冒険記録日誌
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2022年06月05日(日) クソゲー・オブ・ザ・オレ 第9位

たけたろう「クソゲーランキング9位。ここにきて創元推理文庫のスーパーアドベンチャーゲームから作品が登場しましたよ。」
山口プリン「本作はランキングに載せるべきか悩んだよ。作品の完成度で言えば、スーパーアドベンチャーゲームシリーズの中でも、むしろ良い方だし。」
たけたろう「おや?それなのにシリーズ代表となったのは、どんな意味があったのでしょうか。」


クソゲー第9位 【ウルフヘッドの逆襲】

ジャンル  剣と魔法の王道長編ファンタジー
発売元  創元推理文庫
執筆者  林 友彦
発売日  1989年6月5日
パラグラフ数  500(前巻からの続きという事で、パラグラフ番号は501〜1000となっている。)
ゲームの構造  双方向システム。ルールはかなり煩雑。
過去の冒険記録日誌  なし

ポイント
 俺のカタルシスはどうなるんだ!

物語の概要
 人間と狼の姿を使い分けることのできるウルフヘッドと呼ばれるあなたは、サングール王国のスミア王女と出会い、王国を滅ぼした魔王グリーディガッドを倒すため一緒に旅を始めた。冒険の途中で幾人かの仲間達も加わり、探索を続けた末、宿敵の居城たる巨大な空中要塞を発見する。しかし、スミアはガーゴイルにさらわれ、追いかけた一行は、そのまま空中要塞内に飛び込むのだった。「ウルフヘッドの誕生」の続編、シリーズ完結編。


※警告 警告 警告 警告※

 本作品のクソ要素は、物語の核心にかかわっている性質上、重大なネタバレになります。これから遊ぼう、遊ぶかもしれない、という方は、ここから先は読まない方が良いでしょう。クリア済の方、今後とも遊ぶ可能性はないと断言できる方、犯人を先に知ってからサスペンス映画を見たいタイプの方のみ続きをお楽しみください。

※ここから先、ネタバレ!注意しろ!注意しろ!※




※ネタバレノ トビラガ ヒラキマス※




名言
 ギャラハッド「きみたちの来るのが遅いから、グリーディガッドはぼく一人で片づけておいたよ。」

主な登場人物
 ウルフヘッド:人間と巨大な灰色狼の姿を使い分けることのできる主人公
グリーディガッド:サングール王国を滅ぼした魔王。強力な4体の魔獣を配下におく。
 ギャラハッド:別の目的で空中要塞に潜入したというブーカ(猫妖精)の戦士。行く先々で、主人公一行とすれ違う。「ネバーランドのリンゴ」の主人公ティルトと同じ種族である。

〔ウルフヘッドの愉快な仲間達〕
  スミア:サングール王国の王女。典型的な守られヒロイン。性格は気品も素直さもあるいい子。
タイタニア:いわゆるティンカーベルタイプの妖精。非戦闘員。「ウルフヘッドの逆襲」では、攫われたスミアの代わりに主人公へよく喋りかけてくる役。
 ジャレス:サングール王国兵士の生き残り。主人公顔負けの強さを持つ有能な仲間。偶然出会ったスミアにただ付き合って同行している主人公よりも、敵との因縁がよっぽど深い。正直なところ、彼が主人公でいいと思う。
どぶねずみのブラウ:盗賊。スミアよりマシな程度の戦闘力ゆえ、野外の冒険が主体の「ウルフヘッドの誕生」では存在感がなかったが、空中要塞が舞台の「ウルフヘッドの逆襲」では大活躍。適材適所という言葉が当てはまる。
 火竜のアクセル:戦闘の都度、酒を消費するという制約があるくせに弱い。仲間になったあとセリフがあるわけでもない。酒を持ってないといけないので、荷物要員にもならない。こんな奴が山口プリンのお気に入りである。
 ルーイー:強さは平均な青年。電撃に少し耐性がある。地味。
 ベアード:人と熊の姿を使い分けられる、主人公と同種の存在。見た感じは無愛想な山男。仲間にしたくても乱数判定で断られる可能性のある唯一のメンバー。
 ウータン:完全にモンスター。仲間の中で最も強い戦闘力を誇るが、登場するのは「ウルフヘッドの逆襲」の中盤という遅いタイミングなので、仲間になっても今更感がある。

クソ要素
 時々主人公一行を手助けしてくれていた謎の戦士ギャラハッドが、余計な親切までやらかしてくれた。
 ゲーム終盤となり、魔王最強のしもべであるアイボールを倒して、物語は一気に盛り上がったところで、玉座のある広間に駆け込む主人公一行。そこにあったのは魔王グリーディガッドの死体だった。その後に登場したギャラハッドが喋るのが、先にあげた名言である。
 この後、真の黒幕が登場するとかいう事はない。ギャラハッドが実は邪悪な存在で、魔王になり替わろうとしたわけでもない。彼は本当に他の目的で、この空中要塞に潜入しており、その邪魔になった魔王をついでに殺しただけなのである。

総評
 本作は、巨大な灰色狼への変身システムや、最大8人もの仲間を加入させることができ、その仲間の分もステータスの管理が必要な点、複雑なフラグ管理と、ゲームブック史上で最もルールが煩雑な作品の一つである。ゲームブックの歴史を語る時に、ゲームの内容がマニア向けに複雑化していったという意見があるが、そういう意味なら本作はその頂点といえるだろう。完全に初心者お断りの雰囲気である。
 一方で、そのマニアの期待には見事に答えるゲームバランスに仕上げられており、「ウルフヘッドの誕生」でフィールドを自由自在に探索し、時に巨大な灰色狼の姿で迫力の戦闘にもなる展開は魅力であった。本作の「ウルフヘッドの逆襲」の方は、敵地で屋内の冒険という事もあって、展開はある程度決まってくるが、謎解きをしながらコツコツと攻略して移動エリアを広げていく楽しさがあった。
 そうして、楽しみながらも苦労を重ねた冒険の末、これまで訳知り顔でちょくちょく登場していたわき役に、ラスボス討伐という美味しいところを取られてエンディングに突入するのである。これをドラクエ3で例えるなら、最終盤で主人公が父オルテガに再会すると、「息子よ、安心しろ。ゾーマは父さんが倒したぞ。」とほがらかに言われて、そのままエンディングになるようなもの。
 その後の選択次第では、ギャラハッドと戦うことが出来るが、勝ってもギャラハッドが戦意喪失して、「いきなり斬りかかって悪い事をした。」と普通に謝ってくるだけなので爽快感はない。むしろ、いつも通りに仲間と一緒になって戦うと、勝った後で経験値を減らされるペナルティを受ける。1人相手に大勢で戦うのは卑怯というのだろうか。
 なお、同作者の別作品である「ネバーランドのリンゴ」や「ニフルハイムのユリ」では、ゲームが進むにしたがって、主人公が過剰なくらい強化され無敵になっていき、戦闘バランスが崩壊していく。終盤は単調な迷路に苦しめられ、ラスボスはデコピン一発で倒せるような塩梅ではあるが、それでも悪を自らの手で成敗したことには変わりなく、クリア後の満足感はあった。こういった「終わり良ければ全て良し」な作品に対して、本作はゲーム的には問題がないのに、最後で盛大な肩透かしを味わう見事な逆パターンである。


ちょっとリプレイ

たけたろう「いやいやいやいや、こんな大長編は、さらっとこんなコーナーで挑戦するようなものじゃありませんよ。」
山口プリン「まあ、そうだろうな。」
たけたろう「でしょう?それに“ウルフヘッドの逆襲”から始めると、クリアできる最低限の状態からスタートだから結構厳しいです。仲間もジャレスとタイタニアしかいないし。」
山口プリン「“ウルフヘッドの誕生”で必ず仲間になるはずのルーイーまで、いなかった事にされているからな。かと言って、1からすれば、冒険記録日誌30日分のリプレイにはなるだろうなぁ。」
たけたろう「ではリプレイはまたの機会ということにしましょう。」
山口プリン「創土社版ドルアーガの塔の攻略もまだ終わっていない中、こうしてプレイ予定の作品がまた一つ増えるのであった。」


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