冒険記録日誌
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2021年06月17日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その16 |
丘の頂上までついたとき、トロイゼンの町からあがっていた煙が火事によるものだと気がついた。拙者は急いで町へ向かって駆け下りる。 故郷の町は壊滅状態だった。通りのあちらこちらには殺された住民たちの遺体が転がっているだけで、人気がなくなっている。ただ、霧雨の中、燃える家々がくすぶる音が聞こえるだけだ。 何がおこったのだ。 拙者は、急いで我が家へと向かったが、家は燃え尽き、母上の姿はなかった。生存者はいないかと向かった神殿の中で、まだ息のある神官パセウスを発見する。拙者が故郷を旅立つときに、彼が守護神を決めるように助言してくれたのを昨日のことのように思い出した。 じゃが、彼も深い傷を負っており、傍目にもその命が燃え尽きんとしていることはわかった。 「パセウス殿。拙者じゃ。アルテウスでござる」 「やっと戻ってきたか。だが、この町を救うのには遅すぎたな……」 彼は笑おうとして、口から血を流して咳き込んだ。 「いったい何がおこったのですか?」 「トロイ人が攻めてきたのだ……我らが神よ!どこにおられる?」 「母上は?母上はどうなったのです?」 だが彼はもう死んでいた。 霧雨は大粒の雨に変わり、嵐が激しくなってきた。 拙者は衣服を脱ぎ捨て、廃墟の真ん中で胸を張り裂けんばかりに叫んだ。 「冒険者は帰ってきた!神よ!いま、拙者にどんな言葉を待っているのでござるか!」 だが、神々からは何もいらえはなかった。破壊されつくされた町を再び見回す。雨はさらに強くなり、夕闇がせまってきている。拙者は故郷に帰ってきたのだ。 そして、東に1000マイルのかなたでは、娘が刃を研ぎ、時節の到来をまっていた。
完
いや待て。最後の一文はなんじゃ。 娘と言うのは、拙者こと、アルテウスとアリアドネの間に生まれた子のことじゃろうな。 では、刃を研ぎ、時節の到来を待つというのはどうゆう意味じゃろう。ワシに変わってトロイ人を打ち倒そうという事じゃろうか。 「……それは母の仇のお前に、復讐の刃を向ける日を待つという意味」 「あーあー!聞こえんなぁ!」 一瞬ヘルメスの声が聞こえた気がしたが気のせいだな。見たこともなき娘にそこまで恨まれる覚えはない!もしそうなら、どこまで救いがないのじゃ。 拙者、平和な八幡国で次の出番を待つことにするでござる。最後まで拙者の冒険を読んでくれた読者の皆様には、ただ感謝あるのみじゃ。 恐るべし、ギリシャ神話の世界よ。さらばじゃ!
by銀斎
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