてもとてもつまらない…私なんかの保身の為だけに





「どうしてこんな事に…」




「…逃げよう」


私は彼の遺体からシャツを剥ぎ取り、それで顔や手に飛び散った血液を可能な限り拭って捨てた

代わりに彼には、4つか5つ前の女が何かの記念日にプレゼントしてくれたと思われる、血まみれの黒いレザージャケットを被せた


そして、通りに人気が無い事を慎重に確認すると、私は路地裏から飛び出し、決して振り返らず、必死で走り続けた


12月の風が頬を切り付ける

腫れあがった拳は次第に感覚を取り戻し、極めて純度の高い痛みを呼び覚ます




涙が溢れた




この涙は、いったい誰の為のものだろう?

殺されていた警官

殺されてしまったコンビニ店員

殺してしまった私自身

今日から私は人殺し

明日には私も世捨て人

拳が痛い

あぁ、なんと哀れな私自身


この涙は…私の為のものらしい



私自身を慰め、走り、謝り、何故か怒り、いつのまにか…何も考えられなくなった




そして辿り着いたのは自宅の前

駅前のコンビニエンスストアーから走ってたった5分の部屋の前



扉を前にし、意外にも冷静を取り戻していた私は、こんな誓いを立てる

「一度開けて中に入ったらそこにあるのは終わりだけで、もう二度と、生きてこの扉を開ける事は許されない」


そして深く息をつくと、鍵を差し込み左に回す





……鍵が開いている





単に閉め忘れて出たのかと思い扉を開けると…今度は電気が点いている

単に消し忘れて出たのかと思い中に入ると…




…そこには何時間か前この部屋に別れを告げたはずの女が居た




私が「何故居る?」と問いただすより早く女は「おかえり」と言い、私の元へと駆けてきた



その手にオレンジジュースの入ったビニール袋をぶら下げて



「駅前のコンビニに行ったんだけど…あなたの好きなメーカーのやつが無くて」

「それでね…隣の駅前のコンビニで買ってきたの」

「…あなたも駅前のコンビニに行ってたの?」




私は女の質問には答えず、可能な限り冷めた声色で「何故居る?」と言い、女が答えるより早く「出ていけ」と言った


女は私の質問には答えず、私の命令に対し「出ていけって言われたって…」とつぶやく


私は女の手からビニール袋をむしり取り、部屋の中程へと進むと、女に背を向けたまま、もう一度さっきとなるべく違わぬ声色で「出ていけ」と言った


女は黙り、その場に座り込む

私は背中で女を感じながら大袈裟に腰を下ろすと、ビニール袋の中を覗き込んだ

中身は、確かに私が最もひいきにするメーカーのオレンジジュース

女が行ったという隣駅のコンビニエンスストアーは、男の足で歩いても片道40分以上かかると思われる程に、とても離れた所にあった



「それで…いいんだよね?」



「…あぁ」




そこで私はもう一度質問する

「何故居る?」



しばらくの沈黙の後、女は「…ここが家だから」と答えた



「そうか…じゃあさっきのさよならは何だったんだ?」



女は大きく溜息をつき「…あなたの事がわからない」と言った


私は「それはお互い様だ」と心の中で吐き捨てながら「それじゃ答えになっていない」と言い返した


すると女は急に取り乱し、涙声になりながらこう言った


「あなたの事がわからない!!」

「…わからないの」



「あなたの事をもっとちゃんと知りたいと思った…でもあなたはいつも私を煙に巻いて遠避けるだけ…」



「一緒に暮らしているのに…あなたも…私も…いつも独りぼっち」


「…それが辛かった」




「だから逃げ出して本当に独りになった方がずっと楽なんじゃないかと思って…私は…」


「…でも…やっぱり…出来…なかった」




女は涙に溺れつつあったが、引きつる呼吸とこぼれる嗚咽を必死で堪えながら、最後に

「愛してるって…言わ…れるのが……辛かった」

と言い、やがて完全に涙の底へと沈んでいく




正直…驚いていた

この女が優秀なのか?

それともやはり詭弁は何処までいっても詭弁でしかないのか…


そんな事を考えている最中にも、女の感情は次々と涙になって溢れてくる様で

「その涙はいったい誰の為のものだ?」

と聞こうとしたが、その答えはもう出ているので止めた




私は女が落ち着きを取り戻すまでしばらく待ち、何とか会話が成り立ちそうになると、変わらず女に背を向けたままこれで最後と決めて、ある質問をした





「なぁ…」




「愛って…なんだ?」




女は最後の涙を拭い、息を整えると、うつむいたまま一つ咳払いをする

そして、私のすぐ後ろへと歩み寄り、控えめに腰を下ろすと、まだ尾を引きずる涙声のまま話し始めた


「わからない…人が言う愛って物が…どんなのかは」

「でも…私の中にあるこの想いはきっと愛に違いないって信じてるし……それは間違いなくあなたに向けられたもの…だと思うの」



「なんであなたをこんなに愛しく想うかは…正直わからない」




「出会ってまだたった1ヵ月だけど…それは関係ないの」

「だって私は…前に3年近く付き合ってた人には抱けなかった感情を…こうしてあなたに…抱けてるんだから」




「でも…それが何故かは…わからない」




「でも…わかるの」

「あなたとは決して離れられないって…離れちゃいけないって」




「あなたの為だったら何だって出来る」


「あなたの為だったら…別の私になったって構わない」




「あなたを愛してるし…あなたに愛されたい」



そう言うと、女はまた少し私との距離を縮め、臆病に震える小さな胸で、かたくなに冷たい大きな背中を、そっと包み込んだ



それは、ただ柔らかく

それは、ただ温かく


母親が赤子にする様に

ただ、そっと


ただ、そっと…





「さっき人を殺してきたよ」

私がそう言っても、女は変わらず私を抱き締め続ける


「ほら…血がついてる」

シャツの袖口に染み込んで黒く変色した彼…か私の血液

それを見せても女は少しも動じなかった




「何故だ?」

そう言おうとしたが…言葉にならない



この女が言う愛とはなんだ?

…わからない




私はもう一度シャツの袖口を示し

「ほら…よく見ろよ…ほらここにも……俺は人を殺したんだよ」



すると女は…何故か私の頬にキスをした

そして、耳では無く、心に語り掛ける様な、とてもとても小さな声で



「人殺しでも構わない」

と言った





「何故だ…」

今一度心の中で呟いた私の声が、まるで聞こえていたかの様に女は


「あなたを愛してるから」

と言った




「あなたの罪さえも愛しい」と





何故だ?

この女が言う愛とはなんだ?




そして私はただ…それが何ものなのかを知りたくなった





「主人公は必ず死ぬべきである」



今夜ここで死ぬはずだったのに…

もう少し生きてみようと思った


生きて、この女が言う愛とやらを、触れる事さえ叶わぬ牢獄に幽閉し、そしてその真意を確かめてやろうと思った





私は携帯電話を手に取り、犯した罪を伝え、刑に服したいと申し出る




その間も女は変わらず私を抱き締め続けた






それから1年後

私は、高過ぎる塀に囲まれた運動場の隅で、四角く縁取られた青空を見上げる事だけを生き甲斐とせざるをえない生活を…余儀なくされている





ラストシーンへ


2006年12月18日(月) 『オレンジジュース』シーンB

前のシーンから



気が付けば私は遠の昔に目的のコンビニエンスストアーを通り越し、駅前商店街の中程にある交番の前を歩いていた


何と無く、ちらと目をやると、中には大柄で初老と思われる警官が1人、目を閉じ座っている


「私に生ある限りは」


「私に生ある限りは」



不穏な思惑と興奮が一瞬にして私を捕らえ、私は高鳴る鼓動を必死で押さえながら一度交番をやり過ごし、しばらく行った所にある公衆電話ボックスの中に入った

そして金も入れず、ダイヤルも回さず、ただ受話器だけを取り上げ、まるで長年会っていない故郷の友人と電話しているかの様に振る舞いながら考えたのだ



「寝ているのか…起きているのか」

答えは出ない



「50…いや60歳近かったはずだ」

答えは出ない



「…奥に誰か居そうか」

交番の方を向き、色んな角度から試みたが奥の部屋に明かりが付いているかどうかは判断出来ない




「…仮に拳銃を奪ったとしても…空砲では無いのか」

そうか…



…いや違う
違うはずだ

以前にも交番勤務の警官が殺されて、実弾入りの拳銃を奪われた事件が…確かあったはず




「…殺すのか」

答えは出ない



「手に入れた拳銃を…どうするつもりだ」

答えは…教えない




草木も凍てつく12月の夜更け過ぎ

世界から切り離されてしまったかの様に孤立した電話ボックスの中で、私は、私の故郷の友人の振りをするもう一人の私と共に、まるで少年の頃の様に清々しい気分で、秘密の計画を進めた

その高揚感といったら、数多くの女達と過ごした全ての夜を掛け算しても、まるっきり追い付かない程に何処までも突き抜けた…

…青春そのものだった



私は受話器を置き電話ボックスを出る

今度は先程よりもゆっくりと歩き、もう一度標的の確認を試みる

交番入口のガラス戸は12月だというのに開け放たれており、見たところ暖房器具は見当たらない

普通ならば身震いして仕方無い状況と思われるが、警官はやはり目を閉じたまま微動だにしない


私は交番入口より少し離れた場所にしゃがみこみ、靴紐を結ぶ振りをする

警官は変わらず目を閉じている

彼の後方、頭越しに見える別の部屋へと続くいているであろう扉に取り付けられた小さな覗き窓は黒く染まっており、それは「彼以外にここに居る者は無い」と私に定義付けさせるに充分な雰囲気を漂わせていた



小さく咳払いをしてみる

警官は微動だにしない…間違いなく寝ている


そう悟った瞬間、私は真っ青な春の初めに吹く突風よりも速く、力強く駆け出していた


そしてそのまま当初の目的であったコンビニエンスストアーへ駆け込むと、息を整えるのも忘れ、汗ばんだ手で軍手と10枚入りのゴミ袋を握りレジへと急いだ


オレンジジュースの事等もう頭に無かった


会計を済ませると、私は逸る気持ちを押さえ切れず、戸惑う店員を尻目にレジ台の上で商品の包装を破り、軍手をはめ、ゴミ袋を4枚重ね、残り6枚はそのまま置き去りにして店を飛び出した

私が作業している間中、店員は「お客さま、困ります」だの「他の方の迷惑になりますのでお止め下さい」だのとマニュアル通りの優秀な対応を見せていたが、私が作業を終え出ていく頃になるともう言葉は無く、まるで不審者を見る様な目付きに変わっていた

しかし春の突風と化した私にとって、第三者の意見や視線等は、もはや少しも問題では無かった



私はコンビニエンスストアーを飛び出したその勢いのまま交番を目指す


いつもならもうとっくに「事」を終え、すっかり眠っている時間

しかし今夜は違う

感覚が研ぎ澄まされていくのがわかる
目に見えるもの全てが新鮮だった

何故なら私は今、生まれて初めて「確固たる目的」を手にしているのだから

今この瞬間も鮮明に「想像」し、そしてその想像を忠実に「具現化」する為に、私は私の意志のみに従い「行動」する

正義も悪も関係ない

邪魔するものは何も無い

全ての決定権は私だけのもの



今まで眠っていた「何か」が交番前で覚醒する



これが…生きるという真理



厳粛な儀式を前に、乱れ切った呼吸や流れ落ちる汗はあまり歓迎出来たものではないが、「生」に目覚めてしまった私はすでにそういったものを上手くあしらえる程大人ではなかった



警官はやはり目を閉じたまま微動だにしない



警官殺害

拳銃強奪

そして自害


「主人公は必ず死ぬべきなのだ」




私は元から開け放たれていた入口を大胆にくぐると、一瞬で警官の背後に回り込んだ

そして一気に警官の頭に4枚重ねのゴミ袋を被せると、被せた袋の口部分を強く握り直し、力一杯に首を絞めあげた

大丈夫…これなら多少のうめき声を出されても、商店街に響きはしない
それに万が一抵抗され、私が手を離してしまっても、警官が頭から袋を取り、見上げた頃に私はもう居ない…大丈夫


しかし警官は抵抗するどころか、うめき声さえあげず…微動だにしない


「まだ力が足りないのか」
と思い、更に強く絞めあげようと踏張った瞬間、その勢いに引きずられ警官は力無く床に崩れ落ちた



…どういう事だ?

…人が死ぬ瞬間とはこんなにも素っ気ないものなのか?

もっと暴れたり、苦しんだら、必死で生き長らえようともがいたりするものじゃないのか?



「命とは…こんなに容易いものなのか」




これでは人形の首を絞めたのと変わり無い

命とは何なのだ?

これが…死…か?


まるで命の無い人形の首を絞めた様…

…命の無い…人形

…命の無い



…人形…人…


…人!

そう唱えた瞬間、全身に鳥肌が立ち、それでも手のひらと額からはベトつく嫌な汗が滲んでくるのがわかった

「そんなはずは無い」と自身に言い聞かせながら、警官の頭を覆ったゴミ袋を剥ぎ取り、軍手を脱ぎ捨て、横たわる肉体の表面に触れてみる


…冷たい



…そんな馬鹿な



警官は寝ていたのではない

死んでいたのだ

私が目をつけた時にはすでに死んでいたのだ




心の声がかき乱れる

「どうなってる?!」

「…どうしてこんなっ!!」


「…どうして…」




「…拳銃!!」

そうだ
警官を殺す事は元から決まっていた
なんでコイツが死んでるかなんてどうでもいい
拳銃だ
拳銃を奪え


しかし横たわる警官のホルスターに拳銃は納まっておらず、拳銃と腰に巻いたベルトを結び付けていたであろう太いロープは…何故か切断されていた



「そんな馬鹿なっ!!」

「…有り得ない……誰かに先を越されたとでもいうのか…」

その時私は交番の外に気配を感じ直ぐ様反応する

見上げた視界に映りこんだのは、先程私の行動に戸惑い、不審を抱いたコンビニ店員だった




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2006年12月17日(日) 『オレンジジュース』シーンA

「主人公は必ず死ぬべきだ
それが例え幼稚園児のお遊戯会だとしても
それが例え究極のラブ・オペラだとしても
主人公は必ず死ぬべきだし
その方が美しいに決まっている」


私がそう言い終えるのを待たずして女は深くうつむき、かつての様に私の価値観を計り、探り、歩み寄り、「何か一つでも共有出来る物はないだろうか?」と試みる仕草さえ見せず、映画のエンドロールが流れ切る前にこの部屋を出ていった

女がこの恋愛を締め括るにあたり最後に選んだ言葉は

「さよなら」

で、それに対して私が返した言葉は

「そうか」

だった



こうして私のたった1ヵ月にわたる13人目との同棲生活は幕を閉じた


女を見送った部屋は丁度人1人分の温もりを失い、昨夜より幾分寒々しい気もしたが、こんな出来事にはすっかり慣れてしまっている私にとっては特に取り上げるべき情景ではなく、女が残していった化粧品や下着の始末をどうするかという事よりも、さっきの女が飲んだ事により無くなってしまったオレンジジュースをこの寒空の下買いに行かなければならないという事の方が余程重大かつ大儀な問題であった



外は師走の星の下

ここは…ゴールデンウィークの散歩道といったところだろうか


寝呆け顔で「おはよう」を言った直後から、疲れた頭で「おやすみ」を言う寸前まで、四六時中タバコを吸い続ける私の乾き切った喉頭部は常に飲み物を必要としており、とりわけオレンジジュース以外を全く受け付けない私にとって、オレンジジュースが無い今のこの状況は絶対的に不利であった

しばしの葛藤はあったものの結局負けを認めざるをえず、仕方無く私は4つか5つ前の女が何かの記念日に買ってくれたと思われる黒いレザージャケットを羽織り

「どうせなら茶色をくれれば良かったのに」

と対象も定まらない難癖を付けながら、ゴールデンウィークの散歩道と師走の星の下とを隔てる薄いトタン製の扉をしぶしぶ押し開け外へ出た


歩いていると白く曇った私自身の溜息が何度も何度も顔にかかり、その度に先程出ていった女と良く似た憂欝が頭をもたげる


その憂欝は、私にとってオレンジジュースがどれほど大きな存在であるかという事を理解しようともせず、「紅茶もいいけど…今の気分はオレンジジュースかな」等という気紛れな精神論を語り、私の許可も得ずオレンジジュースを注ぎ、そして何度も何度も飲み干してしまう


憂欝はやがて怒りに変わり、怒りはやがて疲労に変わった



この時間に開いているスーパーマーケットは1つも無い

また溜息がこぼれる

この近辺にはコンビニさえも無く、一番近いものでも歩いて15分以上かかる駅前まで出なければならない


かつては目と鼻の先に1軒あったのだが、3年前そこの店に強盗が押し入り店員が殺され、店主は恐れを知り店を売りに出したが買い手はつかず、今はBMWが3台、日産とトヨタが各2台、そして「何とか工務店」と書かれた2tダンプが1台契約する駐車場になっている


平日の昼間、BMW3台がそこの場所を離れる事は滅多に無く、逆に工務店のダンプがそこの場所にとどまる事は滅多に無かった


確か3番目だったと思うが、この駐車場が出来た当初一緒に暮らしていた女に

「どっちの価値が高いと思う?」

と聞いたら、女はまるで火にくべた小石が弾け飛ぶ様な勢いで

「BMWに決まってんじゃん!!」

と言い、その後丁寧にもBMWが高級車である事や、仮に私がBMWを購入したいと考えても時給950円では一生を費やしても無理だという事を教えてくれた


その後も何人かの女に同じ質問をした事があるが…答えはどれも一緒


いつだって邪魔をするのは価値観だった


相手が同性である男であっても上手く価値観を共有する事が出来ず、学校でも社会でも孤立せざるを得なかった私が、生物学的見地から見ても全く異種である女と共有出来る価値観を持ち合わせていないのは明らかだった

そうとわかっていても私は歴とした男であり、生物学的見地から見ても対種である女を求めるのは仕方の無い事であり、厄介であると知りつつ何度も同じ様に女を求めるのである

また女にとって私の様に均整の取れていないチグハグな男は、対種である男の中でも目に止まりやすい存在らしく、大抵の女が「放っておけない」等という母性本能とやらを引き連れてやってくる



新しい女と出会う度に「この女が物言わぬ動物であればいいのに」といつも思う

私は暇さえあれば口を開き、フィールドの貴公子やドラマの女王についてまるで自分の人生の一部であるかの様に熱く語る女の口を封じる為に、戸棚の奥には常にお菓子を用意しておく

そしていよいよ耐えられない段になるとそれを引っ張り出し女の鼻先に落としてやるのだ

女がお菓子に夢中になっている隙に私はシャワールームへと逃げ込み、リビングであぐらをかく女にまつわる憂欝を必死で洗い流そうと努力する

大抵の女は日に日に延びていく私のシャワータイムに懸念を抱く事は無い


何故なら女は安心しきっているからだ

私は女と居る時間の多くを笑顔の仮面でやり過ごす

私は1日1回は必ず「愛してる」という台詞を読む

そうされた女は「愛されてる」と勘違いし、すっかり安心しきってしまう


警戒している時の女はどんな男よりも敏感だが、安心している時の女はどんな男よりも鈍感なのだ



私がシャワールームから出ると、それが例え1時間後だとしても大抵の女は最前見た時と同じ位置でお菓子を頬張り、ブラウン管と対峙している


中には「今日も長かったね」等と愛想を振りまく者もいたが、大抵の女は「私が何故皮膚がふやける程シャワーを浴びなければいけなかったのか?」という事柄に関して、原因を追求するどころか疑問さえ抱かず、着替えを用意し、ブラウン管との別れを惜しむ様にシャワールームへと消える


女が消えるとすぐに私はテレビを消し、部屋の電気も消して、カーテンによって優しくねじ曲げられた外灯が縁取る部屋の片隅で寝具に包まり、ただひたすら無心で、女が戻ってくるのを待つのである




やがて女は戻り…寝具の中へ

複雑に絡み合う足と…本能

そこに言葉は無く、私を苦しめる価値観の相違も無い

お飾りのBMWも、誤魔化したチョコレートも、嘘つきなブラウン管も、溺れかけのシャワールームも…何も無い

そこに唯一在る女の肉体の上に、私は快楽を積み上げ、それを登っていく

次第に私の肉体は浮遊し、更に、一気に高みを目指す

視界は徐々に白へ溶け込み、意識は遠ざかる

それを必死で追い掛ける最中で…私は唐突に天国と出会い…そして同時に地獄とも思える程に汚らわしい寝具の中へ舞い戻るのだ

必ずと言っていい程、確かな罪悪感を引き連れて



こんな行為が救いになるだなんて私も思ってはいない

しかしこれは如何ともし難い本能のしでかす行為であり、私に生ある限り避けては通れない、目を覆いたくなる程に確かな悪事なのである



「そう」

「私に生ある限りは」





気が付けば私はとうの昔に目的のコンビニエンスストアーを通り越し、駅前商店街の中程にある交番の前を歩いていた





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2006年12月13日(水) word/fiction 49-code Chigeru

愛すべきこの我が子を
なんて名付けりゃいいんだろ?
ハイハイさえ出来ん
まだまだあの娘の腹の中


nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananaなんてこった




顔もまだ無い我が子に
画面越しで逢えんだろう?
バイバイしたいけど
もうもうあの娘はマリア像


nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananaなんてこったんだろう

ふざけて

『ちげる』と

Yon・De・Ha・Ta・Ka・Re・Ta




愛すべきこの我が子に名付けりゃいいんだろう?
顔もまだ無い我が子を愛せばいいんだろ?
大体愛ってなんだ?
いつかはあの娘も墓の中


nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananana
nanananananaなんてこったんだろう

ふざけて

『ちげる』と

Yon・De・Ha・Ta・Ka・Re・Ta






lalalalalalala
lalalalalalala
lalalalalalala
lalalalalalala
lalalalalalala
lalalalalalala
lalalalalaLove


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